プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。 「自分の無力さを認めることそれが大きな力を生む」上川隆也さん(俳優)
上川隆也●中央大学経済学部在学中の1989年に演劇集団キャラメルボックスに入団。1995年、NHK70周年記念日中共同制作ドラマ「大地の子」に主演。2006年のNHK大河ドラマ「功名が辻」では主役の山内一豊役を演じた。 2009年7月、演劇集団キャラメルボックスを退団。2010年には「ヘンリー六世」で、第18回 読売演劇大賞 優秀主演男優賞を受賞。主演ドラマ「ORANGE〜1.17 命懸けで闘った消防士の魂の物語〜(仮)」が2015年1月19日(月)にTBSにて、「最後の証人」が1月にテレビ朝日にて放送予定。
2014年12月10日

20代はキャラメルボックスの看板役者。
ドラマ「大地の子」の主役に抜擢されたのは、
29歳の時だった。
このドラマは一世を風靡し、
上川氏は、人気俳優の仲間入りをする。
どうして活躍することができたのか。

初主演ドラマで出会った2人の役者がすご過ぎて、自分が消しくずのように思えた

僕の話は参考になるでしょうか。なぜなら20代の僕は役者で食べていこうとは思ってなかったんですから。目標がなかったんです。こうなりたいという指標がなかった。当時はいろいろとアルバイトをしていました。そのうちの一つが芝居だったんです。

ところがやってみたらすごく面白かった。それで初めて劇団を探して本格的に芝居を始めたのが24歳の時。劇団で学んだ事は今の僕の礎です。でも目的はまだ定まっていなかった。演劇を純粋に楽しんでいたに過ぎなくて、先々の姿なんて、全く想像もしていませんでした。

転機となったのは、29歳でNHKドラマ『大地の子』に参加したことです(注:主人公の中国残留孤児役)。中国でのロケも含め、のべ10カ月にわたる撮影だったんですが、僕にとってこれが2本目のドラマ出演。海外へ行くのも初めてでした。

まず驚かされたのが中国の大地の広大さ。初渡航の機内から見えた、地平線の向こうにまで広がる耕地に圧倒されました。それを見た時、自分の悩みやこだわりなんて小さいなと。そして広い大地にぽんと置かれた瞬間に、舞台しか知らない僕の矮小(わいしょう)な経験や主張は通用しないことも思い知らされました。

さらに幸せだったのは、ご一緒した俳優の仲代達矢さん(注:日本人の父役)や朱旭さん(注:中国人の父役)と共演させていただけた事。お二人の演技が凄過ぎたんです。そのレベルが想像を絶する程高く、ただただ圧倒されてしまって、自分がまるで消しくずのような存在に思えました(笑)。

でも、今思うとすごくいい経験をしたと思います。たかだか5年程の自分の舞台経験なんか通用するわけがないと、あきらめがついたんですから。つまり自分の無力さを自分で認める事ができたんです。

話すだけでは何の結果も得られない。結局、やって見せるしかない

ならば、どうするか。自分の残されたのは、目の前のことをやる、それだけでした。10カ月のロケの間は、監督に要求されているものにだけこたえようと、腹をくくりました。

そうして過ごすうちに、自分のような端くれでも、役者を続けさえすれば、僕なりの道を見つけることができるかもしれないと思うようになりました。あのお二人のように、高いところまでいけるかどうかはわからないけれど、続けることには意味があるんじゃないかと。

無力さを認めるって大事なことだと思うんですよ。それが作品に寄り添うことにもつながるから。今でも監督の言うことと自分がやろうとしている芝居が違った時は、自分がやろうとしていた芝居はすぐに捨てます。そして「こうでしょうか」とやってみせる。監督に違うと言われたら、またやって見せる。それを繰り返す。監督が納得いくまでやり続けます。もう、やるしかないんですよ。そこで論じてもしょうがない。話すだけでは何の結果も得られない。結局、やって見せるしかないんですよね。


