エステティシャンをしていますが、私を指名して毎週来店する“わがままセレブ客”のことで悩んでいます。家の鍵を渡され、「仕事の前に犬の散歩をさせて」「植木の水をあげて」といったことを頼まれるのです。やんわり断ると「できるときでいいんだから、得意客を失うよりマシでしょ」と。言うことを聞いていたらエスカレートするのは目に見えていますが、なにしろ1番の上客。どこまで言うことを聞くべきでしょう？（サロン勤務　28歳　女性）

お客さんのプライベートに入り込まないことです

はっきり言うと、家の鍵を受け取ってしまったことが間違いだと思うんです。そこできちんと断らなかったから、お客さんをわがままにしてしまったのね。あなたのせいでもあるんです。どうしてもできないことは、「できません」と、上客を失ってもいい覚悟で言わなきゃいけないのよ。でも、鍵を受け取っちゃって、その人のことを「上客だから失いたくない」と思うのなら、しょうがないですよね。わがままに付き合うしかないと思います。

お客商売って、私も長くやってきたからわかるんだけど、上客だからといって、相手のプライベートにまで入り込んでしまうと、泥沼のように抜け出せなくなるものなんです。一線を越えてまでつなぎ止めようとするやり方は、間違っていると思う。だって、お金になるお客さんと、そうでないお客さんとを分けて商売をしてるってことですもの。本来、どんなお客さんであっても、みんな平等に心を込めて接するべきですよね。今までのお得意さんが来なくなって、たまにしか来なかった人がお得意さんになってくれる場合もあるわけで。そんなとき、不平等に接していたら、後からお得意さんになってくれた人に、どんな顔ができるかしら？

しっかりした技術と、あなたならではのサービスを

私もいろんな思いをしました。いつも羽振りのよかった、それこそ上客が、ある日たくさんシャンパンを開けて、「お金は明日、会社の者に持ってこさせるから」って言って帰ったきり、姿を消しちゃったとかね。10代のころには、すごくかわいがってくれたお客さんに、「うちの娘の振り袖があるから、成人式のときに着ていきなさい」って、親切心で貸していただいたと思ったら、そのお着物を返すとき、「これ、縮んでるわ、弁償しなさいよ」って、手のひらを返したように怒られて。言うよね〜（笑）。とにかく、世の中にはいろいろなお客さんがいるもの。良かった人が急に自分にとって悪くなったり、その逆もあるということです。

そう考えると、1人の上客に振り回されて時間を費やすやり方は、考え直したほうがいいと思いませんか？この上客だって、ひょいとほかのエステティシャンに乗り換えて、あなたのお店に来なくなる可能性もあるんです。そうなっても困らないように、今、あなたがすべきことは、プロとしての腕をしっかり磨いて、技術で勝負できるようになること。そして、お店の中で、あなたならではのサービスをしてあげることだと思うんです。

あなたならではのサービスというのは、そうね、上客には少し長く肩や手を揉んであげるとか、照明を落として好みの明るさにして、アロマキャンドルも好みの香りをたいて、好みの音楽を流してあげるとか。そういった相手への細かい気づかいが、あなたらしいサービスにつながるんじゃないかしら。これを機会に、一度あなたの技術を愛して来てくださるお客さんに申し訳ないという気持ちになって、お客さんへの接し方を含め、あなたの仕事に対する姿勢を考え直してみてね。