自分が生徒になってリサーチを
あなたは、自分が新人の気持ちに戻って、教えられる立場になったと思わなくちゃ駄目。その立場に置き換えて考えたら、どうすれば初めて教わる人がわかるような教え方になるか、見えてくるはずです。後輩を指導するという、責任ある素晴らしい仕事を任されたのだから、それを全うしなくちゃいけません。でも、新人さんからの手応えがないなら、もう一度、どういう教え方をしていたか振り返ってみましょう。
まず、教える基本やプロセス、マニュアル、そういったものを整理し直して、自分だけの教科書を作って教えてみるんです。教え方ひとつにしても、ただ生真面目に教えようとするのではなく、厳しくしてみたり、いいところを褒めてみたり、飴と鞭ではないけれど、そういった創意工夫をしてみることです。
教える時の話の中に起承転結をつけたり、ドラマティックにしてみたり、時にはユーモアを交えてみたり、教わる側が理解しやすいノウハウというのが必ずあるわけです。それを自分なりにリサーチしてごらんなさい。何かの教室に習いに行ったり、勉強に出かけて、生徒の気持ちになってみれば、求められていることがわかるはずです。そういうことが大事です。
人に教えるということは、学ぶこと
「急いては事を仕損じる」と言いますから、一所懸命になりすぎるのじゃなく、ひとつひとつを解決していくようにしましょう。そして、悩んだり、間違ったりしながら、自分自身も成長していくものだから、初めからすべて完璧にしようと思わないこと。ひとつひとつがあなた自身の修行と思って、同じ間違いを繰り返さないこと。新人さんに喜んで技術を学んでいただけるように、誠意を持って接することです。
私も、そういう時期がありました。最初は生徒さん一人きりから始めて、二人入ったら、一人が辞めてしまうとか、そうやって試行錯誤しながらやってきたんです。生徒さんたちを教えながら、自分自身も学んだんです。教えるということは、学ぶことです。
よく、音楽家でも、門下生が次々コンクールで優秀な成績を収める先生がいらっしゃいます。それはやはり、その先生の教え方がいいと同時に、その人自身にも魅力があるからです。だからあなたも、後輩の人たちから、素敵だな、この先輩についていけたらいいな、と尊敬してもらえるように、自分磨きをしなくちゃいけないんです。