有機EL／家電、電子機器メーカーが開発競争を展開中


	一度知ったらやめられない技術職の醍醐味。その代表といえば、研究開発＝R&Dだ。研究開発はあらゆるものが対象。だからこそ、「やりたいモノづくり」の求人情報は、なかなか網羅しきれない。ここでは、次世代を担う新技術をキーワードに、最新の業界事情と採用動向を解析する。R&Dはオモシロイ！（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:03.10.15

解析テーマ

有機EL

技術的課題は多いが、それを解決するからエンジニアなのだ！

　次世代ディスプレイの有望技術といわれる有機EL。経済産業省は2010年に2.5兆円市場に成長するとの需要予測を発表しているが、有機ELパネル以外の周辺製品も含めると、市場規模はかなり膨らむ。この未来の有望市場のシェア確保を目指して、国内外の家電、電子機器メーカーなどが開発競争を展開中である。

　有機ELは、通電すると発光する性質を持つプラスチック類を発光素子として利用し、画像表示させるというもの。PCなどに用いられている既存の液晶に比べ、1.自発光式であるため画面が明るい、2.発光素子が極薄で深度がないため液晶のような側方からの見づらさがない、3.色彩表現力に優れて画像も鮮明――といった特徴を持つ。

　一方、既存の液晶に比べて寿命が短い、コストが高いという欠点もある。有機体の新素材開発、発光素子への通電方式の改良など、本格的な量産化に向けた技術的課題も少なくない。これらの課題を克服できれば、有機ELは液晶の代替としてばかりでなく、巨大市場であるテレビ向けディスプレイをも対象とする可能性も大だ。有機ELの今後の技術動向には要注目である。

　リクナビＮＥＸＴで有機ELを検索すると、7件がヒットする(9月18日現在)。国内カーナビ・オーディオメーカー、海外ディスプレイメーカー、回路設計ベンダーなどのほか、自発光式メーターが人気の関係で自動車用メーターを手がける部品メーカーも登場する。

　今後は、ディスプレイメーカー、弱電メーカー、自動車部品メーカーなどでの採用活発化が予想される。これらには国内企業だけでなく、韓国、台湾、欧米など、日本にサテライトラボを設けている世界のIT企業も含まれるため、求人情報は間断なく収集しておきたい。

　有機EL開発で重要視されるスキルは、物性化学、応用化学、有機化学などの新素材開発を狙ったものや、回路設計（アナログ、デジタル）、電気、ソフトウェアなどと幅広い。
　また、有機EL素子は酸素に弱いため、空気に接触させない設計や生産といった、具体的な製品作りを見すえた実装技術、生産技術の面でも人材ニーズは大きいだろう。

　既にデジタルカメラのディスプレイ、パチスロ、携帯電話などに有機ELが使用され、市場拡大が確実視されている。業界への参入を考えるなら、乗り遅れることは避けたい。