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ストーカー三浦のエンジニア生息圏ウオッチング〜第3回宇都宮の巻〜
栃木県宇都宮市。日光東照宮の影響か、近代化、工業化は明治初期から。現在、宇都宮には3つの巨大工業団地があり、全国屈指の工業生産量、日本の一大生産拠点として高付加価値を創出している。歴史のある「ものづくりの街」の今を訪ねた。
(取材・文・撮影/ピストン三浦 総研スタッフ/関洋子) 作成日:03.10.22

THANKS! 「宇都宮は餃子の町としての認識ではもったいない。大規模なエンジニア生息圏である」──。それを証明すべく、今回は宇都宮のエンジニア生息圏度をウオッチングしてみました。
9月18日(木)晴れ
今日は宇都宮を訪ねた。まずはエンジニアの集積ポイント清原工業団地へ向かう

 東京を早朝に出発して、約2時間。第2回目で予告したとおり、宇都宮にやってきた。宇都宮には「清原工業団地」「平出工業団地」「瑞穂野工業団地」という3つの大規模工業団地がある。そしてもうひとつ、東谷町・中島地区に現在、工業団地の造成を行っている。またお隣町の芳賀町には芳賀工業団地。

 まず手始めに、その中でも最大規模(面積は387.6ヘクタール、東京ドームの83倍、ディズニーランドの4.6倍の広さ)の清原工業団地を目指すことにした。
■ハイテク企業が集積する宇都宮工業団地分布図


■宇都宮市

東京から約100km。江戸時代にすでに小江戸と呼ばれるほど栄えていた。本格的な工業都市への発展は,1960年から行われた宇都宮工業団地や清原工業団地の造成に端を発する。84年には「宇都宮テクノポリス」の地域指定を受け、現在、生産基地から頭脳基地へと脱皮を図りつつある。

 清原工業団地に向かう道中で、早速「毒」マークのボンベを満載した車両が列をなしているのを発見!! 運んでいるのはモノシラン? 塩素ガス? 普通なら車間距離を取るところだが、「きっと、工業団地に向かうはず」と、なぜか接近し追跡する。その思惑どおり、「毒」マーク車両に誘引され、無事、清原工業団地に到着。

 交差点のあちこちに企業の案内看板が立っている。社名を確認すると、キヤノン、松下電器産業、住友ベークライト……(詳しくは表を参照)、まさにエンジニア生息圏にふさわしい社名がずらりと勢ぞろい。

 圧縮・液化ガス、ナイロン、ポリエステル樹脂、塗料などの素材・材料系、鋼材、光ファイバー、機器用電線、ワイヤーハーネスなどの電気・電子、半導体、自動車部品、光学・家電製品、計測機器、医薬品、食品、たばこと幅広い。宇都宮市は電気機械の製造品出荷額が圧倒的だが、意外にも第2位は飲料・たばこ。清原工業団地にももちろん、日本たばこ産業がある。

「うわさにたがわない、さすが!!」。ストーカー心が騒いだ。いつの間にか、「毒」マーク車両が消えた。どうやら追跡を敏感に感じ取ったらしい。


■清原工業団地に入居している企業群

エア・ウォーター 中外製薬 日本ペイント
エスペック 長府製作所 日本山村硝子
エム・イー・エム・シー 帝人デュポンフィルム 久光製薬
カルソニックハリソン デュポン 松下電子応用機器
カルビー 東京応化工業 松下電器産業
河村電線工業 東京製鐵 マルハ
キヤノン 栃木住友電工 ミツトヨ
清水鋼鐵 住電ダイヤモンド テクノロジー 三菱電線工業
住友ベークライト 日本圧着端子製造 ロックペイント
第一屋製パン 日本たばこ産業 他全40社

