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大手勝ち組企業エンジニア覆面座談会 「専門性なし」30代は景気回復期も危ない? 大手勝ち組企業エンジニア覆面座談会 「専門性なし」30代は景気回復期も危ない?
大手勝ち組企業エンジニア覆面座談会 「専門性なし」30代は景気回復期も危ない?
大手勝ち組企業エンジニア覆面座談会 「専門性なし」30代は景気回復期も危ない?
30代のリストラがうわさされる今、景気回復期でも「これといった強みがない=専門性なし」状態のエンジニアは要注意!? 大手勝ち組企業エンジニアとの座談会から、「専門性なし」の原因、脱出のヒントを考えてみました。
(取材・文/木下ミカエル)作成日:04.1.7
序章 大手30代エンジニアたちの戸惑い

 今、大手企業では、長年会社にいても「これといった強み、専門性」が身につかないことに悩む30代のエンジニアが多いようです。

 企業、そして市場がエンジニアに求める専門性は、ここ数年で大きく変わりました。今や「専門技術スキル」「業務・業界知識」だけでは専門性があるとはみなされず(表1)、それがまた彼らの「戸惑い」を広げています。

 一方、ちまたでは、30代のリストラがささやかれ始めています。景気が回復しても、長年会社にいながら専門性が身についていない人=「専門性なしエンジニア」が標的にされるという指摘です。
 実際のところはどうなのでしょうか? 「勝ち組」と評される大手メーカーA社、B社のエンジニア2人に語ってもらいました。
表1:エンジニアに求められる専門性

今、エンジニアに求められる「専門性」は多岐にわたっている
● 専門技術スキル
● 業務・業界知識
● コミュニケーション力
● 業務管理能力
● 問題発見・解決能力
● リーダーシップ
● 戦略立案能力
● 自己啓発・外部環境整備能力
● 計画・組織能力



Part1 国内大手・30代エンジニア リストラの実態は?
「大量採用で玉石混交」バブル入社世代は危ないか

Wさん(38歳)

1990年入社。大手メーカーA社、係長。SEとしてネットワークシステムの提案に携わる。
Tさん(35歳)

1992年入社。大手メーカーB社、主任。工作機器に搭載されるソフトウェア開発を担当。

――今、企業では40代、50代のリストラがひと段落して、30代がターゲットにされていると耳にします。不本意な異動、出向、転籍も含め、みなさんの会社ではどうですか。

Tさん:今のところ、表立ったリストラはないですね。
でも、僕らバブル入社世代は、競争が厳しいんですよ。
 僕が入社した92年は、理系だけで1000人採用されました。上の世代は、エスカレーター式で管理職になれたけれど、大量採用された僕たちはそうはいかない。

 能力的にみても玉石混交だと思うし、バブル後に入社してきた下の世代は優秀ですからね。上と下(の世代)をにらみながら、危機感を感じることもあります。
ほかへの就職斡旋=体のいいリストラ?

Wさん:これは30代に限ったことではありませんが、ある事業部ごと他企業と合併して別会社になり、転籍という話はあります。それが不本意で、リストラととる人もいたかもしれません。

 身近なケースでは、部内で見るからに仕事のない人がいて、「何しに(会社に)来ているんだかわからない」とうわさになっていました。
 結果的に彼は転職しましたが、会社側はひそかに彼を就職セミナーに行かせていたようです。

――その方には何か問題があったのでしょうか。 30代エンジニアの中でも「これといった売り、強みを打ち出せない=専門性なし」状態の人がリストラ対象になるとうわさされているようですが。

Wさん:彼はSEでしたが、コミュニケーション能力に欠けていたと聞いています。それで「ほかの部署では引き取り手がない」状態だったようです。
Part2 なぜ、専門性が身につかないのか
今求められる「専門性」とは何か

――ここで、今のエンジニアに求められる「専門性」とは何か改めて考えてみたいのですが。

Wさん:僕の場合でいえば、市場のニーズ、自社の技術力、価格、投入するタイミングなど全体を見通せる力、さらにユーザーに新しいものを「具体的に」提案できる力ですね。

Tさん:僕も同感ですね。求められているのは、今の状況で「何が欠けているのか」「何が必要なのか」を具体的に言えるか。つまり問題発見・解決能力でしょうか。そのうえで各メンバーを引っ張ることができるリーダーシップ。
決められない、決まらない―「what」がない組織

――今、エンジニアに求められる「専門性」は、以前のような「専門技術スキル」「業務知識」に限らず多岐にわたってきているようですね。企業内でそれらをはぐくむ土壌はあるのでしょうか?

