プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。 仕事が面白くない人は、自分を認めるところから始めるといい
 柳澤大輔さん(面白法人カヤック 代表取締役)
やなさわ・だいすけ●1974年、香港生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメント入社。1998年、学生時代の友人2人とともに合資会社カヤックを設立。2005年に株式会社に組織変更。音声専門のコミュニティサイト「こえ部」や絵画の測り売りサイト「ART-Meter」など独創的なwebサービスを運営する。「サイコロをふって給料を決める」サイコロ給や、国内外に一定期間オフィスを設置する「旅する支社」などユニークな社内制度でも注目を集める。近年は飲食事業やプロジェクト開発もおこなう。おもな著書に『面白法人カヤック会社案内』(プレジデント社)、『アイデアは考えるな。』(日経BP社)などがある。
2011年9月21日

毎年100以上の独創的なWebサービスを
世に送り出す面白法人カヤック。
その原点にあるのは、
「何を」するかより「誰と」するか。
20代から絶大な人気を誇る代表の柳澤氏に、
働き方のヒントを聞いた。

“会社そのものが面白いコンテンツ”の会社を作りたかった

カヤックはいつも「何をするかよりも、誰とするか」を大切にしています。まず、誰と組むかを決めて、やりたいことはその後に考えるんです。僕は高校時代に現CTOの貝畑(政徳)と、大学時代に現CBOの久場(智喜)と出会いました。こいつらと何かしたいという気持ちが起業を考えるようになったきっかけです。ウェブのコンテンツを自分たちの手で作ってみたいという思いは共通していましたが、何をするかは当時全く話したことがない。じゃあ何を話していたかというと、いわゆる「組織論」でした。こんな会社だったら面白いんじゃないか、と。そこで生まれたのが、会社そのものを面白いコンテンツにしたらいいのではというアイディア。それが面白法人カヤックの原点です。

起業準備の期間だと考えて、大学卒業後2年間は会社員生活を送りました。人には、「わかってないけど、志に向かって進める人」と、「イメージができて初めて志に向かって進める人」の2パターンいると思いますが、僕は後者なので。起業する前に「会社」というものを知っておきたかったんです。

2年間の会社員生活では、組織の論理を学びましたし、成功体験も積んで、起業する自信もついたと思います。でも自分が面白いと思うことを形にするには、自分で起業するしかないと再確認しましたね。すでにある組織を自分の理想に近づけていくのは、時間がかかりすぎるんです。上のポジションに立てばまた違うのでしょうが、それまで待っていられなかった。

それから、やっぱり人なんですよ。僕は、一緒に仕事をしたいと思える人と働きたかった。それが貝畑と久場だったんです。今、3人で創業してから13年がすぎて、社員は150名近くになりました。みんな、僕が一緒に仕事がしたいと思える人たちです。彼らに共通しているのは、性根が素直で「変わり続けることができる」ということ。チャレンジできる人と言い換えてもいい。なぜチャレンジできる人がいいのかって、僕自身が成長したいからですよ。僕が仕事をするのは、突き詰めれば成長するため。去年できなかったことが今年できるようになるのも成長だし、会社の業績が伸びるのも成長です。僕は最後までチャレンジをし続けたい。チャレンジって、常に危険と隣り合わせです。ここでしくじったら会社がコケる。振り返ってみれば、会社創立以来、そんなわかれ道の連続でした。初めて人を採用した時、やめてほしくない人がやめてしまった時、資金繰りに行き詰まった時。僕だってごく普通の人間ですから、不安とは常に隣り合わせです。

でも「もうこのぐらいでいいだろう」とは絶対に思いたくないんです。だからこそ、こういう会社が必要だったともいえます。チャレンジする社員ばかりが周りにいれば、自分もやる気を出さないわけにはいきませんよね。こいつすげえなって尊敬できるような人間に、自分も尊敬されたいと思う。そうお互いに思えるような人間を集めたのが、面白法人カヤックなんです。

「今年1年失敗していません」というのは、何もしていないのと同じ

繰り返しますが、チャレンジには失敗がつきものです。というより、チャレンジなんてほぼ失敗するんですよ。「今年1年、何も失敗していません」というのは、何もチャレンジしていないと言っているのと同じ。ですから、カヤックには失敗を評価する文化があります。それは人事制度にも反映されていて、半年に1度の360度評価の機会に、その人の失敗を挙げてもらっています。

