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リクナビNEXTジャーナル

キャリア・ビジネスの情報満載【リクナビNEXTジャーナル】

デキる人になりたければ、「ネガティブ思考」をうまく活用しなさい

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何を隠そう、あらゆることに対して「ネガティブ思考」の代表と言って過言ではない【修羅ガール】です、こんにちは!

私、障害のハンデがあるだけに、ネガティブ=不安と常に戦い、「どうしたらもっとうまく立ち回れるか」、相手が「どんな人なのか」を見る目だけは鍛えられてきました。

そんな修羅ガールがたくさん見てきた「とにかく仕事がデキる!」人たちの共通点……それは「ネガティブ思考」!
実はネガティブ思考ってそう悪いことばかりではないのです。

今回は、ポジティブ思考に疲れや違和感を感じる人、そしてしつこくつきまとうネガティブ思考を何とかしたいと思っている人へ、少しでも快適に、そして心が軽くなるヒントをご紹介できたらと思います。

仕事がデキる人の
「ネガティブ思考回路」のヒミツ

たまに「めちゃくちゃ仕事がデキて、かっこいいなと思う人」っていませんか?

そもそも、人はどういう時に「この人デキる!!」と思うのでしょうか。
人によって感じ方の程度はあれど、共通して言えることの代表格としては「ミスが少ない」、「仕事が早い」、「気が利く」、「お客さん対応が神がかり」などが挙げられると思います。どうしてそのようなことが出来るのか?……そうです、ここにこそ「ネガティブパワー」が存分に発揮されているのです。

要するに、デキる人を突き動かしている源にネガティブ要素、つまり「不安」が付きまとっています。例えば、下記のような「不安」が、そのまま行動に表れているのです。

  • 「不安」なので何度も確認をする、明日のプレゼンや会議などに備え入念に準備をしておく、遅刻しないか「不安」なので早めに家を出る
    =ミスの少なさにつながる
  • 怒られることが不安で怖いから、起こりうる悪いパターンをいくつか想定しておく
    =お客さん対応が神がかり
  • 早く、気持ちよく仕事をしたいし、モメる・トラブるのが怖い
    =相手の立場を考えられるから気が利いて、全体的に仕事がスムーズに進む

デキる人は上記のように、「怖がりで不安症」な人が意外と少なくないです。ミスを全くせず完ぺきな人などいませんが(人間だもの)、1度やらかしたミスに対しては強烈な「不安」がインプットされるため、同じ失敗を繰り返しにくい傾向にあります。

しかし、巷には「何事もポジティブ思考の方が良いに決まっている!」という声の方が実際は多いかもしれません。もちろんそれが有効なシーンもありますが、実は仕事上において、「ポジティブ思考」は使い方を間違えると、大きな欠点にもなりうるのです。

なんでも「ポジティブが良い」は実は間違い!?

良い意味でとらえられがちな言葉であるポジティブを紐解く、「楽観的」と「気にしない」というキーワード。
楽観的というのは良くも悪くも細かくはないので、それゆえに 少々「無計画」な部分があります。これが遊びや旅ならば、行き当たりばったりを楽しむことも出来るのですが、仕事となるとどうでしょう?

「まぁー、大丈夫でしょ」、この言葉が緊張を緩和する言葉として使うのではなく、仕事内容全般に渡ると、実は結構困ります。

例えば、プレゼンの前や会議の前。この言葉を連発しがちな人は慎重さに欠けることが多いです。当日になって次々と発覚する誤情報や不足情報、つまらない凡ミス、クライアントとの想定問答の準備不足・・・などをたくさん誘発します。

「何故怒られたのか分からない」
ポジティブ思考がやりがちなこと

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ポジティブ思考の人に「なぜ気が付かなかったのか?なぜ準備してこなかったのか?」と問いただしても、返ってくる答えは「なんとかなると思っていました。」これに尽きがちです。

「気にしない」ことは、裏を返せば 「すぐに忘れる」ということでもあります。気にしないことの全てが悪いワケではないですが、この姿勢は時として自分にとって都合の悪い要因から目を背けることで、自分を守っていることでもあります。

「気にしない、気にしない、ポジティブ思考!」が行き過ぎると、前回の教訓がすっかり抜け落ちていたりして、悪びれもせずにまた同じようなミスを繰り返してしまいがちなのです。

結果、自分自身が不快な思いをするだけでなく、マイナス評価にもつながりやすくなってしまいます。「前にも言ったのに・・・この人ダメだなぁ」と思われたり、信頼を失う原因の1つとなってしまいます。

ただのネガティブだと病みやすい
ポジティブとネガティブの融合を目指そう!

だからといって、ネガティブ思考が正義なのかというと、決してそういうことではありません。ネガティブ思考すぎると、モチベーションの低下を招いたり、何よりメンタルが弱って心身ともに支障をきたすこともあるからです。

そこで、修羅ガールが見抜いた「デキる人がやっていた、ネガティブ思考との付き合い方」をご紹介します!

感情判断より、まずは状況判断を

嫌なことがあったり・言われた時に、「ムカつく~!」と思う前に(もしくは思っても一旦深呼吸をしてから)「何故このようなことが起こったのか」、「そして今の状況や相手の置かれている立場を考える」と、段々と心が落ち着いてきます。例えば、「上司が最近カッカと怒っていて、当たりの激しい要因はなぜ?」の分析です。

実際、自分が原因でなかったとしても相手がカッカしていることはよくあります。
実は相手にはただならぬ家庭事情があったり、自分が関わっていない別プロジェクトの炎上対応中だったりなど、様々な「状況的な要因」が見えてきたりします。それが見えると、自分の中でうまく割り切れたり、対処をいつもとちょっと変える動きができたりして、かえって仕事がやりやすくなります。何もないのに、ただ怒っている人はいないのです。

まずは自分が、「嫌い・生理的に受け付けなくなる」といったネガティブの渦に飲まれる前に、視点を「人から状況へ」変えてみるのは良い方法と言えます。

「ダメ元で行動する」は、まさにネガティブ×ポジティブの集大成

何か行動を起こさないといけない時、ネガティブ思考の人は不安にとらわれ過ぎてモチベーションも上がらず、なかなか行動へ移せないことがあります。

そんな時には、ぜひ下記の言葉を「お経のように」唱えてみてください。

  • 「やらないよりマシだ」
  • 「ダメ元でやってみよう」
  • 「やってみなくちゃ分からない」

行動力の源泉はモチベーション。モチベーションが高い人にはポジティブ思考の人が多いです。この、モチベーションが高いけどちょっと抜けているポジティブ思考×慎重で行動に二の足を踏みがちなネガティブ思考を組み合わせると、「慎重な行動派」が出来上がります。

ネガティブの特性上、結局はある程度の準備などをして挑む人が多いです。なので、思ったより悪くならなかったり、「今のうちに失敗してよかった、経験しておいてよかった~!」と、逆に得るものが出る場合もあるので、ネガティブ×ポジティブは本当におススメします。

考察まとめ

ポジティブ思考な人は、一緒にいて楽しいのは確かですが、全体的に何かあった時の対応がズバ抜けて下手な人が多いように感じます。

また、日ごろの周りに対する態度も「なぁなぁ」だったりして、いざという時に本当に手伝ってくれる人や親身になってアドバイスしてくれる人が少ないようにも思います。

だいたい、仕事のデキる人や偉い人の中には、武勇伝の1つや2つあるものです。こういった武勇伝を持つ人たちの思考の中身は、このような「ネガティブ思考」からくるといっても過言ではないかもしれません。

みなさまも、今日からでも「ネガティブ思考」の見方を改めて、生活にうまく取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

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【修羅ガール】
難聴と、何故か遭遇しがちな修羅場と闘うことがよくある波瀾万丈系オンナ。事業会社でのマーケティング・PRや広告業界を経て、現在はフリーライターとして活動中。こんなんで元モデルでもある。

修羅ガール (@shula_girl) | Twitter

 

「文春砲」の裏にある緻密な仕事術とは?『週刊文春』編集長が語る、仕事の奥義

政治経済、芸能、社会問題…さまざまな分野でスクープを飛ばし続けている『週刊文春』。同誌によるスキャンダル・スクープは「文春砲」と呼ばれ、「次はどんな“文春砲”がさく裂するか」と注目されている。

そんな週刊文春の編集長が先ごろ、自らの「仕事術」を書籍化し、話題となっている。人気雑誌の編集長という特殊な立場ではあるものの、雑誌作りを通じて染み付いた仕事術は、「どの仕事にも応用可能な普遍的なもの」であるという。

その「仕事術」とは具体的にどんなものなのか、そして若手ビジネスパーソンにどう活用してほしいのか、『週刊文春』編集長の新谷学さんに語ってもらった。

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株式会社文藝春秋 『週刊文春』編集長
新谷 学さん
1964年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、1989年に文藝春秋に入社し、『Number』『マルコポーロ』編集部、『週刊文春』記者・デスク、月刊『文藝春秋』編集部、ノンフィクション局第一部長などを経て、2012年より『週刊文春』編集長。先日、初の著書『「週刊文春」編集長の仕事術』(ダイヤモンド社)を発売。なお新谷さんは、「編集長が雑誌の前に出過ぎることによる、雑誌の将来に与える弊害」を考慮し、メディアでの顔出しは行っていない。


編集長の仕事は、決して特殊なものではない

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この3月に発売された『「週刊文春」編集長の仕事術』は、新谷さん初の著書。今年に入ってからも数々の“文春砲”を連発し、今乗りに乗っている『週刊文春』の編集長が、今なぜ「仕事術の本」を出そうと思ったのだろうか。

