雑務や余計な仕事は自分でつくり出している
自分のことを「要領が悪い」と決めつけているようだけど、本当にそうなのかな?もし、そう思うのなら、普段やっている仕事のどこがどう要領が悪いのか、具体的に書き出してみてはどうだろう。自分が不得意なことも書き出すといい。そして、書き出したことについては、極力やらないように行動修正をする。1日の仕事の中で無駄と思われる部分を省いていくんです。そうすれば、相当時間は短縮されるはずです。
あなたは、根がとても真面目なのでしょう。要領が悪いと嘆く言葉の裏には、あなたが気づいていなくても、「こんなに一生懸命やっているのに」と、真面目な自分を正当化したい気持ちがあると思うんです。だから、要領のいい人に対しては、多少なりとも敵意を感じているんじゃないかな。残業をせずに結果を出す先輩を「見習いたい」と言いながらも、真似することに心理的なブレーキがかかっているのでしょう。定時を過ぎると「人がいない会社は落ち着いて仕事ができる」と、意外に心地よく感じているのかもしれない。
しかし、仕事というのは結果がすべてです。一生懸命やることに価値をおき、結果が二の次になるのでは間違っている。もっとストレートに結果重視で仕事に取り組まなくては、いつまでも残業をする生活が続きますよ。『ドラゴン桜』でいうと、「次のテストにはここを出すぞ」と先生に言われたのを疑って、教科書の1ページ目から順番に全部やらないと気が済まないタイプの生徒というのかな。そう言われて「ああ、自分もそうかも」と思い当たらないだろうか。要は雑務や余計な仕事を自分でつくり出しているのです。
「きっちりやるのが俺のやり方」から卒業しよう
漫画のアシスタントの子たちも、真面目なタイプが多くてね。漫画を描く際、コマからはみ出した部分は印刷されないのに、コマの外まで丁寧に描く子がいる。「そこは描く必要ない」と何度も説明するんだけど、結局は全部描くんです。きちんと描くことで自分なりに納得したいんだろうね。だから、描いた原稿と印刷されてできあがったものとを比べて見せながら、「ほら、せっかく描いても載ってないだろ」と、結果に反映されないことを理解させるんです。
僕自身、漫画家として結果を優先していく過程で気づいたことがありました。若いころ「漫画家とは徹夜するものだ」と思い込んでいたんですね。昼過ぎから夜中に仕事をして、いつも不健康なのが漫画家、というのが常識だったから。ところが、朝起きて日中に仕事をやってみると、そのほうが遥かに効率的で健康的。アシスタントやスタッフとしても、日中の勤務時間のほうが助かるわけです。そうやって、人のつくったルールでやっているうちは不利益が多くて非効率的なのだと気づいてから、ルールは自分でつくると決めました。
僕の仕事場は仕事量が多くて常に締め切りがあるので、いかに頑張らずにイーブンペースで走り続けるかというシステムづくりが必要なんですね。頑張ってダッシュなんかしてしまうと、消耗して続かなくなってしまう。そこで、僕はスタッフに細かく指示せずに「1日分の仕事量がこなせたら、いつ帰ってもいい」というルールをつくり、任せることにした。すると、スタッフ間で相談しながら、いかに効率よく仕事を進めるか日々工夫するんです。トヨタの「カイゼン」みたいにね。スタッフが自分たちでルールをつくるわけです。あなたも「きっちりやるのが俺のやり方」から卒業して、残業しない自分のルールをつくることですよ。