働き先に猫を連れていくべきか、置いていくべきか —渡り鳥プロジェクト—

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暑い季節は涼しいところへ、寒い季節は暖かいところへ。快適な環境を求めて移動しながら、どこでも同じように働けることをめざす「渡り鳥プロジェクト」。

連載第6回(前回はこちら)のテーマは「飼っている猫をどうするか」。現在、ニーポンという名のオス猫を一匹飼っているのですが、渡り鳥になって長らく家を空ける場合、彼を「一緒に連れていくか」あるいは「連れていかないか」の二択に迫られます。

そこで、連れていくとしたらどういう移動手段があるか。連れていかない場合はどういう預け方があるか。それぞれのパターンにおいてどんな手段があるのか、今回いろいろと調べてみました。

基本的には犬も同じ条件ですから、犬や猫を飼われている方々に参考にしていただきたい内容です。フリーライター兼ペットグッズも販売しているデザイン会社代表の松岡厚志がお送りします。

選択肢A:猫を一緒に連れていく場合

ニーポンは大切な家族の一員ですから、できれば置いてけぼりにせず、どこに行くにも一緒に連れていきたいと思っています。ただ、わが家はクルマを所有していませんので、マイカーでの自由な移動は難しく、移動手段は公共交通機関に限られます。その場合、猫を一緒に乗せてもいいのでしょうか。だめなのでしょうか。乗せるにしても条件はあるのでしょうか。それぞれ調べてみました。

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交通手段【1】電車

電車は「猫の乗車可」です。JRや私鉄、地下鉄それぞれにガイドラインが設けられていますが、有料または無料で手回り品としてケージに入れて持ち込めます。有料の場合は一律280円。改札口で駅員さんにケージを見せて「普通手回りきっぷ」を購入します(券売機では売っていません)。

また、有料・無料を問わず、持ち込む際はサイズや重量、個数の制限があります。鉄道会社によって若干異なりますが、おおむね「長さ70cm以内で、3辺合計90cm以内のケージ込みで10kg以内」で統一されています。個数は1個または2個まで。これらの条件を外れると持ち込み不可になります。

ケージは猫の全身が入り、頭や手足が外に飛び出ないものであることが条件。電車に限らず、その他の交通手段に共通して言えることですが、いくらガイドライン的にOKでも周囲への配慮は忘れたくないところです。重度の猫アレルギーをお持ちの方もおられますから。

電車:乗車可(無料または手回り品として280円)、ケージ必須

主な有料路線:JR、名鉄、近鉄、南海、京阪、阪神、阪急、西鉄、山陽、りんかい線

※内容は2016年10月24日時点

交通手段【2】新幹線

新幹線も「猫の乗車可」です。どの路線でも手回り品として280円を別途支払う必要があります。乗客の乗り降りが激しい電車や地下鉄とは違い、時間をかけて長距離を移動する方がほとんどのため、より一層、周囲への配慮が求められます。電車と同じくサイズや重量を守ったケージに入れて持ち込み、膝上、足元、またはテーブルの上に置かなければなりません。

たまに猫や犬用にもう一席分の乗車券を手配する方がいるようですが、席は指定席・自由席を問わずペット用に占有できない決まりです。気持ちは分かりますけどね。個人的にもニーポンを連れて新幹線で帰省するときなどは、いつでも目が合う隣の席に乗せてあげて、時おり話しかけるなどして、移動のストレスを軽減してあげたいからです。とはいえ、ルールはルール。

新幹線:乗車可(手回り品として280円)、ケージ必須

交通手段【3】バス

バスは「猫の乗車可または不可」です。可の場合は無料ですが、不可の場合があります。バスといっても路線バスやコミュニティバス、夜行バス、高速バスなど運行形態がさまざまあるわけですが、大別すれば「昼行便は可、夜行便は不可」になります。

夜行バスは長時間、しかも睡眠を伴う乗車になるため、どの運行会社も乗客同士のトラブルを減らす努力をしています。ペットについても同様で、どうしても鳴き声や臭いが気になる方がいますので、長時間の密室空間になることを思うと乗車不可は致し方ありませんね。

一方で昼行便だからといって、絶対にOKとも限りません。ケージに入れるのはもちろんですが、乗車員が「他のお客様の迷惑になる」と判断した場合は乗車を認められない場合があります。電車や新幹線以上に空間が狭く、乗客同士の距離も近いため、ケースバイケースの判断になるようです。

個人的にはニーポンをバスに乗せたことはまだありませんが、確かに少々ためらいますね。ケージを置ける場所も限られますし、サイズ的に膝の上をはみ出しそうですし。空いているバスならまだ良いですが、もしも車内が混雑していたら、やむを得ない状況を除いて乗車を避けるかもしれません。

バス:無料で可(ただし絶対ではない)、夜行便は不可

交通手段【4】タクシー

タクシーは「猫の乗車可」です。別料金は不要ですが、他の交通手段と同じく猫の全身が入るケージは必須。排泄物その他でシートを汚さない、抜け毛が散らばらない、臭いが残らないための配慮も欲しいところ。

不特定多数のお客さんを乗せる電車やバスと違って、タクシーは運転手さんとの対個人の関係になりますので、運転手さんが猫アレルギーだったり、体調がよろしくない場合は乗車を断られることも覚悟しておく必要がありそうです。

そうはいってもペットを抱えてのタクシー移動が欠かせない場合もあるわけですが、世の中にはそうしたニーズをくみとって「ペットタクシー」なるものが存在します。ペットを乗せてもいいですよ、そのための用意がありますよと、あらかじめ宣言してくれているのは心強いですよね。

タクシー:乗車可(汚さない配慮を)