 

 この本の担当編集である、ダイヤモンド社の竹村さんから丁寧な手書きのお手紙をいただいたのがきっかけ。彼に「日々大量の仕事をさばき、最高のパフォーマンスを発揮する編集長の仕事術は、あらゆるビジネスパーソンに役立つはずだ」と言われて、自身の仕事を振り返り、「なるほど」と思えたんです。

『週刊文春』の発売日は毎週木曜日。その1週間前の木曜日にラインナップを決める会議を行い、企画ごとに20ほどの取材班を組みます。各班が動き出したら、途中経過を随時確認し、「当初聞いていた話と違うから撤収する」、「思いのほか大きなネタになりそうだから応援部隊を投入する」などの判断をし続け、土曜日にラインナップの見直し会議を実施。月曜日の夜に原稿を書き、火曜日の夜に校了、そして最新号が書店に並ぶ木曜日には、また次のラインナップ会議を行う…こんなサイクルを毎週毎週、年間約50回、続けています。

「編集長」の仕事は、極めて特殊なもののように思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。それぞれの記者が持つ人脈の中から「情報」を入手し、それをもとに世の中の流れを読みながら「企画」を立案し、各メンバーの得意分野や調子を見ながら取材班を組むという「人事」を行い、取材状況を判断しながら「戦略」を見直し、これで行こう!とスピーディーかつ的確に「決断」する――どれも、多くのビジネスパーソンがやっていることです。ただ、それが1週間の中にギュッと濃縮されているのが、一般の仕事と異なる点だと思います。

 おそらく踏んだ場数、経験した修羅場の数はそれなりに多いはず。だからこそ、仕事を通じてある種の普遍的な、仕事の進め方に関する自分なりの「答え」が見えてくるようになりました。例えば、部下への接し方、チームの作り方、取材先との関係性の構築方法、修羅場の中で勝ち続ける方法など。何度も何度も考え抜き、それを毎週繰り返してきた中で培った「仕事術」は、広く一般の方にも参考にしていただけるものではないか…と思えました。

袖振り合うもみんなネタ元。人との出会いの中に発見がある

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「週刊誌の編集長」の仕事には、切れ目がない。ようやく一息つける校了後の夜も、ほぼすべて会食で埋まっている。「面白い話に出会うには、さまざまな立場の人々と日常的に会い続けることが大切」と新谷さんは言う。

 

 ベースにあるのは「人間への興味」です。人間が織りなす数々のドラマは、本当に面白い。

 愛妻家をウリにしている大物俳優が、セントラルパークで若い女性と息抜きをして素の顔を見せたり、好感度抜群だった女性タレントが不倫の恋に身を焦がしたり、大物政治家が「変態スキャンダル」を起こしたり…愚かではあるけれど、一人の人間としての「素」が垣間見える。立川談志さんには「落語とは人間の業の肯定」という名言がありますが、週刊文春もまったく同じです。人間の営みを善悪のみで伝えるのではない。一方で「話題になればいい」「雑誌が売れればいい」というわけでもない。素晴らしい面、愚かな面も含めて、取材対象者の人間としての様々な顔を伝えるのが、週刊文春の役割だと思っています。

 

SNS全盛の時代ではあるが、基本的に有益な情報は「人対人」でもたらされる、と新谷さん。さまざまな人と向き合い、とことん付き合う中で、思いもよらない情報がぽろりと出てくることがあるのだとか。

 

 舛添要一前都知事のスクープが、好例です。彼の高額な海外出張費が話題になっていた時、都庁の関係者とうちの記者が会食の機会を持ったところ、会話の中で「それよりも我々が問題だと思っているのは、公用車で湯河原の別荘に行くことなんですよね…」とぽろっと出てきたんです。それを聞き逃さずすぐに裏を取り、スクープにつなげました。

「袖振り合うも多生の縁」ならぬ、「袖振り合うも“みんなネタ元”」。もちろん全ての出会いがネタになるわけではありませんが、人と会って話さないことには当然ネタにも出会えません。

 これは週刊誌作りに限らず、あらゆる仕事にも言えること。さまざまな分野の、いろいろな人と接して、お付き合いを積み重ねていく中で、思わぬアイディアが生まれたり、企画の芽を見つけられたりする。人と人とのお付き合いの中にこそ、「アイディアの鉱脈」があると私は思います。

目の前の仕事にフルスイングしてみれば、もっと面白くなる

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そんな新谷さんのモットーは、「どんな仕事でもフルスイングする」こと。ネタの芽を見つけては、ホームランを狙ってバットを振り続ける。それが世の中をあっと言わせるスクープにつながるのだという。

 

 仕事が面白くない、向いていないという人がいますが、フルスイングしてみないと本当の面白さには気づけないし、向いているかどうかもわかりません。まずは目の前の仕事にしっかりと向き合い、思い切りフルスイングしてみる。その結果、やっぱり楽しくない、向いていないと思えたら、転職すればいいんです。

 そもそも、「やりたかった仕事ではないから…」なんて言い訳をして、そこそこの力で「バットに当てに行く」人生なんて、つまらないじゃないですか。予定調和のルーティンワークの延長線上に、面白いものが生まれるはずはありません。

 仕事に真摯に向き合い、懸命にフルスイングしている人には、「コイツと一緒だと面白いことができそうだな」「自分も一枚かませてよ」と自然に人が集まります。自らが求心力になって周りを巻き込んでいけば、仕事がどんどん楽しくなります。

 週刊文春では、全員がフルスイングし続けています。もちろん空振りも多いですが、当たったときはものすごい力を発揮します。大切なのは空振りした時に現場を責めないことです。

 先日の「ハリウッドで活躍する日本人俳優」の不倫スクープは、新人女性記者のフルスイングが決め手となりました。ニューヨークで裏を取り、すぐさまLAの自宅に飛んで本人に直撃取材し、このスクープにつなげました。

 

なお、フルスイングの「精度」を高めるには、ビジネスの根幹をつかむことが大切、と新谷さんはアドバイスする。

 

 どんなビジネスにも、どんな仕事にも「根幹」があります。つまり、このビジネスにおいて、仕事において、最も大切にしなければならない部分です。それさえつかんでおけば、何をやるべきかが明確になり、ブレずにフルスイングできます。

 例えば営業職の場合は、「売ること」を根幹に捉えてしまうと仕事がブレます。根幹は「クライアントに対し、自社商品の魅力をあますところなく、最大限伝えること」であり、この根幹を捉えられれば、どのように商品の魅力を伝えればクライアントの心をつかめるのかを一生懸命に考え抜けるはず。その先に、売り上げがあるのです。

 週刊文春の場合、根幹はもちろん「スクープ」です。読者の期待に応え続けるために、スクープ獲得に全身全霊を捧げる。根幹がわかっているから、みな行動がぶれることはありません。

 読者の皆さんにも、ぜひ失敗を恐れず、それぞれのバッターボックスでフルスイングして、仕事を楽しんでほしいですね。人生の大半の時間を働くことに費やすのですから、仕事を楽しんだほうがいいに決まっています。意に沿わない職場で悶々としている人も、根幹をつかんでフルスイングしていれば、必ず突破口が開けますよ。

 

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▲『「週刊文春」編集長の仕事術』(ダイヤモンド社)

 

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭 

 

【マンガ】デキる人が、リモートワークで「気をつけている」3つのこと

こんにちは。しりもとです。
場所を選ばず仕事ができるリモートワークは魅力がありますね。
オフィスとはまた違った経験が得られるかもしれません。

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>> 過去の作品一覧はこちら

著者:しりもと

しりもと

絵や漫画など描いています

Twitter:@SHIRIMOTO

 

「母親の顔」のまま、バリバリ働く――島根のワーママが活用する「子ども同伴出勤制度」とは?

親が仕事をしている間、子どもも職場で過ごせる「子ども同伴出勤制度」を導入している老人ホーム「サンガーデン 輝らら☆」(島根県浜田市)のリポート。制度創設の経緯や狙いなどをうかがった前編に引き続いて、今回は実際の様子と、制度を利用している親子の本音をご紹介します。

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取材に訪れた日は、ちょうど小学校の春休み期間中。新3年生と5年生の森映人君・心人君兄弟、新4年生の尾崎暁徳君に話を聞きました。母親の職場に、それぞれ就学前から来ていて、この日は午前中、外でオタマジャクシをつかまえていたそうです

――土日や長い休みのときに来てるって聞いたけど、楽しい?

心人君 いっぱい人がいるから、最初のころは恥ずかしかった。今もまだ、ちょっと恥ずかしい。家にいても近所の友達と遊べるけど、ここは広いからボールが使える。

尾崎君 初めは来るのが面倒だったけど、今は楽しい。でも家のほうが気楽かな。

――お手伝いは何をしている? いろいろしてほしいって言われない?

映人君 机やいすを運んだり、机を拭いたりとか。

尾崎君 いろいろ言われたら、無視しちゃう(笑)。

――働いてるお母さんと家にいるときのお母さんって、何か違うところがある?

心人君 ここでも家でも、あんまり変わらないと思う。

尾崎君 (お年寄りに話しかけるので)ここだと声が大きい。だから家のほうがいいかな。

子どもたちへのインタビューを終えたところで、彼らのお母さんを含むスタッフの方々が、入所のお年寄りも連れてイチゴ狩りへ行くのにご一緒させていただきました。

 

母から子への接し方は「職場も家も同じ」

施設近くの観光農園へ向かう車中、ハンドルを握る森友恵さんにも話を聞きます。映人君・心人君のお母さんです。

――お子さんを職場に連れてこられるメリットは何ですか?

