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デキるデキないの差は「編集力」にあった

「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」等の文章力・コミュニケーション力向上をテーマに執筆・講演活動を行う山口拓朗さん。そんな山口さんに、今回は「ビジネスに必要なスキルである“編集力”」について、その必要性と習得の仕方について解説していただきます。

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「編集力」はすべての仕事で求められる必須能力である

「編集力」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか? 書籍や雑誌の編集、あるいは映像や音声の編集などを思い浮かべる人が多いかもしれません。たしかに、編集力はメディアの世界で重要な役割を果たしています。編集力次第で「商品(テレビ番組、映画、新聞、雑誌、書籍、インターネットサイトなど)」の価値が決まるからです。彼らが編集力に磨きをかけるのは当然といえるでしょう。

しかし、編集力は、決してメディア業界に限定して使われる能力ではありません。業種業態を問わず、営業、企画、宣伝、事務、接客、マーケティング、プロモーション、セールス——等々、あらゆる職種で求められるスキルです。

たとえば、会議での発言がうまい人とヘタな人。両者の差は編集力の差ともいえます。発言がうまい人は、把握している情報量が豊富なうえに、目的に応じて情報を適切に取捨選択し、なおかつ、選択した情報をわかりやすく再構成して伝えることを得意としています。この一連のプロセスこそが「情報の編集」にほかなりません。

一方、会議での発言がヘタな人には、「情報の収集量が少ない」「目的に応じた“情報の取捨選択”ができない」「情報をわかりやすく再構成することができない」などの傾向があります。本人は単に「自分は人前で話すのが苦手」と思っているだけかもしれませんが、実はその根っこには“編集力のなさ・低さ”が隠れているかもしれないのです。

 

情報の編集は「収集→取捨選択→再構成」の3ステップで行われる

ちなみに、編集力は以下の3ステップに分けることができます。

1.情報の収集
2.情報の取捨選択
3.情報の再構成

具体例を紹介しましょう。映像の仕事であれば、以下のようなプロセスで編集が進められていきます。

1.情報の収集:撮影
2.情報の取捨選択:撮影した映像の要不要の見極め(カット作業)
3.情報の再構成:映像の並び替え/映像の加工/BGMやテロップ、ナレーション入れなど

医師であれば、以下のようなプロセスで編集が進められていきます。

1.情報の収集:診察/治療アプローチの勉強
2.情報の取捨選択:診断および治療法の決定
3.情報の再構成:最適な治療を最適な順番で行う(例:手術→投薬→リハビリ)

営業職であれば、以下のようなプロセスで編集が進められていきます。

1.情報の収集:販売する商品の情報を収集/営業先の情報を収集
2.情報の取捨選択:営業先の利益になる商品の選定など
3.情報の再構成:営業先が理解・納得しやすい流れで商品を提案する

一日の仕事のスケジュールをどう組み立てるか。そんなケースでも、その人の編集力が問われます。仮に、今日は13時にA社、17時にB社を訪問しなくてはいけない、とします。編集力が乏しければ、何も考えずに「A社→帰社→B社」という行動を取るでしょう。

一方、編集力がある人は、「帰社する時間がもったいないから、A社とB社の中間地点にあるC社に連絡を入れて、15時にアポをもらおう」と考えたり、「B社の近くのカフェに入って、パソコンで企画書の続きを書こう」「乗り換え駅にある書店で仕事の資料を見つけよう」と考えたりします。彼らは「時間」「場所」「空間」「労力」などを編集しながら仕事をしているのです。

このように仕事における編集力とは、仕事の効率と生産性を高めるためのものであり、なおかつ、自分自身のパフォーマンスを最大限に引き出すための武器でもあります。私たちの仕事は、編集力の有無や優劣に大きく左右されるのです。

 

「編集の3ステップ」で押さえておきたいポイント

では、編集におけるそれぞれのステップで、重要なポイントを見ていきましょう。

1.情報の収集

「情報の収集」で大切なのは「制限を加えない」ということです。たとえば、あなたが、自社で経営するコンビニA店の「近況報告書」を作成するとします。このとき、手元に届いたA店のデータをチェックだけして終わらせることもできますが、実際に現場に行って、その目で店舗全体の状態をチェックしたり、店長やスタッフから話を聞いたりすることもできます。現場で五感をフルに働かせることによって、A店についての情報が、さまざまな形で入ってきます。

