プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。

20代のうちは、「お金を払ってでもやりたい仕事」に就くといい

本田直之さん(レバレッジコンサルティング株式会社 代表取締役社長兼CEO)
ほんだ・なおゆき●明治大学商学部産業経営学科卒。シティバンクなど3社の外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画。常務取締役としてJASDAQ上場に導く。現在は日米のベンチャー企業への投資事業およびレバレッジ・マネジメントのアドバイスを行う。日本ファイナンシャルアカデミー取締役、コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング取締役、米国Global Vision Technology社取締役を兼務。東京、ハワイにオフィスがあり、年の半分をハワイで過ごしている。著書に『レバレッジ・リーディング』『レバレッジ・シンキング』『レバレッジ時間術』『レバレッジ人脈術』など。最新刊は『本田式サバイバル・キャリア術』(幻冬舎刊)。
2009年3月25日

少しの力で最大限の効力を発揮する。
著書『レバレッジ』シリーズは、
累計100万部のベストセラーとなった。
ビジネスパーソンのカリスマ、
本田直之氏に聞く。

あえて流されてみる。そうするといい波がやってくる

今、ビジネスパーソンに必要なのは、「サバイバル能力」です。「変化対応能力」と置き換えてもいい。これまでは、さほど劇的な変化が起こらない時代でしたから、そんな能力がなくともなんとなく対応できていた。しかし、100年に一度の不景気だと言われている今は、次から次へと思ってもみないことが起こるわけです。有事にいかに対応できるか。これが生き残りのカギを握っています。

しかしながら、日本のビジネスパーソンの中で、この時代を渡っていけるだけの「変化対応能力」を十分に備えている人がどれほどいるか。世界全体で見ても、日本のビジネスパーソンの「変化対応能力」は極めて低いという調査結果が出ています。

では、この激動の時代を生き残るにはどうしたらいいのか。まずは、自覚することです。今は、安定なんかない時代なんだ、と。そうすれば、ある日突然、会社が倒産したとしても、「そんなもんだよな」と冷静に受け止め、平常心で対応することができます。

そして次に、自分のキャリア・パスを縛りすぎないこと。昔は目標とする職種を1つ決め、逆算してやるべきことを割り出し、それに沿ってキャリアを積んでいく「キャリア・デザイン」という考え方が主流でした。しかし今のような変化の時代には、そのやり方だとあまりにリスクが大きい。だってせっかく1つに絞っても、その職種自体が変化し、なくなってしまうかもしれないのですから。

ただ、縛らないといっても、方向性を決める大きな目標は持っていたほうがいいでしょう。私自身、「30代で起業したい、ハワイで暮らしたい」と大学生のときに夢を描き、それをずっと大きな目標にしてきました。そのときに考えていたのは、せいぜい「経営力をつけよう」くらいでしょうか。「起業のために何歳でこれをやって、いつまでにこんな資格を持って…」というように、細かく決めてはいませんでしたね。

大きな目標は持つけれど、たどり着くまでの道のりは固定せずに、流れに乗って柔軟に対応していく。こういうキャリア形成の仕方を、「キャリア・ドリフト」(drift=漂流)というのですが、アメリカでは、このやり方で成功している人が実に多いんです。

特に世の中のことが見えていない若いうちは、キャリア・パスを決めつけると可能性を狭めてしまうことになりかねない。だから、あえて流されてみる。しばらく流されていると、そこにいい波がやってきます。転職や留学といった、人生の中で何度か訪れるチャンスのことです。その波を察知して、乗るか乗らないか、自分の意思で判断していけばいい。

大事なのは、そのときの判断基準です。それは、自分の能力を高められるかどうか、ということ。間違っても、年収、待遇、社会的地位、安定などではありません。

特に20代はそうですよ。常に自分を高められる場所にいて、能力を磨いておかないと、チャンスがきても波に乗っかることなんてできませんからね。

経営者になってつくづく思いますが、会社って、本当に有難い存在なんですよ。会社員でいる以上、大したリスクもなく、いろんなことを経験させてくれるし、学ばせてもくれる。事業に失敗したって、借金を背負うわけでもない。やる気さえあれば、いくらだってレベルアップできる場なんです。それなのに、年収で選ばなくともいいじゃないですか。

私がMBA留学から帰国したとき、数社から内定をもらいました。でも、選んだのは、その中で一番給料が安い会社でした。留学で貯金は使い果たしていたのに、です(笑)。

そんな選択をしたのは、その会社でやりたいことがあったから。そして、その会社で働くことが、自分のためになると思ったから。今でもその選択は正しかったと思っています。

20代のうちは、「お金を払ってでもやりたい仕事」に就くといい。金銭面で少々、周りと差がついても大丈夫。そういう仕事の選び方をしていれば、30代、40代で取り返せますよ。キャリア形成は、短期ではなく長い目で見ることが大切なんです。


