プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。 「思いついたことを、すぐにやってみる。その先に、「リアル脱出ゲーム」の成功があったんです」加藤隆生さん(クリエイター)
かとう・たかお●1974年生まれ、岐阜県生まれ、京都府育ち。同志社大学卒業後、京都の印刷会社に就職。出版部門での編集や営業を経て2年で退職。その後、ミュージシャンを目指しバンド「ロボピッチャー」を結成。2004年にフリーペーパー「SCRAP」創刊。2007年に誌面と連動したイベント企画のひとつとして開催した「リアル脱出ゲーム」が、京都・大阪で好評を博す。2010年に拠点を東京に移す。2011年5月には東京ドームで開催され、3日間で1万2245人を動員した。2014年1月には東京・六本木ヒルズで『楊貴妃の涙を探せ!』(1月1日〜1月31日)、沖縄・宮古島で『封印された島からの脱出』(1月18日〜2月11日のうちの10日間)を開催予定。
2013年12月04日

東京ドーム公演では
約1万人を集客した「リアル脱出ゲーム」。
その生みの親が加藤隆生氏だ。
さまざまな謎を仕掛けるクリエイターである一方、
大規模イベントを企画する
会社の経営者でもある。
面白いものをつくる上で、
彼が大事にしているものとは?

新卒で入った印刷会社を 2年で退職。28歳まで家でゴロゴロ

仕事で大事なのは、「思いついたことを、すぐにやってみる」ことじゃないでしょうか。ありがちですけど、結局みんなやらないんですよ。「忙しい」とかいろんな理由をつけて。でも、実際に動いた人は、ほとんどうまくいっている気がします。必死で動いたのに大失敗した人って、あんまり見たことがない。よく才能があるから成功したんだっていうけど、そうじゃない。やったからうまくいったんです。それだけの違いなんですよ。

僕の場合もそうです。ミュージシャンになりたいと思ったから、新卒で入った京都の印刷会社を2年で辞めました。退職すると言ったとき、会社の人が「ミュージシャンなんて安定しないよ。考え直したら」って、引き留めてくれたんです。でも、自分が音楽に向いてなかったとしても「才能がないこと」を確認したかった。才能があったかもしれないと思って過ごすのはつらいでしょう? そのまま40歳過ぎて、子どもに「お父さん、実は才能あったんだよ」ってボヤくのは嫌だなと(笑)。

それで会社を辞めて京都で音楽活動を始めたんですが、すぐに仕事があるわけじゃない。28歳くらいまでは、家でゴロゴロしてました。おやじからはパラサイトって呼ばれてましたね。「おい、寄生虫」って(笑)。

その後、28歳で「ロボピッチャー」というバンドを組んで、2年後にメジャーデビューをしたんですけど、売れませんでした。年収は100万円くらい。でも、不安はなかったですね。失うものは何もなかったし、一応ミュージシャンっていう肩書はあったから、「定職に就くのはちょっとねえ」って言えたでしょ。音楽という目標があったから、何をしていいのかわからないって悩むこともありませんでしたしね。

「リアル脱出ゲーム」は、音楽活動の費用捻出のために始めた

その後、自分たちの音楽活動を宣伝するために、フリーペーパーを作ろうと考えたんです。「SCRAP」という名のフリーペーパーなんですが、継続するには印刷代やら紙代やら、いろいろ費用がかかる。そのためにイベントを始めました。その中の一つが「リアル脱出ゲーム」だったんです。音楽活動を宣伝するためにフリーペーパー、その費用捻出でイベント開催と、自分の中では流れがあったから、音楽以外の仕事でもモチベーションが下がることはなかったんですよ。

初回の「リアル脱出ゲーム」は6年前、京都で開催しました。お客さんは150人ほどでしたが、最初から大盛り上がりで、いけると思った。その後、大阪でイベントの規模を拡大してみたら、そのチケットもすぐに売り切れた。その後3年ほど大阪を中心に開催して、「東京に進出してみよう」と。結局、その時々で思いついたことをすぐに試していたら今の場所に行き着いた、という感じなんです。

