まずは一人でも結果を出してみること
部署内の流れに逆らうことになっても原点に戻らないとダメだと本気で思われているのなら、一人で時間を割いてでもあなたの思う手法を実践して結果を出し、部署の人たちにその結果を見せることでしょう。どんな仕事であってもプロとして大事なのは結果を出すこと。いくらあなたの言い分が正しくても、若い転職者の出した結果がよければそちらが評価されます。今のままでは、あなたの主張はやっかみや愚痴としか受け取られません。結果を出せば、周囲も耳を貸してくれるはずです。
誰でもできあがった環境に異分子が入り込み、波紋が広がるのは嫌なものです。年下の未経験者に勝手なアイディアだけを次々と出されたら、昔からいるベテランは非常に面白くない。感情的に拒絶したくなることもあるでしょう。しかし拒絶からは何も生まれません。「生意気な」という感情はひとまず脇に置いて、これまでの業界の常識にしばられたままでいいのかという問題に、自ら踏み込む勇気を持つことも大事ではないかと思います。
キャリアの長いベテランほど、自分たちがいる業界の常識に囚われているものです。短期間で市場が変化する今の時代、チャンスを逃してしまうのは、実は「地道が大事」にしがみついている人であったりする。ですからこういう波紋が広がったときは、すべてを真っ白にして、それこそ本当の原点に戻って考えてみるチャンスでもあります。もしかしたら異業種から来た若者の発想が、新しい突破口をつくるかもしれません。
部外者だからこそ見えることがある
私は、自分がよく知らない業界を舞台にして小説を書くことが多いですから、いつも部外者の立場で取材を依頼します。当然、時には拒絶されることもあります。「こんなややこしい業界を素人が書けるのか」と訝しがられることも少なくありません。特にエネルギー問題をテーマとした『マグマ』を書くときの地熱関係者からの反応は、「こんな地味な業界の話、どうせ無理だよ」というのが大半。でも部外者の私から見ると、新しいエネルギー革命の予感がありました。そして、大勢の人たちが知るべき業界だと思えたんですね。
ノンフィクションで書くには難しい題材が、小説にするとリアルなモデルケースとして描ける場合もあります。もちろん下調べをして部外者としての礼儀を欠かないことも大事。こちらの「正しく知りたい」という気持ちを相手とキャッチボールしながら取材を進め、一人二人と徐々に理解者を増やしていきます。最終的には、ありがたいことに「よくぞ書いてくれた」と、喜んでいただきました。部外者だからこそ見えたものを小説に取り込んだつもりなので、それを認めてもらえたことは嬉しかったですね。
部外者として異業種から転職してきた若い部下とあなたが歩み寄るには、彼の好きなようにやらせてみることだと思います。その後ろで先輩たちがちゃんと見守っておいて、失敗したらすぐフォローに入る。そこで「アイディアはよかったけどうまくいかなかったのはなぜか」「われわれがうまくいったのはここを続けてきたからなんだ」ということを話し合う。そこで若い社員は学習するし、お互いの信頼関係もできる。なかなか難しいでしょうが、それができれば素晴らしいことだと思います。