森さん まず仕事がしやすい。子どもが原因で仕事を大変と感じることがないのが、すごく助かります。周りのスタッフもみんなで接してくれて、わが子でなくても悪いことはきちんと叱ってくれるし、それでもダメなときには私を呼び出してくれます。

――お年寄りのケアに支障はないですか。

森さん 特に支障はないですし、ファミリーさん(入所者の呼び名)にはむしろ歓迎されています。近くに子どもがいるだけで、いつもより笑顔なのが分かる。もちろん、近くで騒がれるのが嫌いな方もいて「うるさい」と怒られることもありますが、にぎやかな子どもがおじいさんに注意されるのは昔からよくあること。そういうものだということで、みんなに受け入れてもらえるから、安心して連れてこられるのだと思います。

――仕事中と家庭とで、お子さんへの接し方は変えていますか?

森さん 仕事の顔と家の顔を使い分けるようなことは考えたことがないですね。いつでも同じように接しています。

 

出発から10分ほどでビニールハウスが並ぶ観光農園に到着。練乳の容器を手渡された子どもたちは足早にハウス内を回り、熟したイチゴを見つけては口に運びます。カメラを構えるのが追いつかない目まぐるしさの背後から、ファミリーさんが車椅子を押されてゆっくり近づいてきます。

果汁と練乳でだんだん手がべたつくようになり、森君兄弟も尾崎君も、それぞれ母親に拭くものをせがみます。ファミリーさんのイチゴを摘む手を少しだけ休め、わが子にティッシュを手渡すお母さん。なんだか、親戚同士で遠出したときの雰囲気に近いものを感じます。

とはいえ子どもたちも、ただ楽しんでいるだけではありません。帰り際、車椅子を自動車に乗せるときには、スロープへと引き込むフックの取り付けを言いつけどおり、手際よく手伝っていました。「頼まれても無視」というのは、きっと照れ隠しだったのでしょう。

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“お互い様”の意識で、責任ある仕事と育児を両立

施設へ帰ってきたところで尾崎君の母・尾崎洋子さんにも話を聞きました。肩書は「副施設長」。スタッフのまとめ役であり、同時に「子ども同伴出勤制度」を利用してきた立場から、さまざまなことを感じるそうです。

――施設オープン当初から勤務し、当時からお子さんを連れてきていたそうですね。

尾崎さん 上の子のときは育児に専念していましたが、ここでは保育園を利用しながら、まずパートとして勤務をスタートさせました。行事の準備で遅くなるときなど、一度迎えに行ってここで待たせたりしていたんです。その後、1人勤務や夜勤を伴う正社員になりました。家族の協力ももちろんですが、「せっかく働くなら、なるべくしっかり責任を持つ」という施設の方針や後押しがあったからだと思います。

あとは、うちは核家族なので、子どもが頻繁にここへ来てお年寄りと自然に接することができているのもプラスになっています。介護の仕事に興味を持ってもらえたら、さらにいいのですが…(笑)。

――他のスタッフの子どもも分け隔てなく迎え入れる雰囲気ですね。

尾崎さん 「お互い様」という意識があるからでしょうね。例えば、子どもが病気になったとき。老人ホームという施設の性質上、感染症予防には特に注意しているので、子ども同伴出勤制度は病児保育の代わりにはなりません。そのため親子そろって自宅で休み、代わりの職員がシフトに入ることになりますが、こういうときも、まずは同じ境遇の母親同士で声を掛け合います。

突然夜勤に穴が空いたときなど、本当は独身男性のスタッフに頼りたいんです。予定がなく、お酒も入ってなければ、たいてい応じてもらえることも分かっている。それでもやはり、誰かに負担を集中させないことが大事だと思います。

うちの子どもも、ここへ連れてくると「ずいぶん大きくなった(から手がかからなくなった)ね」と言われることが増えました。なので私も、今度は若いお母さんの急な休みをなるべくカバーするようにしています。これからも「無理なときには無理と言える」「いざというときには何とかなる」という職場であり続けたい。十分な数のスタッフが腰を据えて働ける環境を守っていきたいと思います。

 

取材を終えて

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文字通り、お年寄りの生活の場である老人ホーム。そこで働く人が「職場に子どもを連れてくる」といえば意外に感じますが、おじいちゃんやおばあちゃんの多くが子や孫と同居していた少し前の時代を考えれば、幅広い世代が集まって過ごす自然な状態を取り戻したようにも思えます。実際の様子を見ても、むしろ何の違和感もないことに驚かされました。

入所なさっている、ある方は「大人ばかりじゃつまらない。子どもと一緒に遊んだりできる方が楽しい。折り紙とかトランプとか仲間に入ってくれる」。ほかにも、子どもの姿が見えると涙を流して喜ばれる方や、手をつないで散歩に出かける方、反射的に子守りの経験を思い出される方もいるそうで、この場所で子どもがとても歓迎されていることが伝わってきました。

セキュリティーや衛生、安全面などの理由で大人の出入りさえ制限する職場が珍しくないなか、今回紹介したような“子連れ出勤”をそのまま採り入れられる会社は少ないかもしれません。ただ「職場に子どもがいても、接し方は家にいるときと同じ」というお母さんの言葉を聞くと、心のモードを激しく切り替えるような働き方を考え直したくなる人もいるのではないでしょうか。

アットホームな中にも決まりがあり、またそういう働き方を歓迎する雰囲気が社内でつくれれば、「母親の顔」「父親の顔」のままでバリバリ働ける職場が、実はもっと沢山あるのかもしれません。

WRITING:相馬大輔

こんな「TOEIC試験対策」は、やってはいけない

『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『英語を「続ける」技術』(かんき出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「正しい英語学習の方法」についてお話しいただくこのコーナー。第4回目の今回は「やってはいけないTOEIC(R)試験対策」についてです。

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TOEIC(R)(以下TOEIC)L&R試験に関して絶対に知っておくべき大事な心構えと、間違ったTOEIC対策の見極め方をお伝えします。また、「TOEICスコア」と「英語の実力」の両方がUPさせられる正しい対策方法を公開します。

失敗しないTOEIC対策

TOEIC(L&R)試験の年間受験者数は2011年に200万人を突破し、ビジネスパーソンの英語力を示す指標として、ますます重要なものとなっています。

会社から一定のTOEICスコア獲得を求められている人もいるでしょう。履歴書に書けるように、例えば600点や700点以上のスコアを持っておきたい人もいるでしょう。

書店のTOEICコーナーに行くと、TOEIC試験対策の書籍が山ほど出ています。有名な先生もたくさんいて、みなさんTOEIC満点だったりしますので、どう選んでよいか迷いますよね。また、インターネットで検索しても、様々なTOEIC試験対策情報が見つかります。

「一体、どれを選べば良いのだろうか…?」という悩みが減るように、今回はTOEIC対策の正しい心構えや方法についてお伝えしたいと思います。

TOEICスコアを目標にしてはいけない

まず、情報の選び方について語る前に、根本的な心構えについてお伝えします。それは「TOEICスコアを獲得することを目的にすべきではない」ということです。

そうではなく、例えば600点や700点などのスコアが獲得できるだけの「実力」を身につけることを目指すべきなのです。

これは、ちょっとした意識の差ですが、大きな違いがあります。スコアを求めてしまうと、実力とは無関係の「受験テクニック」に走ってしまいがちです。そうすると、スコアだけがうまくUPしたとしても、英語の実力が伴わないことになってしまいます。

これは、誰も幸せになれない悲劇を生んでしまいます。例えば、本来はTOEICスコアが700点に満たなかった人が、受験テクニックを駆使して820点を獲得できたとします。それを履歴書に書くことで、優良企業に無事に就職――。ここまでは幸せに見えるかもしれません。

しかし、フタを開けてみると、望まれていただけの英語力がないために、企業はまた別の人を探さなくてはいけません。また、その人も、クビにはならなかったとしても、英語に関しては肩身の狭い思いをし続けることになってしまうのです(留学経験者などもそうですが、英語ができることを期待されて入社したのに、それに応えられなかった場合には、英語に関する全てを封印してしまうケースが少なくありません)。

試験というものは本来、英語力を測るためのものです。そのスコアは本来、英語の実力を示す指標に過ぎません。単なる指標に過ぎないものを目的にすべきではないのです。目指すべきものは、英語の実力なのです。

やってはいけないTOEIC対策

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表面的なTOEIC対策テクニックに振り回されないためには、一体どうすれば良いのでしょうか?

よく見かけるのは「出題パターンを覚えましょう」というものです。例えば「Part1の写真描写問題には、こういうパターンがある」とか「こういうところが問われることが多い」、「こういう選択肢は不正解」など。

また、Part別の「頻出単語」などを教えてくれるものもあります。

こういった対策情報・アドバイスが、本当に良いものかどうかを判断するためには、次の質問をしてみてください。

「このアドバイスに従ったら、英語の実力が上がるだろうか?」

もし、答えがNOであれば、それはTOEIC試験にしか当てはまらない、表面的な情報である可能性が高いと言えます。ですので、答えがYESだと思えるアドバイスでない限り、従わないことをお勧めします。

上に書いた例の中であれば、役に立つのは「頻出単語」でしょうか。知らないものがあれば、覚えてしまえばボキャブラリーが増えますよね。TOEICでの頻出単語は、ビジネスでも使える可能性が高いはずです。

TOEICを「英語の試験」だと思ってはいけない!?

