徹底的に嫌われまくる経験をしてみよう
これは日本中に蔓延している「嫌われたくない症候群」という病気です。あなただけに限った事じゃない。でも、考えてみてよ。一生嫌われないで生きていく、なんて無理でしょ。もう少しかみ砕いて言うなら、人は「嫌われながら生きるか、もしくは死ぬ」の、どちらかなんだよ。「死ぬ」というのは物理的にではなく、何のために生きてるのかわからない状態でフワフワと過ごしていくってこと。たとえその人が80歳まで生きても、ほとんど誰も覚えていないような生き様のことだよ。どちらがいいと思う?
実は僕も、かつてはこの「嫌われたくない症候群」だった。でも、パリに住んだ時、他人から好かれようとする感覚のない人たちを見て衝撃を受けたんだ。たとえば、パーティーに行く約束をしていても、出かける時に雨が降ってたら行くのをやめちゃう。そんなの日本人にしたら「礼儀知らず」だけど、「自分が人生の主人公」であることを優先してるということなんだ。でも、ただ自分勝手なわけじゃない。一方では、パーティーに行かないことで、相手をビックリさせたいって気持ちもある。相手の予測を裏切って驚かせることも、相手との関係を新鮮にするクリエイティブなことだと考えているんだ。
そんな価値観に触れて、僕も40代になってから「100%人に好かれたい気持ちを半分以上捨てよう」いや「9割の人に嫌われてもけっこう。そのかわり、1割の人をクリエイティブに10倍楽しませたい」と思うようになった。100のエネルギーを、100人よりも10人に注いだ方が、ずっと深い交流になる。わずかな人を徹底的に感動させるんだよ。そう考えれば、嫌われることなんか恐くなくなる。
他人の力を借りて怒ってもらえばいい
でも、たとえ嫌われることが恐くなくなったとしても、次は「怒る行為がうまくできない」と感じるかもしれない。それなら、何も無理して自分で怒らずに人の力を借りればいいと思うんだ。誰かの所に連れて行って新人研修をするとかね。
あなたがもしも東京在住なら、僕からのオススメは月・木・金曜日の朝6時半頃、新宿中央公園に部下を連れて行くこと。世の中から嫌われている、公園に住むホームレスたちが「530(ごみぜろ)部隊」として、公園と周辺を掃除してるんだ。居場所のない流しのホームレスのために炊き出しをする活動だって続けてる。そこでみんな一緒に掃除と炊き出しをさせる。すると、ホームレスたちに交じって話し始める人と、会社の人間とだけ固まってる人とに分かれるんだよ。実はここで人間性が表れる。遠巻きにタバコを吸ってるようなヤツは、人を蔑むろくなヤツじゃないんだよね。
もしくは特別養護老人ホームへ連れて行って、痴呆症のお年寄りの世話をさせてみるといいよ。ご飯を食べさせたり、究極はお風呂に入れてみるとか。もちろん、あなたが率先してやらないとダメだけどね。1日だけだと単なるお客さんになっちゃうから、3日くらい通えば先方も本気で使ってくれるよ。そういうのを受け入れてくれる施設は、気合いが入ったおふくろさん的リーダーがいるから、ばんばん本気で怒ってくれるよ。
基本的に今時の若い子たちって、父親にも怒られないで大事に育てられてる。怒られてむすっとしてると言うより、注意のされ方や怒られ方がわからないんだよ。親と子、担任教師と生徒、直属の上司と部下っていう縦の関係より、関連セクションの先輩や課長のような、「斜めの関係」から怒られるのが案外いいんだ。父親よりおじさんに叱れらた方が効き目があるようにね。しかも社会全体の風潮が平和で優しくなってきてるから、爽やかに怒ることができる人は稀少。だから、あなたが格好良く怒れなくて当たり前。外との関係をつくりながら揉んでもらって、人の力を借りて怒ればいいんだよ。