育ててくれた人がいるから今がある
管理職に魅力を感じないと言うけれど、あなたがやってきた仕事には、先輩や上司が助けてくれたからできるようになったことって、たくさんあるはずだよね。それを忘れてはいないかな?
あなたが取り組んでいる仕事を認め、育ててくれた人がいたでしょう。今度はあなたがその役割を担わなければ、後輩や部下は育たないよね。
僕も若い頃は、育ててもらった劇団のボスに、よく食事をおごってもらったんだ。そのたびに「すみません」って言うと、ボスは「かまわないんだよ。でも、お前がおごることができる立場になったら、今度は若い子たちにしてあげな。世の中そうやって回っていくものなんだ」って言われた。
そうやってメシをおごるだけじゃないけどさ、やっぱり、自分を認めてかわいがってくれた人がいたからこそ、今の自分がある。年齢やキャリアを経て、今度は自分がその立場になる。そこに喜びややりがいを見つけられないだろうか。
人を育てるのは自分も育てること
人を育てるって言葉にするとおこがましいけれど、入社して 10年くらい経っていれば、誰でも新人に教える経験は持ち合わせているでしょう。あなたの言うことを聞いて、何も知らない若い子が「そうなんですか!」って目を輝かせることもあるはず。そうやって、ひとつひとつ階段を昇って来る若い子の姿を見ていると、かわいいし面白いと思えるんじゃないかな。
そう言う僕も、実は人を育てるなんて無縁だと思ってたんだ。でも、たまたま何も知らない新人マネージャーが付いた時、仕事のことや役者とマネージャーの気持ちのあり方を自然に教えることができたんだ。それは、僕にとっても新しい発見だったよ。「俺って他人に優しくできるじゃん」って(笑)。だから、あなたもまだ部下に教える経験をしていないだけで、その巡り合わせがあれば、変わる可能性は大だよ。人を育てることって、自分自身を育てることでもあると僕は思うんだ。
それに、エンジニアの仕事って、一人で製品をつくるわけじゃないよね。それぞれのパーツや設計を担当しながら、大勢でつくりあげるものでしょ。「自分はこの現場仕事だけをしていたい」って考え方は利己的じゃないのかな。自分が培ってきた技術や成果をそこで終わらせてしまうのではなく、次の若い世代へつないでいくと考えれば、それがあなたのやってきたことの証明にもなるはずだし。
あなたは元々機械いじりが好きなエンジニアなんだから、現場仕事の喜びも苦しみも身体でよくわかってるはずだよね。それはきっと、管理職になっても、後輩や部下と気持ちを分かり合える、いい上司になれるってことだと思うよ。