子どもの扱いにヒントがあります
言うことを聞いてもらうには、相手から尊敬されなければなりません。でも、40〜50代の人たちから、若いあなたが尊敬してもらうのは、大変なことですからね。ちょっと視点を変えて、逆に小さい子どもに目を向けてみると、人間の本質がよくわかるんです。そこにすべてのヒントが詰まっています。
子どもって、上からの目線で「遊んでやろう」とすると、反発して言うことをきかないし、おもねいてご気嫌をとりだすと、とたんに大人を馬鹿にしてやんちゃになる。そういう子に手を焼いているお母さんは、つまり子どもの奴隷になって振り回されているということです。では、相手からなめられず、逆に反発もされないようにするためには、まず、自分が「こうする」という確固たる信念に基づく決断をする。そのうえで、相手に「どうですか?」と素直に聞けるという、二段階のステップが必要なんですね。
あなたの場合、自分より20年も人間としてのキャリアがある女性たちが相手。いかに手間をかけず、省エネでお給料をもらうかという賢さを身につけている人たちかもしれない。そんな相手の先頭に立つには、誰よりも職場に早く来て、最後まで働くという基本から始まり、誰よりも職場やパートの人たちのことを細やかに考え、気がつく自分になろうという決心をする。そこではじめて、この女性たちはあなたに一目置くようになるんです。
最終的な鍵は、仕事を楽しめるか
そのうえで、自分の意見を持ち、一方で時間を作ってでも彼女たちの相談に乗ってあげる。そうやって目に見える形で本気度を見せるしかないんです。ところが、人間、怖いな、嫌だなと感じる所からは本能的に逃げますから、自分では本気だと思っていても、体が引いてしまうもの。ある意味では生物としての自分を越えて、体ごとぶつからないとなりません。
僕も医者になって「体ごとぶつかるというのは、こういうことなんか」とわかるのに、5年かかりました。若いころのことですが、ある患者さんの家族に、怒鳴り込んで脅してくるような方がいて困り果て、上司である精神科医に相談したんです。すると、「最後まで話を聞くしかないやろう」って、ぽつりと言われました。そこで初めて自分が逃げていたことに気づきました。話を聞く腹が据わっていないことを見抜かれていたんですね。「自分はあのとき逃げていた」と認識できるようになるには、ある程度、時間もかかります。
そして、最終的な鍵は、仕事をいかに楽しめるかです。もし、あなたが苦しそうに仕事をやると、パートの女性たちに、「あんたたちのために、僕はこんなに傷ついている」と、アピールをしていることになる。それは単なる自己愛です。厳しいことを言うようやけど、本当に自分がプロとして人に認められたければ、苦しみをアピールするのではなく、仕事を楽しめるようになることです。