ビジネスの成功要因で注目される「GRIT」――ベリーペイントアーティストの都愛ともかさんに、その秘訣を聞いてみた!

ビジネスの成功要因に、努力と才能がまずあげられますが、今、注目されているのは“GRIT(グリット)”です。一つの物事に継続して向き合い、完遂する力を意味しますが、挫折せずにやり抜く力を保持するには、一体どうすればいいのでしょうか?

2008年から、当時、日本では認知度の低かった妊婦さんのお腹に絵を描く「ベリーペイント」を始め、普及活動にも力を注ぎ続け活躍する、アーティストの都愛ともかさんに、“GRIT”の秘訣を聞いてみました。

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都愛ともか(とめ ともか)

1987年生まれ。山梨県都留市出身。女子美術大学短期大学部 絵画コース卒業。在学中にフェイスペイントに出合い、NPO法人日本フェイスペイント協会で講師・アーティストとして活動。卒業後、ボディアートの世界大会に数回出場し、特別賞を受賞。画家のアシスタント・似顔絵講師などを経て、ベリーペイントの会社を設立し独立。現在、一般社団法人日本ベリーペイント協会 代表理事として活躍中。

・一般社団法人日本ベリーペイント協会http://belly-paint.jp/) ベリーペイントの施術、普及・啓発活動、アーティスト育成、各種イベント・セミナーなどの企画・開催・運営を行う一般社団法人。

えがき屋 都愛ともか HPhttp://tometomoka.com/

ベリーティペイントを仕事にすると決めた原動力は?

――日本では、認知度が低かったベリーペイントを知ったきっかけは、何ですか?

大学で求人していた、フェイスペイントのアルバイトを始めたことがきっかけでした。卒業後、アルバイト先の研修で、2008年にアメリカのボディアート大会を見学したんですが、そこでやっていた「ベリーペイント」にとても魅力を感じ、「日本で自分もやってみよう!」と思ったのです。

――実際に日本でやってみて、反応はいかがでしたか?

妊婦さんたちに大変好評でした! お客様は、10年間の不妊治療の末に待望の赤ちゃんを授かった方、流産を経験された方など、いろいろな背景や思いを抱えています。「一人目を流産したから、その子が天使になって見ている絵を描いてほしい」と言ってきた方に、その思いや希望を丁寧にヒアリングしてペイントしたら、とても喜んでもらえました。

また、中には「すてきなお仕事ですね」との感想を下さる方や、別のお客様をご紹介くださる方、ペイント後に「私も絵を描くのが好きなので習いたい」と、生徒として習いに来てくださる方もいました。目の前で、お客様が笑顔なるのが見られるのがうれしくて、やりがいを感じてどんどん夢中になっていきました。

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デザイン案を持ち寄って依頼するお客様もいて、これは「“四季ちゃん”の名前にちなんで、春夏秋冬を描いてほしい」との希望で描いたペイントの写真。ベリーペイントには、お客様のいろんな思いが詰まっています。

――妊婦さんの笑顔が原動力となり、ベリーペイントが都愛さんの仕事になっていったのですね。日本での普及活動も、自分の仕事にしようと思ったのはなぜですか?

好きな「絵を描く」ことでニッチな分野だったことと、「アメリカでの経験を生かして、アーティストが仕事として成り立つ方法をつくって広めたい」という使命感を持ったからです。子どもの頃から、「絵を描く」仕事をするのが夢で、始めは漫画家を目指していました。でも、漫画家はライバルが多く、売れっ子になるまでの道のりが厳しいものです。その点でベリーペイントは、これから広める事に可能性を感じました。

また、アメリカのボディアートの世界大会を見学して、ボディアーティストと絵の具メーカー、イベント主催者等が連携し、アーティストが仕事として成立するモデルを目の当たりにしました。日本では芸術分野は「好きなことをしているだけで、稼げない」と言われることが多いですが、「仕組みをつくれば日本でも、アーティストを仕事として成立させられるのでは?」と考えて、自分の仕事にしていこうと思いました。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

2週間で法人設立!――「まずは、一歩踏み出して……」から始まった独立への道

――試行錯誤の上、“ベリーペイント”を軸に、活動していくことを決断したのですね。2013年には、一般社団法人日本ベリーペイント協会を設立しましたが、法人設立のきっかけは何でしたか?

Webの集客ノウハウを学ぼうと、2012年に入った起業塾の先生に「法人にしたらどうか」とすすめられたのがきっかけでした。その頃は、アルバイト先で仕事の依頼を受けていましたが、「自分で仕事を管理して、自分で売り込んでいきたい」と考え始めていました。先生は「アーティスト活動と並行して『講師・生徒育成事業』をすれば、ベリーペイントを習いたい人も支援できて、いいのでは?」とも提案をしてくれました。

――コンサルタントの先生のアドバイスを聞いて、どう思いましたか?

