若者の8割は予備軍!?将来「働かないオジサン」にならないための7カ条

 働かないオジサン――このワードにピクッと反応するビジネスパーソンは多いのでは?頭に浮かんでいるのはきっと、パソコンに向かってもネットばかり見ていたり、他の部署で油を売っていたり、定時にとっとと退社して飲みに行ってしまう、なのに給与は自分よりも高い「オジサン」たち。こんなふうに歳を取りたくないと失望し、転職を志す人も多いと聞きます。

 しかし、そんなことを言っているワカモノの8割が、将来「働かないオジサン」になると言われたら、あなたはどうしますか?

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 発言の主は、『人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人』(東洋経済新報社)の著者である楠木新さん。若手ビジネスパーソンに対して「働かないオジサンは未来の自分であると認識せよ」と警告しています。働かないオジサンたちに不満を感じながらも、将来を何も考えずに目の前の仕事に没頭するだけでは、10年後、20年後に自分もそうなってしまう、と。

 今回は、楠木さんが挙げる「働かないオジサンが生まれる理由」「そうならないための働き方や心構え」を、同書よりいくつかご紹介します。

■会社のしくみと会社員人生のしくみが、働かないオジサンを生む

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「若手ビジネスパーソンの8割が、将来働かないオジサンになる」と説く所以は、オジサンが働かなくなるのはその人の人格的な問題からではなく、「会社のしくみ」や「会社員人生のしくみ」という“構造的な問題”が原因だから。

 まずは、「会社のしくみ」について。
 日本企業ならではの「新卒一括採用」と、「ピラミッド構造」が、働かないオジサンを生む大きな要因になっているという。

 ある程度の規模の会社であれば、新卒時に数十人規模、大企業であれば数百人規模の新入社員が一気に入社する。一方で、会社組織はピラミッド構造にあるから、ポストの数は上に行くほど先細りする。少ない枠を争うポスト競争から勝ち上がれればいいが、そこから脱落した場合、「せめてこの場にとどまりたい」と思っても、下からはたくさんの優秀な後輩が追いかけてくる。…ああ、頑張ってもこれ以上は給与が上がらないし、出世もしないだろうと悟る時が、いつか来る。
 悟った後に気づくのが、「今の立場は大幅な昇給や出世はないが、ポスト競争を意識していた若い時のようにガムシャラに働かなくてもそこそこの給与はもらえてしまう」という事実。そうして徐々に働くことに意欲をなくしてしまう…こういうしくみが存在する。

 次に、「会社員人生のしくみ」について。
 会社員は40歳前後になると、「こころの定年」に陥っていくケースが少なくないという。仕事に情熱を燃やし一生懸命働いている人も、ある程度の地位を確立した人であっても、「自分はこのままでいいのか?」と心が揺らぐのが、これぐらいの年齢だという。
 原因の一つとして、日本の会社のシステムが合理性、効率性中心に運営されているため、社員の個性の発揮が制約されてしまうことが挙げられている。他人との比較や違いでしか自分の位置づけを確認できないうえ、業務の一部分しか担当しないために仕事の全体感がつかみにくい。組織の中で一定の役割を得るためにがむしゃらに働き続けてきた若い時代には気付かなかったが、10年、15年と経って落ち着いた頃、会社中心の働き方にふと疑問を感じ始めるケースが多いという。

 それとは別に、多くの人が長く同じ組織や仕事に従事することから、「会社や仕事に飽きる」という事態も避けられない。これらの要因から、熱中できるものがない、何か満たされないという気持ちを抱えて悶々としたり、「会社員生活とはこんなものだ」と諦めの境地に至るケースが多いのだという。

■イキイキ働くオジサンは、4つのタイプに分けられる

 どうしても「働かないオジサン」ばかりが目に付いてしまうが、周りを見回してみると、イキイキしたいい顔で働いているオジサンも少なからず存在するはずだ。そういうオジサンを分析すると、「会社へのコミット」と「承認に喜びを感じるか、仕事に喜びを感じるか」の2軸をもとにした4象限マトリクスで整理ができ、次の4つのタイプに分けられるという。

1.出世型
2.仕事好き好き型
3.枠組み脱出型
4.仕事突き抜け型

 オジサンになっても、イキイキいい顔で働き続けるには、この4つのタイプのうちいずれかを目指して働くことを著者は勧めている。それぞれのタイプの働き方アドバイスを抜粋しよう。

1.出世型
「出世して走れるなら走れ」
 イキイキ働くための一つの型は、社内での出世にまい進するケース。高い役職を得れば報酬も高くなるし、自分の判断で会社の権限を行使できる。組織で働く際の醍醐味の一つであり、心にハリも得られるだろう。今のうちから出世の条件である「エラくなる人と長く一緒にやっていく能力」を磨いて、出世のために走り続けるのも一つの方法だ。

