リクナビNEXTジャーナル

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「理想の暮らし」を追求した先に見えた、働きやすさとは?

子育て、親の介護、自分の老後…私たちは働きながらも次々とライフイベントが発生し、その都度さまざまな課題に直面することになります。

三井不動産レジデンシャル社がCSR活動としててがける「Neighbors Next U26 Project(※以下、U26)」では、マンションを中心としたコミュニティから「子育て」「介護医療」「独居老人の増加」などの社会課題へのソリューションを提案。プロジェクトディレクターである猪股有佐さんは、マンションコミュニティの研究のかたわら当プロジェクトに従事しています。 「暮らし方」を真摯に見直したとき、生活するうえでの不安や不満は、どのように変化するのでしょうか。

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<プロフィール>

猪股 有佐(いのまた ありさ)

1987年年京都府⽣生まれ。株式会社タンデム、および不動産系広告会社に所属するパラレルワーカー。学⽣生時代よりマンションコミュニティの研究に従事。銭湯を中心としたまちづくりをおこなう。 

人と人とをつないで、暮らしの課題を掘り起こす  

——猪股さんが「コミュニティ」に関するプロジェクトをはじめたきっかけを教えていただけますか?

小さい頃から「人と人とのつながり」に興味がありました。子どもの頃に住んでいたマンションが名古屋大学の隣にあり大学関係者や留学生が住んでいたのですが、私の家族以外ほとんど外国人だったんです。母親が非常に面倒見の良い人で日々彼らを手助けしていて、さまざまな人種やバックグラウンドを持つ人たちがいる暮らしはとても楽しいものでした。

そしてその後、両親が分譲マンションを購入するも、住んでみて「つまらないな」と思ってしまったんです。例えば親がマンションの理事会に出席しても「みんなマイナスなことばかり言い合って、何も決まらなかった」と帰ってくる。そんな話を聞きながら「前のマンションと何が違うんだろう」と考えたとき、両隣や上下階に誰が住んでいるのか分からないからだと気付きました。

自分のまわりに誰が住んでいるか分かったほうが毎日楽しいし安心する。“もしものとき”助け合える関係を作っておきたい。そのためにはどうしたら……と考え、学生の頃からコミュニティの研究を始めました。

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▲26歳以下の学生や若手社会人を中心に構成されたメンバーが集まる「Neighbors Next U26 Project」

 

——「U26」の活動について教えていただけますか?

「U26」はプロジェクト運営を統括するHITOTOWAの荒昌史さん、そしてプロジェクトディレクターとして私が関わっています。今年度はオブザーバーとしてクルミドコーヒー店主の影山知明さん、東京R不動産を運営する株式会社スピークの林厚見さんにも参加いただいています。「暮らしの課題」を「社会課題」として捉え、人と人とのつながりによって解決する方法を考えるプロジェクトです。現在は、社会課題を解決するための基盤を作っているような状況ですね。

特にマンションをターゲットにしているため、立地によって築年数も世代構成も全く違い、課題はさまざまです。2016年は「マンションとコミュニティカフェの未来」をテーマに、実際のマンションでのフィールドワークを通じてさまざまな課題を見つけられたので、2017年は場所を変えて同じ築古マンションのコミュニティ形成のお手伝いをしようと話し合っています。

「マンションコミュニティのあり方」に向き合い、一年がかりで追求

——2015年の活動開始後、当初の予想とのギャップや発見はありましたか?

マンション住民のなかには必ず、どうしても出てきてくださらない・出ていけない方がいます。30〜40代の方は忙しいとか人付き合いが面倒という理由が多いですが、70代以上の方はそもそも体を動かすことが辛いという状態。わずかな段差でも転んでしまう人もいるため、どんどん人とのつながりがなくなり、自宅の中へこもってしまうんです。ただ「U26」は、「そういう方もマンションに住んでいるんだ」と認知して、その方たちの交流の糸口も今年度はコミュニティカフェを通じて検討しました。

例えば、2016年にはマンション内に居住者の方と一緒にDIYで屋台を作りました。マンションに住むお子さんや「U26」のメンバーが店員となって、各居住棟まで屋台を持って行き、コーヒーを振る舞う。そこで会話が生まれるので、「昨日は誰とも喋らなかったけど、今日は人と話した」とホッとした気持ちになってもらえたらと思いますね。

