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今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.22 エンジニアのうつ病と職場のメンタルヘルス対策
成果主義の人事評価、人手不足による業務増大、技術進化のスピードなど、職場のストレス要因は増える一方。心の病を発症して、戦列を離れるケースも少なくない。福利厚生の一環としての企業のメンタルヘルス対策を考える。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/Onsel BEHICH)作成日:04.08.25
増加するうつ病、大企業のほとんどが対策を実施しているが……
   働く人の間でうつ病が急増している。一説によれば、うつ病にかかる割合は5人に1人。うつ病は決して珍しい病ではなく、誰もがかかりうるありふれた心の病気になってきた。こうしたうつ病や自律神経失調症、心身症、さらに統合失調症などの精神疾患を含め、総じて「メンタルヘルス不全」と呼ぶ。

 心の病が高じると、仕事のパフォーマンスが低下し、場合によっては休職・退職に追い込まれることもある。コンピュータを扱うエンジニアの間では80年代から、テクノ不安症やテクノ依存症などのテクノストレスの存在が指摘されており、これらが引き金となってうつ病を発症するケースもまれではない。さらに、成果主義の導入などにより、技術力に加え、結果重視の傾向が高まっていることなども、その増加の一因であるといえそうだ。

 メンタルヘルス不全の増加傾向に危機感を感じ、その対策に乗り出す企業は年々増えている。まじめで仕事熱心、そして几帳面な努力家ほどうつ病になるともいわれ、こうした有能な社員のメンタルヘルスを守ることは、生産性向上という観点からも重要な課題になってきているからだ。
 労務行政研究所が2003年に行った調査によれば、何らかの形でメンタルヘルス対策を実施している企業は65%に上る。ただ、企業規模間の格差は大きく、従業員3000人以上の大企業では実施率94%なのに、1000人未満の企業では50%と大幅にダウンする。(データ1)

データ1 企業規模で差が出るメンタルヘルス実施状況
データ1
出典:労務行政研究所2003年「メンタルヘルス対策の実施状況調査」より
 ちなみに、このほどTech総研がエンジニア741人に聞いたアンケートでも、「対策が行われている」と回答したエンジニアは35%、「わからない」が11%いた。たとえ企業が対策を実施していても、それが十分エンジニアの側に伝わっていないということもありうるのではないだろうか。(データ2)

 その一方で、メンタルヘルス対策へのニーズはきわめて高いものがある。「かなり必要性が高いと思う」63%、「自分には関係ないが必要だと思う」26%を合わせると9割のエンジニアがその必要性を痛感しているのだ。(データ3)
 
データ2 職場でメンタルヘルスは行われている?

データ3 会社で行うメンタルヘルスは必要?
データ3
 
SOS発信に気づく職場の取り組みが不可欠
「休職者に占めるメンタルヘルス不全の割合はこの2〜3年急激に増えています。それに対応して、上場企業の7割が対策を講じているという調査もありますが、年に一度の講習会や、産業医を置いているだけで十分と考えている会社もある。制度はあるが、運用がうまくいっていない企業が大半だと見ています」というのは、カウンセリングなどメンタルヘルスケアをアウトソーシングで行う(株)ピースマインドの荻原国啓社長だ。

 発症した人を個別に治療する事後対策以上に、発症を未然に防ぐ予防対策が有効。そのためには、メンタルヘルスを経営の重要課題と認識する経営トップ、部下のSOS発信を見過ごさない現場のマネジャー層、そして一人ひとりのエンジニアのセルフケアに至る全社的な取り組みが必要になる。

 しかしながら、日本では「心の病気は本人の弱さや甘えの問題で、個人の責任。職場や組織は関係ない」とする誤解や偏見が根強く、「なかでも経営トップがなかなか対策の重要性を理解してくれない」(荻原氏)という問題が横たわる。

 そんな中でも、先進的な取り組みを進める企業は徐々に増えている。大手商社系のIT企業では経営トップがメンタルヘルスを重要課題と位置づけ、全社員へのメールで定期的にメンタルヘルス診断を促すほか、管理・監督者層の研修も行い、会社に常駐する産業医との連携も強化している。ピースマインドも同社の社員向けにカウンセリング・プログラムを提供しており、電話やインターネットで誰もが自由に相談できる体制が整っているという。(図表1)

図表1  4つのケアで職場のメンタルヘルス対策に取り組む
図表1
出典:ピースマインド提供資料よりTech総研が作成
「こうしたサービスの利用率を高めることで、症状を早期に発見することができるようになります」と荻原氏。会社のメンタルヘルス対策では、このように全社的な啓発活動、早期発見体制の整備のほかにも、プライバシーの保護や休職後の職場復帰など、多様な課題がある。だが、まずは会社にメンタルヘルス対策があるかどうかを調べてみること。職場のメンタルヘルスは決して人ごとではなく、「エンジニアの誰もが自分自身をまずケアする」という認識が、すべての出発点になるだろう。
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