100社を超える企業のブランディングを手掛けた男が語る、不変の信念とは

1990年代「ブランド」といえば、それは一部の高級なファッションブランドのことでした。そんな時代に、いち早くブランディングの必要性を感じ、株式会社エフインクを27歳で立ち上げたのが、現在(2017年)代表取締役を務める萩原房史。以来続けてきた企業も社会もハッピーにする真のブランディングに迫ります。

※本記事は、「PR Table」より転載・改編したものです。

つくって終わり、では何かが足りない。本当のブランドづくりはなんだ?

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「何億円もかけて、企業理念やシンボルをつくって、そこでゴール……。それは、なんだか違う」__。

この疑問が、株式会社エフインクの代表取締役 萩原房史の起業のきっかけでした。

1980年代後半、大学を卒業した萩原は、コーポレートアイデンティティをコンサルティングする会社にアートディレクターとして入社。企業理念を構築し、その理念を表すシンボルマークや名刺などCIを築くシステムづくりに携わっていました。

時はCIブーム。大手では、ミノルタやブリジストン、NTT、JRが一斉にシンボルデザインを新たに構築。企業側のニーズがどんどん増えるなか、サポートできる会社が数社しかないうえに、CIは1業種1社が基本。ひとつのプロジェクトの予算が10億円というのも日本では普通でした。

萩原「そんな環境で仕事をしていたし責任を与えられたから、まぁ死ぬように忙しい。朝8時に出社して翌朝3時に退社するような生活。学びも多かったしノウハウも身についたので、それもよかったんですが(笑)。でも、ふとある疑問を感じたんです」

疑問は、労働環境ではなく仕事の“本質”でした。

萩原「何億円もかけて企業の理念をつくり、新しいシンボルなど会社の顔立ちを整えれば、経営は自ずとよくなっていきます。しかし、その発表がある意味ゴールになっていた。でも本来は、そこがスタートではないかと思ったんです。メーカーなら良質な商品開発だったり、小売業なら一つひとつの店舗の空間づくりを展開したり、育てることではじめてブランドになる。だから、僕自身は、つくって終わりではなく、その先のフォローまでやっていきたい。そんな会社をつくりたいという想いが、ふつふつと生まれてきたんです」

20代半ばの萩原は、さっそく起業の準備にとりかかりました。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「ブランド?何を言っているの?」お客様の問いにこたえ続けた四半世紀

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まず、取り組んだのはプロダクトや空間を知ることでした。商品開発や店舗、建築についても、自分自身が知らなければディレクションもプロデュースもできない。ちょうど知人に声をかけられ、建築の設計など空間デザインも手がける会社の設立に参加しました。それが1989年。「もちろん、いずれ自分の会社をつくりたいと伝えていた」という萩原は、その1年後、1990年にエフインクを起業しました。

萩原「創業当時は“ブランディング”という言葉はほとんどなかったと思います。本屋で見つけたブランディングについて書かれた新書に、僕がCIをやっていたころに感じていた矛盾が書かれていました。それを読んではじめて、僕のやろうとしていることはこの“ブランディング”ということなんだと思った(笑)それが1991年でした」

それ以来、萩原は“ブランディング”の重要性をお客様に伝えることに注力。しかし、ブランドとは大手企業のもので、自分たちには関係ないという会社も多かったり、取り組んだとしても新しいロゴをつくって終わりだったり……。ブランディング自体が、どんなことを指しているのか、その概念を理解してもらうことに時間がかりました。

萩原「ようやく10年くらい前から、会社規模が小さくても、自分たちのブランディングをして社内に浸透させ、社会に存在意義を伝える。そしてその価値を多様な表現や手法を使って体験を与える。それがブランディングだと認識される方が増えてきたような気がします。さらにいえば、最近ではその必要性を感じている方が多くなってきた」

萩原はこう分析します。ブランドは時代によって変化している。昔、CIブームのころは、企業を統一するための考え方やスタイルを浸透させていくという意識だったのに対し、いまのブランドはお客様に体感してもらうために、さまざまなサービスや機会を提供すること。要するに、解はひとつではないということです。

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「成功するまでいっしょにやる。でないとブランディングではないでしょう?