では、TOEIC (L&R)試験に対して、きちんとした対策をするにはどうすれば良いのでしょうか?

そのためにはまず、TOEIC試験に対する誤解を解く必要があります。TOEIC試験は、非常によくできた、信頼性の高い試験だと言えます。しかし、万人の英語力を正しく測ってくれる英語試験ではないのです。

まず、TOEICはあくまでも「ビジネス英語」に関する試験です。それに加えて、単なる「英語力(理解力)」ではなく、「英語を使った情報処理能力」を測る試験だと考えた方がより正確でしょう。2時間という試験時間内に、200問を解かなければなりませんから。迷っている暇はなく、試験中ずっと、高い集中力が求められます。

ですから、おっとりした性格の人は、間違いなく向いていないと言えます。また、「英語の勉強」よりも「コミュニケーションを取ること」の方が得意だという人も、TOEICスコアは上がりづらいでしょう。

そういった意味で、TOEICはちょっと「クセ」のある試験なのです。ですから「TOEICスコアが上がった=英語力が上がった」「TOEICスコアが変わらない=英語力も停滞中」などと短絡的に考えるべきではないのです。

オススメのTOEIC対策勉強法

では、どのような対策を取れば、きちんと英語の実力が上がり、また、TOEICスコアも上がることが期待できるのでしょうか?

オススメできるやり方を3つご紹介したいと思います。

1.問題を解くだけで満足しない

TOEIC対策問題集や公式問題集などを解いているという方も多いでしょう。問題を解くことは良いのですが、問題を解くことを目的にしてしまわないようにご注意ください。

我々はつい無意識のうちに、問題を解くことにフォーカスしてしまいがちです。そうではなく、実力をUPさせることにフォーカスすべきなのです。

そのためには、「問題が解ける」以上のことを求めてください。例えば、問題の中に出てくる全ての単語や表現を理解できるように、きちんと調べる。不正解の選択肢が、なぜ正しくないのかまでを理解する。

そういった意識を持って学習をしていれば、ただ問題を解くだけと比べると、間違いなく英語力がつきます。

2.リスニングは全て聞き取ることを目指す

リスニングに関して、多いアドバイスが「文頭を聞き逃さないように」とか「キーワードを逃さないように」といったものです。そういう聞き方をしてしまうと、変なクセがついてしまいますし、ネイティブによる生(ナチュラルスピード)の英語は一生聞き取れません。

TOEIC試験レベルの英語音声であれば、100%聞き取れることを目指すべきなのです(なお、いきなりは聞き取れなくても仕方ありません。目指すことが重要なのです)。

まず入口としては、Part1とPart2の短文について、完璧に聞き取ろうという意識を持って、真剣にリスニングをすることをオススメします。ちょっと大変かもしれませんが、ディクテーション(書き取り)も効果的です。

3.Part5の問題を徹底的に解く

リーディング・セクションにおいてまず重要なのがPart5の短文穴埋め問題です。Part5では、文法力とボキャブラリーが問われます。それも、理解が中途半端な場合には正解できない形で問われるのです。

つまり、Part5の問題が自信を持って正解できることを目指すことで、この2つの力を確実に高めることができるのです。

また、Part5で余計な時間をかけずに解けるようになれば、自然とスコアも底上げされることになります。

最後に

TOEIC試験のために、きちんと勉強や対策をしてから受験しようとする人がたくさんいるのは、とても素晴らしいことだと思います。なぜなら、TOEIC対策の勉強を通じて、時間をしっかりと確保して英語を学び直すチャンスが得られるからです。

だからこそ、表面的な受験テクニックに振り回されてしまうことなく、ぜひとも英語の実力が伴う形で、英語を学ぶ人が増えたら……と願っています。そして英語学習者のみなさんが、英語を活用して、ビジネスをはじめとする様々な面で、大きく活躍されることを応援しています。

 西澤ロイ(にしざわ・ろい)
イングリッシュ・ドクター
英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。
TOEIC満点(990点)、英検4級。
獨協大学英語学科で学んだ言語学に、脳科学や心理学も取り入れ、英語流の「発想」や「考え方」を研究、実践することで、大人だからこそ上達する独自のメソッドを確立する。
暗記の要らない英会話教材「Just In Case」正しいリスニング方法が身につくトレーニング教材「リアル・リスニング」も好評を博している。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『英語を「続ける」技術』(かんき出版)他、著書多数。

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ドラッカーと「キャズム理論」の共通点とは

12万部を超えるベストセラーシリーズとなった『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社、小学館文庫)。その著者である俣野成敏さんに、P・F・ドラッカーの名言を解説いただくコーナー。第9回の今回は、「コップの水」理論についてです。

【P・F・ドラッカーについて】

ピーター・F・ドラッカー(1909〜2005)は、オーストリア出身の著名な経営学者。激動のヨーロッパで古い価値観・社会が崩壊していくのを目撃。ユダヤ人の血を引いていたドラッカーはナチスの台頭に危険を感じて渡米、ニューヨーク大学の教授などを経て、執筆と教育、コンサルティング活動等に従事する。

ドラッカーが深い関心を寄せていたのは、社会において企業が果たす役割についてであり、生涯にわたって、組織内で人をよりよく活かす方法について研究、思考し続けた。「マネジメントの父」と呼ばれ、GE社のジャック・ウェルチ氏やP&G社のアラン・ラフリー氏など、ドラッカーを師と仰ぐ世界的な経営者は数多い。

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こんにちは。俣野成敏です。

著名な経営学者であるP・F・ドラッカー氏の言葉に「私なりの解釈を付けて読み解いていく」というこのコーナー。

世界中に支持者を持つ一方で、難解と言われることも多いドラッカー氏ですが、残された著書を紐解くことによって、長年にわたり世界的企業の第一線で指導を続けた氏の真髄に触れることができます。これを機会にぜひ氏に親しんでいただき、氏の英知をご自身の仕事に取り入れていただくきっかけとなりましたら幸いです。


本日は、下記名言解説の2回目となります。

【本日の名言】

「コップに『半分入っている』と『半分空である』とは、量的には同じである。だが、意味はまったく違う。とるべき行動も違う。世の中の認識が『半分入っている』から『半分空である』に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる」

(P・F・ドラッカー『イノベーションと起業家精神』)

 前回は、ドラッカー氏が同書で挙げた「イノベーションを成功させるための3つの条件」について触れ、氏の言う「半分の意味が変わるときがイノベーションの機会」とはどのようなときなのかなど、事例を挙げて解説しました。

今回は、この名言をマーケティング理論と組み合わせてご説明したいと思います。

イノベーションとは「変化を探し、それに乗る」こと

ドラッカー氏は、『イノベーションと企業家精神』(ダイヤモンド社)の中で、イノベーションについてこのように述べています。

「イノベーションとは意識的かつ組織的に変化を探すことである。…通常それらの変化は、すでに起こった変化や起こりつつある変化である。成功したイノベーションの圧倒的に多くが、そのような変化を利用している」

 

通常、イノベーションとは変化を「起こす」ことだと一般には思われています。しかし、現実のイノベーションとはほとんどが「社会で起こった変化に乗る」ことだと氏は言っています。世間でよく言われる「時流に乗る」というのがこれに当たるでしょう。

もちろん、中には技術的なイノベーションが社会に変革を促す例はたくさんあります。氏は事例としてライト兄弟による飛行機の発明を挙げていますが、最近だとマネー革命と言われるビットコインや、旅館業界に風穴を開けたAirbnb(エアービーアンドビー)などがあるでしょう。

つまり、イノベーションとは大きく分けると、

(1)社会に変革を促すような破壊的イノベーション
(2)時流に便乗する「乗り合い」的イノベーション

の2つがあり、ビジネス的には(2)のイノベーションを狙えば十分ということです。

現在のマーケティングに大きな影響を与えた「イノベーター理論」

ところで、あなたは「イノベーター理論」というのをご存じでしょうか?アメリカの社会学者であるエベレット・M・ロジャース氏が1962年に提唱した理論のことです。革新的な商品が世に普及していくまでを、イノベーター2.5%(革新者)、アーリーアダプター13.5%(初期採用者)、アーリーマジョリティー34%(前期追随者)、レイトマジョリティー34%(後期追随者)、ラガード16%(遅滞者)という5つの段階に分けて考える方法で、マーケティング戦略を練る際に多く使われます。

最初に、商品が投入された超初期段階で、商品の可能性を見抜き、取り入れるのがイノベーターと呼ばれる人々です。2番手のアーリーアダプターは、イノベーターが取り入れた様子を見て将来的な世の中の流れを予測し、行動できる人たちのことです。

イノベーター理論では、商品の普及率がアーリーアダプターまでの16%を超えると、シェアが爆発的に拡大すると述べています。それに対して「初期市場と、その後の主流市場との間にはキャズム(溝)がある」というキャズム理論を提唱したのが、アメリカのマーケティングコンサルタントであるジェフリー・ムーア氏でした。

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キャズム理論参考図(『キャズムVer.2』翔泳社より)

市場には「キャズム」という断絶がある

もともと、キャズム理論とはイノベーター理論をベースにし、それを発展させたものです。キャズム理論では、アーリーアダプターまでを「初期市場」、アーリーマジョリティーを「超成長期」、レイトマジョリティーを「メインストリート市場」、ラガードを「収束期」と位置づけています。

