プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。

恋愛も仕事も一点加重主義。集中すれば、どんな壁でも穴が開く

高樹のぶ子さん(作家)
たかぎ・のぶこ●1946年、山口県生まれ。東京女子大学短期大学教育学科卒業後、出版社勤務を経て、80年に『その細き道』で作家デビュー。84年『光抱く友よ』で芥川賞、99年『透光の樹』で谷崎潤一郎賞を受賞。その他、『マイマイ新子』『百年の預言』など多数の著書がある。2001年より芥川賞選考委員。2008年より日本経済新聞で上海を舞台にした恋愛小説『甘辛上海』を連載している。
2009年1月14日

恋愛小説の名手である。
これまでずっと恋をしてきたという高樹氏が、
初めて恋愛エッセーを上梓した。
若い人に、もっと恋をしてほしいからだという。

恋を重ねると、人間力がついてくる

最近は恋をしない女性が増えているでしょう。それはもったいないことだと思うんです。恋をすると心も体も活性化し、細胞がイキイキしてくる。相手の世界を知りたいと思って好奇心が湧き、新しいことにどんどん挑戦したくなる。背伸びすることで向上心も生まれ、いろんなスキルが自然と身についていく。そして、何度も恋を重ねることで人としての幅が広がり、人間力も養われるんです。こんなに素晴らしいことはありません。

恋をしない女性の多くは、「きっかけがない」というけれど、私は女性の側がもっと積極的になってもいいと思うんです。

男性から断られると一瞬振られたような形になります。でも全く気にしなくていいんです。だって、そのことでほとんどの男性は喜んでいるんですよ。人が喜ぶことはいくらしてあげてもいいでしょう(笑)。女性の場合は、興味のない男性から言い寄られたり、触られたりすることに嫌悪感を抱くことがあるかもしれません。でも男性の場合、女性が好意を示してくれたことに対して、嬉しいと思うことはあっても、嫌だと思う人はまずいません。相手がどんな女性であっても、そうなんです。

だから「あなた素敵ね」とか、「あなたのそういうところ、好きよ」と、思ったことをどんどん口にすればいい。素敵だと思えない人にまで無理に言う必要はないけれど、少しでもいいなと思ったら素直に言うべきです。それこそ、同時に複数の人に言ってもいい。昔はプレイガールなんて言われ方をしたけど、何にも悪いことではないんです。

それで、100人くらいに声をかけたら、2人くらいは成就しますよ。ずいぶん確率が低いと思うかもしれませんが、基本的に恋愛はなかなか成就しないものなんです。私もずっと恋をしてきましたが、本当に素敵だなと思った人とは、なかなかうまくいかなかった。でも、もともとうまくいかないものだと考えると、気が楽ですよね。

それに声をかけておくと、そのときは反応がなくても、時間が経ってから相手が思い出してくれることもある。だから思っているだけではなく、行動を起こすことがすごく大事なんですよ。

辛さは100%味わったほうがいい

恋愛癖が身についたら、同時に、失恋してもめげない癖をつけておきましょう。人生にはいいときもあるけど、悪いときも必ずある。でも、そこから逃げちゃダメ。辛いことがあったとき、中途半端に忘れようとするのが一番良くない。何事も突き詰めると事態は反転します。だから、辛さは100%味わったほうがいいんです。

大丈夫。辛い状況はそう長くは続きません。心底辛い思いをしたとき、人は何とかして立ち直ろうとするものです。寝込んで、泣いて、わめいて。でも、そんな状態が続くのもせいぜい1日か2日。だっておなかがすくでしょう。食べると「おいしいな」って思う。生物的にいっても、心底辛い状況を長く続けることはできないんです。

そうやって、何度も自分で立ち直っていると、いつの間にか「胆力」が身についてきます。困難に出会っても動じない力のことです。これは、人生のあらゆる場面に役立ちます。胆力のある人は、新しいことへの挑戦を恐れない。何度も立ち直った経験が自信となってその人を支えるからです。

それなのに、傷つくことを恐れて行動を起こさない人が、いかに多いか。私だって傷つくこと、多いですよ。この年になると、「100人に2人」の確率がもっと悪くなりますから(笑)。でも、傷って、悪いことばかりではないんです。人生の栄養や知恵は、傷口から入ってきて心の奥に届くんですよ。


作家としてデビューしたのは、34歳のとき。
きっかけは離婚だった。
相手を傷つけてしまった痛みから、
書きたい衝動に駆られたのだという。

悪いのは自分と言い聞かせたほうが、いい結果になる

離婚の原因は、私にあるんですね。ほかに好きな人ができましたから。でも、人を傷つけてしまった痛みを自分の中に押しとどめておくことはできなかった。子どものこともありましたから。非常に自虐的な気持ちで小説を書き始めたんですね。まさに背水の陣です。

恋愛なら、どんな別れ方をしてもフィフティ・フィフティ。でも、離婚は別。私の場合は一方的に私が悪い。だから、それを一生抱えていこうと覚悟したんです。

離婚はね、本当は100%どちらかが一方的に悪いなんていうことはないんです。でも、自分が100%悪いと考えることで、立ち直ることができる。人は、他人からつけられた傷の痛みより、自分から飛び込んで傷ついた痛みのほうが耐えやすいんです。

だから、悪いのは自分、相手は全く悪くない。そう自分に言い聞かせたほうが、その後の自分自身の人生がうまくいく。そういう人のほうが魅力的ですしね。

一点加重主義で、これまで突き進んできた

きっかけは背水の陣でしたが、今の私にとって小説を書くことは、生きることそのものなんですね。飲んだり食べたりすることと同じです。

思えば小さいころから、自分の考えを人に話すのが好きでした。「聞いて聞いて」って、周りの人を捕まえては、考えを聞いてもらっていた。ですから、30年近くこの仕事を続けることができたのは、やはり好きなことだったからだと思います。

仕事は自分ができることではなく、やりたいことで選んだほうがいい。できるかどうかは、後で考えればいいことですから。

私はずっと一点加重主義で、ここまできました。どんなに非力でも、全体重を一点にかけると壁に小さな穴くらいは開くもの。そこから穴を少しずつ広げていくんです。

これは、恋愛においても仕事においても同じです。無我夢中で一点に集中して体重をかける。それができるかどうかで、結果が全然違ってくるんです。

そのためには、自分を信じること。そして、大義を持つといい。お金や地位のためとか、よこしまなものがあると迷いが生じます。迷うと一点加重ができません。自分のしていることは人のためになる。そう信じている人は強いんですよ。

information
『うまくいかないのが恋』
高樹のぶ子著

30年近く恋愛小説を書き続けてきた高樹のぶ子さん初の恋愛エッセー。題名にもある通り、「恋愛とは、そもそもうまくいかないもの」だという。しかしながら、「苦しさ以上の喜び、楽しさ、成長、活力を人に与えてくれるもの」でもある。本書では、恋愛体質でいることの素晴らしさが語られるとともに、成就する恋の見極め方、うまくいかない恋の乗り越え方、失恋した際の立ち直り方も伝授。「恋愛に『待てば海路の日和あり』はない」「男はストック要員を持ちたがる」「二人だけの秘密ができたら、恋の成功率は高まる」「一所懸命に仕事をしていると恋愛がついてくる」など、恋愛にも仕事にも役立つ話が満載。目からウロコが落ちること、間違いなしの一冊だ。幻冬舎刊。

EDIT/WRITING
高嶋千帆子
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

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