暗号技術／セキュリティー信仰が暗号のプロを求める


	一度知ったらやめられない技術職の醍醐味。その代表といえば、研究開発＝R&Dだ。研究開発はあらゆるものが対象。だからこそ、「やりたいモノづくり」の求人情報は、なかなか網羅しきれない。ここでは、次世代を担う新技術をキーワードに、最新の業界事情と採用動向を解析する。R&Dはオモシロイ！（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:03.10.22

解析テーマ

暗号技術

激化するセキュリティーへの信仰が「暗号のプロ」を求める

　電子暗号や認証技術の、社会的ニーズが急拡大している。従来の技術では、メールの盗み読み防止や個人データ漏洩防止などの暗号化通信、携帯電話の暗号化技術などがある。また新技術では、普及が進むIP電話の通話暗号化、オンライン配信される音楽ソフトなどの、不正コピー防止用の電子透かしなどがあり、暗号技術の利用範囲は確実に広がっている。

　一例だが、DRM（デジタル著作権管理）技術のひとつ、電子透かしは、音楽やビデオなどの販売を店頭からオンライン配信へと切り替える過渡期の、コア技術として注目されている。
　エコー拡散、スペクトラム拡散などの手法で元データとコピーライト情報を混在させるというもので、コピープロテクト解除を困難にする。たかがコピーガードではない。電子透かしはアメリカでも有望なベンチャー産業のひとつとされ、日本でも既に開発競争が繰り広げられているのだ。

　大手シンクタンクの調査によると、セキュリティー関連の国内市場規模は、2006年にツール・機器分野で約3400億円、サービス分野で約9700億円。他の分野を含めれば、市場合計で1兆5000億円は下らないだろう。非製造業としては極めて魅力的な市場だけに、期待度はかなり高い。

　リクナビＮＥＸＴで暗号をキーワードに検索すると9件がヒットし、電子透かしで1件、セキュリティー・アルゴリズムで3件がヒットする（9月18日現在）。国内大手電機メーカー、およびその系列のソフトハウス、セキュリティー専業企業が主な顔ぶれだ。

　暗号化技術開発で要求されるスキルは幅広い。暗号化と復元、カオス理論など、暗号化理論を数理的に理解していることが理想的だが、日本ではその分野の人材が少ないため、「情報処理技術、セキュリティー技術などの実務経験があれば可」としている企業が多い。またC++、SE経験、ネットワーク技術が要求されるケースも多い。

　暗号化技術はアメリカの軍事技術と結びついているため、他のセキュリティー分野に比べると、非米国系企業にとっては敷居の高い分野だった。だが、最近は電子透かしなどの新技術や、暗号化に関する新アルゴリズムの開発が盛んであり、日本企業の求人が急伸している。

　特に、多くの大手電機メーカーの研究所では、暗号化の研究が行われており、エンジニアは先端の情報技術を習得ができる。暗号化技術普及の「夜明け前」だからこそ、プロフェッショナルへのチャンスが広がっている。