「心が折れる」という言葉は、女子プロレスのハードな試合が起源といいます。最近では、「褒めて育てる」という方針が浸透しているせいか、叱られることに慣れておらず、仕事上のことで怒られると必要以上にプライドが傷つき、心が折れてしまう人も…。「嫌な上司」は世界中に存在します。そんな上司の叱責にいちいち傷ついて心が折れていたら、「ウツ」まっしぐらになってしまいます。そうならないように、嫌な上司に怒られても心が折れない叱られ方をご紹介します。
折れない心をつくるには?
完全スルーはいけませんが、嫌な上司から怒られたときは、しなやかに受け流せる心の余裕が欲しいところです。それはどうすれば身につくのでしょうか?
「仕事でミスをしたら、叱られるのが当たり前」と考える
上司や先輩と比べて経験が少ないため、若いうちはミスがひとつもないなどということはあり得ません。そして、仕事なのでミスをすれば怒られるのは当然です。ミスと叱責はワンセット。叱られたくらいでウジウジ気に病む必要はありません。次にミスをしなければ重ねて叱責を受けることはありませんし、ミスが減れば「成長してきたな」という評価にもつながります。気持ちをネクストに向けて切り替えることが大切です。
「自分の人格まで否定されているわけではない」と考える
叱られたのは仕事のやり方についてであり、人格まで否定されたわけではありません。次の仕事を成功させればいいだけです。ただし、なかには「小学校からやり直せよ!」「どういう育ち方をしてきたんだ!」「そんな暗い顔をしてるから、お客さんに逃げられるんだよ!」などと人格攻撃をしてくる嫌な上司もいるかもしれません。さすがにそれを「気にするな」というのは難しい話です。
けれど、こういった嫌な上司は、多くの部下から嫌われているものです。人格攻撃をされたら、その上司のチームにいる先輩にどう対処すればいいか聞いてみましょう。愚痴を聞いてくれたり、「俺なんか、もっとひどいことを言われてたよ…」という話を聞けたり、うまいやり過ごし方を教えてくれる人がいるはずです。
「そもそもなぜ自分はこの会社に入ったのか?」と原点を見つめ直す
入社当時のフレッシュな気持ちを思い出してみましょう。「この会社に入るのが夢だった」「憧れの仕事ができる」「給料がいい」と入社の動機はさまざまですが、そういう原点を思い出すことで、「こんなことくらいで、へこんでいる場合じゃないな」と奮起する気持ちが湧いてきます。ミスを叱責されても「自分が大きく成長するための壁を設定してくれたんだな」「壁を越えるためのアドバイスだな」「自分に越えられない壁はないぞ」と受け止めれば、必要以上に落ち込むことはありません。
「二度と同じ失敗をしないぞ!」と誓う
叱る側は多少なりとも「ここを直せば仕事がうまくいく」という理屈を持っています。いきなり怒鳴られたからといって委縮するのではなく、「どのような意図で叱っているのか」と真意をくみ取ることが大切です。その上で「二度と同じ失敗はしない」と決意すれば、叱責はたちまち金言へと変わっていきます。
自己肯定感を高める
連日のように嫌な上司にパワハラのような叱責を受けた場合は、どうすればいいでしょうか? 対抗するには、自分で簡単な目標を設定して、クリアできたら自分で自分を褒めるという手があります。たとえば、コピーの取り方や議事録のまとめ方を叱責されたら、それとは別の部分、たとえば挨拶や気遣い、電話での受け答えなどを自分の目標に設定し、それを達成できれば自分で自分を褒めるのです。そういう習慣がつけば、自己肯定感が高まり、いつしか少しのことではくじけない強い心を持てるようになるでしょう。
叱られ上手な人になる
周囲を観察すると、叱られ上手な人とは逆の「叱られ下手」の人がいます。そういう人を見ると嫌な上司はますます逆上し、「上司が言わなくていいことまで言う」→「部下はさらにへこむ」という悪循環に陥ってしまいます。では、どうすればいいのでしょうか?
