「副業」年間収入平均は47万円！エンジニア副業事情

　年功制度が廃止され右肩上がりが期待できなくなってきた昨今、勤務先の給与だけでは厳しいと感じている人も多いのでは？　そこで浮かぶのが「副業」による収入アップ。高い専門技術をもつエンジニアにとって、副業という選択肢はけっして非現実な話ではない。その実態を探ってみよう。

（取材・文／広重隆樹　総研スタッフ／宮みゆき）　作成日：04.02.11

今月のデータが語る　エンジニア給与知っ得WAVE！ Vol.9　発明・特許に関する報酬はどう変わる？

副業を認める企業は少ないが……

データ１年収を2割上げるために必要なことは

技術力を高める	23.3%
管理能力を向上させる	22.3%
副業をする	14.5%
上司や評価者に好印象を持たれる	7.5%
語学力を磨く	7%

出典：Ｔｅｃｈ総研「エンジニア白書」2004年2月発行?

データ１あなたの会社は「副業ＯＫ？」
データ1　会社に報奨制度規定はあるか？

　「あなたの年収を２割上げるためにはどのようなことが一番必要だと思いますか？」
Ｔｅｃｈ総研発行の『エンジニア白書』（2004年2月発行）によれば、上記の質問の回答の３位に「副業をする」とある。

　副業とはいっても、それをおおっぴらに認めている企業はもちろん少ない。Ｔｅｃｈ総研が2003年12月に行った「副業に関する」アンケートによれば、「副業が認められている」と答えたエンジニアは500人のうちの6％。「暗黙の了解で許されている」を含めても21％程度だ。大企業になればなるほどこの“規制”は厳しく、企業規模が小さくなればなるほど緩くなるという傾向がある。
（データ１参照）

　暗黙の了解といっても、会社の設備を使って副業をしていることがバレると社内で問題になる。また労働協約など副業禁止の明文規定に反する場合は、ときにはそれが正当な解雇理由になることもあることには注意したい。

ＰＣ、ＷｅｂなどＩＴ知識をフル活用

　さて、エンジニアの副業というと、真っ先にどんな内容が思い浮かぶだろうか。そこで得る収入はどのぐらいのものだろうか。今回のアンケートでは、実際に過去、現在にわたって副業をしたことがあるエンジニアは13％程度。想像していたよりは少ない数値だ。（データ２参照）

　データ２「副業の経験はありますか？」


・	個人宅のＰＣセットアップサービスでトータル10万円程度（ＳＥ／36歳）
・	インターネット設定の出張サポートで月に1万円程度（保守／31歳）
・	着メロ作成で毎月１万円（研究・特許／34歳）
・	技術専門誌の執筆３万円（ＮＥ／35歳）
・	海外の雑誌記事の翻訳で月に５万円（電気・電子／29歳）
・	CADを使った設計の仕事で10日間45万円（機械設計／36歳）

本業での技術をそのままそっくり副業にも活かすという人もいるが、どちらかというとＰＣやＷｅｂといったＩＴスキル、語学力を活かした翻訳や原稿執筆というように、本業を支えるベーシックな知識や技術を副業にも応用、という姿勢が目立つ。

　この点、ＩＴ系のエンジニアは他の職業に比べて有利といえるかもしれない。行きつけの飲み屋で「インターネットやＷｅｂの仕事をしている」というと、「じゃ、うちのホームページ作ってくれないかな」とマスターから相談された経験のある人もいるのでは？　ＩＴエンジニアであれば、自宅のＰＣやインターネット環境を使ってそこそこの仕事ができる。設備投資が少ない上、空いた時間を使って、しかも個人でできるというあたりも、有利な条件の一つといえる。

サタデー肉体労働派や株式投資家も

　本職のプログラマが、片手間でオンラインソフトをつくり、それがヒットして、副収入どころか会社を辞めて起業するきっかけになったケースも実際にある。趣味で運用しているＷｅｂサイトがそこそこ人気で、バナー広告の収益で「子供のミルク代ぐらいは稼いでいる」という人も実際にいるだろう。

パソコン雑誌や単行本は、現在でも、本業を別にもつ副業ライターによって支えられているといっても言いすぎではない。１ページ分書いて１万円も出ればいいほうで、この分野の雑誌の原稿料はけっして高いものではないが、それでも毎月定期的に仕事があれば、勘定に入れられる副収入にはなる。これらは、いかにもＩＴ時代ならではの副業といえるかもしれない。

　もちろん、本業とはまったく関係のない副業もある。「テニスのコーチで月１万円」「土曜日に建築作業現場で働いて日給１万3000円」といったものだ。こうしたガテン系（肉体労働）の副業があるかと思えば、なかには「株式の売買で年間100万円ぐらいの利益を上げています。もちろん毎年確定申告しています」というホーム・トレーダーの“猛者”も、回答者のなかにはいた。

年間の「副業」収入平均はなんと平均４７万円！

　今回の調査での副業収入額の年間平均は約47万8000円。最頻値データは10万円。印象としてはさほど多い金額とはいえない。

　しかし、金額の多寡を問わず、副業を通して新たな知識を得たり、会社の仕事だけでは知り合えない異なる分野の人脈を構築するきっかけを生むこともある。ときには自分の隠された能力に気づくという効用もある。副業による脳内活性化が、本業でのストレス解消や、本業でぶつかっているトラブル解決のヒントにつながったりすれば、これは思わぬ副次的効果ともいえる。

　時間や組織の壁の中で働くだけが人生ではないし、せっかくの知識や技術を眠らせておくのはもったいない。雇用先とのトラブルリスクをかんがみることは必要だが、副業による余暇の有効活用は、エンジニアに限らず現代サラリーマンにとって、新しいライフスタイルの一つになるのではないだろうか。