現実に夢のような素晴らしい一社はあり得ない
悪口、陰口の横行する陰湿な社風は、会社の成長が止まって社会的に期待されなくなると、どの組織も必ずそうなるんです。なぜなら、悪口、陰口を言っていても給料がもらえるから。幸せな会社だよね(笑)。本来は、期待されていることを実現するからお金になるわけで、それをしなくても会社が回ってるのは実にラッキー。あなたは下を向いてじっと我慢しているのが一番の得策でしょう。もっとつらいのは、どんなに働いても売り上げが上がらず、大変なことばかりだという会社で、それと比べたら楽なわけです。
ただ、一生続けられる会社を目指すという考え方はどうかと思います。素晴らしい会社を追い求めるのはいいけれど、会社の経営状況や制度が永久に変わらないなんて、今どきの日本ではあり得ないことでしょう。一生、会社もあなた自身も変わらないという前提で物事を考えていますよね。もし本当にそう思って夢のような一社を探しているなら、視野狭窄(しやきょうさく)だな。あなたの考え方すべてに影響してはいないかと思ってしまいます。だから、本当にSEをしていこうとするなら、自分の仕事をどんな中身で、どのような方向でやっていこうかという視点から転職を考えなければ、どの職場に行っても同じことになりますよ。
前の会社が経営的に不安定で、昇進・昇給制度にも不満があって、そちらに目が向いてしまったかもしれないね。だけど、基本的に転職して以前より良くなるのは、十のうちひとつくらいの割合であって、転職を繰り返すほど条件は悪くなると考えたほうがいい。転職すること自体は必要であったり、いいこともある。でも、転職することで何を実現したいのかをしっかり見つめ、自分からどうすべきかというアクティブな発想を持たなければ、結果的にうまくいかないんです。
意見をぶつけ合える友達を持とう
「一生続ける」という考え方については、僕自身、似たような経験があります。まさに重厚長大な分野に長年いて、研究していたことそのものが、ありきたりで誰も使わなくなった技術になっていたのに、自分では大事な物だと思って続けていたんです。ところが、卒業生に「先生から教わった研究は古くて役に立たない」って言われて気づいた。友人に相談しても同じことを言われました。そして新しいナノテクのテーマに移行する決意をしたんです。変えなきゃならないと分かったら、勇気を持って変えたんです。
そういう時に大事なのは、自分の考えが一方向だけになっていることに気づかせてくれる友達です。友達と話をしていることで、ものの見方が立体的になって、自分は変わる必要性があると感じてくる。そういった刺激を受ける友達が必要ですよ。ただ表面的に知り合いだとか、サークルで何かいっしょにやるだけ、という友達ではなく、きちんと意見をぶつけ合い、議論を交わせ、本物のコミュニケーションが取れる相手。もしいないのなら、今からでもそういう友達を持つことを勧めたいな。