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人事の心を動かすのは応募条件だけじゃない!
逆転採用される「経験・スキル不足」克服法
 
応募したい会社や職種で求められる条件に対して、スキルや経験が不足しているという理由で転職をあきらめていないだろうか。果たして、応募条件を完璧に満たさなければ転職は難しいのか、その実態を企業と人材コンサルタントに聞いた。

(取材・文/入倉由理子 総研スタッフ/宮みゆき) 作成日:04.09.08
PART1 経験・スキル不足でも転職を実現したエンジニアたち
 2003年12月にTech総研がエンジニア3117人を対象に行ったアンケートによれば、「転職したいが考えていない」「転職は不可能だと思っている」「現実的には転職したくない」と回答した人は約75%。その理由を聞いてみると約3割が、「スキルが足りないから」「実務経験が足りないから」といった経験・スキル不足を感じている。しかし、経験・スキルが応募条件に満たなくても希望通りの転職を果たし、その後のキャリアアップを実現させたエンジニアも確実に存在する。
 そこで、条件不足でも転職を実現したエンジニアの実例をレポート。条件に満たなかった彼らは、何がアピール材料となって採用されたのか、企業は応募条件をどのように見ているのかを見てみよう。
CASE1 面接で、セキュリティ分野への情熱を具体的かつ明確にぶつけた
システム開発会社/SE → ネットセキュリティ会社/SE
 95年、大学工学部情報通信科を卒業後、地元・名古屋のシステム開発会社に入社。小売・卸業界を顧客に販売管理システムの開発に携わる。プログラマとして半年勤務した後、東京に転勤になり、上流工程から携わるようになった。セキュリティ分野への興味がふくらみ、2002年10月、トレンドマイクロに転職。
 加藤さんがセキュリティ分野に興味を持ったのは、大学時代まで遡る。映画「スニーカーズ」を見て、「こんなに面白い分野があったのか」と驚いたのだという。その感動への思いはシステム開発会社に入社後も持ち続け、書籍などの情報から独学で知識を蓄えて、入社5年目にはセキュリティ分野への進出を会社に提案した。

 「自らの興味と、会社の将来を考えたうえでの提案でした。セキュリティは成長分野。必ず会社の新しい利益の源泉になると思ったのです。しかし、結果はNO。それでもセキュリティ分野への思いは断ち切れず、転職しようと決めました」
 と、加藤さんは当時を振り返る。とはいえ、知識はあっても仕事としてはまったく未経験の分野。求人を見ると、どの会社も「業界・業務経験者」を条件として掲げていた。
トレンドマイクロ株式会社 加藤久雄さん(31歳)
トレンドマイクロ株式会社
営業統括本部
コンサルティングSEグループ
システムエンジニア
加藤久雄さん(31歳)
「未経験であることは気にせず応募しました。確かに業界経験はありませんでしたが、顧客に出向き、要望を聞いてそれをシステムに反映させるという仕事は経験してきた。それが生きる仕事が必ずあると、探し続けたのです」
 
  そして、出合ったのがトレンドマイクロだ。コンサルティングSE部が募集していたプリセールスエンジニアは、営業とともに顧客に出向き、細かい仕様に関する技術的なフォローや導入の支援を担当する。「自らの求めていた仕事はこれだと直感した」という加藤さんは、その熱意を面接でぶつけた。
「経験もアピールしましたが、なぜセキュリティ分野を選んだのか、なぜ転職するのか、そしてなぜトレンドマイクロなのかを真剣に話したんです」
 
  セキュリティ分野に携わりたいという当初の目的を見失わず、貫いたことが最終的に条件不足を乗り越えたのではないかと、自らを分析する。
「入社後、何よりやりたかったことが仕事になり、興味を持って勉強することが、会社への貢献につながる。そんな環境に何よりも満足しています。最初は必死で勉強しなければなりませんでしたが、それはどんな分野でも同じこと。自分が好きな分野に熱中できることがうれしかったくらいです」
検証! 採用担当者は、このキャリアを評価した
 当社のコンサルティングSE部でプリセールスエンジニアを採用する場合、書類選考ではIT業界の経験、リーダー経験が基本的な条件となります。加藤さんは正直、ギリギリのラインでした。彼の経験はアプリケーションエンジニアとしてのものであり、いわゆるネットを中心としたIT業界経験はありません。しかし、リーダー、サブリーダーの経験が長く、リーダーとしての素養が以前の会社でも認められていたことに興味を持ち、会ってみることにしたのです。