「リアル脱出ゲーム」が本職だと思うようになったのは、3年ほど前からです。よみうりランドでの「夜の遊園地からの脱出」というイベントで、1万人のお客さんを集めることができた時ですね。その後に神宮球場、そして次の年に東京ドームでの公演が決まった時には、「俺は、この道でやっていくんだ」と。音楽では来ることができなかった東京ドームに、別の形で来ることができたわけですから、やっぱり嬉しかったですね。


今では、すぐにチケットが
完売してしまうほどの
人気イベントを次々と生み出す加藤氏。
しかし、ずっと勝ち続けてきた
わけではないと言う。
最初のころは、赤字を出した公演もあった。
なぜ、勝てるようになったのか。

年収100万円だった自分が「参加したい!」と思えたら本物

まずは、自分がやりたいことをはっきりと形にすること。そして自分が面白いと思うものは、きっと世の中に受け入れられると強く願うことです。

もちろん、外すこともありますよ。今回は評判がよくなかったなということも当然あります。こればっかりは、やってみないとわからない。僕には事前に勝敗がわかるほどの才能はありません。でも、批判されて初めて、「こういうのはダメなんだ」とわかる。それを次からやらなきゃいいだけなんです。その都度、ノウハウがたまっていきますから、段々勝率は上がっていくんです。

企画を考えるときには、「自分だったら、動くか?」を、いつも自問しています。「リアル脱出ゲーム」を知らなかった20代の自分が、年収100万円だった自分が、チラシを見て行きたいと思うか。流行っているからお客さんが来てくれるとか、人気の漫画と組んだから大丈夫だろう、と思っていては企画を見る目が曇ってしまいます。流行りとか、人気作品とのタイアップというのは、あくまで付加の要素。まず、企画そのものが面白くなくちゃだめなんです。

そんな風に思うようになったのは、やっぱり大きな失敗があったからです。まだ「リアル脱出ゲーム」を始める前のこと、大阪城野外音楽堂で音楽イベントをやって、一晩で400万円の赤字を出したことがありました。それまでの貯金が全部パーになって、無一文になってしまった。

それまでそこそこ上手くいっていたのは、イベントそのものが面白いわけじゃなくて、自分たちが呼んだアーティストにたまたまお客さんがついてきていただけのこと。結局、イベントそのもの、つまり「根っこ」の部分が面白くなかったら、成功しない。いくら宣伝してもお客さんは来てくれない。「面白さがゼロの企画には、何をかけてもゼロにしかならない」ということなんです。

「なんでこのチケットを即買いしたんだっけ」に、適職のヒントがある

僕は飢餓感ってすごく大事だと思うんです。満たされない心をかりそめの何かで埋めるんじゃなくて、満たされないことをじっと感じてみる。そして本当は何がしたいのか、自分に何が足りないのかを考えてみる。そこから作りたいもの、やりたいことが見えてくる。その「やりたいこと」が自分だけじゃなくみんなが求めているもので、まだ世の中にないものだったら、億万長者になれます。でも、その最初の扉は、やっぱり「やりたいと思ったことを、すぐにやってみる」ことなんですよ。

何がしたいのか思いつかない人は、自分が選んだもの、好きなものの理由をとにかく掘り下げてみるといいと思います。衝動買いしてしまったものでもいい。「なんでこのイベントのチケットは即購入したんだろう」って。そうすると自分が心から欲しているものがわかってきます。そうやって掘り下げていくことが、クリエイティブの原点だし、仕事選びのヒントでもあると思うんですよ。

information
『魔法禁書エンラッドからの脱出 −奪われた力を取り戻せ−』

優秀な魔法使いであるあなたは、生死の均衡を壊す黒の魔法使いと長い戦いを続けていた。そして最後の戦いが終わった時、呪いにより魔法禁書エンラッドに閉じ込められてしまった……。脱出するには、すべての謎を解き明かすしかない。時間内にすべての謎を解き明かし、無事脱出することができるか? 魔法の本からの脱出するという新しい発想の「リアル脱出ゲーム」が2014年1月17日(金)〜3月23日(日)まで、東京ドームシティ・アトラクションズ「マジクエスト」で開催される。詳細はhttp://realdgame.jp/まで

EDIT/WRITING
高嶋ちほ子
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

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