交通手段【5】飛行機

飛行機は「猫の乗車可または不可」です。国内の航空会社はいずれも乗車可で、JALのように「ペットとおでかけサービス」というサポートプログラムがあるほどです。料金は路線によりますが、一匹につき3,000円から6,000円程度。

ただし機内持ち込みはできず、ケージに入れて貨物室での預かりになるようです。温度や湿度など、大切な命を預かるための万全の体制が取られているようですが、もしも何らかのトラブルでペットが死傷しても責を問わない旨の同意書にサインする必要があります。

ちなみに海外の航空会社であれば、手荷物として持ち込めるところもあります。各社によって条件がまちまちなので、利用時に確認が必要ですね。

覚えておきたいのは、ジェットスターやPeachなどのLCCは乗車不可である点。LCCで使用している飛行機は与圧調整設備を備えておらず、そもそもペットを預かれる環境にないようです。格安で利用できる、という意味でLCCは良い選択肢ですが、ペット同伴に関してはあきらめるほかなさそうです。

飛行機:有料で貨物室預かり、LCC不可

交通手段【6】船舶

船舶については各社バラバラですので一概には言えません。フェリーや高速船はほとんどが乗車可ですが、飼い主とペットが一緒に泊まれる部屋を用意している、専用のペットルームを用意している、クルマで乗車した場合は車外に出さない限りOK、輸送ボックスに入れて持ち込むなら可など、条件はさまざま。有料の場合も無料の場合もあります。

これはもう、個別に調べるしかありませんね。個人的にはペットと一緒に泊まれる「さんふらわあ」に乗ってみたいです。

船舶:各社それぞれ

8,568通り、あなたはどのタイプ?

選択肢B:猫を一緒に連れていかない場合

渡り鳥になって一緒に連れていきたくとも、叶わない場合があります。たとえば移動後の滞在先がペット不可であったり、猫の性格的に長距離移動が難しかったり。ニーポンもまだ東京と静岡を往復した程度で、どれくらいの移動に耐えられるかは未知数です。

そこで、一緒に連れていけない場合の対応も検討しました。

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対応【1】自宅でお留守番

いきなり非情な対応ですが、自宅でお留守番してもらうパターン。ご飯はタイマーをセットして時間ごとに出してくれる機械があります。センサー式で一ヶ月程度は自動清掃してくれるトイレもあり、なんとかなりそうな気もします。

ただ、多頭飼いをしているならまだしも、一匹だけでお留守番をさせるのは気の毒。定期的に様子を見に来てくれる友人が近所に住んでいるのであれば、合鍵を渡してお願いしてもよさそうです。

対応【2】自宅にキャットシッター

環境を変えたがらない猫にとっては、住み慣れた自宅が一番。でも様子を見てくれる友人が近所にいない場合は、専門のキャットシッターさんに来てもらうことができます。

毎日の訪問で一時間3,000円など、料金形態はシッターさんによってまちまち。ご飯の用意、トイレの掃除、ブラッシング、スキンシップなどなど、プロに面倒を見てもらえるのは安心です。

対応【3】友人宅に預ける

猫を飼っている、あるいは猫が好きな友人・知人宅で預かってもらうのも、人間的には安心です。猫がまだ会ったことのない相手だと少々不安ですが、基本的には気心知れた人たちですから大切に預かってくれるはずです。

現実的なのは親族で、わが家の場合は静岡に住む義理の両親が喜んでニーポンを預かってくれます。これまで何度も預かってもらったことがあり、ニーポン的にも慣れたもので、都内の自宅よりも静岡の実家の方が広いからから、かえってイキイキするくらいです。

対応【4】動物病院に預ける

動物病院の中には、一定期間ペットを預かってくれるところがあります。獣医さんが健康管理をしてくれますし、いつもお世話になっている動物病院であればなお安心です。

ただ、こればかりは猫の性格次第。ニーポンを一日預けたことがあるのですが、同じ部屋に自分以外の猫や犬が泊まっているからか、当時まだ仔猫だったからかは分かりませんが、ずいぶん怯えてしまったようでした。今後は先生とよく相談した上で利用したいものです。

対応【5】ペットホテルに預ける

空港の近くにはペットを預かってくれるペットホテルがあります。もちろん猫もOK。羽田空港や成田空港に至っては空港内にあります。自宅から猫や犬を連れて来て、ペットホテルに預かってもらって、人間だけ空へと飛び立つことが可能になるわけですね。飛び立つ直前まで一緒にいられるのはちょっと嬉しい。

滞在中にトリミングをしてくれるところもあるなど、サービスは至れり尽くせり。長期滞在のみならず一時預かりが可能なところもあるようです。もちろんペットホテルは空港以外にもありますので、最寄りの施設を探してみるのも手です。

なお、空港までの交通手段ですが、電車はモノレール含め全路線持ち込み可。空港直結のリムジンバスも膝上または足元に置く手荷物として持ち込めます(荷物室は不可)。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

さて、うちの子ならどうするか

以上、ざっと「連れていく」「連れていかない」パターンを挙げてみました。最終的に渡り鳥として「どこに」「どうやって」行くか次第で、個別に再調査するケースも出てきそうですが、「公共交通機関はおおむね乗車OK」「置いていくにしても色んな預け方がある」ということがあらかじめ分かって安心しました。

あとは猫次第ですよね。ニーポンの性格を考えて、彼にとって最適な方法を模索しようと思います。

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みなさんが飼われている猫なら、どうされますか?

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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文:松岡厚志
1978年生まれ、ライター。デザイン会社「ハイモジモジ」代表。主な移動手段は電車と自転車。バイク並にタイヤが太い「FAT BIKE」で保育園の送り迎えを担当し、通りすがりの小学生に「タイヤでっか!」と後ろ指をさされる日々。
イラスト:Mazzo Kattusi

編集:鈴木健介

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