 実際に面接で会って印象的だったのは、彼の熱意。「なぜ、セキュリティ分野に転職したいのか」「なぜ、それを当社でやりたいのか」「これまでの職務経験を当社で、どう生かせるか」を彼は明確に語りました。さらに、業界未経験でも独学である程度の知識を習得していたことから、その熱意が本物だと伝わりましたし、筋の通った話の内容からは、当社の職務に欠かせない論理的思考力があると判断できたことなどが、採用の決め手になったと思います。

 実際には、応募条件をすべて満たした人が採用されるケースのほうが少ない。確かに即戦力としての採用ですが、動きのめまぐるしい業界だけに常に新しい技術をキャッチアップしなければついていけない。多少、経験・スキル不足でも、意欲とポテンシャルの高さでカバーできると考えています。



トレンドマイクロ株式会社 黒木直樹氏
トレンドマイクロ株式会社
営業統括本部
コンサルティングSEグループ 兼インテグレーショングループ
ディレクター 黒木直樹氏
ココが採用のPOINT! 加藤さんの経験・スキル
CASE2 コンピュータの世界は、扱うモノが違っても技術は転用できると信じた
工作機械メーカー・開発 → インターネット業界・SE
 1992年大学工学部卒業後、板金加工用工作機械メーカーに入社。UNIX、Windows上で板金加工ロボットを動作させるプログラム開発に携わる。充実した日々を送っていたが、インターネットの世界に魅せられ、99年12月同社に入社。データベースのリニューアル、ヤフーBBの課金システムの開発を経て、現在は社内情報システムエンジニアとしてWebベースアプリケーション開発のチームリーダー。
 飯田さんは、板金加工用工作機械メーカーで、板金を折り曲げる工作機械のプログラム開発に携わっていた。例えば金属の箱を作る場合、平たい板金を曲げて形を作る。これは町工場の熟練した技術者の手によって行われてきたが、そのノウハウをロボットに移転し自在に動かすためのプログラムを、C言語を使って開発していたのである。

 10歳までをアメリカで過ごし、英語による日常的なコミュニケーションには問題がない。その英語力を武器に、アメリカとの共同開発プロジェクトにも参加した。そんな充実した日々の中で、飯田さんの心を強くとらえたのがインターネットだった。
ヤフー株式会社 飯田健司さん(38歳)
ヤフー株式会社 
システム統括部 情報システム部
開発リーダー
飯田健司さん(38歳)
「アメリカの情報に触れたくて新聞や雑誌を読んでいましたが、どうしてもタイムラグがありました。96年、97年のインターネットの黎明期に、アメリカに住んでいるがごとく情報を得られる即時性に感動して病み付きになったんです」
と、飯田さんは語る。そのうちユーザーとして使うだけでは飽き足らなくなり、インターネット業界への転職を考えるに至ったという。転職が視野に入ったとき、まず、思い浮かべたのはヤフー。99年当時、既に業界で頭角を現しており、どうせならトップ企業でその先端技術に携わりたいと考えたからだ。

「とにかくネットに携わりたい。世界中をタイムラグなく結び付けるその技術を深く学びたい。そんな思いがいっぱいで、業界未経験であることは、それほど壁と感じませんでした」
 Webベースの開発経験はもちろんない。工作機械の業界知識も使えない。しかし、C言語をしっかり習得し、UNIX、Windows上での開発経験は、ほかの領域でも十分転用できる自信があった。
「面接で、Webに特化したスキル・経験・知識ではなく、これまで工作機械メーカーでやってきたことを中心に聞かれたことで、『もしかしたら通用するかもしれない』と思いました。あとはもう、インターネットに関する興味や『残業などしんどい環境にも耐えられます!』など、意欲を伝えることに一生懸命でしたね(笑)」