また、A店だけでなく、B店やC店の情報も収集できれば、さらに「近況報告書」が充実するでしょう。B店やC店と比較して初めて見えてくるA店の傾向もあるからです。もちろん、闇雲に情報収集すればいいというものではありませんが、初めから「もらったデータだけで十分」と満足してしまえば、本当に重要な情報をつかみ損ねてしまうかもしれません。収集段階では、優劣をつけずに、幅広く情報を集めることが大切です。

2.情報の取捨選択

「情報の取捨選択」で大切なのは「ムダの断捨離」です。コンビニA店の「近況報告書」の例でいえば、報告書の目的に合わせて、手元にある情報を取捨選択します。この段階で初めて情報に優劣をつけていきます。ムダ(不要なもの)は捨てて、必要なものは残す。仮に、近況報告書の目的が「収益率低下の原因特定」であれば、収益率低下と因果関係のない情報は捨てて、因果関係の高い情報だけ手元に残します。

片付け同様、「ムダを捨てるのが苦手」な人は注意が必要です。せっかく集めた情報を手放したくない気持ちはわかりますが、不要な情報を残してしまうと、重要な情報の価値まで薄まってしまいます(全体の情報量が増えるため)。その結果、仕事の目的達成率を下げてしまうのです。「“ムダの断捨離”は、重要な情報を光らせるために必要な作業である」と心得ておきましょう。

3.情報の再構成

取捨選択した情報をそのまま並べるだけでは、残念ながら50点です。「情報の再構成」とは、コース料理でいうところの「提供する順番」や「盛り付け」です。せっかくのおいしい料理も、「提供する順番」や「盛り付け」を誤ると、食べる人の満足度を下げてしまいます。

「情報の再構成」をするときには、その情報を受ける人の立場・気持ちになる必要があります。コンビニA店の「近況報告書」であれば、それを読む人が、理解しやすい順番で情報を並び替える必要があります。「現場の様子→現場の課題(収益率低下の原因)→課題の解決方法」といった具合です。これが、コース料理でいうところの「提供する順番」です。

必要であれば「図やグラフをつける」「写真をつける」「見出しをつける」などの工夫を凝らす必要もあるでしょう。これが、コース料理でいうところの「盛り付け」です。


もしも、あなたが「仕事がうまくいかない」と思っているとしたら、いちど自身の編集力に目を向けてみましょう。一つひとつの仕事を「編集力」というフレームに落とし込んでチェックしてみるのです。「①情報の収集/②情報の整理/③情報の構成」のどこかに自分の弱点が潜んでいるかもしれません。

 

あなたの人生は「編集力」で大きく変わる! 

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もうお気づきの方もいるかもしれませんが、編集力は、仕事のみならず、人生全般において必要不可欠な能力です。人間関係、恋愛、子育て、勉強、家事、スポーツ、お金の使い方……などなど。

毎日、毎時間、毎秒のように、私たちは編集し続けています。「今日はどの服を着るか」「夕食は何を作るか」「週末は誰と過ごすか」「どこに住むか」「通勤時間に何をするか」「誰と付き合うか」など。もっと大きなことを言えば、「どういう人間になりたいか」や「人生をどう生きるか」も編集です。そう、人生は「編集力」でキマるのです。

たしかに、生きていれば“天の采配”としか思えないような出来事に遭遇するときもあるでしょう。個人の編集力の効果がおよばない“偶然”を完全否定するわけではありません。

しかし、それでもなお私たちの人生は、そのほとんどが、自分自身の編集力によって築き上げられている、といっても過言ではないのです。置かれた立場や環境を含め“今ある自分”は、これまで自分がしてきた編集の結果なのです。

逆にいえば、「人生=編集」という事実を受け入れて、編集力を鍛えていくことができれば、今後の人生は大きく変化するはずです。もちろん、“仕事も人生も編集力である”というこの考え方を受け入れるかどうかも、あるいは、日々の生活や仕事に取り入れるかどうかも、その人の「現時点での編集力」に左右されます。

あなたは、いま読んだこの記事(情報)をどう編集しますか? 

