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業界の成長を促す先端技術分野 変貌する“生産技術”の現場 業界の成長を促す先端技術分野 変貌する“生産技術”の現場
業界の成長を促す先端技術分野 変貌する“生産技術”の現場
業界の成長を促す先端技術分野 変貌する“生産技術”の現場
環境対応、情報頭脳化で加速する好調な自動車業界。エンジニア採用においても質、量ともに高い水準で推移している。その中でも大きな採用ニーズがあるのが「生産技術者」。今回は、変革する生産技術とそこで求められる人材の動向を探った。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/関 洋子) 作成日:03.07.16
Part1 拠点の集中・分散、モジュール化。変わる生産現場
好調!自動車産業は設備投資、研究開発費も拡大傾向
 自動車産業が元気だ。その理由は一つや二つではない。国内市場を見れば各社とも戦略商品を着実にヒットさせ、北米市場に目を移せば米国ビッグスリーを抑えて日系メーカーが現地生産を増やしている。期待の中国市場開拓も本格化し始めた。

 このように自動車産業が今の日本の基幹産業として存在感を強めていることは、全産業と対比させた設備投資の年度別推移グラフで明らかである(図1)。出荷額ベースで40兆円規模の巨大産業ゆえ、数ポイントの差でもインパクトは大きい。主要3社の2004年3月期予測を見ても、各社そろって設備投資額・研究開発費双方を増額させる方向で動いている(図2)。製造業全体の中では際立った拡大意欲だ。
図1 自動車産業の設備投資動向
   (対前年度伸び率推移)

図1 自動車産業の設備投資動向
出典:経済産業省設備投資調査(2002年6月)
図2 主な自動車メーカーにおける今年度の設備投資・研究開発費
03年3月期実績 04年3月期予測
トヨタ自動車 設備投資 9,935億円 9.100億円
研究開発費 6,716億円 6,900億円
日産自動車 設備投資 3,779億円 4,200億円
研究開発費 3,003億円 3,600億円
本田技研工業 設備投資 3,169億円 3,200億円
研究開発費 4,368億円 4,650億円

※数字は連結決算
市場活性化の要因はクルマ作り全体の変貌。だから強まる「生産技術」人材ニーズ
 自動車産業の業績が好調である理由は市場が活況というだけではない。ここ数年で自動車製造を取り巻く環境は激変した。世界規模で起こっている再編劇により、苦境に陥っていた多くの完成車メーカー・部品メーカーが恩恵を受け、文字どおりのリストラクチャリングを行い、業界全般として経営・生産の効率が世界水準に達した(復活したというべきであろうか)のだ。

 CAEや3D-CADの本格導入などもそうした流れの一つ。ユーザーニーズを敏感にとらえた製品を、低コストかつ短期サイクルで次々に送り出せるフレキシブルな生産体制の確立が、市場活性化を喚起するとともに高い収益体質を実現したのである。クルマづくりは経営・現場ともにドラスティックに変貌したのである。

 変化したのは完成車メーカーだけではない。電装品や補機類、タイヤ・ホイール、内外装材、各種パーツのメーカーも、品質向上とコストカットの同時要求を技術と企業努力で乗り越えてきた。単品で納入していた部品メーカーが、部品群をユニット化して付加価値を付けて納入する動きなども見られる。昨今の設備投資の大半は単純な規模拡大ではなく、次世代を担う生産体制の確立に費やされているのである。この流れを受けて、製造手法の開発や工程設計の現場では新たな生産体制を組み立て、定着させていく人材が強く求められている。
ワールドワイドで進む生産拠点強化
発表月日 企業名 発表内容
3月28日
トヨタ自動車
米国テネシー州にアルミニウム製エンジンブロックの新工場を設立。生産開始は2005年を予定。
4月1日
デンソー
広州汽車集団零部件有限公司と合弁で、中国・広州にカーエアコン生産の合弁会社を設立。
4月8日
トヨタ自動車、
豊田自動織機
ポーランドでディーゼル・エンジン製造工場の建設を開始。2005年に生産開始予定。
4月22日
アラコ、高島屋日発工業、豊田紡織
中国天津市に長春一汽四環汽車股 分有限公司と合弁で自動車内外装部品生産会社を設立。
4月23日
日野自動車
タイの製造・販売体制の整備、強化を目的とした事業体の再編。
5月29日
本田技研工業
中国・広州市に計画中の輸出用乗用車新工場「本田汽車(中国)有限公司」、2004年後半の工場稼働開始に向け本格的な準備開始。
6月9日
日産自動車
中国・東風汽車公司と提携し、「東風汽車有限公司」を設立。2003年7月1日から営業を開始する。
Part2 生かせるスキルと活躍フィールド
クルマづくりには最も高度な生産技術が求められる
 自動車は部品点数で換算すると数千から1万個にも上る製品である。部品製造から組み立て作業を経て完成車に至るまではプレス、溶接、切削・掘削、鋳造・鍛造、塑性加工、熱処理、塗装など、多彩な製造工程を何段階も通ることになる。そして、これらすべての工程で、次々に新たな生産技術が取り入れられている。最終的な目的は精度向上や不良率の低下、コストダウン、軽量化などさまざまだ。こうした一つの工程ごとの改善に加え、ITによって工程全体をトータルにフレキシブル化する対策も進んでいる。CAEや3次元CADの導入がそれだ。