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たとえ最初のキャズムを乗り越え、主流市場にたどり着いたとしても、メインストリート市場に到達するまでの間には、さらに別のキャズムが存在しているとキャズム理論では述べられています。

現実に、超成長期を制しながら、メインストリート市場の波に乗れなかった商品というのは、世の中に数多く存在します。たとえば、1990年代初頭の日本のパソコン市場で圧倒的なシェアを誇っていたワープロソフトの一太郎や、表計算ソフトのロータス1-2-3などです。どちらもトップを取っていながら、やがてシェアを奪われてしまったのは、パソコンのOSがDOSからWindowsへと移行していく中で、それへの対応が遅れたことが主な要因でした。

もちろん、現在のトップシェアを握っているWordやExcelは、OSを開発しているマイクロソフト社の製品ですから、同社が圧倒的に有利であるのは間違いないでしょう。とはいえ、市場の変化にいち早く気づいてうまく対応できていれば、先の2社もここまでの憂き目を見ずに済んだのかもしれません。そして、Microsoftとて明日は我が身の状況に変わりありません。

ドラッカーの主張とキャズム理論の共通性

さて。それではここまでお話したイノベーター理論、キャズム理論とドラッカー氏のコップの水理論を合わせてみましょう。

氏は「コップの水が『半分空である』に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる」と言っています。「半分」とは、「ちょうど真ん中」という意味です。イノベーター理論で言うと、商品がアーリーマジョリティーにまで行き渡った時期であり、キャズム理論で言うと、超成長期段階が終わる頃に当たります。

商品が世の中の半分くらいにまで知れ渡っている状態ということは、人々の中に、「その商品のことはもう知っているよ」と答える人と、「何?それ。まだ知らない」と答える人が、だいたい半々ずついるということになります。これは「その市場がまだ成熟しておらず、中途半端な状態」だということを示しています。成熟していないからこそ、そこにチャンスがあるワケです。

キャズム理論を提唱したムーア氏も、市場における超成長期が終わった段階からを「メインストリーム市場」と見なしています。ムーア氏は、メインストリーム市場に属するユーザーを保守派と呼び、「彼らを対象とした市場は大きな可能性を秘めている」(『キャズムVer.2』)と言います。

保守派のユーザーが求めているのは「実利」です。彼らは、受け入れるのに時間がかかっても、一度受け入れてもらえれば使い続けてくれる可能性が高くなります。ムーア氏は、彼らに対しては「真のソリューションを提供するというアプローチが要求される」と述べています。ドラッカー氏とムーア氏の両名が「半分」にこだわったのは、「そこからが商品の真価が問われるとき」だということなのかもしれません

「チャンスを捉えて上昇気流に乗れ」というドラッカーからのメッセージ

市場のどの段階においても、商品が失速する可能性は常につきまといます。たとえ成長期のピークに入ってもバランシングが難しいことは、先に挙げたシェアを失ったソフトの事例を見ればお分かりいただけることと思います。彼らの二の舞にならないために、反対側からモノを見るクセをつけておくべきことは、前回「コップの水から『市場』が見えるーードラッカーが説く『コップの水』理論とは?」の中でお伝えしました。

市場が曲がり角にさしかかっている時というのは、この先どちらに転ぶのかわからず、企業にとっては悩みどころでしょう。しかし、我々ビジネスパーソンとしては、両方の可能性を模索しつつもチャンスを捉え、今いる場所から新しいS字カーブを描いて上昇していく気概が必要です。それこそが、ドラッカー氏がこの名文で本当に伝えたかったことなのではないでしょうか?

 

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

迷宮組曲、マイティボンジャック…ファミコンから「メディアリテラシー」を学んだ | スマートニュース 松浦茂樹さん

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1983年7月に発売されて国内の累計販売台数は約1935万台、テレビゲーム機として革新的成功をおさめた、ファミコンこと「ファミリーコンピュータ」。当時、「ウソ技(テク)」「クソゲー」「ゲームは一日一時間」「抱き合わせ」「借りパク」といった用語を生み出し、さまざまな社会現象を巻き起こしたファミコンは、テレビゲーム機の娯楽の枠を超えた生活の一部であった。

ファミコンでの遊びをとおして、友だちと一緒に笑い合い、駆け引きをしたり、あるいはケンカもした読者諸氏も多いことだろう。そんなファミコンとともにあった原体験は、実は今を生きる私たちの人生観や仕事観に大いに影響を与えてるのではないか? 本連載では、そんな確信をもって、さまざまなシーンで活躍されているビジネスパーソンや著名人にお話をうかがっていく。

第2回にご登場いただくのは、ライブドア、WIRED.jp、グリー、ハフィントンポスト日本版といった複数のネット企業で要職を担い、現在はスマートニュースのメディアコミュニケーションディレクターである松浦茂樹さん。さまざまなポジションでキャリアを積み重ねる姿には憧れを抱くが、そこにじつはファミコンで培ったコンテンツ体験が大きくかかわっていることがわかった――

ノマドでファミコンを遊び倒した少年時代

――ファミコンは発売当初から遊んでいたそうですね?

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1983年発売だから当時は小学3年生でしたが、友だちの家で『ベースボール』で遊んだのが最初だったと思います。その時はコントローラーのABボタンがまだ四角いゴムだったから、初期型の本体ですね。

その後もけっこう友だちの家に入り浸って遊び倒していました。小学生の頃は完全にインドア派で、何人かの友だちの家を歩き回って遊んでいました。そんなこともあって、結局じつは最後までファミコンは本体もカセットも買っていないんですよ(苦笑)。

――ノマドゲーマーですね!

そうそう。ドラクエ1・2も人の家でクリアしたんです。「ふっかつのじゅもん」さえあれば使い回せるじゃないですか。今でいうクラウド的なかんじで、人の家を転々としながらプレイしてました。

でも、リクエストはしてたんです。「クリスマスプレゼントはファミコン!」って言い続けたのですが、カシオの「MSX」がプレゼントだった(笑)。まあプログラミングというか、キーボードを覚えたのはそのおかげなので、今となっては親に感謝してますね。

――思い出深いゲームはなんですか?

対戦プレーができる『アイスクライマー』や『バルーンファイト』もよかったのですが、友だちと集まって解く難解なゲームの方が思い出深いですね。例えば『ドルアーガの塔』とか。

あのゲームは今振り返ってみても、小学生が何もなしにクリアするのは到底無理だと思うんですけど、攻略本を手にしながら、みんなであれこれ喋りながらやるっていうのは、いい経験だったと思います。

今はないでしょ? 紙に書きながらゲームを進めるっていうこと。この選択肢を選んだときにはこうなって、こっちの選択肢の場合はこれ……というのを手書きで残したりとかは、すごく良かったなあ。

名作ゲームの数々に触れられた贅沢なコンテンツ体験

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――とくにこのゲームは好きだったというのは?

『迷宮組曲』ですね。ハドソンのゲームで、本編にももちろん思い入れはあるのですが、本編をやらなくても、オープニング画面で連射力が計測できる機能があるんですよ。高橋名人の16連射に憧れていた小学生でしたから必死にプレイしましたね。あとは『マイティボンジャック』かな。『迷宮組曲』もそうですが、ちょっと謎解き的な要素があるアクションゲームが好きでした。


他には、有名ではないのですが、『ヘラクレスの栄光』みたいなロールプレイングゲームも好きでした。話しかけた村人のセリフが、「旅に出るなら南の方に向かいなさい」って……想像力をかきたてられますよね。最初から400ゴールド持っているんですけど、でも主人公が何をするのかはまったくわからない(笑)。チュートリアルも何も無いし、当時はUX的な概念とか優しさが無かったから、とにかく最初から頭を使ってやらなきゃいけなかった。そういう点で、やっぱり「ドラクエ」ってすごくよくできてたな、と。

歴史シミュレーションゲームもハマりましたね。『信長の野望』『三国志』はパソコンのほうでやったのですが、ファミコンならナムコの『独眼竜政宗』もいいゲームでした。

――幅広いジャンルのゲームにひととおり触れているかんじですね!