Wさん:難しいですね。過去の成功体験に縛られていますから。これまでうちの会社では「顧客に言われたとおりに製品をつくる」ことしかしてこなかった。上の世代はそれでうまくいっていたんです。ところが、2、3年前からそれでは通用しなくなってきた。

 今のユーザーは、既にあるものは組み合わせて使い、それらを統合したうえでの付加価値、「何か」を求めてくる。その「何か」はこちらで提案する必要があるわけですが、上の世代はどうしていいかわからず戸惑っています。

 経営側も「とにかく売れるものをつくれ」「新しいことをしろ」と、いろいろ言うけれど「何を」がない。

Tさん:「決定できる権利」を持っている人たち、10歳くらい上の世代に限って決めないし、決められないですよね。「気合だ、根性だ」の精神論ばかりで、打ち手を具体的に出せない。「じゃあこうしましょう」と言うと「前例がないから」と反対される。

 例えば、僕が携わっている組み込みソフトでも新しいものが必要なのに、結局これまでのものを踏襲する形になってしまう。それでずるずると10年間「塩漬け」になっていた技術もあります。
表2:専門性を発揮するための姿勢

これまで

これから
8割は、ユーザーから言われたことを言われたとおりにこなす
8割は、今までにないものを提案する
視野:どちらかといえば狭い
視野:広い
変化を求められながら、「冒険」が許されない

――今、大手企業は変革期を迎え、これまでの成功体験が通用しない「戸惑い」を感じているようですね。一方でご自身も、過去の枠組みに縛られているというジレンマはありませんか。

Wさん:正直なところ、技術的な面で画期的なブレイクスルーはなかなか出ませんね。他社とも小さな部分での争いになってきていると思います。

 細かいレベルでは次の手を出せても、抜本的な変化にはならない。今あるものだけから新しいものを生み出すのは、そんなに生易しくはない。悩ましいです。

Tさん:年に何度も製品を出しながら、技術的にはずるずると改善レベルで終わってしまう。この流れを脱却したいとは思っています。
 ただ、抜本的な改革には時間も必要なのに、「製品を出すのを1回休みにしてもいいからちゃんとしたものをつくろう」と言う人はいない。

Wさん:今は失敗が許されないですよね。景況のせいか、企業もゆとりがない。会社は「新しいことをしろ」と言いながら「試しにやってみろ」とは言わない。

Tさん:上の世代も自分の身を守るのに必死ですよ。僕たちがお手本にしたいと思えるような「決断力のある人」「責任回避しない人」はかなり少ない。

Wさん:そう。モデルがいない。それも問題ですね。
表3:「専門性なし」を生む背景(組織側の原因)
過去の成功体験から抜け出せない、
変化を求めるが、冒険させない
問題を根本的に解決するための時間、
ゆとりがない
30代エンジニアのモデルになるような、
リーダーシップを発揮できる人材がいない
Part3 「専門性なし」はどう克服するか?
「専門性あり」「なし」の違いとは

――企業側が、エンジニアにより高い専門性を求めながら、それをはぐくむ環境を整えていない現状が浮き彫りになってきました。今度は個人側の問題についても考えてみたいのですが、「専門性のある人」「ない人」は根本的に何が違うと思いますか。

Wさん:繰り返しになりますが、ただ悩んで逡巡しているだけか、具体的な行動に移れるか、の違いだと思います。

 会議の場合は、横やりを入れるだけか、次に進むためのwhatが言えるか、の違い。プロジェクト要員が足りないときは、「とにかく人が足りない」と言うか、「“どんな人”が“何人”足りない」と言えるか、という違い。

Tさん:僕らの世代でも「とにかく人が足りない」と言うだけの人、多いですね。そういう人に限って「有能な」部下がほしいって言う。

Wさん:でも「どんな」がない。ただ個人名だけ出して終わったりする(苦笑)。
表4:専門性あり、なしの違い

専門性なし

専門性あり
会議
「ダメ出し」だけ
会議
次に進むための具体案が出せる
人が足りないとき
「誰でもいいからほしい」
「有能な人がほしい」
人が足りないとき
「どんな」人材が「何人」ほしいか
いえる
部署を転々と……は損か得か

――大手企業のエンジニアで「部署を転々としていて、専門性が身につかない」と嘆く声を耳にすることがありますが、どう思いますか。

Tさん:転々とすることで、かえって広い視野が身につくと思うんだけど。

Wさん:「身につかない」と言うのは、新しい部署に行ったときに必死にやらなかったのでは?異動ってゼロ出発なわけでしょう。異動後、はじめの半年間は勝負だと思う。

 たとえ、最初に全体の2割しかわかっていなくても、死にもの狂いでやると周囲は信頼してくれて、次の仕事がくる。それが次第に実力に結びついていく。

Tさん:すぐにはわからなくてもプログラムのソースコードを全部見ておくとか、一つひとつのプロセスを貪欲にこなすがむしゃらさは必要でしょう。枠をつくってしまうと、かえって自分の居場所をなくしてしまうんじゃないかな。
あなたはリストラされると思いますか?

――最後に、単刀直入におうかがいします。ご自身は今後リストラされる可能性があると思いますか?

Wさん:今は採算性が悪い事業部門にいるので、今の事業部がバラバラになる可能性はあると思います。でも、バラバラになったときはなったとき。次の部署で自分がどんな仕事をすることになるか楽しみですよ。

Tさん:自分の事業部も波があるので、万が一ということはあるかもしれない。あのソニーですらリストラですからね。でも、おびえてはいませんね。

Wさん:――そうですね。

Tさん:……でも、いざとなったら「家、買ったのにどうしよう!」と言っちゃうかもしれないな(苦笑)。
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木下ミカエル(総研スタッフ)からのメッセージ
「“専門性なし”の人には具体性がない」。お2人の話を聞きながら、実は耳が痛かったです。それは「……で、キノミキ(←総研内でのあだな)の案は?」と会議でよく突っ込まれているからです。具体案、それも斬新なものを出すって難しい。みなさんの場合はどうですか? ご意見お待ちしてます。

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