それまでは「アーティスト活動を、仕事にしよう」とぐらいにしか考えていませんでしたが、「会社をつくり、ブランディングを図ったうえで育成事業をすれば、習いたい人にもメリットがあるのでは?」と思いました。そこで、まずは「会社をつくる」ことを目標と決め、2週間後には法人を設立しました。

――都愛さんはゆったりとした方に見えますが、2週間後に法人設立とは、かなりスピーディーな行動ですね!

実はその時、占い師の友人に「会社を設立するのなら2週間後がいい」と言われたんです。そこで、行政書士の先生に相談したところ、2週間で会社がつくれることが分かり、必要な手続きなどを確認して、法人設立に踏み切りました。私は、“悩むより、行動に移すタイプ”なんです。「まずは、考えて悩むより、一歩踏み出してみる」――そのパターンを続けてきました。人との関わりにおいても、出会ってその場で終わりではなく、興味のあることに関係している人には、自分からコンタクトをとっては会いに行ったりしています。

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「人が好き」と話す都愛さん。ご縁を出会った時だけで終わらせず、一歩動くことで、いろいろな発見につなげています。

――まずは、一歩動いてみることが大事なのですね。

そうですね。その出会いが今に、生かされているなと感じます。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

急速に成長を遂げていく中で、力となったものとは?

――個人アーティストとしての活動から法人を立ち上げて5年、事業の規模はどのように変化してきましたか?

設立して1年目のメディアから取材などを機に、雑誌とのタイアップや妊婦さん向けイベントへのブース出展など、いろいろな仕事をご依頼いただくようになりました。BtoBでのペイント活動や、BtoCのCM・広告制作といった、アーティスト活動に関しては、年々取引先の規模や種類が拡大しています。

講師・生徒育成事業に関しては、私が直接教えた200名前後の生徒から、講師に17名、アーティストに160名ほどがなり、協会に登録してくれています。今は、登録しているアーティストをWebに掲載して、仕事の紹介をしています。

――4年間で、急速に成長しましたね。「稼げない」と言われる分野で仕事をするにあたって、不安や大変な事はありましたか?

不安は、常にありました。でも、絵を描く仕事をするのが子どもの頃からの夢だったので、美大に進学した時点から「仕事として成立するかはわからないけど、やりたいことをやろう!」という覚悟をもっていました。卒業後すぐにアーティスト一本でやっていけるとも思わなかったので、在学中に美術の教員免許もとりました。実際、卒業後の1年間は、地元の中学校で非常勤講師をしながらのアーティスト活動でしたね。

大変だったことは、2014年1月に、NHKの情報番組『あさイチ』での紹介をきっかけに、依頼が急増した時です。月間の予約数が1件だったのが30件に増え、1日3件のペイントの依頼を受ける日もあり、番組放映から3カ月間、休めない日々が続きました。当初は、帳簿作成や電話対応などの事務作業も、すべて私1人でこなしていたので大変でした。でも、辛くても好きだから続けられたし、好きなことのためなら頑張れました。

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1人目のお子さんを事故で無くしてしまった後、2人目を妊娠したお母さんのおなかに描いたペイント。「一人目の子も天使になって、みんな一緒にいるよ」のメッセージが込められています。

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かわいがっていたペットの猫が死んだ後、生まれ変わりのように間もなく妊娠したというお母さん。思い出を聞きながらペイントしました。

――“好き”という気持ちが、“続ける力”になるのですね。

都愛ともかさんの“GRIT”には、2つの秘訣があった

――これまで9年間続けてこられた、都愛さんの“GRIT”の秘訣は何でしょうか?

私がこの仕事を続ける中で、2つのことを常に意識していました。

1.具体的な行動を通して、やりたいことを明確にする。

比較対象がないと何が一番好きなのかが分かりませんし、好きなものの良さにも気づけません。旅行に出かけたり、人に出会ったりして、視野を広げるといいと思います。また、やりたいことをしていても続かない人は、「本当に、やりたいことなのか?」と改めて、自問することも必要だと思いますよ。飽きちゃうくらいなら、本当にやりたいことではないかもしれません。

私自身、学生時代は「絵を描くことで、どんな仕事をするのか?」に迷いがあり、行動しながら模索しました。漫画家に憧れ漫画を描き、漫画家に会いに行って話を聞いてみたり、似顔絵や商店街のシャッターに絵を描いたりしたこともあります。試行錯誤しながら具体的に行動した結果、ベリーペイントに出合えたんです。

2.具体的な目標を持ち、行動に移す。

やると決めたら、具体的な目標を持ちます。目標がないと、しりすぼみになりますから。そして、目標を立てたら「目標を目標で終わらせない」ことです。「いつ、作る?」「どうやって作る?」と具体的に考えて、行動に移す――仕事でも人間関係でも、まず一歩動いてみることです。思い描いているだけで実際やらずにいる人が多いですが、ちょっとでも動くことで、続ける道が見えてくると思います。

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2014年には、著書『ベリーペイント~いのちのきせき~』を出版。ベリーペイントを始めて9年、“GRIT”で業界を開拓し続けています。

文:Loco共感編集部 原田真里

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