自衛隊もスパゲティ屋も、経験はすべて役に立つ
僕が役者として売れ出したのは30歳頃のこと。あなたと同じ28歳の時は、演出家とケンカして役を降ろされ、仕事がなくなってしまった。それでも舞台に立ちたくて、自分で自分のための脚本を書いたんですよ。給料をもらえる訳じゃなく、逆にお客さんを入れなきゃならないノルマを背負っての出発でした。
それでも、目標が見えていたから迷いはなかった。田舎に住んでた中学時代、大好きだったブルース・リーの映画を見に行った時、二本立てでやっていたハリウッド映画に衝撃を受けて、「将来は絶対に映画の仕事をしてやるぞ!」と強く思ったんですよ。その時から夢はずっと変わらない。でも、親父に散々反対されてね。
高校卒業の時も「本当に映画俳優になりたかったら、横須賀の自衛隊駐屯地にでも入って、休みの日に東京で様子見てこい」と言われた。その通りにしたら、自衛隊に入るとシャバに出られないことに気づいた(笑)。親父は僕に役者を諦めさせようと言ったわけだけど、結果的に厳しい自衛隊を経験したことで、今、僕がやってる映画の神風特攻隊の演出がリアルにできたし、いろんな面で役立ってるんです。その後、大学時代と売れない役者時代を通して、スパゲティ屋で働いていたけど、その経験も決して無駄じゃなかった。
このまま「どうしよう」ではもったいない
今の僕は、舞台と映画の監督に脚本家、演出家、プロデューサー、役者、それと制作の資金集めまで全部やってます。なぜそこまでやるかと聞かれたら「映画を作りたいという目標があるから」とハッキリ言える。いい映画を作るためだったら、どんな仕事もできるんですね。ひとつでも欠けたら映画は撮れませんから。脚本家になるつもりは毛頭なかったけど、いい舞台やいい映画にしたい思いがあったから、脚本作りや映画の勉強も必死にできたわけです。
だから、あなたも何か目標を持って仕事をしていれば、総務にいようが人事にいようが、全て勉強になるんじゃないでしょうか。「こだわりが見つけられない」と言うけれど、そもそもあなたは、やりたい会社に入っているんだろうか? 「いや、飯を食うために入った」と言うなら、もちろんそれもいい。だけど、就職浪人したくないから、とりあえず入社したというということはなかったのかな。その会社に好きで入ったのなら、こういう悩みは出てこないと思うんですよ。
一度、ホンマに自分のやりたいことがあるのかを真剣に考えないと、このまま一生「どうしよう」になってしまうかもしれない。せっかく平和な日本にいて、職業選択の自由があるんだから、それじゃあもったいない。ただ異動先の部署で言われたことだけをやってるだけじゃあダメなんです。この会社で部長になりたいとか、自分で起業して社長になりたいとか、ひとつ目標を持てば、悩みは解決するし、無駄になる仕事だって何もないはずですよ。