小中学生の時に、いまだ名作といわれるゲームをひととおりプレーできたのは良かったですね。贅沢なコンテンツ体験ですから。読書とかラジオとかテレビとか、影響を受けたメディアは世代によって異なると思うんですけど、僕ら団塊ジュニア世代っていうのは、ある意味ゲームの黎明期で、一番ゲームに影響されたと思うんですね。

歴史的にも、メディアの出始め・・・ラジオしかり、映画しかり、テレビしかり・・・って、いつだってカオスなんです。僕らの世代の場合、1995年あたりのインターネットがまだぐちゃっとした時期、2ちゃんねる以前をリアルタイムで体験しているかどうかで、人格形成に大きな影響を与えるのかなと思っています。ゼロからイチが生まれる瞬間ですから。

ファミコンが未知との出会いをたくさん経験させてくれた

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――そうしたコンテンツ体験が、今の仕事観につながっていると。

ゲームって、情報がバリエーションをもって受け取れる面がありますよね。ただ受動的なだけじゃなく、攻略本を参照しないと解けなかったり、友だち同士で有益なヒントをシェアしたり、当時は意識していなかったけど、能動的に情報をとりに行く、というリテラシーが身に付いたと思います。ひとつのゲームをクリアする目的のために、ゲーム雑誌や攻略本や友だちコミュニティといった多種多様なメディアに触れる広がりを作ってくれた。今につながる情報の流通や伝え方、というのを考える原体験がたしかにあったと思います。

あとは、新しいものにチャレンジするっていう意味においても影響は大きかったんじゃないですかね。ファミコンの場合、名作でもクソゲーでも、新しいゲームという未知との出会いをたくさん経験させてくれましたから。幼少期に、新しい世界に触れてみる、やってみる、という体験を積み重ねられたことは恵まれていたと思います。

――ファミコンゲームって、改めて画期的なコンテンツでしたよね。

ゲームってコンテンツとしては小説や映画と違って、能動的に動かないといけないですよね。自分で考えて動くということをしないと先に進めない。「はい」でも「いいえ」でも、とにかく自分で手を動かして選択肢を選ばなきゃいけない。たとえばドラクエとかだと「はい」を選ぶことで全く異なる結末になることもある。竜王に世界の半分をもらっちゃったら、そこで終わり(笑)

もちろん現実の自分がゲームオーバーになるわけじゃないけど、自分の選択ひとつで世の中が終わるとか、そういうのって、受動的なコンテンツとは明らかに違うじゃないですか。「俺だったらこうするのになあ」という追体験が、ゲームではできますからね。

目的に対して手段を積み重ねる、正解を積み重ねていくっていう点では、ゲームというコンテンツは素晴らしいと思います。判断力という意味において、能動的にコンテンツを受け取るかどうか、コンテンツに書かれているものを鵜呑みにするかしないか、本当に正解かどうかを判断する力が身に付きました。ゲームの場合、判断した結果がストレートに出てくるのは良いところですね。まあ今のゲームもそうなんですけど、ファミコンはもっとストイックというか、シビアでしたから。

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取材・文:深田洋介
1975年生まれ、編集者。2003年に開設した投稿型サイト『思い出のファミコン』は、1600本を超える思い出コラムが寄せられる。2012年には同サイトを元にした書籍『ファミコンの思い出』(ナナロク社)を刊行。
http://famicom.memorial/

撮影・編集:鈴木健介

 

デキる人は、やっぱり「メモ魔」だった――メモのもたらす5つの効果

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働くすべての人におすすめしたいメモの習慣

「行動力がある人」「話や文章がうまい人」「企画力がある人」「判断力や決断力がある人」など、いわゆる“仕事がデキる人”には、「メモ魔」が少なくありません。彼らは自分で見聞きした事柄や、頭に浮かんだアイデア、学び、気づきなどを、こまめにノートや手帳に書き留めています。また、メモしたそれらをよく見直して、仕事に活用しています。

メモを取ることのメリットを挙げればキリがありません。今回は、特筆すべき5つの「メモの効果」を紹介します。

 

【メモの効果1】備忘&記憶効果

人間の脳は、すべての出来事や情報を記憶してくれる万能装置ではありません。それどころか、ほとんどのことを忘れてしまいます。仕事に忙殺されているときなどは「ついさっき言われたことが思い出せない」と冷や汗をかくようなこともあります。

 “忘れるリスク”の回避方法として有効なのがメモです。メモは、言うなれば「脳の外付けのハードディスク」のようなもの。抜群の備忘機能を誇ります。したがって、メモしたことは、ムリして覚えておく必要はありません。

たとえば、3ヶ月前に読んだ本の書評を書くとします。本を読んだときに感想や気づきをメモしていた場合と、メモしていなかった場合では、どちらが書評を書きやすいでしょうか。答えは言わずもがなです。メモしていなければ、どんな本だったかも思い出せないかもしれません。

なお、メモには、思わぬご褒美もあります。それは、文字を書くことによって「記憶に残りやすくなる」ということ。“忘れるリスク”を回避するための行為であるのもかかわらず、結果的には、記憶に強く刻まれるのです。少し変則的な“一石二鳥”といえます。脳にいつでも取り出せる記憶がたくさんあれば、「話す」「書く」「企画を立てる」など、あらゆる仕事の効率と精度が高まり、その結果、得られる成果も大きくなります。

 

【メモの効果2】情報生み出し効果

情報とは「ある」ものではなく「生み出す」ものです。とくに頭のなかにある思考は、書き出す(メモする)ことで、初めて情報として認識できる状態になります。書き出さなければ、単なる「もや」にすぎません。まだ世の中に存在していない状態です。

たとえば、食品メーカーに勤めるあなたが新商品の試作品を食べたとします。<おいしいにはおいしいが、商品化するには何かが足りない>と思ったとします。そのときに、その「何かが足りない」という感覚を言語化できなければ、それは、やはり「もや」のままなのです。

自分でもその“違和感”の正体を把握しているとはいえず、ましてや「もや」の状態につき、他人と共有することもできません。つまり、商品化に向けた改善策を打ち出すことが難しくなります。これでは仕事が進展しません。

「メモをする」とは、曖昧模糊とした「もや」に形を与えることにほかなりません。「もや」に形を与えることによって、はじめて情報として認識することができ、また、他人との共有が可能になるのです。

 

【メモの効果3】気づき効果

書き出して(メモして)情報を生み出した先には、何かしらの“気づき”が待っています。

たとえば、あなたが“マイブーム”な食べ物を書き出したとします。酢豚、トムヤムクン、ピクルス——このラインアップを客観的に眺めたときに「そうか、自分はいま酸っぱい食べ物にハマっているのか」と気づくようなケースです。このように視覚化(文字化)したうえで、それらを見比べることで初めて“気づく”ことは少なくありません。

また、ひとつの“気づき”から、新たな“気づき”が得られることも少なくありません。「食べ物がそうなら、飲み物はどうだろう?」と考えて、「そういえば『レモンスカッシュ』や『うめサワー』が好きだから……やっぱり酸っぱいものが好きなんだ!」と気づくようなケースです。

さらには、「もしや、疲労物質が溜まっているから、からだが酸っぱいものを欲しているのかな? 最近忙しすぎるからなあ……」という具合に、重要な結論にたどり着くこともあります。

ここまでくると、もうメモが、やめられなくなります。メモを活用して、より多くの“気づき”を得たいと思うようになるからです。人間にとって“気づき”は思考のカンフル剤のようなもの。メモによって、人の思考は縦横無尽に広がっていくのです。

 

【メモの効果4】アイデア効果

メモには、ときにアイデアを生み出す“着火剤”の役割も果たします。

たとえば、書店に行って「この頃、健康志向の本が多く発売されている」と気づいたら、そのことをノートにメモしておきます。数週間後、仕事で、ある飲食店のコンサルティングをしたときに、クライアントから「新コンセプトの開発」に関して意見を求められたとします。このこともメモしておきます。

後日、ペラペラとノートをめくって、自分が書いたメモを読み返していたところ、まったく無関係な2つのメモに目が留まります。「健康になるための本が多い? 飲食店の新コンセプトの開発? あっ! お店のコンセプトを“健康”にしてみたらどうだろう? 薬膳、有機野菜、酸素カプセル、肩もみ、ハンドマッサージ……どれもおもしろそうだ。いや、待てよ。無添加・無着色の『無』にこだわるのもいいかもしれないぞ」という具合です。

このように、視覚化した複数のメモ(情報)を見比べることで、大小さまざまなアイデアが生まれやすくなります。アイデアはよく「異なる要素の組み合わせである」と言われますが、この組み合わせの実現にメモが役立つのです。

1:印象深い出来事や、人から聞いた話、思いついたアイデア、感想、気づきなどを積極的にメモする。

2:メモを眺めながら、無関係な情報同士を比較するほか、共通点や相違点を探したり、情報同士を結びつけたりする。

1→2をくり返す習慣が身につくと、ひとつの事柄から、複数のアイデアを(自在に!)生み出せるようになります。つまり、アイデア、意見、主張、提案……等々、仕事に関係する魅力的なアウトプットができるのです。

 

【メモの効果5】文章の下書き効果

メモというのは、それ自体が文章です。つまり、メモした文章は、その後に書く本番の文章の下書きとしても活用できるのです。メモを取らずにいきなり文章を書くよりも、「下書き→本番」の流れで書くほうが、文章が磨かれるため、当然、文章の質が高まります。

文章作成を目的とする際のメモの取り方は、「具体的に」が肝です。「おいしいチョコ」とメモするよりも、「少し酸味のきいたビターテイストのチョコ」とメモしたほうが、下書き効果は高まります。

言うまでもありませんが、メモの段階で文章化されていれば、文章にするときの負担が軽くなります。場合によっては、このメモをふくらませるだけで魅力的な文章になることもあります。

 

成功している人はおしなべてメモ魔である

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これまでに筆者は、ライター&インタビュアとして、芸能人からスポーツ選手、経営者、ビジネスパーソン、学生まで2700人以上に取材・インタビューをしてきましたが、その道で一流と言われている人ほど「メモ魔」であると感じています。

私自身の体験と重ね合わせても、メモを取る効果は小さくなく、その人の仕事や人生に好影響をもたらすと断言します。あなたも「メモの習慣」を身につけて、人生を変えてみませんか?

著者:山口拓朗

『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』著者。

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 伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。書けない人を書ける人へと導くノウハウを満載した『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)のほか、『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)、『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)他がある。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/

一流営業パーソンになれるかどうかの「4つの分かれ目」とは?