 

著者:山口拓朗

『「また会いたい」と思われる!会話がはずむコツ』著者。

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伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。最新刊『「また会いたい」と思われる!会話がはずむコツ』(三笠書房/知的生き方文庫)のほか『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)、『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)他がある。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/

 

デキる人が欠かさない「何気ない5つの習慣」

世間の評価と自分の努力は、必ずしも一致するとは限りません。よかれと思って取り組んだことが逆効果となり、評価を下げてしまう時すらあるのが現実です。そんな厳しい世の中で、すいすいと仕事で成果を出し、会社で評価を上げる人が稀に存在します。

そこで今回は、広告代理店勤務時代に、周囲の評価を思う以上に上げたVIPと3000人以上交流し、彼らの働き方の秘密を研究している「気配り」のプロフェッショナル・後田良輔さんに「デキる人の何気ない習慣」についてお話を伺いました。

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期待以上の評価は「ターゲット設定」で決まる

自分の努力を確実に実績に変換し、周囲の評価を上げていったVIP達は、「誰からの評価を先に上げるべきなのか」の答えを持っていました。

あなたは評価を上げるべきターゲットの優先順位をきちんと決めていますか?周囲の評価を全般的に上げようとするのは失敗の元。川の流れと同じように、周囲の評価は上から流れて大きく広がってゆくものです。そのため、まずは上流にいる「キーマン」から評価を獲得すべき。キーマンの評価が上がれば、そこから周囲の人間に評価が広がってゆくでしょう。

キーマンの評価は「5つの習慣」で獲得できる

「下足番を命じられたら日本一の下足番になってみろ。そうしたら誰も君を下足番にしておかぬ」と、阪急電鉄・宝塚歌劇団・阪急百貨店・東宝をはじめとする阪急東宝グループを創業した実業家の小林一三氏は言いました。

キーマンはあなたの出来る範囲のことしか期待していません。キーマンだからといって、いきなり無理難題をいう訳ではないのです。当たり前の課題を出し、当たり前の答えを返すことで、信頼関係が生まれ、評価が少しずつ上がっていきます。

また、キーマンは大きなことよりも、あなたの小さな習慣に目を向けています。まずは「デキる」より「失敗しない」ということを目指してください。キーマンの評価は「ロープの綱渡り」と同じです。バランスを取り、その場にとどまっているだけでも、ライバルはどんどん脱落していきます。

まずはキーマンが気にしている「口ぐせ」「しぐさ」「メモの取り方」「姿勢」「持ち物」という「5つの習慣」を身に付けることから始めましょう。どれも3秒もあればできることなので、取り組まない手はありません。

■5つの習慣-1 「口ぐせ」

あなたは忙しいときにどんなことを言っていますか?もし忙しいときにそのまま「忙しい」と言っていたら要注意。忙しい時こそ「忙しい」と言わず、「バタバタしている」と言い換えてみましょう。「バタバタしている」は「忙しい」に比べ、ネガティブな印象を含みません。仕事に前向きでいつでも引き受ける姿勢がある人はすぐに「忙しい」とは口にしないもの。「いまバタバタしているから、1時間後でもいいかな」というように代替案を提案しています。そんな人のところに良い情報と面白い仕事は集中していくのです。

■5つの習慣-2 「しぐさ」

キーマンと一緒に歩く時、あなたはどんな風に歩いていますか?評価される人はキーマンを「三角形の頂点」に据えて、自分はやや後方に位置するように歩いています。これが自然とキーマンの優越感をくすぐり、どんどん気持ちよくさせる歩き方なのです。

三角形をキープしながら、状況に応じ、小走りで前に出てドアを開けたり、エレベーターのボタンを押し、手際よく用件をすませたら、今度も小走りで後方に戻る。また、二人のときはキーマンの3歩斜め後方を歩けばOKです。キーマンはこんなちょっとしたしぐさで人を判断しています。

■5つの習慣-3 「メモの取り方」

メモを書く時、あなたは何に書いていますか?ルーズリーフやミシン目つきの紙、または手のひらサイズのメモ帳を使っているなら、A4サイズ以上の大きなノートに変えてみましょう。

キーマンは自分の話をとても重要だと思っています。だからこそ切り離しが可能だったり、風が吹いたら飛んでいくかもしれないメモ紙だったりすることを嫌っている傾向があります。キーマンの話を書き留めるときは、A4サイズ以上の大きなノートで相手にきちんと見えるようにメモする。たったこれだけで「コイツはよく話を聞いているなぁ」という評価を得られます。だからこそ大きなノートに、しっかりと相手に見えるようにメモする必要があるのです。