上川氏は今、『真田十勇士』という
舞台に挑んでいる。
ビジネスパーソンにも
絶大な人気を誇る
戦国の雄・真田幸村の役だ。

自分にこだわりすぎない。己の小ささ、無力さを認めることが大事。

舞台で芝居をするときも、舞台の上でいろいろ試します。初日の幕があいてもずっとです。毎日いろんなことを試します。失敗したらなんて考えません。うまく行かなくても、それをその日の、もしくは明日からの舞台に活かせば良い訳ですし、そのことで思い悩んでもしょうがない。日々試行錯誤し続けることが大事なんだと思っています。これはやはり『大地の子』のロケで学んだ事かも知れません。

でもそれは僕だけじゃないですよ。共演者をはじめとする、みんなの創意工夫があって、今日より明日、明日より明後日と、より面白いものをつくっていける。これは舞台に限らず、ドラマでも映画でも同じ。そんな雰囲気のある現場は、回を重ねるたびにどんどんどんどん面白くなっていきます。 自分にこだわり過ぎず、己の「今の弱さ・足りなさ」を認める。それがいい作品を作っていく第一歩だと思っています。

リーダーも部下も強いだけの人間ではない。それを認めていくことが強さを生む

今回の舞台は、『真田十勇士』という戦国最強の武将と恐れられた真田幸村とその家臣たちの物語です。幸村は確かにリーダーですが、支えられている存在でもあります。幸村も家臣たちも、決して強いばかりの人間ではない。完全な形ではない男たちなんです。完全じゃないことを認めている家臣たちと、そのままでいいんだと言ってあげられるリーダー。だからこそ、家臣はそれぞれのやり方でリーダーを支えていこうと考える。幸せな相互関係がそこにはあります。そういう組織は強いですよね。

役者って自分一人じゃ何もできないんです。でも相手の役者さんがいて、カメラさんや照明さん等のスタッフさんがいて、ようやく作品になる。誰一人として欠くべからざる存在です。お互いがお互いのいいところを認め合う。それぞれがそんな風に思っている現場は、時として途轍(とてつ)もないエネルギーを生みます。僕はとても現場が好きで、現場にいる時にはいつも上機嫌だと言われますが、それはまさにそうした現場の持つエネルギーや空気を感じられるからなんです。それは、本当に有難いことだと思っているんです。

information

【撮影:阿久津知宏】

『真田十勇士』
上川隆也主演

舞台『真田十勇士』が2015年新春に再演決定。物語は戦国の世、大阪冬の陣からはじまる。詭計策略で知られる名将・真田幸村(上川隆也)と彼のもとに集まった10人の勇士たちの気高い志と情の物語。忠を尽くし、義を貫き、愛と仲間を信じた熱き男たちの生き様を描いている。ビジネスパーソンに絶大な人気を誇る幸村。部下の心をつかんではなさない幸村の考え方・生き方から、理想のリーダー像を感じる人も多いはず。自分の生き方に疑問を感じている人に勇気を与える舞台だ。

出演/上川隆也、柳下大、黒川芽以、 葛山信吾、山口馬木也、松田賢二、渡部秀、相馬圭祐、小須田康人、粟根まこと、鈴木健介、吉田メタル、俊藤光利、佐藤銀平、玉置玲央、三津谷亮、賀来千香子、里見浩太朗ほか 脚本:中島かずき 演出:宮田慶子 東京公演:2015年1月8日(木)〜1月25日(日)東京・赤坂ACTシアター他、名古屋、大阪、福岡でも公演。
チケットスペース 問い合わせ 電話03-3234-9999
上川隆也主演「真田十勇士」公式サイト : http://www.sanadajuyushi.com/


EDIT/WRITING 高嶋ちほ子 DESIGN マグスター PHOTO 川上尚見
ヘアメイク 麓直美(HAIRBELL) スタイリスト 黒田匡彦

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