採用企業が教えるメリット【転職候補企業が広がる】

採用企業が教えるスカウト転職のメリット3　自分の転職候補企業の範囲が大きく広がる

自分のキャリアを匿名で公開し、企業からのメールを待つスカウト。従来の転職とは違うメリットについて、採用企業に聞いてみた。第３回目は、「転職候補先の範囲が大きく広がる」メリットについてレポート。

（取材・文／栗原知女　総研スタッフ／山田せいめい）作成日：04.09.29

はじめに

スカウト登録とは？

スカウト登録の手続きは簡単だ。リクナビＮＥＸＴスカウトに自分のキャリアを登録すると、その内容を見て関心をもってくれた企業からオファーが届く。「えっ？」と驚くような意外な業種・職種や、「自分の実力では無理」と決めつけていた企業からスカウトがくることも。スカウト登録は、自分では気づかなかった可能性を企業に発掘してもらうチャンスにつながる。登録する時には、自分のキャリアをなるべく詳しく書いたほうが、企業ニーズとのマッチングの可能性が大きくなる。

事例

「スカウトのメリットは自分の中に眠っていた可能性に気づくこと」（株）日産テクノのケース

　スカウト企業側は、多くの登録者の中からどのようにして「欲しい人材」を選び出しているのだろうか。登録されたキャリア情報のどの部分に着目しているのだろうか。企業側の着眼点がわかれば、登録する際のアピールの仕方が見えてくる。また、一般公募とスカウト採用では、企業にとってメリットがどのように異なるのか。企業とエンジニア自身のメリットの一致点を探り出してみたい。

「いますぐ転職したくなくても、登録しておけばチャンスをつかめる」

「埋もれている人材を発掘できる」。それがスカウト登録の最大のメリットであると近藤さんは言う。「いますぐ転職する気がなくても、とりあえず登録だけしておこうという人の中に、実はこちらが欲しい人材が埋もれているのです」。同社が求めている人材は、機械や電気・電子などの設計を経験しているエンジニアがメインで、20代の第二新卒者の中からも「やる気と適性のある人を発掘したいですね」。

　一般公募だけでは、「欲しい人材」を採用しきれないという事情がある。だから、採用の候補者を増やすためにスカウト登録者に積極的にアプローチしている。「設計をキーワードに検索しているのですが、まだまだ候補者が足りません。もっと多くの方に登録してほしい」。自動車業界が絶好調とあって、人材ニーズは確実に伸びている。中でも新車開発業務に欠かせない設計のスペシャリストは、各社で奪い合う状態だ。

　いますぐ転職したくなくても、とりあえずスカウト登録しておけば、企業から新しい採用ニーズが出てきたときにグッドタイミングでチャンスを手に入れられるかもしれない。

「異業種でも、意外にあなたのキャリアがマッチする職種がある」

　キャリアを登録する際に、ほんの２、３行しか書かない人がいるが、これは自分からチャンスを狭くしているようなものだ。「設計でいえば、“設計全般”などと書かないで、何を担当したのか詳しく書いてほしいですね」。多種多様の部品で構成されている自動車は、機械や電気・電子設計に通じる専門性が高く評価される。これまでに採用された人の中には、イス、エレベーター、冷蔵庫や冷蔵ショーケース、太陽光発電の発電機、プラント、橋梁（建築）、携帯電話、カメラの制御ソフト、通信設備のシステム設計といった異業種の設計エンジニアが含まれている。

「車体やエンジンの設計というと異業種の方にはイメージがつきにくいと思いますので、具体的には、プレスや鋳造、鍛造、配管類等の部品。機構設計としては、ドアの開閉装置やサスペンションに類似するような設計。車室内では、インパネ類のような樹脂成型部品等、話せばきりがなくなりますが、自分の仕事はあまり関係ないとあきらめずに、是非チャレンジしてほしいですね」。最近ではカメラのレンズ機構の設計エンジニアだった人が内定をゲットしたばかり。「カメラの精密技術が役立つ仕事もあります」。

　異業種でも、設計の基本は同じだ。特に同社が着目しているのは、「バランス感覚」。「部品の性能要件(強度や熱等の性能や、L/O：部品の配置等)を満たすこと、納期を厳守するためのスケジュール、取引先や社内の他部門との調整や連携、この３つの項目をバランス良く行えるエンジニアが欲しい」。
　つまり、仕事の基本、専門性のツボを押さえて自分のキャリアをアピールすれば、意外な異業種のニーズとマッチする可能性が出てくる。

株式会社日産テクノ　
総務・人事部人材開発課主任
近藤　全計氏

株式会社日産テクノ

1985年、日産自動車グループの開発体制強化の一環で、設計専門会社として設立。主要事業は、自動車その他機械類、電気・電子機械類の設計・ＣＡＤデザイン・製図・実験。ＣＡＤスクールや人材派遣業務も手がける。本社所在地は神奈川県座間市。ほかに厚木、横浜に拠点をもつ。01年には日産テクノベトナム社を設立し、海外進出を果たした。従業員数約2000人で、03年度の売上高は約150億円。スカウト採用は昨年から開始した。昨年の採用実績はトータルで新卒150人、中途50人。そのうちスカウト採用は７人であった。

「好きなことにこだわってじっくり転職先を選べる」

　経験の浅い若手や第二新卒の発掘も積極的に行っている。「経験や知識がなくても、自動車が好きな人なら歓迎です」。いまの自分のスキルやキャリアが通用しないのではないかと不安をもつエンジニアにもチャンスがあるわけだ。メカ好きの人なら、子供のころから一度は自動車の仕事をしたいと思ったことがあるだろう。「絶対にかなうわけがない」と思い込んでいた夢が、スカウト登録をきっかけに実現するかもしれない。「会ってみたい」と企業からアプローチしてくれるのだから、過度の緊張や不安なしに面接に臨める。また、スカウト登録者は「選ばれる立場」であると同時に「選ぶ立場」でもある。

「スカウト登録している方は、自分の好きなことにこだわって企業を選び、複数の企業の面接に応じて比較検討して決めているようですね」。在職中でも気軽にできるスカウト登録ならではのメリットだ。自信と余裕をもって、じっくりと転職先選びができる。


	１．	いますぐ転職する気がなくても、登録しておけば、チャンスをグッドタイミングでつかめる

	２．	意外な業界からのアプローチがあり、自分のスキル・キャリアの可能性を発見できる

	３．	「絶対に無理」と思い込んでいた夢の実現につながる意外な出合いがある