■平出工業団地・瑞穂野工業団地・芳賀工業団地の概要と立地企業

◎平出工業団地
1960年に分譲を開始した平出工業団地。そこに拠点を構える企業数は123。精密機械、産業、農業、輸送機械から自動車部品、生コン、塗料、鋼材、金属部品、飲料、食料など業種は幅広い。主な企業に松下電器産業、松下電送システム、クボタ、利根コカ・コーラボトリング、三菱製鋼、平田機工、村田発條など。栃木県の中堅企業が多い。

◎瑞穂野工業団地
1977年に分譲を開始。拠点を構える企業数は92。精密、産業、農業、輸送機械はもちろん、鋳造、金型、化成品成形、電子部品のほか、農水産物加工、飲料、冷凍食品、印刷などの幅広い業種が集結。主な企業はテクノサイエンス(精密フィルター組立加工品)、三泉化成(プラスチック加工)、瑞穂瀝青工業など地元中堅・中小企業が中心。

◎ 芳賀工業団地
1979年、本田技研工業がプルービンググラウンド事業を開始したのを皮切りに、現在、ここに拠点を構える企業数は78社。本田技研工業、川崎マイクロエレクトロニクス、川田工業、日本ジーイープラスチック、本田技術研究所、ホンダエンジニアリング、オートテクニックジャパンなど、自動車関連機器や半導体関連企業の集積度が高い。

さすがR&D拠点、清原団地。
やはり電力も並大抵の量ではない??

 まず清原工業団地で目につくのは、なんといっても巨大な送電鉄塔が整然と並ぶ姿。特別高圧66kvの送電鉄塔。高さは40mはあるだろうか。しかも各企業ごとにその巨大な送電鉄塔から電力が供給されている。送電鉄塔(送電線)マニアにはたまらない光景が展開されている。ここにある鉄塔はすべて男性型と見受けられる(鉄塔にも男性型、女性型があるようだ)。高電圧になればなるほど、男性型が増えるらしい。送電鉄塔さえも男性比率が高い地域である。マニアではないピストンもなぜか心が躍る。うーん、圧巻だ。

お昼休み。広大な敷地だから……
食事の後はLet's Sports!

 さて、そんな景色に見とれていると、時刻は12時をまわった。お昼休みだ。でもエンジニアの姿はあまり見られない。どうやら社員食堂で食事をすませている様子。しかし12時半を過ぎるころ、とたんに人の動きを感じた。なんと、工場の外周をジョギングやサイクリング、工場わきでのテニスやキャッチボールするエンジニアの姿が……。はたまた芝生に車座に座り談笑といったなごやかな姿も。

 しかし残念なのは、ここではほとんど「女子」の姿を見ないこと。前回の新横浜であれば、素敵な女子がたくさんと観察されたのに……。もちろんこれには、理由があるはずだ。工業団地周辺にはこれといった店もない(まったくないといってもいい)ため、わざわざ社外に出てくることはないのかもしれない。

 もしかしたら、それよりも女性比率が圧倒的に低い(?)のか(1時間以上、観察したが、唯一、見かけたのが自転車で通り過ぎる女性。確か、ネックストラップタイプの社員証がぶら下がっていたような……)。ラブチャンス度に関してはかなり不安が残る。

通勤は?車orバス??

 だがそれを補って余りある環境がここにはある。なんといっても通勤に自家用車を使用できること。通勤地獄なんていう言葉はここにはきっとない。ある会社の駐車場は東京ドームがすっぽり入りそうなぐらいの大きさ。車両数は日本野鳥の会に依頼してカウントしてもらわないとつかめないほど。

 メーカー系エンジニアが好む車種の傾向はあるのか。また「栃木県」といえば輸送機器の生産高も多い。テストコースを県内に持つHondaや日産自動車を思い浮かべる。「やっぱり宇都宮ではこの2大勢力が大勢を占めているのだろうか」と調べてみたら……、傾向は特に見つかりませんでした。あしからず。