2.仕事好き好き型
「与えられた仕事に工夫をこらす」
 組織の中で好きな仕事に出会い、毎日イキイキと働けるのが最も幸福な姿。初めから自分にあった仕事に出合えればすばらしいが、そうでない場合は好きになれるように自分で努力することも必要。自分が興味を持てる分野を独学で習得し、それをもとに抜擢を狙ったり、今の仕事に結びつけてみるなどの工夫も大切。

「与えられた仕事であっても、自分なりに消化・工夫する」
 今の仕事は役割の範囲が決まっていて自由にできない…と不満を漏らす人はいるが、かといって「何でも自由に好きなことをしていい」と言われても何から手をつけていいのか困るだろう。与えられた仕事に自分なりの“味”をつけるほうが、いろいろな発想が浮かびやすいはずだ。今取り組んでいる仕事をベースに、自分の個性や持ち味で何かできないかと考える習慣をつければ、今の仕事をがぜん面白く変化させられる可能性はある。

3.枠組み脱出型
「社外に出て行動し、新たな自分を見出す」
 上記に述べた2タイプは「会社の仕事に意味を見出す」タイプだが、「枠組み脱出型」は社外に充実できる場を求め、その結果仕事へのやりがいも高めるというタイプ。例えば、スポーツが好きならそれを自分なりに徹底的に極めることで、他人から評価されて自分に自信が付き、会社の中での評価や序列を気にしていた視野の狭い自分が解き放たれ、それが社内の仕事にも好影響を与える…という連鎖が生み出せる。
このように、「自分自身を変える」わけではなく、視野を広げることで「自分と組織の関係を変える」ことにより、新たな価値観を見出し、結果的にイキイキとしたオジサンになれるというケースもある。

4.仕事突き抜け型
「会社の仕事の延長線上から、新たな自分を見出す」
 3.の「社外に自分を見出す」タイプとは違い、自分が得意だと感じている仕事で「会社の枠を突き抜ける」ことでやりがいを見出すのがこのタイプ。
 例えば、人事部で人事の仕事を突き詰め、「これが一生の仕事だ」と確信した人が、会社との雇用契約を変え、業務委託として従来通り働きながらも人事コンサルタントとして多方面で活躍する、などの事例が当てはまる。
 もちろん独立するだけが選択肢ではない。本書では、日本旅行に勤める「ナニワのカリスマ添乗員」平田進也さんの例を挙げ、会社に所属しつつも「他者の7倍の売り上げを稼ぐ」という営業手腕を武器に、「取り替えが効かない社員」として唯一無二の存在になるという方法もあると述べている。

■「働かないオジサンにならない」ための7カ条はこれだ!

 以上を踏まえ、著者は「働かないオジサンにならないためには、日常の働き方や行動が大切であり、かつ持続的に取り組む必要がある」と説く。若手ビジネスパーソンに今から取り組んでほしいという「7つの対応策」をかいつまんで紹介しよう。

第1条:足元の仕事をきちんとする
 仕事に対して不満を言う前に、今の仕事の中で充実感を得られる道が本当にないのか見極めてみる。
第2条:会社の枠組みの外から眺める
 会社の枠組みに自分を埋め込んでいないか。客観視を意識することで視野は広がる。
第3条:時間軸で見る
 「そのうちに」なんて存在しない。与えられた時間の短さを認識すれば働かないオジサンには決してならない。
第4条:師匠を探せ
 「これに取り組みたい」という真摯な姿勢があれば、導いてくれる師匠は自然と現れる。
第5条:お金との関わり方を変える
 会社のお金を使うだけでは、会社の枠を超えられない。自己成長のために身銭を切ることが、判断力を上げ感性を磨く。
第6条:多様な自分を受け入れる
 会社の肩書だけで生きるのはやめよう。複数の自分、複数のアイデンティティを大切にすることが柔軟で深みのある人生につながる。
第7条:自分の向き不向きを把握する
 いい顔で仕事をしている人は、自分が向いている場所を発見してそれに注力している。

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 働かないオジサンを見るたびに抱いていた不満やイライラが、いくらか軽減されたのではないでしょうか。そして、自分も陥る可能性が大いにあるのだとわかり、焦りを覚えた人もいるかもしれませんね。

 本書には、今回取り上げた内容のほかにも、さまざまな「イキイキ働くオジサンになるためのヒント」が掲載されていますが、著者の楠木さんも巻末で勧めているように、「中高年のオジサンと対話をすること」でさらに見えてくるものがありそうです。働かないオジサンが、今どういう思いで仕事をしているのか。こちらが真摯な姿勢で問いかければ、相手もきっと真剣に話してくれるでしょう。臨場感ある「イキイキと働くためのヒント」が得られるのではないでしょうか。

 なお、本書では現実に多数存在する「働かないオジサン」へのタイプ別対処法も紹介されています。「今、まさに困っている。イラっとしている」人は手に取ってみるといいかもしれませんね。

参考書籍:『人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人』/楠木新/東洋経済新報社

EDIT&WRITING:伊藤理子

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