給料も保育士不足の原因のひとつ?保育士の年収の実態とは

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 保育士は保育所などの児童福祉施設において、子供を保育するための資格です。認可保育所では、保育士の配置基準が定められています。保育士の国家資格を得るには、厚生労働大臣の指定する養成機関を出るか、国家試験に合格する必要があります。平成29年度末には保育士が約7.4万人不足すると言われており、厚生労働省が発表した「保育分野における人材不足の現状」によると、就業希望者が増えない理由として「責任の重さ・事故への不安」とともに、「賃金が希望と合わない」が挙げられました。社会問題となっている保育士不足。実際、保育士の年収はいくらくらいなのでしょうか?リクナビNEXTのデータ(2014年12月~2015年11月)を中心にまとめてみました。

保育士の平均年収は、244.6万円

 保育士資格を持つ人の平均年収は、リクナビNEXTのデータで見ると、244.6万円です。年代別では、20代では237.6万円、30代では266.0万円、40代では270.1万円、50代では259.2万円と、保育士の年収の上昇は、緩やかなものとなっています。50代になると平均年収が下がるのは、アルバイトなど非正規雇用で働く人の割合が多いことが関係しています。

 保育士は主任以外に役職が設けられていないことが多く、管理職になれる人が限られていることも、年代によって賃金が大きく変わらない要因の一つです。

 保育所には認可保育所と認可外保育所があり、認可保育所は国の設置基準を満たし、都道府県知事に認可された施設で、国や都道府県、市区町村が運営費の一部を負担しています。認可保育所には市区町村などが運営する「公立」だけではなく、民間に委託された「私立」もあります。

 公立の保育所の正規雇用は地方公務員として、安定した収入を得ることが可能です。地方公務員のため福利厚生面や勤続による昇給という観点で恵まれており、公立の保育所では産休や育休も取りやすく、長く勤めやすい環境が整えられています。しかし、全国的に認可保育所は民営化される動きとなっており、公立の保育所への就職は狭き門となっているのが実情です。

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保育士においては、学歴による年収差は見られない

 保育士の養成機関として指定されている学校には、大学や短期大学、専修学校があります。国家試験の受験資格は、専修学校や短期大学を卒業している、あるいは、大学に2年以上在籍し62単位以上取得していれば得られます。保育とは無関係の学校であっても、保育士試験の受験が可能です。また、1991年4月1日に保育士試験の学歴要件が引き上げられたため、経過措置として、1991年3月31日以前に高校を卒業した人には受験資格があります。高卒や中卒の学歴の場合には児童福祉施設で就労し、中卒で5年、高卒で2年の実務経験の要件と満たすと、受験資格を得ることができます。

 学歴による年収の違いをみていくと、大卒あるいは大学院卒の大卒以上の人の平均年収は、253.1万円です。一方、高卒や専門学校、あるいは、短期大学などを卒業した大卒未満の人では241.2万円であることから、12万円程度の差であり、ほとんど変わりません。採用においては、大学を出ていても、短期大学卒と同等の待遇とされるケースもあります。保育士として働くうえで、年収に関しては、学歴による影響は小さいと捉えてよいでしょう。

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正規雇用と非正規雇用では、平均年収に大きな開きが

 保育士の年収には、雇用形態による違いもみられます。リクナビNEXTのデータでは、正社員として正規雇用で働く保育士の年収は261.5万円です。これに対して、アルバイトや契約社員、派遣社員といった非正規雇用では181.1万円となっています。正規雇用と非正規雇用では、平均年収で1.4倍もの差があるのです。アルバイトで就労している保育士だけをみると、平均年収は146.9万円とさらに下がります。しかし、アルバイトの中には、早番や遅番のみの短時間の勤務形態の人も含まれていることが想定されるため、一概に比較はできません。

保育士不足などの社会問題により、今後年収が上がる見込み

 2013年に政府が打ち出した「待機児童解消加速化プラン」では、2017年末までの待機児童ゼロを目指し、全国に保育施設がつくられています。ところが、保育施設が増えたものの、保育士の資格を持っていても、年収という観点から別の職種として働く人がみられることも影響し、保育士不足が問題となりました。2015年に1月には「保育士確保プラン」が策定され、子ども・子育て支援新制度によって、勤続年数や経験年数に応じて、保育士の処遇を改善するための補助金が保育施設に支払われるようになります。自治体によっては独自の補助金事業を設けて、保育士の更なる処遇改善が進められています。

 比較的低賃金とされている保育士の年収ですが、保育所の増加に伴う人手不足によって、今後年収は上がっていくと見られています。

画像:photoAC

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