本田氏は、数多い著書の中で、
「自己投資」の重要性を説いてきた。
今まさに、それをしてきたかどうかが
問われる時代となった。

自己投資を「したつもり」になっていないか

この不況下で、「自己投資」の重要性は明確になってきたと思います。会社帰りに同僚と飲んでグチばかりいっていた人と、早く帰って「自己投資」をしてきた人。不況というライトの下、両者の実力は明らかになりました。

しかし中には、「自分はいろいろと勉強していたのに、結果が出ない」と首をかしげる人もいるかもしれません。そういう人は、「勉強のための勉強」をしていないでしょうか。

「自己投資」をする上で気をつけなくてはならないのが、「したつもりになっている」ことです。勉強しただけで実際に使っていなくては、何の役にも立ちません。いわゆる「言うだけで何もできない人」になってしまうんですね。そういう人は、役に立たないばかりか、頭でっかちになってしまって、非常に扱いづらい。周りからは「一緒に仕事をしたくない人」という評価を下されてしまう場合が多いんです。

ですから、「これはいい」と思ったことは、必ず実践してみてください。私は午前中2時間を読書にあて、1日1冊必ずビジネス書を読んでいます。そして、いいと思ったフレーズは、必ず紙に落として持ち歩くようにしています。何かの折に実践するためです。いくらいい教えでも、自分で試して、自分用にカスタマイズしていないと使えません。「勉強→実践→カスタマイズ」という作業を経て、初めて知識は自分のものになるのです。

何かを変えると頭が柔軟になり、意外な発見がある

もう一つ、「自己投資」をする上で気をつけなくてはならないのが、時代に合っているかどうか、です。高度成長期のように「残業」が自己投資になった、なんて時代もありますが、今そんなことをしていたら自滅です。

今の時代は基礎体力をつける時期なんですね。前出の「変化対応能力」も、基礎体力といえるでしょう。その力をつけるために、私が今、課題としているのは「リデュース(Reduce、減らす)、リセット(Reset、やり直す)、リビルト(Rebuild、再生する)」です。

具体的にいうと、本などいらないものをどんどん減らし、身軽になること、これがリデュース。今まで行っていた習慣ややり方をいったん止めてみること、これがリセット。そしてリビルトは、止めたやり方の代わりに、新しいやり方を生み出してみることです。

人は、経験を積めば積むほど、固定観念にとらわれがちになります。でも固くガチガチな頭では、何か変化が起きたときに、足をすくわれてしまう。だから、何か新しいことをして、常に頭を柔軟にしておくことが大切なんです。

通勤の経路を変えてみる、長年通っていた美容院を変えてみる、など、小さなことから始めてもいいと思います。変えてみると、頭が柔軟になるだけでなく、意外な発見があるんですよ。そうすると面白くなって、どんどん大きなアウェイに挑戦したくなる。そうなれば、しめたもの。激動の時代を楽しめるようになりますよ。

information
『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』
本田直之著

「私自身が、究極の面倒くさがり屋なんですよ」という本田氏。「面倒くさい」と思うことは決して悪いことではなく、技術の革新やサービスの向上は「面倒くさい」という思いから端を発することも多いという。しかしながら、面倒なことを放置したり、無計画に物事を進めてしまっては、面倒なことがどんどん大きくなり、どうにもならなくなってしまう危険性も。そこで本田氏は「面倒くさいからこそ、あえて『小さな面倒』をやっておく」ことを提唱。自身が試行錯誤して身につけた、やっておくべき『小さな面倒』をわかりやすく紹介している。大和書房刊。

EDIT/WRITING
高嶋千帆子
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

自分の「こだわり」を活かせる企業に出会うために、
リクナビNEXTスカウトを活用しよう

リクナビNEXTスカウトのレジュメに、仕事へのこだわりやそのこだわりを貫いた仕事の実績を記載しておくことで、これまで意識して探さなかった思いがけない企業や転職エージェントからオファーが届くこともある。スカウトを活用することであなたの想いに共感してくれる企業に出会える可能性も高まるはずだ。まだ始めていないという人はぜひ登録しておこう。

スカウトに登録する

会員登録がまだの方

会員登録(無料)

会員登録がお済みの方

「今すぐ転職」にも「いつかは転職」にも即・お役立ち!リクナビNEXTの会員限定サービスに今すぐ登録しておこう!

1転職に役立つノウハウ、年収・給与相場、有望業界などの市場動向レポートがメールで届きます

2転職活動をスムーズにする会員限定の便利な機能

・新着求人をメールでお届け

・希望の検索条件を保存

・企業とのやりとりを一元管理など

3匿名レジュメを登録しておくとあなたのスキル・経験を評価した企業からスカウトオファーが届きます

会員登録し、限定サービスを利用する

※このページへのリンクは、原則として自由です。(営利・勧誘目的やフレームつきなどの場合はリンクをお断りすることがあります)