 道路環境は素晴らしい。工業団地中央を貫く、片側2車線の直線道路と外周2キロにも及ぶ周回道路、何もかもスケールがでかい。平日の昼間は、納品のトラック、送迎バス以外はほとんど車が通らない。信号も少なく、整地が行き届いた舗装面。休日・夜間であれば、高速でのUターン、いや360度ターンでタイヤの調子を試すこともできる(危険行為なのでやめましょう)。ドライブ好きエンジニアの満足度はかなり高そうだ。


スポーツ派、アウトドア派エンジニアにはうれしい環境

 清原工業団地内には清原体育館、宇都宮清原球場、栃木県グリーンスタジアム(サッカー場)など本格的スポーツ施設も充実。全国規模の大会はもちろん、地場の企業や市民にも開放されている。

 そのほか、近くに流れる鬼怒川でフィッシングや打ちっ放し場でゴルフを楽しむこともできる。仕事以外でのお楽しみアウトドア、スポーツスポットがここには多い。


清原工業団地からさらに北にあるHondaの拠点付近を訪ねる

 清原工業団地から少し北東に向かうと、道沿いに大きな「Honda」マークをつけた体育館が出現。ここは宇都宮のお隣町・芳賀町にある芳賀工業団地。F1でおなじみの本田技研工業(Honda)高根沢工場、同社のR&Dセンター・本田技術研究所が広大な敷地を所有している。

 ここの施設では、確かNSXやS2000、超低燃費のINSIGHTの開発を手がけた先進的工場と認識している。このあたりを走っていると、さすがHonda車が増えてくる。付近の駐車場もHonda車だらけだった。


ヘリコプターからロボットまで

 栃木県産業技術センターに向かおうとすると、どこからともなくヘリコプターのエンジン音。

 見上げた道路標識には「栃木ヘリポート」とあるではないか。これは県唯一の公共ヘリポート。東北新幹線、東北自動車道だけではない。これを利用すれば東京には約30分、名古屋へは約120分で到着する。が、定期就航はされていない。多忙エンジニアのためにもぜひ、ヘリの定期就航を行って欲しいところだ。


 ヘリポートの角を曲がると「川田工業」。なんと、あの「転んでも起きあがる」ロボット「HRP-2」の設計製作を行った会社ではないか(ヘリコプターの開発も行っている)。

 プロペラ音を聞くだけでもわくわく心がそそられるのに、本体の整備状況などが道路から見える。お楽しみ度満点のスポットだ。


ハイテクベンチャーの育成拠点も

 さて、これだけの企業群がそろえば当然、新規事業に打って出る強者も現れてしかるべき。それを支援するのが「栃木県産業技術センター」。今年4月にオープンしたばかりの最新施設。

 ここには「大型電波暗室」「X線マイクロアナライザー」「透過型電子顕微鏡」「NC放電加工機」など機械電子用試験機69、材料試験機94台、食品技術用試験機器49台が設置されている。この産業技術センターの設備はすべて、インターネットから検索し、申し込みが行える。またこのほかにも研究テーマや保有特許の一覧などもHP上に掲載。エレクトロニクス、応用化学、金属材料などの技術交流会も盛んに行われている。新しいビジネスの種がひらめいたら「産業技術センター」に直行だ。

技術の基礎はここでわかる……
エンジニアの原点(?)スポット

■栃木県子ども総合科学館

子供から大人まで科学技術を楽しく理解できる人気スポット。「身近な科学」「宇宙の科学」「地球の科学」「生命の科学」「情報の科学」「エネルギーの科学」「乗り物とロボットの科学」というテーマごとに興味深い展示物を展示、また体験しながら学べる。プラネタリウムも併設。
 宇都宮で生まれた子供は、みんな大きくなったら「エンジニアになりたい」と言うのでは……、という信念を抱かせるスポットがある。それが「栃木県子ども総合科学館」。目印はHII型ロケットと風力発電機「ウインちゃん」。

 早速、「宇宙の科学」を学習すべく、コスモシップに乗船。ここではクイズに正解すると宇宙空間を旅できるのだが、なんとピストンは「太陽の表面度は?」という1問目であえなく地球に強制送還(正解は6000℃。なぜか1万℃を選んでしまった……)。

