【働き方に対する意識を変えるきっかけに】アビームコンサルティングが取り組む「Smart Work 推進」とは?

アジアを基点とするグローバルコンサルティングファームである、アビームコンサルティング株式会社。同社では現在、CWO(チーフ・ワークスタイル・オフィサー)の指揮のもと、働き方改革を推進する社内ワーキングチーム「Smart Work Initiatives」(SWI)による活動が始まった。社員の働き方に関してどんな課題感を持ち、どのような取り組みを行う計画なのか?そして、同社が目指す将来像とは?SWIの推進責任者である執行役員の矢野智一氏に、詳しく伺った。

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アビームコンサルティング株式会社 

執行役員 プリンシパル プロセス&テクノロジービジネスユニット FMCセクター長 

矢野智一氏

「仕事に没頭するあまり」の長時間労働。意識変革から取り組む必要性

アビームコンサルティングの経営理念は「Real Partner」。クライアントの変革を実現する“真のパートナー”として、クライアントとともに歩み、課題解決を実現する――という姿勢を示したものだ。

「この理念のもと、当社のコンサルタントは皆プライドを持って、お客様の期待値の“さらに上”を目指すべく日々努力しています。お客様からの期待も大きく、コンサルタントは皆、熱意とやりがいを持って働いています。ただ、ともすればその熱意が、『より良いものを提供するためならば、いくら時間を使っても構わない』という考え方を生みだし、長時間労働につながる傾向がありました。この傾向が続くと、本来評価を行うべきアイディアや成果ではなく『長く働いた者が評価される』という認識につながりかねません。当社では以前からダイバーシティ推進に取り組んでいますが、長時間労働をよしとする考え方の中では、多様な人たちがイキイキ働くことはできません。そこで、早急に働き方に対する考えを変革し、働く環境を整備する必要があると考え、『Smart Work Initiatives』(以下、SWI)の推進を決断したのです」

SWIへの取り組みが本格的にスタートしたのはこの4月だが、これに先駆けて昨年11月より、「毎週水曜日のノー残業デー設置」「深夜時間帯と休日に上司から部下への業務連絡は原則禁止」「18時以降は社内会議室を利用しないことを推奨」など、いくつかの施策を進めている。この結果、昨年に比べて時間外労働時間が月平均で2時間短縮するなど、すでに成果が出始めているが、初めは現場からの反発もあったそうだ。

同社では常に、1000~2000ものプロジェクトが動いており、現場ごとに契約内容や勤務条件、クライアントが置かれている状況などが異なるため、「全社一律でルールを決められても対応できない」との声が多く聞かれたという。

「我々が意図しているのは“水曜日に残業をしない”ことではなく、こういう制約を設定することで働き方を見直すきっかけにしてほしい、ということ。そのため、反発は然るべきだと思っています。ただ、『無理だ』とならず、その後、自分たちのプロジェクトでの最適な形は何か、という前向きな検討を活発にして欲しいと思います。例えば『水曜日の夕方はお客様との定例ミーティングがあるから定時に帰れない』のであれば、金曜日をノー残業デーにしてもいいし、当社の働き方改革についてお客様にご説明し、理解いただいたうえで、定例ミーティングを水曜日の午前中に変更することを提案してみるなど、プロジェクトごとに、自分たちに合った、よりよい働き方に変えるきっかけになればと考えています」

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▲「smart work」推進のための3つの取組みについて、社内にポスターを貼っているほか、社内のデジタルサイネージでも放映、ノー残業デーである水曜日にはメールで全社員に送付し社員へ積極的に呼び掛けている。

今までも、プロジェクトごとの働き方は各プロジェクトに一任されてきた。ただ、それらのルールは、例えば「このプロジェクトのお客様は生産拠点だから、始業時間を8時にする」など、クライアント起点によるものだったという。「これからは、我々起点でも積極的に働き方のルールを提案し、条件交渉にも組み入れることを推奨したい」と矢野氏は話す。

「実際、ノー残業デーの設置を提案に組み込み、『この勤務条件下で最大の成果を挙げる』ということでお客様の了承を得たプロジェクトも出始めています。このような取り組みをピックアップし、皆に共有することで横展開を促したいと考えています」

8,568通り、あなたはどのタイプ?

