プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。 80歳になっても、熱湯風呂に入りたい。どんな状況でも、どんな立場になっても 上島竜兵さん(ダチョウ倶楽部、お笑い芸人)
うえしま・りゅうへい●1961年生まれ。兵庫県出身。お笑い芸人、ダチョウ倶楽部のメンバー。テアトル・エコー養成所、青年座を経て、太田プロに所属。「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」や「スーパージョッキー」などでブレイク。2006年から志村けんがライフワークとして挑戦し続けている舞台「志村魂」に出演。著書に『人生他力本願』(河出書房新社)などがある。2012年5月、太田プロの後輩たちと結成した「竜兵会」の著書『サラリーマン芸人』(双葉社)が発売された。
2012年5月16日

芸歴約30年。ダチョウ倶楽部のメンバーとして、
またリアクション芸人として
確固たるポジションを築き、
多くの後輩芸人、大物たちから
愛され続ける上島竜兵さん。
どうやってキャリアを積み上げていったのか。

二日酔いで仕事をしても、嫌われなければ格好のネタになる

一番は、人との巡り合わせですね。人との出会いがあったからこそ、オレはこうしてお笑いの仕事を続けていられるんです。例えば、よく酒を飲んでいる「竜兵会」のみんな。土田(晃之)くんに有吉(弘行)くん、劇団ひとり、デンジャラスのノッチと安田(和博)ほか。仕事がないころは、みんなで毎日のように高円寺の居酒屋で飲んでいたもんです。

今でこそ、みんな忙しくなったけど、昔はヒマだったからね、オレ自身も。リーダーだけ海外ロケの仕事が入って、1週間ずっとヒマ、なんてことがあるわけ。そんなときにDVDで映画やお笑いの舞台を観て勉強する人もいれば、おねえちゃんと会う人もいて…、ま、いろいろあるんでしょうけれど、オレの場合はみんなとワイワイ言いながら飲んでいたわけです。みんな本気でオレに突っ込んでくるもんだから、言ってみれば番組を収録しているみたいなもので。次の現場へのつなぎになった。それがあったから、間が空いても次の収録でさっと現場の雰囲気に入ることができたんです。別に意識してやっていたわけじゃないけどね。オレ、そんな計算できないから(笑)。ただ、楽しくて飲んでいただけだけど、今思えば、そういう人たちにずいぶん助けられてたんですよね。

最近は、後輩が活躍しちゃって、あちこちの番組で竜兵会、竜兵会って言ってくれるもんだから、みんなで『サラリーマン芸人』という本を出すまでになった。有り難い話しです。

もちろん、ダチョウ倶楽部のメンバー、志村けんさん、ビートたけしさんにもずいぶんお世話になりました。すごい人たちにかわいがってもらえて、本当についていると思うんだけど、自分から何かした覚えはなくて、なんとなくそういう出会いが降ってきたような気がします。言ってしまえば、自分はそういう人との巡り合わせの運がいいんでしょうね。だからって、それを意識してきたわけじゃないし、ましてやそれを利用しようとか、そんなの全然、無理(笑)。

ずっと自然体できちゃった感じがするんですよ。もちろん全く努力してないというわけじゃないですよ、こんなオレでも。プロなんだから、ある程度はやっていて当たり前だから。でも、一方で、「まあ、いっかな」って自分を許すことも考えている。例えばオレが二日酔いで舞台に立って、お客さんに「上島のやつ、二日酔いでやっているな。汗のかき方が尋常じゃないだろ」と突っ込まれたとしても、開き直って「こんなオレはなかなか見られないよ」と言いたくなるんです。本当はダメだけど(笑)。

こんなこと言っていたら、仕事をもらえなくなるかもしれない。プロなら絶対言っちゃいけないことです。でもそれが、いい意味でネタになればいいと思うし、それをネタにしてくれるほかの2人のメンバーやほかの芸人さんたちがいるから助かります。それも自分の運だと思う。それで笑いが起きるかどうかは別ですけど(笑)。

人には得意分野がある。だからオレは熱湯風呂に入るんです

『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』のころから、身体を張ったリアクション芸人のイメージが定着しました。今でもディレクターさんやほかの芸人から、本当に打ち合わせなしの、“無茶ぶり”をされます。当然、頭は真っ白ですよ。なんとかウケて終わった時はまだいい。でもスベっただけで終わったら、「なんでこんなこと振るんだよ!」と腹が立ちます。

でも考えてみれば、オレは幸せなやつなんですよね。オレはやっぱりそういう無茶ぶりで生きる芸人なんですよ。バンジージャンプの現場にいたら、オレが飛ばなきゃいけない。オレがやると面白いんだから、やらなくちゃ。でも、バンジーは本当にこわいから、許してほしいって事前にスタッフに言っときますけどね(笑)。