「一生懸命頑張っているのに、なかなか営業成績が伸びない」
「ノルマ達成が精いっぱいで毎月へとへと」
「断られたらと思うと飛び込み営業なんて怖くてできない」

会社の売上を握っている営業パーソン。いわば生命線を背負っている存在ですが、目先の売上目標に追われ、毎日がつらく感じている方も多いのではないでしょうか。でも、そんな厳しい環境にも関わらず、楽しく仕事をこなし軽々と営業数字を叩き出す、「一流」と呼ばれる営業パーソンがいるのも事実です。

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そこで「一流の営業パーソンが特に気にしているポイント」について、広告代理店の営業マンとして飛び込み営業成功率72.6%、累計30億円以上の案件を獲得、また3000人以上のVIPと交流し、彼らの成功の秘密を20年以上研究してきた経験を持つ「気配り」のプロフェッショナル・後田良輔さんにお話を伺いました。

一流の営業パーソンは「主語」を入れ替えている

私はこれまで3000人以上の「一流」と呼ばれる成功者と接し、また自分自身も広告代理店の営業マンとして、飛び込み営業で累計30億円以上の案件を獲得してきました。その結果、一流営業パーソンと結果が上がらない営業パーソンには、たった1つですが、大きな違いが存在していることがわかりました。それは「主語」の違いです。

結果が思うように出ない営業パーソンの主語は「自分」となっています。「自分は何を売りたいか」「自分はどうしたいか」「自分は何をすると気持ちがいいか」など、何をするにしても「自分」が主役となっています。

一方、一流営業パーソンの主語は「相手」になっています。「相手は何が欲しいのか」「相手はどうしたいのか」「相手は何をすると気持ちがいいのか」と言うように、主語を自分ではなく「相手」にしていたのです。

単発の仕事であれば、主語が自分のままでも売れることがあるでしょう。でもより大きな売上を、より長く続けていきたいと思うなら、主語を相手に変え、相手のメリットを追求する必要があったのです。この主語の入れ替えの積み重ねが、いつしか天地ほどの差となって、結果に表れていたのです。そこで今回は、簡単に主語を入れ替えることができる4つのポイントをご紹介したいと思います。

主語の入れ替え【1】「服装の選び方」

心理学のメラビアンの法則の通り、人は会った瞬間の3~5秒で第一印象が決まる傾向があります。そのため営業パーソンもビジネスの服装に気を遣うのが一般的です。

でもその服装、お客様の主語に合ったものになっていますか?流行のファッションに身を包み、一般的に清潔感があると言われる服でも、その認識をお客様が同じように感じてくれなくては意味がありません。「自分が清潔と思う」ではなく、「お客様が清潔と思う」かどうかが大切なのです。

そこで一流の営業パーソンは服を自分で選ばず、百貨店などのプロに選んでもらうようにしています。例えば「食品メーカーの人が清潔と思うスーツをおススメしてください」というように、自分のお客様の業界名を販売員に伝え、その上で勧められたスーツを購入するのです。そこに自分の好みが入る余地はありません。プロがおススメするお客様目線の服装こそ、正解の服装なのです。

主語の入れ替え【2】「『2つの先』を綺麗に整える」

デキる営業パーソンは「靴の清潔さ」を気にすると言いますが、一流営業パーソンはさらにその上を気にしています。それは「指先」です。たしかに「靴」の手入れができていると、きちんとした人だという印象を与えることができますが、実際に商談中に「靴」が見えることはほとんどありません。それよりも指、それも「指先」がとても重要になります。「爪がきちんと切られているか?」「爪に汚れが詰まっていないか?」「手荒れがないか?」などは意外と目が行き、気になる部分です。

このような「指先」こそ、あなたの誠意が宿るセールスポイントなのです。どうせ買うなら、不快な印象のある人よりも清潔な印象のある人から買いたいと思うもの。これからは「靴」と「指先」という「2つの先」を綺麗に整えるようにしてみましょう。

主語の入れ替え【3】「物の言い方」

結果が思うように出ない営業パーソンと一流営業パーソンでは、物の言い方にも明確な違いがあります。例えば、一般的な連絡。結果が思うように出ない営業パーソンは「その件につきましては木曜中に連絡します」と話しがちですが、一流営業パーソンは「その件につきましては金曜日の朝9時までに連絡します」と答えます。

営業時間ベースでよくよく考えれば、結果的には同じことを言っています。でも「木曜中に連絡します」では、そもそも何時に連絡が来るのか曖昧な状況で、個人の主観によって認識のギャップが生まれてしまいます。一方、「金曜の朝9時までに連絡します」なら明確な時間が決められているので相手が安心できますし、前倒して木曜に連絡すれば「1日早く対応してくれた」とお客様は感じ、あなたに信頼を置くようになってくれます。このように同じことを言っているのだけれど、相手が「自分のために努力してくれた」と感じるような物の言い方を意図的に考えてみましょう。

主語の入れ替え【4】「3つの利益を意識する」

一流営業パーソンは、主語を入れ替え「相手の利益」を追求しますが、その時、3つの利益を意識しているのもポイントです。実は「相手の利益」は、3つのレイヤーに細分化できるのです。1つ目は担当者の利益、2つ目はその上司の利益、3つ目は会社の利益です。自分が提案するものが、担当者の利益にしかならないものであれば、その売上は小さいものになります。ですが、担当者の利益にもなり、その上司も喜ぶ内容の提案であれば、より大きな売上になります。そして会社の大きな利益になるものであれば、永続的な取引の獲得につながるのです。このように一流営業パーソンは、目先の利益だけにとらわれず、より俯瞰的な視点を持ち、相手の会社全体の利益となる主語を見つけるように活動しています。

 

――営業は「物やサービス」を売っているという面もありますが、一方で「心」を売るという面も持っています。目の前の売るべき商品だけにとらわれず、これからはぜひ、相手の心に寄り添う姿勢を持つようにしてください。たったそれだけで、いろいろなことが好転しはじめ、営業も人生が劇的に変化していきます。 

 

後田良輔氏/ビジネス書作家・コラムニスト

後田良輔氏/ビジネス書作家・コラムニスト

1972年生まれ。大手3大広告代理店に勤務し、「誰でも使える気配り術」を駆使する気配りのプロフェッショナル。これまで応対したVIPは、東証一部上場社長、世界企業のCEO、政治家、医者、弁護士、大学教授、大物俳優・女優、ミリオンセラー作家、世界No.1クリエイターなど総勢3000名を超える。この特別丁寧に接しなければならない顧客との交流で磨かれたスキルと「東京・名古屋・大阪」の現場勤務で身につけたリアルな経験を組み合わせた、独自の「誰でも使える気配り術」に定評がある。
著書に、『気配りの正解』(ダイヤモンド社)『<落ちこぼれでも3秒で社内エースに変わる!>ぶっちぎり理論38』(ダイヤモンド社)、『逆境を活かす! 就活面接「エモロジカル理論」2015年度版』(実務教育出版)『1秒内定面接術」』(インプレス)など。これらの実績を買われ全国の大学や企業から講演・研修依頼が殺到。新聞・雑誌などメディア露出は50回以上。「世界からキャリアの悩みをなくすこと」をミッションとする。

 

みんな難しく考えすぎ。まずは、やってみることです――絵本・童話作家・きむらゆういち氏の仕事論

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プロフィール

東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、造形教室の指導、テレビ番組のアイディアブレーンを経て、絵本・童話作家になる。1994年に刊行された『あらしのよるに』(シリーズ名:木村裕一・講談社刊)は累計350万部。その作品で講談社出版文化絵本賞、産経児童出版文化賞JR賞を受賞した。そのほか累計1200万部を超える『あかちゃんのあそびえほん』(偕成社刊)シリーズなど、600冊の著者がある。

 

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『あかちゃんのあそびえほん』は累計1200部、
『あらしのよるに』は累計350万部と
ベストセラーを出してきたきむら氏。


どうやってヒットメーカーとなったのか。

 

 

「自分には生きている意味があるのか」と思っていた

もともと絵本作家になろうとは思っていなかったんです。ここまでたどり着くまでに様々な選択があって、その都度どっちに行くか、悩みながら進んできました。今、振り返ってみると、選んだ道は全部つながっていて、一本道なんですけどね。偶然、選んだものが重なり合って、あたかも必然だったように道が作られていく。歴史というのはそういうものですよね。

転機となった出来事はいくつかあります。最初は高校生の時。それまでの僕は引っ込み思案で消極的で、なるべく人前に出ないようにしていました。授業でも、先生からさされないように気配を消していて。自信がなくて、「自分は生きている意味があるのか」と思っていました。コンプレックスの塊だったんです。

 

そんな僕が高校の美術部の部長になった。実は、僕は昔から絵を描くのが好きだったけど、僕の高校には美術部がなかったんです。それで僕とその友達、つまり気の弱い3人組で「美術部でも作ろうか」という話になった。でも、部を作るには、部長の欄に名前を書かなきゃならない。譲り合った結果、絵画学校に通ったことがあるという理由で、僕が部長をやることになりました。

 

部長になると、人前で話さなくてはなりません。全校生徒の前で美術部の紹介をしたりもするわけです。最初は自信がなくて、「先生が〇〇だと言ってたよ…」と伝言の形でしか言いたいことを伝えられなかった。でもやっていくうちに自分の言葉で話せるようになっていきました。経験を積むと人は変わっていくんですね。

 

文化祭でも積極的に絵を発表するようになって、そのうちに先生からも「図書館が寂しいから、絵を飾ってみないか」と言われるようにもなりました。その絵を見て「いい絵だったな」とほめてくれる先生もいて、ますます自信がついてきた。自分の言葉で話せるようになったからか、今度は小説を書きたくなって、数人の友達を集めて同人誌を作るようにもなりました。