 入社が決まり、現在は社内情報システムの構築に携わるが、ニーズのヒアリングからOSの設定、コーディング、運用まで社内ネットワーク、システムにかかわるすべてを任される立場になった。
「想像通り、コンピュータの世界で共通する考え方は転用できましたが、学ばなければならない技術、知識は山のようにありました。未踏の分野を開拓するのは大変ですが、時代の先端を走っているという実感が喜びです」
検証! 採用担当者は、このキャリアを評価した
 募集職種によってさまざまな募集条件を設定していますが、すべての募集条件を満たしていなくても、C言語、C++、Java、Perlなどのうち、1つの言語をしっかり習得しており、実務が1年以上あれば採用条件を満たしている事が多いです。

 インターネットはめまぐるしい技術の進歩がありますし、当社ではそれを追いかけ、新しいサービスを次々と提供します。そのような環境では、「今まで何をしたか」だけでなく、ネットという分野が好き、ヤフーが好きで、新しいことをどんどんキャッチアップしていこうとする意欲が欠かせないのです。

 飯田さんの場合、Web開発の経験はないものの、C言語による開発経験が豊富だったこと、インターネット技術の習得に対する熱意が十分だったことが評価されました。また、顧客のニーズをプログラムに反映させてきた経験が、現場とコミュニケーションを繰り返し、新しいサービスをスピーディに構築するという当社の仕事のスタイルとも一致していたと思います。



ヤフー株式会社 斎藤由希子氏
ヤフー株式会社
人事部 人材開発
斎藤由希子氏
ココが採用のPOINT! 飯田さんの経験・スキル
Part2 経験・スキル不足を補うにはどうしたらいい?
 自らを経験・スキル不足だと感じる場合、どのように応募書類や面接でアピールすべきなのか。リクルートエイブリックで電気・機械・化学業界の人材紹介に携わる瀧田幹氏にその具体的な手法を聞いた。

「エンジニアの場合、企業が求める経験・スキルを満たしていなければ転職は難しいのが現実です。とはいえ、条件を満たしているかどうかはとらえ方によって大きく変わるのです」と、瀧田氏は語る。例えば、精密機械メーカーのデジタルカメラの開発エンジニアを募集している場合、「経験3年以上」とあれば、多くの人が「デジタルカメラの開発経験がなければダメか」と諦めてしまう。

「ただ、実際には精密機械の開発経験があったり、デジタルカメラと同じ金属加工製品を扱っていたりなど、多少分野が違っても採用される可能性は十分あるのです」
 企業が同領域の経験者を募集するのは、領域が近いほうが技術をキャッチアップするのに容易だからという理由が大きい。つまり、まったく同じモノを扱った経験がなくても、どこかに共通点を見出し、それを応募書類や面接で表現すれば、「経験者」と見られる場合もあるということになる。
企業が見ている応募条件との共通点
 また、前で紹介したケースのように、企業はリーダー経験や意欲、別の領域でのキャリアなど、応募者が予想していなかった面を高く評価することも多い。応募条件に満たないからと最初からあきらめてしまうのはもったいない。これまでに経験したことや、スキルをもう一度整理してみると、企業にアピールできる共通点が、いくつか出てくるのではないだろうか。景況復活とともにエンジニアの採用が活発化している今こそ、転職でキャリアアップを目指すチャンスだといえるだろう。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
今回お話を伺った加藤さんと飯田さん。別分野とはいえ、二人ともそれまでのスキル・経験はそれなりに高いもの。それでもあえてやりたい仕事への熱い情熱で、異業界への転職を見事に成功させていました。もしかしたら、転職に一番必要なことって「熱意」だけなのかも。そんなこともちらっと感じさせるくらい「転職でやりたいこと」を崩さなかったお二人に拍手です!

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