■5つの習慣-4 「姿勢」

自分の力だけで出来る仕事には限界があります。あなたは人の力を借りるために、どんな工夫をしていますか?キーマンは野球の送りバントのように「手柄を人に譲る」ということを仕掛けています。自分が一発かっ飛ばしたいという気持ちを抑え、チームの勝利のために行う献身的な姿勢です。自分の手柄をわざわざ主張せず、手柄を仲間に譲ってみてください。たったそれだけで「チーム思いの人」という評判が立ち、結果、自分ひとりでは到達できなかった高みに達することができます。

■5つの習慣-5 「持ち物」

キーマンはすべての持ち物に意味を持たせています。例えば名刺入れ。私は3000人のVIPと名刺交換してきましたが、彼らの名刺入れは100%革製の立派な名刺入れでした。
なぜなら名刺入れはいただいた相手の名刺を乗せ、名刺の座布団として使うから。お客様をお招きして、冷たい鉄や汚れた座布団を出す人はいないですよね。

いただいた名刺はお客様の分身。その分身を硬くて冷たい座布団に座らせるのは失礼です。名刺入れは金属製ではなく、革製を使いましょう。あなたが使っている持ち物は「お客様を大切に扱う姿勢」で選んだものになっていますか?この視点がキーマンの視点なのです。

――「こんなところ、誰も気がつかない」という細部に、キーマンは気を配っています。なぜなら自分が若い頃に、自分もそこで損や失敗をした苦い経験を持っているから。「神は細部に宿る」ということわざがあるように、まずは些細な習慣から始めてください。

たったそれだけで本当に信じられないくらい、いろいろなことがどんどんつながりはじめ、人生が劇的に変化していきます。 

 

後田良輔氏/ビジネス書作家・コラムニスト

後田良輔氏/ビジネス書作家・コラムニスト

1972年生まれ。大手3大広告代理店に勤務し、「誰でも使える気配り術」を駆使する気配りのプロフェッショナル。これまで応対したVIPは、東証一部上場社長、世界企業のCEO、政治家、医者、弁護士、大学教授、大物俳優・女優、ミリオンセラー作家、世界No.1クリエイターなど総勢3000名を超える。この特別丁寧に接しなければならない顧客との交流で磨かれたスキルと「東京・名古屋・大阪」の現場勤務で身につけたリアルな経験を組み合わせた、独自の「誰でも使える気配り術」に定評がある。
著書に、『気配りの正解』(ダイヤモンド社)『<落ちこぼれでも3秒で社内エースに変わる!>ぶっちぎり理論38』(ダイヤモンド社)、『逆境を活かす! 就活面接「エモロジカル理論」2015年度版』(実務教育出版)『1秒内定面接術」』(インプレス)など。これらの実績を買われ全国の大学や企業から講演・研修依頼が殺到。新聞・雑誌などメディア露出は50回以上。「世界からキャリアの悩みをなくすこと」をミッションとする。

 

「部下のやる気がない…」と嘆く上司に、決定的に“足りないこと”

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、「ビジネスパーソンの仕事への向き合い方」についてお話しいただくこのコーナー。第14回の今回は、「部下のマネジメント」についてです。

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こんにちは。俣野成敏です。

今回は、部下のマネジメントについてのお話をしたいと思います。

「どうすれば部下を動かせるのか?」というテーマは、上司にとっては永遠の課題のようです。仕事のポジションの中でも向き不向きが出やすい分野ですが、どんな仕事にだって基本原則というものは存在します。

難しいと思っている人は、部下に対してボス・マネジメントで圧をかけたり、逆に下手に出てなだめすかしたりしていることが多いのですが、このどちらもうまくいかないのはご承知の通りです。

部下に動いてもらうための目的を決める

まず、上司として「部下にどう動いてもらいたいのか?」というのが明確になっていないと、部下を思うようにマネジメントすることはできません。そのために、最初に考えるべきは下記の3つです。

これに自分なりの答えを出してみてください。

《「部下を動かす」目的を決めるための3つの質問》

  1. 何のために部下を動かしたいのか?
  2. 部下にどうしてもらいたいのか?
  3. それを通じて部下にはどのような姿になってもらいたいか?

