どうしても海外に行きたければ決意を伝えよう
最初は気が合う仲間と勢いもあってバンドを始めたのかもしれないですけど、目的を決める時期にきたのだと思います。ライブだけで楽しくやれればいいのか、プロを目指すのか。そういうバンドとしての目的がきちんとしていないと、何か事があるたび意見がばらばらになってしまいます。まずはメンバーとしっかり話し合うことです。そのうえで、この海外ツアーがバンドにとって、またメンバーそれぞれのためにプラスになるかをよく考えてみることじゃないでしょうか。
全員と話し合ってみて、ほかのメンバーが海外に行かない方向で、あなただけがどうしても行きたい気持ちだったら、そのときは、仲間の意見に従うより自分の夢を大事にしたほうがいいと思うんです。今のバンドをやめてソロになって行くとか、ほかのバンドと組むことだってできるだろうし。自分が海外に行ってやりたいという決意をちゃんと伝えれば、メンバーだって納得してくれるはずです。
ただ、海外に行って夢をかなえようとするなら、精一杯頑張ってもうまくいかなかったらどうするのか、そのときのことも考えておいたほうがいいと思います。僕がアメリカを発つときは、小さいころから日本や演歌が大好きなことを家族がよくわかってくれていたので、「頑張りなさい」と見送ってもらえたけど、「もし演歌歌手になれなかったらどうするの?」と聞かれたときに答えられなければ、前に進めないと感じていました。いつも万が一のときのためにバックアップをとっておくという意識が大事だと思うんです。
その場の状況に応じて計画を立てることも大事
僕の一番の夢は、日本で演歌歌手になることでした。でも、それがかなわなかったら、日本でエンジニアになろうと決めてたんです。一番が演歌歌手で二番はエンジニア。一番がどうしても無理だったら、大学で勉強したことも好きだったので、いさぎよく二番目の夢に変えようって。それから、海外で活躍したいなら、もうひとつ大事なことがあります。それは、夢に向かう道筋が、その国に行ってみなければよくわかりませんから、その場の状況に応じて自分で勉強したり調べたりしながら、1つ目のステップ、2つ目のステップと、目指す方向へ近づく計画を立てていくことです。
僕は日本に来て2カ月目に、のど自慢のTV番組に出演できたことをきっかけにアマチュア演歌歌手になり、スカウトされました。そんなデビューの仕方は、アメリカにいるときはわからなかった。しかも、ボイストレーニングが必要で、実際にデビューしたのは2年後。なので生活するための仕事が必要でした。最初は英会話教室の講師をしましたが、日本語を使って仕事ができる環境にいきたかったので、1つ目のステップとして日本語の勉強をして日本語検定2級の資格を取りました。その資格を持って、2つ目のステップとして日本語を使えるエンジニアの仕事に就いたんです。
そうやって、1つずつステップを考えながら、あきらめずに少しずつ歩んでいくことが大切だと思います。僕のアドバイスが役に立つかどうかわかりませんが、海外でボーカリストになりたい夢を持っているのなら、どうかあきらめずに自分の夢を大事にしてください。