叱ってちょーだい

毎回著名人にあなたの悩みをぶつけていただく、このコーナー。熱く、愛を持ってお答えします。
悩
「失業生活1年、限界集落農家を継ぐか再就職か」

学歴も資格も特技もなく、30を過ぎて失業して1年。貯金も底をつきました。体を動かすことは好きなので、実家の農家を継ごうかと思うものの、高齢者農家が数軒あるだけの限界集落なので、いずれ自分一人取り残されて苦労するのは目に見えています。やはり再就職活動に絞って頑張るべきでしょうか。(求職中 32歳 男性)

換金力
今週の叱り役

食文化研究家/作家
魚柄 仁之助さん

information
魚柄仁之助さん公認サイト
「魚柄仁之助の食文化情報局〜台所の穴」
魚柄さんの新刊『うおつか家の台所実用ノート』などの情報はこちらからhttp://www.ne.jp/asahi/
uotuka/official/index
1956年、福岡県生まれ。宇都宮大学在学中にバイク屋を開業、古道具屋経営を経て、94年に『うおつか流台所リストラ術』(農文協)を出版。安全で無駄なく安上がりな食生活を提言し続け、執筆のほか漫画原作、TV出演、講演などで活躍。主な著書に『冷蔵庫で食品を腐らせない日本人』(大和書房)、『食べかた上手だった日本人』(岩波書店)など多数。

仕事は「自分でつくり出す」の発想を!

所得の保証がほしいのですよね。みんなそうなんです。例えば昨年末に派遣村の取材をしたのですが、そこにいた失業者の人たちも同じ。僕だって決まった仕事があるわけじゃありません。そもそも切られるクビすらなく、常に自分で仕事をつくりださなければならない働き方をしていますが、派遣村で「やる気はあるんだから仕事をくれ!」と言ってる人には違和感を覚えました。仕事は「もらうもの」と思い込んで、「自分でつくり出す」という意識がない言葉だからです。

成功する人というのは、たとえホームレス状態であっても、自分で何か拾ってでも仕事にしようとします。リサイクル業界で名を挙げた生活創庫の社長もテンポスバスターズの社長も、物を拾うことからスタートしているでしょ。何をやるにも「仕事をくれ」の発想じゃあダメなんです。実家で農業をとおっしゃるが、それならなおさらのこと。最近の農業を希望する若者は「給料はなんぼで、何時間労働だったら就職してもいい」と言う。農業でそんなの無理。リンゴ園が台風に襲われたらその年の収穫はなし、つまり収入はゼロ。農業をやるとはそういうことです。

日本の農家は国に守られているようで、実はそうじゃない。厳しい価格で農協が買い取り、それに流通業者が上乗せしているだけで、生産農家に利益は還元されていません。日本のコメ農家の平均収入は、農林水産省の統計によると年間たったの38万円。そんな中で商売していくには、農家で余るものとそれをほしがる人を結びつける工夫が要る。例えば僕が助言した有機栽培農家の知人は、余ったカボチャや折れたゴボウ、形の悪いニンジンを洗ってピーラーで削って乾燥させ、袋に詰めて「夜、鍋にだし汁と入れておくだけで、翌朝は食物繊維たっぷりの健康味噌汁がすぐできます」って販売したらものすごく売れたんです。その人はこの乾燥野菜を商品に加えただけで、年間所得が100万円も上がりました。

そうやって収入を増やすために、今はどんな商品が求められているかマーケティングする必要があるんです。農業に限らずどんな仕事をするにも経営感覚を持たなければ、いつまでもそのままですよ。高齢者ばかりの限界集落だと言い訳をするのは簡単。限界集落を超えているような村でも、染め物作家が工房をつくって話題にしているなんて所もあります。

時間がある今だからできることを考える

僕も食の本を書いていますが、ネットでレシピが見放題の時代、一般的な料理本をつくっても売れんのです。だから書くだけじゃなく売る工夫もする。自分の新刊本一覧をつくって本に挟み込んでみたり、地方の取材に行ったら地元の書店の料理本コーナー担当のお姉さんに「休憩時間に飲んでください」と、缶コーヒーの1本でも渡してあいさつしてみたり。そんな地道な営業努力もします。

もちろん内容についても、毎日ネタを書きため、資料を集め、引き出しをたくさん持っておく。だから、依頼があれば10日くらいで本を一冊書けるし、今は月20本の連載を書いています。ある新聞では連載の最長記録を更新していますが、それぞれの媒体に合わせて書き分け、読者に支持されることを心がけている結果じゃないかと思います。そうやって、常にいろんな注文に対応できる準備をしておくことが、自分で「仕事をつくる」ということです。

本当は貯金が底をつく前に、あなたも準備すべきだったんですが、それを言っちゃあ手遅れですから「失業中、貯金なし」というマイナスの状況をプラスに転じましょうよ。僕も27年間一緒に住んだかみさんが、仙台に単身赴任することになったとき、お互いの不安を払拭して「老後、おひとりさまになった場合の練習にしよう」と、前向きに考えたんです。そして僕はかみさんに会いに行くたび、仙台でいろんなネタを仕込んで雑誌の連載にできたし、単行本にもしました。何か問題にぶつかってもタダで起きちゃいかんですよ。それをお金に換える力をつけましょう。あなたも「時間がある今だからこそできること」があるはずです。

EDIT・WRITING
羽塚順子
DESIGN
マグスター
PHOTO
加納拓也

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