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今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.26 他人事じゃない!“企業合併・事業統合”後の給与制度
プロ野球球団でさえも合併する時代。生き残りを賭けて、あるいはより競争力を高めるための企業合併、事業統合が、当たり前になってきた。そこで気になるのが、給与制度はどう変わるのか。最近の実例をもとに、その内情と対応法を探る。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/Onsel BEHICH) 作成日:04.10.20
エンジニアの3人に1人が企業合併・事業統合を経験
 この数年、金融、情報・通信、半導体、電機、商社、鉄鋼、製薬などの各分野での大型企業合併が進んでいる。もはや業界、企業規模を問わずという感じだ。対等合併で新会社を設立する例から、上位企業が下位企業を吸収する例、さらには会社まるごとではなく事業部だけを切り出して、それを吸収合併する例まで、さまざまな形態がある。

 野村證券金融経済研究所の調べによると、日本企業の合併件数は2002年上期がピーク。2004年上期は前年同期では5.4%の減少であるものの、全体で959件と依然高い水準を維持している。合併に伴う取引金額は2004年上期だけで約2.55兆円に及び、前年同期の2.2倍。それだけ大型案件が多いことがわかる。合併の目的の多くは既存事業の強化、さらにグループ内の再編、新規分野への進出、関連会社の株式持分比率の引き上げなどが挙げられる。

 Tech総研では、エンジニア1507人に企業合併・事業統合経験に関する調査を実施した。「勤務する会社で企業合併・事業統合を経験したことがある」「これからの合併が決定している」と回答したのは、なんと36.5%。エンジニアの3人に1人が、なんらかの形で企業合併問題を身近に経験していることがわかる(データ1)。

データ1 エンジニアの約1/3が企業合併・事業統合
を経験
データ1
 企業合併で真っ先に問題になるのが、事業の統合に伴う業務フローの統合や、営業体制の強化、売上・利益管理システムの統一といったより金銭にかかわる問題。だが、経営人事上の課題はそれに次ぐ重要課題だ。経営者からみれば、異なる人事制度を一つに融合することや、合併移行後の総人件費の管理が悩みの種になる。

 一方、従業員の視点からすると、合併による新しい組織で自分はどんな役割を担うことになるのか、自分の仕事を新しい上司はどう評価してくれるのか、そして、なにより自分の給料はどう変わるのかなどが、切実な問題として浮かび上がってくる。
すぐには変わらないが、1〜2年かけて給与制度を統合
「対等合併で新会社になる場合、全く新しい人事・給与体系を構築するケースと、どちらかの会社の制度に合わせるケースの2つがありますが、多いのは後者のケース。ただ、その場合も合併後すぐに新制度に切り替わるというより、1〜2年かけて統合していくケースのほうが多いようです。同様に、吸収合併の場合も、買収される側の従業員の年収水準は1〜2年は保証されるのが一般的。その後、徐々に買収する企業側の体系に変わっていきます
 というのは、企業の人事制度構築などのコンサルテーションを行うリクルートマネジメントソリューションズ(旧社名HRR)の宮崎茂チーフコンサルタントだ。

 ちなみにTech総研の調査では、直近1年以内に企業合併・事業合併の経験がある100人に給与の変化(データ2)や満足度を聞いた(データ3)。給与が増えたのが12%、減ったのは10%、増減なしが78%。宮崎氏の指摘とおり、現状維持のスタイルをとるのが圧倒的に多く、合併後1年以内に給与制度が大きく変わることは少ないようだ。

 だが、給与制度の統合にあたって問題になるのが、2つの会社の給与水準に大きな開きがある場合だろう。「高い水準に切り上げるというのは現状ではなかなか難しく、ぎりぎり真ん中のラインで収めるというケースが多い。低い水準の人は上がることもあるが、たくさんもらっていた人は下がることもあるわけです」と宮崎氏。ただ、この場合も統合の瞬間からいきなり下がることはまれで、3年ぐらいかけて調整していくのが通例。場合によっては、大手都銀の統合の例のように、減額になる人の差額分を先に前払いしてから、賃金体系を統一するケースもあるという。

「いずれにしても、20代、30代の若手では賃金水準はほとんど変わらないので影響は少ない。むしろ40代以上の管理職層のほうが影響は大です」(宮崎氏)
 とはいえ調査では、本給ではなく諸手当の見直しが総収入の減額をもたらした、と不満をもらす若手エンジニアも一部に見受けられる。(データ3)

データ2 合併後1年以内の給与額増減なしが78%
データ2
 
 
データ3 「合併後の給与額に不満」は約3割
データ3
 
▼合併後の給与額に不満の声
*就業規則の見直しで手当が減額された(メーカー・半導体設計/31歳)
*額面は同じでも税金が増えて手取りは減った(金融・社内SE/38歳)
*成果主義で残業代が支給されなくなった(メーカー・システム開発/35歳)
合併後の新人事制度を注視し、それに対応しよう
「合併を機に、人事制度を刷新しようという企業は少なくありません。賃金、評価、昇進などの制度を見直して打ち出される新制度は、企業からの新しいメッセージ。最近はより成果主義的要素が強まる傾向にありますが、“新会社”ではどういう働き方をすれば認められるかが、そこには明示されているはずです。合併で以前の年収が保証されたことにただ安堵するのではなく、統合後に人事制度全体がどう変わっていくのか、そこで自分はどうパフォーマンスを発揮するのか、それを考えたいものです」と、宮崎氏は企業合併時代の渦中にあるエンジニアの働き方を提案している。
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