起業したい分野に近いベンチャー企業にいこう
圧倒的にベンチャー企業への転職のほうがいいと思います。起業を目指す人がベンチャー企業で働くメリットは、会社の全容が見えるのと、何事もやらざるを得ない社員の少ない状況下で、トータルな仕事力がつくこと。私も短い期間ですが、起業前にベンチャー企業で仕事をして、名もなき企業の名もなき商品を販売しながら実績をつくった。そこで起業してもとりあえず食っていけるという感触をつかんだし、そのとき学んだことはフルに活用しました。
事業規模にもよりますが、あなたのように20代半ばで一般企業に勤めている場合、営業現場や製造現場など、会社の全容が見えにくいポジションにいることが大半ですよね。そこで頑張っていても、起業に役立つことを何も身につけていないような不安に襲われると思うんです。でも本当は、今のメーカーで現場の仕事をしながらでも意識を変えることはできると思います。一人で商品を企画、製造して商品を宣伝し、販売網に乗せて料金を回収するとどうなるかを想像してみると、自分には何ができて何ができないのかがわかってくる。しかも、そういう視点で仕事に取り組むと、会社経営全体は見えてくるはずです。
ちなみに、一般的には起業するにあたって、営業力が重要であるように言われることもありますが、営業と経営は違います。営業しながら「自分で商売をしている」と経営をしているような錯覚に陥っては、危険だと私は思います。もし、起業する分野や方向性が決まっているのであれば、やはりできるだけそれに近い業種のベンチャー企業で、一度働いてみることをお勧めします。
成功者は無謀に見えるようでいて実は手堅い
焼肉チェーン店「牛角」を運営するレックス・ホールディングスの西山社長は、チェーン展開のノウハウを学ぼうと、当時、別会社を経営しながらマクドナルドでアルバイトをしたそうです。それって、周囲からは無謀なことに見えると思うんですよ。でも、成功している社長の話を聞くと、外からは無謀に見えることを、実は計算しながら手堅くやってきている人が多い。単に「起業して頑張りたい」というだけのほうが、危険だなという気がします。
一方のビジネススクールについては、もちろん悪くはないけれど「行かないよりはいい」というところです。それよりは、ネットオークションにでも何か出品して、仕入れた物をいかに高く売りながら収入を得て、お金を回していくかを体験してみたほうが、商売の原点がわかるかもしれません。「起業」を「英語」に置き換えて考えてみるとわかりやすいと思うんですが、起業しようとビジネススクールに通ったり、ビジネス本を読んだりするのは、英語を身につけようと英語の塾に通ったり、参考書を読んだりするようなものですよね。本気で英語を身につけたければ、海外の英語圏に行って生活してみたほうが確実にショートカットできる。ビジネススクールよりベンチャー企業の現場で働いてみたほうがいいというのも、それと同じことです。
本気であと3年以内に起業したいのなら、はっきり言って、のんびりしている時間はありませんよ。今、25歳で転職に足踏みしているようでは、28歳のときいきなり起業はできないと思うんです。私も起業前の3年間、時間を無駄にはしていなかったし、ショートカットもしてきたつもりです。大学時代からのアルバイトを含め、ベンチャー企業でほとんど休まず営業の仕事に取り組み、経営者を近くで見てきた。そうやって、あなたが起業するために真似できる会社はどこか、できるだけイメージに近い道を探してみることです。