テレワークの推進で「働く場所・時間」を自由に選択

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一方で、どのクライアントも、自社の課題解決のため、より高い成果を挙げてほしいと願うもの。自社のために長時間働いてくれるコンサルタントを高く評価する傾向も強かった。

ただ、長時間労働を是正する動きは、あらゆる企業において強まっており、クライアント側の認識も徐々に変わりつつある。ノー残業デーや勤務時間の短縮などへの提案も、比較的理解してもらいやすく、「うちもまさに今、取り組んでいる最中なのでよくわかる」と共感されることも多いのだとか。

「私にも経験がありますが、コンサルタントはどこまでも仕事を突き詰めたくなるもの。例えば、最終報告書をまとめているときなど、『あと1時間頑張れば、こんなことも調べられる。あと2時間かければ、これも盛り込める…』などとどこまでも上を目指してしまい、いつの間にか時間が経ってしまうのです。ただ、この行動自体は仕事への熱意やお客様への誠意によるものであり、ここを変えるつもりは毛頭ありません。実際、当社のコンサルタントは皆、その高い働きぶりから、お客様との強い信頼関係を築いています。この姿勢を大切にしながらも、例えば、常駐時間を短縮して、クオリティーを担保しつつコストを低減する策を提案したり、地方のお客様に対して出張コストを減らすためにリモートの比率を高める提案をしたりするなど、契約条件交渉の中に“時間”の概念を加え、今までとは異なる価値を提供してほしいですね。お客様にもメリットがあると示しながら、一緒に働き方を変えていく気概で臨んでもらいたいと願っています」

「異なる価値」を発想するきっかけにすべく、現在導入に向けての準備に注力しているのが「テレワーク」の推進。

「“場所の自由”と“時間の使い方の自由”の2軸で考え、24時間のうち、どの部分を仕事に割り当てるのか、そしてその仕事をどこで行うのか、より柔軟に考えることを推奨しています。例えば、子どものお迎えのために午後早めにオフィスを出て、後は自宅で業務を続けるとか、集中して仕事をするため別の場所に移動して環境を変えてみる、など。より効率的な働き方の実現と、新しい発想の創出につながると期待しています」

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社員一人ひとりが働き方を自由にコントロールし、最大の成果を実現できる未来へ

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同社では、2020年をSWIのゴールの目安に置いている。「そのときに、アビームコンサルティングとしてどんな姿になっていたいか」との問いに対し、矢野氏は「自由であること」を挙げた。

「我々は知的生産を行うプロフェッショナル集団。個々がプロフェッショナルである以上、個々が時間も含めて自身の働き方を自由にコントロールしたうえで、最大の成果を上げることが理想の姿。その結果、今まで以上にお客様が、当社のコンサルタントを信頼してくださる状態を作り上げたいですね。我々とお客様が、互いに尊敬し合い、尊重し合える状態を作ることが、本当の意味での『Real Partner』の実現。コンサルタント一人ひとりが自由にイキイキ働き、成果を最大化することで、お客様の満足度が上がり、さらに信頼をいただけるようになることで、コンサルタントの自由度がさらに増し、お客様がより多くの価値を享受できるようになる――こういうサイクルを目指しています」

同社のコンサルタントは皆、新しいアイディアや、新しい仕組みを考えたりすることが得意だ。SWIでは今後、管理職の意識改革、テレワークなど柔軟な働き方や、評価項目の見直し、複線型キャリアパスの導入などといった、さまざまな取り組みや制度の実行を検討していくが、制度で「縛る」のではなく、考え方を切り替え発想を促す「サポート役」として捉え、一人ひとりの自発的な行動を促す考えだ。

なお、矢野氏はSWI推進責任者として、率先して働き方改革に臨み、プライベートタイムの有効活用に取り組んでいる。

「意識しているのは、社外の方との交流を増やし、刺激を得ることです。私自身、現場にいるときには一つひとつの仕事にのめり込む傾向が強く、時間を気にせず働いた経験もあるし、勤務時間後もメンバーと過ごすことが多かった。それが純粋に楽しかったというのもあるのですが、意識して社外に出て自社にはない視点や考え方に触れることは、新たな価値創出にもつながるはず。働き方を見直して創出した時間を使って積極的に外に出ることで、社内にいい影響を与えられるようになりたいと考えています

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康

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