 コンピュータの五大機能(入力、記憶、演算、制御、出力)をわかりやすく解説するところがおもしろい。なんとコンピュータの仕組みを説明する壁の装飾に「基板」が一面に貼られているのだ。これは単なる装飾か、それとも基板の廃品利用? さすが、ハイテク企業が集積している地だ。

 自動車に関する説明も本格的。HondaのINSIGHTの内部を丸見えにし、エンジンや駆動の様子を直接、見られる仕組みとなっている。ピストンが気に入ったのがこれまたクイズに正解すると、高速で走り出すリニアモーターカー。軌道わきには電磁コイルがむき出しになっており、かなり本物に近い設計だ。さらに「ATR(国際電気通信基礎技術研究所)」が開発をしたコミュニケーションロボット「ロボビー」にも出合える。はっきりいってここは、かなり楽しい。

 彼女になかなか仕事内容が説明できないエンジニアのみなさんのデートスポットに、ここはお勧め。もちろん、子供のいるエンジニアであれば、父としての威厳も示せるかも……。


※ATRは1986年に設立された電気通信分野における基礎的・独創的研究を行う関西文化学術都市「けいはんな」の中核研究所。

餃子を食べて、今回の探索は終了

 宇都宮といえば餃子。「やっぱり最後は餃子でしょ」ということで、日帰り宇都宮出張エンジニア(と思われる)人たちの後について餃子屋さんに直行。JR駅ビルに入っている「みんみん」で焼き餃子と水餃子を注文。席に着き1分34秒(ピストン三浦手動計測)後、いきなり焼き餃子登場。遅れること48秒後に水餃子。さすが、忙しいエンジニア心を満たす時間配分だ。

 ささっとビールと餃子をたいらげ、新幹線に乗り東京へと帰っていく出張エンジニア。彼らを見送り、今回は任務完了。それにしても宇都宮はエンジニア個人が趣味を楽しめるスポット(スポーツ、アウトドア、科学館)が意外に多い。

 今回はウオッチしなかったが、「コジマvsヤマダ電機」の大型家電店の安売り合戦が始まったのも宇都宮。現在生産高は電気機械が主流を占めているが、宇都宮テクノポリス計画では、「ソフトウェアリサーチパーク情報の森とちぎ」を整備、IT産業の誘致を積極的に行っている。東京から東北新幹線で1時間の地、宇都宮。エレ、メカ、材料系エンジニアだけではなく、ソフトエンジニアにとっても今後は見逃せない生息圏なのだ。


■今回の生息圏度採点──宇都宮(ピストン三浦の直感値)

ファッション気にしなくていい度 90点(車通勤、しかも会社では作業服のため、私服を披露する機会が少ない)
ハイテク企業集積度 80点(特に機械・精密機械メーカー、化学・医薬系企業が集まる)
情報集積度 30点(大型の書店など宇都宮市街地まで行かないとお目にかかれない。でも社内で書店のような機能がある?)
通勤快適度 80点(車通勤はよいが、駐車場が巨大なため遠くなるとかなり歩くこともある)
食環境 ??点(社員食堂のみ。企業によっては高得点が期待できる?)
エンタテインメント度 50点(アウトドア、スポーツを趣味にしている人の満足度は高いが、都会的な遊びに関しては?でも宇都宮はカクテルの街でもあるそうです)
LOVEチャンス度 10点(社内以外はほとんどチャンスなしかも……)

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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
 今回、東京を離れ宇都宮に行ってきました。東京から約100km。宇都宮市街を少し車で走ると、そこかしこに田園風景が……。工業団地内の道路を走ると、その圧倒的な広さから「日本じゃないみたい」と感動。
 その広さゆえか、なぜか時間もゆったり流れているような気がしました。でも納期のあるエンジニアのみなさんにとっては、時間の流れはゆったりとしていないのかもしれませんが……。
 次回はまた都心をウオッチしたいと思います。どこに現れるか、こうご期待。

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