失敗を恐れない文化を作るという意味では、ブレインストーミングが役に立っていますね。ブレストの多さは、カヤックの特徴のひとつです。ブレストは会社の活力を上げてくれます。どんな意見も否定しないで、相手を肯定する。質よりも量を優先する。だからこそ、どんな意見でも恐れず口に出せる。そして、単純な思いつきでもすぐ形にしてしまうんです。皆さんが「カヤックらしい」と評価してくださるユニークな社内制度も、そうやって生まれました。例えば「サイコロ給」は、3人で創業した当時からありました。起業前にさんざん言われたんです、「友人どうしで起業すると絶対金でモメるぞ。やめておけ」って。それならモメないような仕組みを考えようと。給料日前に全社員がサイコロをふって出た目の%分、給料がプラスされる。給与なんてサイコロで決まるぐらいがちょうどいい、その程度のものなんだというわけです(笑)。また「スマイル給」は毎月ランダムに割り振られた相手のよいところを評価する制度です。例えば、ものすごく察しがいい社員には「阿吽の呼給」という評価がついたりしました。このフレーズは給与明細にも記載されるんですよ。ただ、これだけで会社の雰囲気が大きく変わるなんてことはありません。でも、お互いほめ合うような環境なら、きっと気持ちよく働けるじゃないですか。それだけでいい。ダメだったらやめればいい。実際、廃止した制度なんて山ほどありますよ。

自由な環境ゆえの厳しさも社員たちは感じていると思います。例えばカヤックには“仕事に対して真剣な人”しかいない。これはつらいです。自分がうまくいかない責任をダメ上司に押しつけることができませんから。クリエイティブのハードルも高い。どれだけ時間をかけていいコンテンツを作っても、もっといいものを思いついたら、それを捨てて「もう一回やろうよ」となる。世の中にお手本となるような会社もありません。それだけ自主性が求められるということですね。でも基本的には、社員の多様性を認めているんです。それこそ「自分から作りたいと思うものはありません。でも言われたことは完璧にこなします」という人も、ひとつの自主性を持ったプロフェッショナルのあり方です。つまり、なんでもOKなのです。ただ、「何かをつくりたい、面白いことをするチームの一員になりたい」という思いはもっていてほしいと思います。


“面白くあること”を自らに課す柳澤氏。
では、面白く働くために、
もっとも大切だと考えていることは何だろうか。

どんなかたちであれ、評価してくれる人がいたら、人は頑張れる

仕事というものは、他人の評価がすべてという世界でもあります。人に評価されなくたって自分の好きなことだけするという人生があっても構わないと思います。でも、こと仕事に限った話をするなら、人からの評価は避けて通れません。そして他人に評価されていない状態では、どんな仕事をしたって面白くないものなんです。「頑張れ」といわれたって無理です。ですから「仕事が面白くない」という人は、誰かに評価され、楽しくなるという仕組みをつくるところから始めないといけない。

もちろん、なぜ評価されないのか原因を見つけて、それを取り除く努力をすることは大切ですよ。でもその上で、どうにもならなかったとしたら…。これはもう、どうしようもない自分を一回受け入れて「これでいいんだ」と認めることだと僕は思います。これが出発点。そうやって自分を好きになってあげなかったら、きっともともと持っているポテンシャルの半分も発揮できないでしょう。

自分を受け入れて、堂々と構えてみる。するとね、「なんだあいつ、失敗しているのにどっしり構えてるな。すげえじゃん」と目をつけてくれる人が1人や2人出てくるものなんです。ほら、これも評価のひとつじゃないですか。どんなかたちであれ、自分を評価してくれる人がいたら、人は頑張れる。僕だってものすごく評価されたい。ほかの代表2人も、150人近い社員たちもそう。みんなにすげえって言われたい、みんなをびっくりさせたい。結局それが、面白く仕事をするということにつながっていくと思うんですよ。

information
アイデアは考えるな。
柳澤大輔著

「サイコロ給」に「スマイル給」「旅する支社」といったユニークな社内制度に加え、年間100以上発表される独創的なWebサービスを提供する。若者に絶大な人気を誇る「面白法人カヤック」のクリエイティビティは、どのようにして生まれるのか。「すごいアイディアなんて、ただ考えているだけでは出てこない」「すごいアイディアをひとつ出すために、100個のすごくないアイディアを出す」「アイディアがたくさん出れば、仕事が楽しくなる」と本書の中で柳澤氏は語る。企画術のみならず、面白く働き、面白く生きるノウハウも学べる一冊だ。
日経BP社刊

EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
東雄介
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

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