SWOT分析とは?目的・分析方法や活かし方をプロが徹底解説

SWOT分析とは、企業や事業の現状を分析するためのフレームワークです。戦略や方針を明確にするために有効で広く活用されていますが、実は個人のキャリア戦略にも役立つというSWOT分析の第一人者・嶋田利広さんに、そのやり方と活かし方を聞きました。

SWOT分析イメージ画像
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SWOT分析とは何か

SWOT分析は、1960年代にアメリカで開発されたマトリックスを使った分析方法です。主にビジネスユースで、内部要因である企業の「S:強み(Strengths)」と「W:弱み(Weaknesses)」、外部環境である「O:機会(Opportunities)」と「T:脅威(Threats)」の4項目に整理して分析することから、頭文字をとってSWOT分析といわれています。

SWOT分析では、内部要因と外部要因は下記のような視点で抽出します。

  • 強み:自社が持つ具体的な経営資源(ノウハウや人材、機能、設備、外部ネットワーク、システムなど)
  • 弱み:自社に不足している経営資源
  • 機会:ニッチ市場、ニッチニーズの可能性、今後の伸びしろのある分野、新たなニーズ
  • 脅威:自社の努力ではどうしようもない市場環境の悪化、競合激化、行政などによる制限など

SWOT分析表

8,568通り、あなたはどのタイプ?

なぜSWOT分析が注目されるのか、そのやり方とは

企業の経営戦略を考えるときに、3C分析やファイブフォース、ポートフォリオマネジメントなどいろいろありますが、特にSWOT分析が普及している理由は、外部環境と内部要因を掛け合わせて具体的な戦略にできるからです。

例えば、新たに生まれたニッチニーズという機会に対して、自社の強みをどう組み合わせるか、クロス分析で考えることで積極戦略が生まれます。

クロス分析することで導かれる戦略には、以下のようなものがあります。

  • 「機会×強み」=積極戦略
  • 「機会×弱み」=改善戦略
  • 「脅威×強み」=差別化戦略
  • 「脅威×弱み」=致命傷回避・撤退縮小戦略

8,568通り、あなたはどのタイプ?

SWOT分析を自分のキャリアアップに活かす

こうしたSWOT分析は、これまでビジネスツールとして考えられてきましたが、実は個人の最適なキャリアデザイン構築にも有効です。

「どんな仕事に向いているのか」「今後、どんなキャリアパスを描けばいいのか」、具体的にイメージすることは難しいものですが、機会と強みをきちんと整理することで、オリジナルの戦略が立てられます。自分をブランディングすることで、転職や起業、社内でのキャリアアップにも活かせるのです。

1.機会分析

パーソナルSWOT分析では、会社や職場の方針、転職したい企業が求める行動やスキルを「機会」としてとらえます。主には、以下のようなことをピックアップしましょう。

  • 会社は今後どんな方針や戦略で生き残りを図るのか
  • 自部門の社員にはどういう機能、スキルを求めるのか
  • 転職希望先の企業や業種は今後どんなスキルや機能を求めるか
  • 業界で不足しているのはどんな経験やスキル、資格のある人材か

これらを知るために有効なのが、企業のホームページです。募集要項には書いていなくとも、企業理念や社長メッセージ、IR情報などの欄に今後の企業戦略やどういったジャンルに力を入れていくのか、どんな商品やサービスに独自性があるのかが書かれています。

もし上場企業であれば有価証券報告書を見ると、どんなことに重点投資をしているのかまでがわかります。例えば海外展開とひと言で言っても、中国を強化するのか、アフリカを強化するのかによって、求められる語学力も変わってくる。相手のニーズがどこにあるのかをきちんと把握する機会分析は、パーソナルSWOTで欠かせない視点です。

2.強み分析

強み=長所、弱み=短所と思われがちですが、そうではありません。強みとは「相手のニーズに対して有効なもの」です。下記にある、「自分の強みを知るヒント」10項目を使って、強みがどこにあるのか棚卸をしてみてください。

