「周りから『向いている』と言われる仕事。実は苦手で逃げたい」【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!

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曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。

CASE22:「周りから『向いている』『得意そう』と言われる役割が、実はあまり好きではない…」(29歳男性・システム開発会社勤務)

<相談内容>
ITエンジニアとして今の会社に勤めて6年。最近、自社製品の販促セミナーや業界のイベントで登壇者として話したり、顧客企業に営業同行して、プレゼンテーションを任されたりといった、「前に出て発言する仕事」が増えてきました。周りにも、「○○さんの話は要点を捉えていてわかりやすい」「発言力がある」などと言われるのですが…実はこれらの仕事が好きではありません。それどころか、はっきりいって苦手だし、できればやりたくありません。

私自身はエンジニアとして、開発に没頭するほうが好きだしやりがいを感じるのです。前に出る仕事も、上司からの命令だしほかにやってくれる人がいないから仕方なくやっているだけ。でも、そろそろストレスが溜まってきました。思いっきり開発に没頭できる会社に転職するか、もしくは上司に業務変更願いや異動願いなどを申し出たほうがいいでしょうか?(ITエンジニア)

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

他社から「スティーブ・ジョブズ」を探してくる

 自社製品の販促セミナーや業界のイベント、顧客へのプレゼンテーション…どれも自社の売り上げを左右する、重要な役割ですね。

 本気でイヤならば、「肝心な場面で、ちょっとばかり失敗してみる」という裏の手を使えばすぐに外されるとは思いますが、きっと相談者は責任感が強く、苦手な仕事でもうまくこなしてしまうのでしょう。

 前に出て話す業務が本当に嫌で、逃げたいぐらいなのであれば、「あなたよりしゃべりがうまい人」を見つけて連れてくるという方法があります。

 アップルの共同経営者であるスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックは、ジョブズがプレゼンテーターでありアイディアマン、ウォズニアックはエンジニアと、互いの個性を発揮し、補完し合いながら会社を大きくしていきました。それをあなたも真似すればいい。つまり、ウォズニアックであるあなたが、「あなたにとってのジョブズを連れてくる」のです。

 他部署からでもいいし、違う会社に勤める友人でもいい。「自分よりもデキる!」と思える人を見つけたら、「すごくプレゼン上手で、イベント登壇回数も多い人がいます。きっと私の何倍も、自社サービスのことを正しく魅力的に伝えられます」などと、人事責任者や社長に進言してみてはいかがでしょうか?最近は、リファラル採用(社員による紹介採用)の動きが広まりつつありますから、「自社で活躍している社員の紹介ならば…」と前向きに検討してくれるのではないでしょうか。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「実はエンジニア適性が高くない」という可能性はないか?

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 もしかしたら…ですが、ITエンジニアなのにイベントやプレゼンばかりに駆り出されているのは、「あなたに適性がある」以外に別の理由があるのかもしれません。つまり、「実は、あなたのエンジニア適性があまり高くない」という可能性です。そして案外、その可能性が高いのではないかと私は思っています。

 どの会社においても、開発現場は人手が足りない状況が続いています。いくらほかに適任者がいなくても、開発能力に優れている人をたびたびイベント要員、プレゼン要員に放出する上司はいないでしょう。

 相談者は「開発に没頭したい」とのことですが、ここは現実を直視する意味でも、思い切って上司に「エンジニアとしての自分の評価」を聞いてみることをお勧めします。上司に聞きにくければ、同じ部署の先輩や同僚に「本当のところ、僕のエンジニアとしてのスキルってどう思う?」などと質問してみてもいいかもしれません。その結果、「エンジニアとしては普通じゃない?」「正直言って、入社2年目のあいつのほうがきれいなコード書いているよ」などとズバリ言われてしまうかもしれませんが、それが現実です。真摯に受け止めましょう。

 この場合、「ならば、エンジニアとして評価くれる会社に転職する」という方法はあまりお勧めしません。たとえ別の会社に採用されても、「この人は、前に出て話す能力のほうが断然高い」と早晩気づかれるでしょう。今と同じことを繰り返すだけだと思いますよ。

 相談者はもっと自分に自信を持つべきです。IT知識が豊富で開発もできて、かつプレゼン能力や登壇者として発言するスキルも高い相談者のような人は、希少価値があります。無理に開発に専念するよりも、今の役割のほうが高く評価され、年収も上がるでしょう。目をそらさず、エンジニアとしての自身の評価と向き合うことで、「自分が活きる道はここだ」という覚悟が固まると思いますよ。

アドバイスまとめ

周りの評価は、意外に正しい。
素直に受け止め強みを伸ばしたほうが市場価値は上がる。
そして成果が上がれば、今より仕事が好きになるはず!
EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭
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