佐藤 淳氏
株式会社クロップス・クリエイト
エグゼクティブサーチ事業部
コンサルタント 佐藤 淳氏
 また、自動車の生産技術は別の理由から極めて高度であると、自動車業界の人材需要動向に詳しいクロップス・クリエイトの佐藤氏はこう語る。

「自動車は人を乗せて高速移動する製品ゆえ、保安のための高度な品質水準が求められます。加えて多彩なバリエーションをJIT(Just in Time)で組み上げていくための供給・製造体制を構築しなければなりません。事実、某メーカーでは数個のラインでその倍の種類の車種を製造しています。いわば、厳しい制約の中で高い品質を実現していく生産技術が要求されるのです。一方でCADの誤差を修正するような職人的なスキルも求められます。そして、このような高度な要件をこなしていけるエンジニアなら、どのメーカーもほしがっています」
厳しい採用ハードルの突破には「こんな手法を試したい」という提案力が不可欠!
 自動車業界で生産技術を担うエンジニアが足りないが、そこに入り込むのは簡単なことではないと、佐藤氏は続ける。
「ニーズが高いのは20代〜30代前半。30代後半になると、ニーズにピンポイントのスキルを持っていなければ厳しいでしょうね。90年代に採用を抑えてきたメーカー各社は、この年齢層が薄いからです。そして自動車業界未経験者にはハードルは高い。自動車という商品ゆえの厳しい品質基準を経験していなければ、持っている技術も発揮できないと見られているからです」

 一部、特殊なキャリアが高い市場価値を見せている。生産の海外移転を経験した生産技術エンジニアだ。完成車メーカーは中国における現地生産を積極的に進めている。そこで現地生産の立ち上げで培ったスキルが求められているのである。

 このように自動車業界へ転身する前に立ちはだかるハードルは決して低いものではない。しかし、異業種からの転身可能性について佐藤氏は次のように語ってくれた。
「生産技術を担うエンジニアは3K的な要素もある大変な仕事です。でも新しい製法の開発や最適な工程設計を行うことが自動車の進化を導くのです。技能と技術を持った、まぎれもなくエンジニアといえる仕事です。ほかの業界における生産技術の経験を基に、積極的に開発などの上流工程に意見しつつ、新しい製法を提案したりするような意欲の高い方なら、採用の可能性が一気に高まります」
自動車生産技術で求められるエンジニア

かかわる工程

特に求められる
スキル

異業種からの
転身可能性

転身可能な異業種エンジニアは
こんな人
1
工程設計、
工法開発
生産ラインの設計、
新工法の開発、
生産準備技術
半導体、大型機械製品など複雑で長大な工業製品の工程設計・工法開発経験者は歓迎。海外への生産拠点移管経験も市場価値が高い。
2
データ統合生産システム構築
CAD/CAM/CAEと連携したデジタルファクトリーの立ち上げ
製造業全般におけるデジタルファクトリー構築のスキルは市場価値が高い。CAEアプリケーションの知識は高く評価される。
3
鋳造・鍛造
コンマミリ単位の高精度が要求される製品の鋳造・鍛造技術
エンジンやトランスミッション、ホイールの製造に不可欠な技術。特にエンジンの場合は熱膨張を想定した高精度設計のため、気温や湿度、気圧まで考慮に入れた製造スキルが必要。マグネシウム・アルミニウム製品の経験は優遇。
4
プレス
ハイテンション鋼(高張力鋼)のプレス技術
加工が難しく割れやすいハイテンション綱プレスの経験があれば歓迎される。
5
溶接
自動化技術
自動化技術
高度な溶接ノウハウに加えて、産業ロボットによる溶接ライン構築経験が求められる。アルミ溶接技術も評価される。
6
切削・掘削
高精度加工技術
バルブ回りやシリンダー加工の精度はミクロンオーダー。精密製品の加工技術は優遇される。
7
塗装
自動化技術
耐候性の高い塗装技術および防錆技術知識のある人。
8
熱処理(焼き入れ)
エンジン・トランスミッション、回転・駆動部品などの熱処理技術
タービンなど、高度な耐久性と信頼性を確保しなければならない製品に携わっていた人。
9
塑性加工
高精度加工技術
部品製造で塑性加工にかかわっていた人。

※以上は一例。高精度・高信頼性、軽量化技術が求められる自動車製造だけに、
 その技術レベルは最高クラスが期待される。それゆえ航空宇宙分野からの転身は優遇される。
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