引っ込み思案で自信がなかった僕が、部長になったことで、180度、変わっていきました。「自分にもできることがある」と、そう思うようになっていったんです。

 

好きなことで食べるため、高校生で始めたレンタルアート業

自分にできることは分かった。次に僕が抱えた悩みは、「どうしたら好きなことで食べていけるか」です。高校生でそんなことを考えるなんて珍しいかもしれないけど、それには僕の家庭環境が影響しているのでしょう。僕は10歳のころに父親を亡くしていたし、母親から「あんただけが頼りよ」と毎晩のように言われた時期もあった。だから、「好きなこと」で食べていくだけでなく、「安定」した生活も必要だったんです。

 

好きなことで食べていくにはどうしたらいいか。考えた末、高校生の僕はレンタルアート業を始めました。喫茶店に自分たちが描いた絵を持って行って、有料で置いてもらうんです。都内の喫茶店をいろいろ回ったのですが、結局、お金を出して絵を置いてくれたのは2軒だけ。なかには「お金は出せないけど、コーヒーは無料にしてあげる」なんて言ってくれた人もいたけど、商売にはならなかった。それからはずっと「好きなことで食べていくにはどうすればいいか」、こればっかり考えて、いろんなことに手を出してきたんですよ。

フリーで働くときのために、期限付きで会社に勤めた

美大を卒業してからは、会社員を2回経験しています。どちらも、フリーで食べていくにはどうしたらいいか、を学ぶためです。「金もない、コネもない、実績もない」でしょ。それなのに、いきなりフリーになるのは無理だなと。だから独立したときに必要な社会経験を学ぶことにしたんです。最初から期限付きでね。あと、作家になったときに、社員旅行の場面が書けないと困るしなあ、なんてことも考えていましたよ(笑)。

 

最初の会社はマネキン製作会社。僕が配属されたのはカツラを作る部署。9カ月勤めました。その後はデザイン事務所に1年間。企業のチラシとかパンフレットなどを制作する会社です。1年後には自分の事務所を作る予定だったから、そこでは特に営業の仕方を学びました。すでにそのころはフリーでも仕事を始めていたので、毎日、忙しかったですよ。平日はデザイン事務所に行き、休日はフリーの仕事。2足のわらじは大変だったけど、新しいことを始めるときは仕方がないんじゃないかと思います。

 

「安定」した生活を得るために、大学を卒業すると同時にやっていたことがもう一つあります。それは子ども造形教室です。子どもたちと一緒にアニメーションを作ったり、陶芸をやったり…、造形教室を始めるといっても、造形の教え方なんてわからないし、そもそも子どもと接したことがなかったので、自分が楽しいと思うものは何でもやりました。アニメーション制作も、自分が大学時代にやって面白かったものなんです。教室の運営方法も集客もわからないから、公民館を借りて、電柱にポスター貼って生徒を募集しました。最初の生徒は一人です。教える大人のほうが多かったくらい(笑)。でも、続けていくうちに徐々に生徒が増えてきて、教室っぽくなっていった。そのうち「面白いことをやっている人がいる」と、新聞やテレビ局から取材がくるようになったんです。

この教室は23年続いたんだけど、子どもたちと直に接したことは絵本を書く上でとても役に立ったし、本を出版するきっかけにもなった。何かをやっているとつながるんですよ。わらしべ長者みたいに。だから、やり方がわからなくても、資金がなくても、とりあえず、思いつくことをやってみる。これが大事なんだと思います。

 

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生活を安定させるために
始めた子ども造形教室。
これが絵本の製作につながったという。


最初は全然売れなかったというが、
何がヒットにつながったのか。

 

何かをやっていると、いい仕事が転がってくる

僕はいつもわらしべ長者なんです。不思議なことに、何かをやっていると仕事がころがってくる。絵本を書くきっかけもそうでした。

 

造形の教室が特集されたテレビ番組を見ていた人が出版社を紹介してくれて、造形に関する本を出すことになりました。でも本を出したからって、食べていけるわけではない。そこで同じように仕事がないクリエイターを集めて、出版記念パーティを開いたんです。出版社の人をたくさん呼んだら、仕事につながるかもしれないと考えて。結局、出版社の人はほとんど来ませんでしたけど(笑)。でも、唯一つながったのが、付録の仕事。そのパーティに小学館の人がきてくれて、付録をやってみないかと言ってくれたんです。しばらくその仕事をやっていたら、姉貴から「子どもの工作をまとめた事典をつくって、幼稚園に売り込んだらいいんじゃないか」と言われて、姉の会社で工作事典を作ってみました。営業も雇って幼稚園に売り込んでみたものの、全然売れない。倉庫には在庫の山。困り果てましてね。でも世の中不思議なもので、なんとかなるんです。ちょうど、「保育事業部を作ったんだけど、売るものがない」という出版社が現れて、自分たちの代わりに工作事典を売ってくれるという。だけど、やっぱり全然売れなくて。仕方がないから、僕が代わりに幼稚園に行って、実際に目の前で工作をして見せたんです。そしたら面白がってくれて、突然、売れ始めました。

 

結局その工作事典は、シリーズで100万部近く売れました。そしたら新聞社から取材が来て、その記事を読んだNHKの人から「おかあさんといっしょ」のブレーンになってくれと言われて。そんな感じで、どんどん仕事が広がっていったんです。

 

見本が3冊あったら、見よう見まねでなんとかなる

どうやったら仕事がうまくいくんですか、とよく聞かれます。まずは、やってみることです。みんな難しく考えすぎなんですよ。シリーズで1000万部になった『あかちゃんのあそびえほん』は「しかけ絵本」なんだけど、出版社から「しかけ絵本」の話をもらうまで何の予備知識もなかったんです。実はこの話は、もともと別の作家に頼んだものだそうです。そしたらその人が「自分はしかけ絵本は苦手だから」と、僕を紹介してくれた。僕だってしかけ絵本のことは何も知らないんですけどね(笑)。でも、試しに4冊くらい作ったら面白がってもらえて、出版することになったんです。

 

その後、ファミレスで編集者と別の本の打ち合わせをしていたら、「赤ちゃんの絵本で何か企画ないですか」と言われて、ちょうどそのころ長女の子育てをしていたので、遊びながらあいさつを覚えられる本があったらいいなと思いついたんです。それが『あかちゃんのあそびえほん』シリーズ最初の本『ごあいさつあそび』です。ファミレスの紙ナプキンにちょこちょこっと書いただけの企画です。それがものすごいヒット作になった。

 

僕がやってきたことは、最初はほとんど見よう見まねです。どんなことでもできないことはないんですよ。しょせん人間のやることですから。見本を3冊くらい手に入れて、「なんとなくこうかな」でやってみる。うまくいかなかったら、その都度うーんうーんと考えてなんとかすればいい。新しいことをやるときのコツは、数を作ること。僕も最初の本のときは、企画を120本、出しましたから。下手な鉄砲、数うちゃ当たる、です(笑)。

 

あと大事なのは、すぐに結果を求めないこと。『あらしのよるに』も売れると思って書いていません。『あかちゃんのあそびえほん』がミリオンセラーになってから同じような仕事ばかり依頼されるようになって、このままでは赤ちゃん向けの作家だと認知されてしまうと危機感を覚えたんです。それで、全く違うジャンルの本を書いてみた。だから売れるなんて考えていませんでした。最初は1冊だけのつもりが、評判が良くてシリーズになって、映画にもテレビアニメにもなって、いつの間にか、累計で350万部になったんです。

 

最後にもうひとつ大事なこと。それは自分が楽しんでやることです。最近出した『そのままのキミがすき』『あなたなんてだいきらい』という2冊の本があるんですが、『そのままのキミがすき』は男性から女性に贈るために、『あなたなんてだいきらい』は女性から男性に贈るために作りました。もともと『そのままのキミがすき』は別の形で出版されていて、講演会で読んでいてとても評判が良かったもの。だから何か新しい形にして出したいなとずっと思っていたんです。お互いにプレゼントできる本って、あったら素敵でしょ。だからプレゼントのパッケージ風に表紙も工夫しました。制作に半年もかかってしまったけど、女性からこういうことを言われると嬉しいな、なんて考えるのは楽しいですよね。だから大変な作業でも続けられたんですよ。

※リクナビNEXT 2016年12月14日「プロ論」記事より転載

 

『あなたなんてだいきらい』『そのままのキミがすき』 きむらゆういち・作 高橋和枝・絵

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代表作『あらしのよるに』は、映画・テレビアニメ・歌舞伎にもなり、日本中を感動の渦に巻き込んだ。キャラクターデザインを担当したEテレ「パッコロリン」は子どもたちに大人気。そんな数多くのヒットメーカーである、きむらゆういち氏の新作は、大人の男女のための絵本。『あなたなんてだいきらい』『そのままのキミがすき』2冊同時に発売された。

 

 

『あなたなんてだいきらい』は、女性が大好きな男性に抱く複雑で切ない思いが描かれている。一方、『そのままのキミがすき』は、男性が愛しい女性に対して感じるやさしい気持ちが描かれている。『あなたなんてだいきらい』は女性から好きな男性に、『そのままのキミがすき』は男性から好きな女性に。お互いにプレゼントし合うと素敵な関係が築けそう。

 

(あすなろ書房刊、定価850円、税別)

 

EDIT/WRITING 高嶋ちほ子 PHOTO 栗原克己