不貞腐れた態度を見せない
いかに理不尽な内容であったとしても、上司としては「叱ることで何かしら良くなってほしい」という考えがあってのこと。それなのに、そこで不貞腐れた態度をとってしまえば、上司からすると、「おまえのためを思って言っているのに、何だその態度は!」となり、かえって自分の立場が悪くなります。それを避けるためには、次の2点に気をつけることが大切です。
・反論せず、素直に謝る
自分としては納得できない、明らかにいわれのない叱責であっても、あからさまに反発してはいけません。反論しないで、まずは「大変失礼いたしました」「ご指摘ありがとうございます」とそれを受け止める姿勢を見せるようにしましょう。
・上司が冷静になったら、事実のみ説明する
上司が「なんでこんなことになったんだ!」と説明を求めてきたら、事実を淡々と述べるようにしましょう。そのチャンスさえ与えられない時は、仲のいい先輩からその上司に対して「あの件は、彼が悪いのではないんです」とフォローを入れてもらうようにしましょう。
おどおどしない
嫌な上司ほど身勝手なもので、心の中では「叱っている自分は悪くない」と考えています。その時にこちらがおどおどした態度を見せてしまうと、さらに火に油を注ぐことになりかねません。むしろ怒られた時こそハキハキと「すみませんでした」「ご指摘ありがとうございます」と応じるべきなのです。上司に「叱ったことで成長した」と思わせれば、あなたの株も上がるはずです。
根に持たない
あなたが働く目的は、上司と対立することではありません。自分が一歩引いた態度をとることに納得できない気持ちはあると思いますが、そこは大人の態度で受け入れることが賢明です。叱責されたことを恨みに思い、いつまでも根に持っていても、さらに上司のターゲットにされるだけでです。
改善したことを示す
叱られた後に付け加えたいのが「次はこういうミスが起きないようにします」「すぐに改善します」などの前向きな言葉。それで実際に改善したことが示されると、上司は「自分が叱ったことで部下が成功した」と感じることができ、あなたの評価の上昇につながります。逆に同じミスをしてしまうと、嫌な上司の十八番フレーズ「何度同じことを言わせるんだ!」の出番となります。それはあなたの評価を確実に下げてしまいます。
理不尽な叱り方をする上司への対処法
これまでご紹介してきた「叱られ方」を実践しても、上司が態度を変えず、人格攻撃やイジメのような嫌がらせを続けてきた場合は、どう対応するのがいいのでしょうか?
記録しておく
叱責のレベルを超え、耐え難いパワハラにまで至った場合。総務部に訴えるのか、司法や行政の場へ持ち込むのか。いずれにしても、大切なのは「いつ、どこで、誰が、どんなことをしたのか」を記録しておくことです。文字に書くだけでなく、ICレコーダーなどで録音することを忘れずに。
コミュニケーションを密に取る
完全なパワハラ状態に陥る前の段階で関係改善を図ろうとするなら、コミュニケーションを密にすることが大切です。理不尽な怒り方をする人は、細かいところまで何でも把握しておきたいタイプが少なくありません。そういう人には「ホウレンソウ」、つまり報告、連絡、相談を積極的に行い、上司を「あの件の進捗はどうなってるんだ?」とイライラさせないことです。
そのためには、与えられたタスクを指定された期日よりも早めに仕上げることがポイント。「こんな感じでどうでしょうか?」と上司に相談する時間的余裕を持てれば、理不尽な叱責を未然に防ぐ手段にもなります。
もっとも、「そんなことまでいちいち報告するな」と叱られる場合もあるので、報告・相談のタイミングについては注意が必要です。
怒られている自分を客観的に見る
「職場の自分は会社員を演じているのだ」と考える心理学の手法も有効に作用する場合があります。つまり、理不尽に叱責されている自分を「あいつ今日も怒られてるなあ。しかし、くだらないことでよく大声を上げる上司だよ」と客観的に見るのです。そんなふうに怒っている上司と怒られている自分を、舞台で演技をしている役者を見るように俯瞰できれば、冷静さを失うことはありません。
どうしてもダメなら、異動願を出す
どうしても上司と反りが合わない時は異動願を出しましょう。その際、上で述べたように上司の言動を記録して理由に添えれば、よほど社員の雇用環境に無自覚な企業でない限り、「異動願もやむを得ないか…」と会社が判断してくれる可能性が高まります。
「叱られる自分」の立ち位置を固定化しない
理不尽な叱られ方をしたと思っても、あらためて思い直せば、実は自分の弱点だったり自分が気づかなかった部分に対する重要な指摘であることも多いものです。まずは、「嫌な上司と、叱られてばかりの自分」という固定化された関係性から離れるために、叱られることを未然に防ぐことと、叱られ上手になることを心掛けてみましょう。それが自分の精神状態を守り、安定した仕事環境に身を置くために大切なこととなります。
今がどんなに理不尽な状況であっても、解決の手段は必ずあります。人生は仕事だけではありません。嫌な上司のせいで身も心もボロボロにしてしまうことほど、バカらしいことはないのですから。