萩原は「ブランディングはすべてオーダーメイド。ひとつとして同じものはない」と断言します。

エフインクが、企業のブランディングをサポートするとき、その方法はふたつ。トップダウン型とボトムアップ型です。トップダウン型は、すでにトップが問題意識と漠然とした解決の方向性、ビジョンを持っているとき。トップインタビューを行ない、ブランディングのために必要なものを一緒につくり上げ、経営陣から会社全体へと浸透させていきます。ユニークなのはボトムアップ型です。

萩原「ボトムアップ型は、どんな方向性があるのか、社員の方とワークショップを繰り返しながら集合知をまとめ上げていきます。これをやりたいという会社が、実はいま多い」

ワークショップは、社内横断的に色々な部署から参加者を募ります。ケースによりますが、4時間くらいのセッションを10回前後行ない、自社の強みなどを共有。理念やビジョンを協議します。ワークショップメンバーには、社長も新入社員もいる場合があるので、みんな同じ立場で意見がいえるよう楽しく進行できることを萩原は常に意識しています。

萩原「ここを楽しくやれると、ブランド自体がキラキラしたものになっていきます。つくるプロセスが楽しくて、つくっているメンバーも楽しくないと、それこそ誰も魅力を感じないブランドになってしまいますから」

実際ワークショップを楽しんだメンバーたちは、プロジェクトが完了すると、ブランドの語り部として活躍します。とはいえ、このようなワークショップは最後にきちんとまとまるのか?失敗しないのか?そこが問題です。しかし、萩原は「失敗は非常に少ない」といいきります。

萩原 「失敗がまずないのは、僕らが諦めずに成功するまでやりきるからです(笑)。基本的にお客様にご満足いただくまで、僕らはやる。そうじゃないとブランディングではないと思っているんです」

必ず成功させる。それがエフインクのブランドなのです。

ブランディングを通して、よりよい社会をつくっていく

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エフインクの強みは何か。そう問われたら、やはりあらゆる意味での“知”の集積だと萩原は考えています。

萩原「僕らは小さな会社だけど、ブランディングを専門として27年間(2017年現在)やってきた会社は世の中に数少ないと思います。あったとしてもそれはCIから継続した企業の累積です。ブランディングという言葉のないころから、それを考え抜いてさまざまな企業のサポートをしてきたから、すべてが僕らの学びになっています」

ブランディングという性質上、扱う企業の業種に限りはありません。さまざまな業界の知見が溜まっていきます。たとえば、凝り固まった不動産業界の常識を変えるために、美容業界のノウハウ活かしてみようという発想をも生み出します。つまり案件を重ねるごとに“強み”は増えていくのです。

さらに、萩原が「エフインクのもうひとつの強み」と自負するのは、エフインクのスタッフそのものです。

萩原「うちのスタッフの基本的なスタンスと姿勢が素晴らしい。プランナーでないからプランニングはわからない、デザイナーでないからデザインはわからない。そういう人はひとりもいません。ブランディングこそ一人ひとりが横断的にものごとを考えられる、そんなスキルが必要なんです」

そして、萩原は、自分たちの活動をこう捉えています。

萩原「僕たちは、お客様から依頼されて、多くのカスタマーに価値提供するためのブランディングを手伝います。その価値提供が成功すれば、企業もハッピーだし、カスタマー、つまり社会もハッピーになる。そして、そのクリエイティブに携わった僕たちもハッピーです。まさに、僕らがやっている活動は、ブランディングを通して、より良い社会をつくっていくことだと思っています」

1990年に創業し、2020年には30周年を迎えるエフインク。その節目に新たなスタートをきりたいと萩原はいま構想を練っています。しかし、「より良い社会をつくる」という信念は、どんなに新しくなり続けても不変。これこそが、エフインク自身のブランドの核心なのです。

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