若いうちにたくさんのことを試してみよう
本当に好きな仕事だったら、6年目ぐらいはいちばん面白くなってくるはずだし、「もっとやってやろう」という気持ちになると思います。モチベーションを上げようとする前に、一度しかない人生を捧げられるような仕事、本当にやりたいことを全うしているのかどうかという問題があるのではないでしょうか。
僕は高校を中退して、仕事を始めてからというもの、3カ月ごとに仕事を変えていました。履歴書だけを見ると、ひとつのことが続かずに信頼性がないようだけど、仕事を辞めるのには「嫌になって辞める」のと、「次にもっと魅力がある仕事を見つけて辞める」という、ふた通りがあって、このふたつは大きく違う。僕は常に後者の理由で転職を繰り返していたわけです。
日本では「石の上にも3年」といった考え方が根強いけれど、僕は関わった時間の長さで評価されるのが嫌いで、内容が重要だと思っているんです。だから、板前やコックをしていたときも、小学生でもできる野菜の皮むきでさえやらせてもらえず、すぐに辞めました。3年間我慢をするより、できることは1カ月で習得して、残りの2年11カ月を、もっとクリエイティブなことに使ったほうがいいからです。
若いうちは発想力が豊かで、ものごとに順応していく柔軟性があります。その頃にたくさんのことを試してみるべきだと思うんですね。だから、もっと多くのことに興味を持って視野を広げ、生きるための努力をしましょう。日々の仕事をこなしているだけなんて、もったいないことです。
仕事は人生を楽しむためのプロセス
人生において、仕事はプロセスだと思います。仕事をしている以上はプロだから、苦しいことは常にあるもの。でも、本当の目的は「人生を楽しむ」ということにあるはずです。仕事がつらいからこそ、終わった後の一杯のビールがおいしいし、充実感や達成感を得ることができる。そうやってコツコツと貯めたお金で、一生に一度は50万円のワインを飲んでみようとか、江ノ島よりはカリブ海へ遊びに行ってみたいとか、人生とはそうやって楽しむものではないでしょうか。
僕は仕事上の充実感を得るために、感動する一瞬をいつもイメージしています。それはつらい仕事が終わった後のビールであったり、バカンスだったりしますが、最も達成感を得られるものは、コンクールでの優勝。コンクールに向けての練習は、気が遠くなるようなトレーニングの積み重ねです。過去と同じ方法で審査されるわけではないので、勉強することに終わりがないと思えるほどにつらいものです。だからこそ、優勝した瞬間は最高だし、誰にも真似できないものだと思えるから誇れる。あなたにとって、いい仕事をしていくという目的を、もう一度考えてみてはどうでしょう。