「こんなはずじゃなかった…」から逃れる唯一の方法とは?ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第9回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「会社のイメージと社内の雰囲気が違っている場合は疑った方がいい」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第2巻 キャリア11より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を排出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが・・・。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

面接に行けば、会社の内情はある程度わかる

キャリアパートナーの井野は、初めて担当した転職希望者・山口に有名一流企業ばかりを紹介し、すべての企業から不採用通知を受けてしまいます。気分を害した山口は担当替えを希望。それでも井野は、山口のことが気にかかっていました。山口の勤め先・鳥満商事をもっと調べてみようと思い立った井野は、営業の田口とともに同社を訪問します。

実際に訪ねてみると、井野は鳥満商事が「昭和3年創業の古臭くて地味な商社」というイメージとは異なることに気づきます。対応した営業部長は、新規プロジェクトについて熱く語り、新たに外食産業に打って出ようと、それにふさわしい人材を求めていました。まだ社会人2年目の山口には、会社の本当の姿が見えていませんでした。

営業の田口は、井野に「そこがどんな会社なのかは、面接に行くだけである程度のことはわかる」と話します。たとえば応接室にある調度品をチェックしたり、会社のトイレが綺麗か、面接する人の服装はどうか、といったことからも、会社の内情は見て取れると言うのです。「語っていることと実態が違う会社は、誠実な商売をしていない可能性がある」と話すのでした。

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依然、内部まで見せようとする企業は少数派

今回は、「会社が打ち出しているイメージと実態の違いに注目しよう」というお話です。物語では「取引先の視察」ということになっていましたが、転職を考えている方にとって、「会社の設備などから社内の実情が見える」というのはよい示唆になるのではないでしょうか。もちろん、ビジネスにも応用が可能です。

転職したい人にとって、会社説明会やわずかな面接時間だけで、その会社のすべてを知るのは難しいでしょう。わからなかった部分に関しては、どうしてもイメージから推測して会社を選ぶことになります。

私の知り合いの中には、人事を仕事にしている人がいます。その方の話によると、最近はだいぶオープンな企業も増えてはいますが、「まだまだ入社前の人に社内を見せない企業は多い」と言います。ですから応募者側としては、事前に見るべきポイントを把握しておけば、その分、判断材料が増えることになります。

採用の合否は最初の5分で決まっている?

最近になって、ようやく自社の採用を自分の「右腕」と頼む人に、全面的に任せられるようになりましたが、それまでは社内ベンチャー時代から通算して15年以上にわたり、自社の採用だけは最後まで手放さずに行ってきました。なぜなら、採用が企業の一番の要だと思っているからです。

私の経験からお話しますと、採用面接は最初の5分以内で合否が決まります(もちろん例外もありますが)。だったら残りの時間は何をするのかというと、自社のPRに充てます。「この人になら、活躍の場を提供できる」という人に対して、そのことを存分にアピールするワケです。(逆の場合、すべての質問が敗者復活戦です)

私の会社では基本的に合格までに2回はお会いするようにしています。大企業の中には4次面接まで用意している会社があるようですが、あまり早く決まると応募者もかえって不安になってしまうので、それを取り除く意味もあります。

しかし、本当の目的は、2次面接の形をとることで、会社の良さを知ってもらうPRの時間をもう一度取ることです。
ここでは、自社の中でも活躍している社員との交流会や、経営者の考え方を話す場を設けたりしています。あえて会社のバックヤード(裏方)なども見せることによって、どのような社員がどのような気持ちで働いているのかを見てもらい、応募者がここで活躍するイメージを持ってもらうのです。

永続的な関係性を築くには“信頼”が不可欠

上にピックアップしたマンガの場面は、まさに会社のバックヤードについて述べています。結局、会社の内情を隠していようといまいと、実態は表に現れてしまっている、ということです。

大事なのは、相手との関係性において「事前に極力、ギャップをなくしておく」ことではないでしょうか。私の会社で言うと、採用の2次面接がそれに当たります。そうすることによって、誤解やトラブルをある程度、未然に防ぐことが可能となります。
それが、採用活動の顛末として最も残念な「こんなはずじゃなかった」ということを避けることにもつながるのです。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が12刷となっている。著作累計は35万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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