ホントにお得?軽減税率について、わかりやすく知りたい!

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 2017年、消費税の10%引き上げに合わせて導入される見通しの軽減税率。一部調査によると、国民の7割以上が賛成しているといいます。しかし、そもそも軽減税率とは何かご存じでしょうか?これによって一体、誰が得をするのでしょうか?生活必需品の税率が下げられるのだから、庶民には歓迎すべき話のはずですが、なぜ反対する声が上がるのでしょうか?ここでは、軽減税率についてゼロからわかりやすく説明します。

そもそも軽減税率って何?

 軽減税率とは何か、その背景や導入のメリットを見てみましょう。

軽減税率とは

 一般の税率よりも低く設定された税率のことです。日本では、2017年4月1日に消費税が10%に上がる予定ですが、一部の商品を8%に据え置くことが検討されています。それが軽減税率です。

導入の背景、目的

 2014年4月に消費税が8%に上がった時も消費者の購入意欲が冷え込みました。その記憶も生々しい3年後の2017年にまた税率を上げて、果たして庶民生活は大丈夫なんでしょうか?――そんな国民の不安を背景に出てきたのが軽減税率です。生活必需品の税率を8%に据え置くことによって、庶民、なかでも低所得者の家計を守ることが主な目的です。

導入後のメリット

 食料品を中心とした生活必需品の税率が抑えられれば、家計の負担が少なくなります。それが最大のメリットです。消費税が10%になったら、1000円の商品が1100円になります。8%に据え置かれたら1080円で済むわけです。金額が高くなるほど、2%の差は大きく感じられるでしょう。

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軽減税率の導入で何が問題になってるの?

 生活必需品の価格が据え置かれるのなら良いことのはずなのに、なぜ反対の声が上がるのでしょうか?

対象品の選定基準

 「酒類を除く飲食料品のすべて」を軽減税率の対象にすべきだという案が、政権与党の一角を占める公明党から出ています。しかし、消費税を上げる目的のひとつは、年金や医療費など日本で危機的状況にある「社会保障費」に税収をあてることです。軽減税率の対象を広げることは税収の減少とイコールなので、社会保障費にお金が行き届かないおそれがあります。そのため、自民党や財務省は対象品目を「生鮮食料品のみ」に絞りたいようです。

 さらに、軽減対象に含まれるかどうかの選別がややこしいのです。

 たとえば「生鮮食料品のみ」といっても、「栗は生鮮食料品だから軽減対象だが、栗きんとんは加工品だからダメ」とか「刺し身の単品はOKだが、刺し身の盛り合わせはNG」「いや、原産地が表示されていれば、刺し身の盛り合わせもOK」「栄養ドリンク風の清涼飲料水は対象だけど、栄養ドリンクはダメ」「生乳は軽減対象だが、低脂肪乳などの加工乳はダメ」「では、豆乳や飲むヨーグルトはどうする?」「野菜はいいけど、青汁は?」…と線引きが難しい問題が次々浮上しています。

 そこで「この際、加工品も軽減税率の対象に含めよう」という声が出ていますが、それでは社会保障の財源である税収が大幅に減ってしまうため、自民党は反対しています。

圧力団体の陳情合戦が活発に!?

 懸念されるのはそれだけではありません。こういう線引きを設けると、いろいろな業界が「うちの商品は必需品だから軽減対象にしてくれ」とか「なぜうちは10%なのに、向こうは8%なのか?」といった圧力団体の陳情合戦が永田町や役所で始まる可能性があります。実際すでにさまざまな業界から「我こそは軽減税率の対象だ」との要望が出されています。そこに新たな利権の種が生まれるおそれがあるのです。

 たとえば、新聞。

 新聞各社は「知識や教育を普及する役割を果たす」として新聞、雑誌、電子書籍を軽減対象に含めることを求めています。しかし、どんなものでも「知識や教育を普及する役割を果たす」という目的に合致するのかどうか…。

 ほかには、タクシーもそうです。タクシーやハイヤーの業界は、「タクシーこそ、移動が困難な高齢者や障がい者たちの生活インフラであり、社会福祉の観点からも軽減対象にすべきだ」と主張しています。これに対し、「そんなことを言い出したらキリがない。世の中のすべてのものが生活必需品だ」という声が出るのも仕方ないでしょう。しかし、そうした団体は選挙時に票田となるだけに、政権側も無視するわけにはいきません。

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税率の複雑化

 商品によって税率が異なるときに困るのが、まず販売店です。「この商品は10%」「こっちは8%」といちいち区別が必要となり、仕入れから販売に至るまで作業が複雑になることは間違いありません。このままでは、スーパーやコンビニで税率10%の商品と8%の商品が同じ棚に並んでいる、なんてことも起こりそうですね。

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外国で導入されている軽減税率はどんなの?

 そんな複雑な軽減税率ですが、外国、特に欧州では当たり前のように導入されています。具体例を見てみましょう。

テイクアウトとイートインで税率が異なる

 たとえばドイツのファストフード店でハンバーガーを食べる場合では、お持ち帰りのテイクアウトなら食料品として軽減対象となり7%ですが、店内で食べるとき(イートイン)は一般税率の外食に当たるとして19%の税金がかかります。

 同じお持ち帰りでもイギリスの場合はまた独特です。イギリス名物のフィッシュ&チップスをテイクアウトする時は20%の税金がかかりますが、スーパーで冷めた「お惣菜」として購入した場合は0%なのです。

 これが日本だったらどうなるでしょうか?コンビニのイートインで食べるのは外食でしょうか、食料品でしょうか?レジ横で売られている、おでんや中華まんはどういう扱いになるのでしょうか?慣れるまでは相当大変そうですね。

「面倒くさい」軽減税率は、庶民の味方?

 麻生太郎財務相が以前、軽減税率に対して「面倒くさい」と発言し、批判を浴びました。しかし、現実問題として見ると、確かに面倒な問題がたくさんありそうですよね。生活必需品の税率が低く抑えられるのだから庶民は大歓迎のはずですが、実際は大型スーパーなどで高級食材をまとめ買いするお金持ちたちのほうがもっと恩恵を受けるという見方もあります。正式導入が決まるまでは、まだひと悶着ありそうですね。

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