ヒントに対して、具体的な自分の強みを書いたら、それがどんな分野に活かせるのかを自分に問いかけましょう。難しければ、コーチやメンターにしてもらうのも一つの方法です。ひとりでは気づかなかったことも、人から質問されて答えようとすることでアイデアが出てきます。

【自分の強みを知るヒント】

  1. 転職先企業や該当部門が求めるスキルで、あなたがもっている技能、資格、経験
  2. 他人にもすぐわかる業務上の能力で他の人より秀でていること
  3. 転職先企業の今後の戦略や方向性に使えそうな自分の知識、経験、ノウハウ
  4. ある分野、ある作業でナンバーワンの実務スキル
  5. ある分野、ある作業をしているとき、時間を忘れて没頭してしまうこと
  6. 転職先にもある仕事で、この分野、この作業が好きだといえるもの
  7. 他人の物まねではなく、ある分野、ある作業ではオリジナリティやクリエイティビティを意識していること
  8. ある分野、ある作業の結果、第三者から褒められることが多い
  9. この分野、この作業だったら、自分でマニュアルを作れる自信がある
  10. この分野、この作業だったら、自分が一番早くできる

パーソナルSWOT分析には2つのアプローチがあります。企業が求める人材像や業種特性、今後の経営戦略などから「機会」を見出し、それに使えそうな自分の実績やスキルなどを「強み」として打ち出す。もう1つは自分のもっている実績やスキルなどを「強み」として、それを求める業種や企業にアプローチする方法です。

いずれの場合も機会と強みをしっかり把握し、2つを掛け合わせたところに積極戦略が生まれます。

機会×強みを見つけて自分をブランディングする

ビジネスユースのSWOT分析では弱みも分析しますが、個人では重要度は低いと私は考えています。弱みを是正してバランス型の人材を目指すよりも、強みを伸ばして圧倒的な強みにすれば、社内でも自分ブランドを確立できるし、転職活動でもほかにいない人材になれるからです。

例えば、イラストやデザインが得意でヒントの5番や8番に該当するなら、会議で出たアイデアをイラスト図解にしたり、手描きPOPに起こしたりしてみせることで、周囲に自分ブランドを提示できます。

もっと磨きをかけたいと思ったら、イラスト教室に行ってもいいでしょう。絵が描ける強みを活かせるのは、どんな業種のどんな業務なのかという視点で「機会」を探せたら、面接にサンプルを持っていけばいいのです。

ヒントの2番「他人にもすぐわかる業務上の能力で他の人より秀でていること」としてExcelを使ったデータ集計が得意なら、プログラミング言語のPythonを使ってデータ分析を効率化するデータサイエンティストを目指して勉強するという方法もあります。データ分析経営はこれからますます企業に広がりますから、転職先候補も広がります。

あるいは、Wordのテキストにすることが得意なら、もう一歩踏み込んで、コピーライティングを勉強してみる。人の感情に訴える文章や、誰にでもわかりやすく伝わりやすい文章が上手だったら、プレスリリースなどをつくるPR部門やPR会社など、他の仕事の可能性が生まれます。

ただし、こうした強みも、当該企業や志望している業界が求めているものと関係なければ、いくらアピールしても意味がありません。在職中に自分のスキルや経験を積み、次のステップアップに繋げるように意識しましょう。

人生にも戦略は必要です。折りに触れ強み分析と機会分析を見直しながら、自分ブランドを確立し、最適なキャリアデザインを構築してください。

嶋田利広さん株式会社アールイー経営
代表取締役 嶋田利広(しまだ・としひろ)氏

経営コンサルタントとして37年の実績を持つ、中小企業のSWOT分析指導の第一人者。九州、関西、関東を中心に約400社の経営戦略のコンサルティングや人財教育・研修を行ってきている。「実践SWOT分析ノウハウ」を使えるプロを育成するための「SWOT分析スキル検定」を主宰。『SWOT分析を活用した根拠ある経営計画書事例集』『パーソナルSWOT分析』ほか著書多数。
株式会社 アールイー経営 公式サイト

取材・文:中城邦子 編集:馬場美由紀
記事制作日:2016年11月01日 記事更新日:2022年10月26日
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