まずありえないとは思いますが、「MCやってください」と言われてオレがきっちりアナウンサーみたいに仕切ったら、くそ面白くないでしょ。しきれる実力もないと思うし(笑)。グッチャグッチャになってボロクソに言われて終わったほうがオレの魅力が出るし、視聴者も満足すると思います。みんなそれがわかってオレに無茶ぶりしてくれてるんです。それをイヤだって思うのは違う。これがオレの仕事なんだって思わなきゃいけないんです。

20代前半のころは、ちょっと勘違いしていたんですよね。「リアクションなんかで笑いを取りたくない」「熱湯風呂なんて入りたくない」と思っていた。オレみたいなヨゴレ芸人がね。この腕で、しゃべりで、ネタで、笑いをとりたかった(笑)。

でも『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』でわかったんです。たけしさんみたいにまさしくそういう才能を持っている人が、自分から体張って笑いをとりにいって、オレたちの情けないリアクションを見てゲラゲラ笑ってくれていた。それを見ていたら「自分の考えは間違っていたな」と。目の前に熱湯風呂があったら入る、オレはそれでいいんだ!と思えるようになりました。お笑い芸人はみんな、そうやって自分の笑いを探していくものなんだと思います。


志村けんさんとの共演歴は長い。
5月下旬から始まる、舞台「志村魂」には
ダチョウ倶楽部として出演し、
もう7年目になる。

やりかた次第では、“志村けん”にも勝てるはず

志村さんはさんざん苦労して、自分の笑いを作り上げてきた人です。それだけに志村さんのコントでは演技力がすごく求められる。これから始まる舞台「志村魂」にしても、ダチョウ倶楽部のやるコントとは全然違います。

例えば、酔っぱらいの演技について志村さんが言ったことに感動したことがあります。電車のなかで志村さんが演じる酔っぱらいが寝ていて、それを駅員が「もう終電ですよ」と起こしにくるというコントです。志村さんは、例えば娘の結婚相手に会ってきた酔っぱらいと、会社で昇進したばかりの酔っぱらいとでは、駅員に対する絡み方が違うと言うんですよ。そこまで細かく考えている。なるほどなあと思うし、一緒にいてすごく勉強になります。

でも、その土壌で勝負しても志村さんにはかなわない。やっぱり芸人さんによって笑いの取り方が違う、ってことです。志村さんには志村さんの笑いがあるし、オレにはオレの笑いがある。あれもこれもと欲張らず、自分の笑いをとっていけばいいと思っています。志村さんも、オレがリアクション芸で認められているということをわかってくれて、そういうシーンを用意してくれます。そこはオレの腕の見せどころだから、絶対に外せません。そういう自分の場所みたいなものをできるだけ早くわきまえないとね。まさかオレがコントで志村さんに勝てるはずがないけど、熱湯風呂やおでん芸では、オレのほうが勝てそうな気がするんです(笑)。あの志村けんにも、ですよ。それってすごいことじゃないですか。

80歳になっても熱湯風呂に入りたい

お笑いを辞めたいと思ったことはないんですよ。この世界を辞めたらやることないから、辞めたいとは思わない。実際、「辞める」ということのない仕事でもあります。仕事の依頼がなくなったとしても、自分が「辞めてませんよ、ネタだってまだ書いているし」と言い張ったら、この仕事は現役ですよね。

ただ、自分が芸人として惨めな姿は見せたくないと思っています。仕事が減るぐらいは別にいいんですよ、それはネタにできますから。70歳,80歳のヨボヨボのじいさんになっても熱湯風呂に入る、それもいいんです。

でも、それが年寄りいじめみたいに見えてしまったらいけない。だって、お客さんが笑えないですもん。それなら、年を取ったことを逆手にとって、熱湯なのに「あー、いい湯だ」と言って肩までつかるとか、「熱っ!」といった瞬間に入れ歯がポーンと外れるとか、そういう風にもっていきたいなと。惨めな姿では、お客さんが引いてしまいます。どんな状況でもどんな立場になっても、やりようがあるってことです。いい意味で開き直ればね。

information
志村けん一座 第7回公演
『志村魂〜「先ず健康」〜』

上島さんが出演する志村けん一座の舞台が7回目を迎える。第一幕はおなじみの『バカ殿様』とコントライブ、第2幕は志村けんによる津軽三味線、芝居は新作『先づ健康』(松竹新喜劇)が披露される。「今年は、かつて『志村けんのだいじょうぶだぁ』でおなじみだった志村さんといしのようこさんのコンビが復活するのも見どころです。舞台での志村さんはとにかくパワフル。バカ殿様、コント、三味線、お芝居に、演出や音響、舞台装置まで志村さんの手によるものです。テレビでは味わえない、”生志村”をぜひ見にきてください」と上島さん。
出演/志村けん、ダチョウ倶楽部、いしのようこ、桑野信義ほか 脚本・総合演出/ラサール石井 脚本/朝長浩之 監修/志村康徳 企画制作/アトリエ・ダンカン 会場/天王洲 銀河劇場 日程/2012年5月31日(木)〜6月10日(日)
詳しい公演情報、お問い合わせは東京音協(東京公演)03-5774-3030まで。

WRITING
東雄介
EDIT
高嶋ちほ子
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

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