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▲マンション居住者とコーヒーの屋台を試作する「U26」メンバー(写真提供:Neighbors Next U26 Project)

 

また、今年度の最終発表会では居住者の方に向けて、マンション内のエントランスホールにDIYで作った様々な机をおいて、住民の偶然の出会いを生むコミュニティカフェの提案がありました。またマンションを学校に見立て、「教室」になぞらえた暮らしを楽しむ提案もありました。これらの提案が、今後マンションで実際にどう活かされていくか今から非常に楽しみです。

マンションって、長く住んでいる方や管理組合の役員についている方に意見を言いづらい独特の雰囲気があるんです。そんななかで「U26」は、誰に対しても素直にマンションへの疑問をぶつけます。すると他の住民の方にとっても、意見や会話が生まれやすい雰囲気となり、コミュニケーションの質が変化し、活発になっていくのでしょうね。それが活動を始めて得た発見でした。

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▲居住者とのヒヤリングや意見交換をおこない、マンションが抱える課題を約1年かけて検討(写真提供:Neighbors Next U26 Project)

 

——他に活動を通して得られた成果などはありますか?

「U26」は、2020年までに自分たちが本当に住みたいマンションを作るという目標のもと活動しています。

マンションって、企画立ち上げから実際の売り出しまで数年ほど時間がかかります。ですから私たちが「マンションを買おう」と思ったとき、そのコンセプトは数年前のものなので「いま本当に欲しいもの」とのギャップが生じてしまいます。なので、きちんと自分たちの暮らしに真摯に向き合い、欲しい家を考え、手にいれることが理想的なマンション選びにつながると考えています。

昨年は「U26」の参加者に「自分たちが理想とするマンションを1年かけて考えてください」という課題を出し活動していました。三井不動産レジデンシャル社と共同で、学生寮のアイディアソンを実施したことも。寮の中に本棚や専用ソフトなどを置いて自由に使えるようにし、多様な学生が集まるという寮の特性を生かして互いの知識をシェアしあえるよう設計したり、田舎の両親に寮の友人が自分の生活を伝える文通システムができたりしました。これらのアイディアは高く評価をいただき、採用の可能性もあるとかないとか。こうした成果が、徐々にできてきていますね。

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仕事でも、「誰と出会うか」「誰とするか」を一番大切に

——「U26」のメンバーにいる若手社会人は、どのようにコミットしていますか?

メンバーの4割は社会人で、彼らにとっては会社とは異なるコミュニティを作れるサードプレイスとして機能しているように感じます。二週間に一度19時半から22時までワークショップがあり、休日はマンションでフィールドワークやイベントというハードな活動内容ですが、みなさん積極的に参加しています。

職業はSEからイベント、不動産、農業ベンチャーまでさまざま。実はもともとコミュニティにあまり興味がない人もいるのですが、実際に一年間マンションの生活に関わることで暮らしに対する価値観がかなり変わっていくようですね。また活動を通してさまざまな事業関係者と知り合えるため、プロジェクトを機にキャリアデザインについて考え、転職を実現するメンバーもいます。

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——「働き方」は「暮らし」に密接に関わる要素のひとつだと思うのですが、「U26」では「働き方」について、どのような視点を持っていますか?

さまざまな要素がありますが、「誰とどう暮らすか」を非常に大事にしていると思います。

「U26」の活動を通して、みんな「一生の仲間ができた」と言うんです。これから先、仕事で悩んだときや新しく事業を始めようと思ったとき、ここの仲間に相談すればいいんだと。仕事において「何を」するかも大事ですが、「誰と」するかを非常に重要視にしていると思います。

いま、首都圏では47%の人がマンションに住んでいて、災害が起きたときや子育てのシーンで誰を頼ればいいのか分からないなかで暮らしています。私自身は首都圏に3つ拠点を持つという暮らし方をしているのですが、住まいを選ぶときには「誰と出会えるか」を一番に考えています。

住んでいる場所にどんなコミュニティがあるかを知っていると、「そこで自分らしく暮らすためにはどうすればいいか」と前向きに考えることができますし、何よりも住んでいて楽しい。そんな「暮らしやすさ」が「働きやすさ」にもつながっていくのかな、と思いますね。

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<WRITING・伊藤七ゑPHOTO:廣田達也>