 

1は自分の中で「部下に動いてもらう目的」を決めるということです。それはたとえば「チームの目標を達成したい」「自分の評価を上げたい」など、いろいろあるでしょう1は大目標とでもいうべきものです。

2は1に対して小目標と呼んでもいいかもしれません。こちらはより具体的に、「この研究を部下に担当させたい」とか「この顧客を部下に任せたい」といったことを考えます。

3は、たとえば「ゆくゆくは部下に商品化まで任せたい」とか「新規客を自分一人で獲得できるようになってもらいたい」といったことになります。 

「部下を動かす方法」とは意外にシンプル

それでは次に、どうしたら「具体的に部下が動いてくれるのか?」についてお話しましょう。実は、部下を動かすのは思っているよりもずっと簡単です。それは、相手に「仕事をすることによって(その部下が)得られるメリットを伝える」ことです。

会社には、褒賞としての「昇給」「昇進」「臨時賞与」「景品」「表章」「チャンス」「より大きな仕事」などが用意されています。上司はこれらをうまく活用し、部下が動く意義を見出していきます。ここで大事なのは、「相手によって何がメリットになるのかを見極め、それを提示する」ということです。相手が何を求めているのかは、当然、その部下とのやり取りの中から見つけます。

上司によくあるのが、「上司という地位に就けば、部下が自分を上司として見てくれる」という思い込みです。部下は部下で、「上司なんだから、自分よりも仕事ができるだろう」という真逆の思いがあります。この両者の意識のズレがすれ違いを生んでしまい、険悪な間柄になることも少なくありません。

大切なのは、相手に「この仕事をすることは(自分の)メリットだ」と感じてもらえるにはどうすべきなのか、意識を研ぎ澄ませることです。「相手が『魅力的だ』と感じることは何なのか?」「相手に通じる言葉とは何なのか?」と考え、それを伝えることです。当然、言葉だけでは足りませんから、たとえばみんなの前で表彰式を行って刺激してみたり、チーム同士で競わせたり、といった方法を費用対効果の検証をしながら試してみるわけです。

部下をリーダーとして育てたい場合はどうすればいいか

あなたの部下の中には、「ぜひリーダーとして育てたい」という人材もいるのではないでしょうか。ところが、意外に部下自身はそうは思っておらず、「上司の片思い」ということが多々あります。そういう相手に、「君にリーダーになってもらいたい」と言ったところで、部下を困惑させるだけかもしれません。

こういう部下に対して、「上司になるとこんなに楽しい」とか「もっと仕事の幅が広がって、あなたにも良い未来が待っている」と言ったところで通じないでしょう。そういう場合はどうしたらいいのかというと、基本的には部下のほうから「あなたのようになりたい」と思ってもらうしかありません。つまり「自分が憧れの存在になる」ということです。

もしかしたら、あなたは「上司になれば給料も上がるし、大きな仕事もできる。なぜ部下はそこを目指さないのだろう?」と思っているかもしれません。けれど部下によっては、現場の仕事を楽しいと感じていたり、他人を動かすことに魅力を感じない人もいます。特に、高い理想を持っている上司ほど、相手構わず自分の理想を語ってしまいがちです。「自分の理想と他人の理想は違う」という点に、注意すべきでしょう。

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やる気のない部下がいる時こそチャンス

現実には、「目的を決めるための3つの質問」を事前に考えていない上司がほとんどかもしれません。そういう人は、ただ「目の前に仕事があり、部下がいるから、単にそれを振っているだけ」というのが現状です。だから、たいていの部下にとって、仕事が「やらされ仕事」になってしまうのではないでしょうか。

もちろん、何も言わなくてもやってくれる部下もいるでしょうが、それは部下自身が高い志を持っているからです。残念ながら、そういう人は多くはありません。もし、「自分の部下が、みんな高い士気を持っていればいいのに」と願っているようでは、いつまで経っても自分の上司としてのマネジメント能力は向上しません。逆説的に言うなら、「やる気のない部下ほど、自分を成長させてくれる人はいない」のです。

もし今、あなたの部下の中に、やる気のない人がいるのであれば、それこそチャンスです。ぜひ、「どうしたらこの部下が動いてくれるのか?」と考えてみていただきたいと思います。

部下に仕事を渡す前に自問自答すべき3つの質問

では次に、いよいよ部下に仕事を渡すかどうかを決める前に考えていただきたい3つの質問です。

《仕事を渡す前に考えるべき3つの質問》

  1. 仕事を任せるとしたら、どこまでできそうか?
  2. 任せられない部分があるとしたら、その理由は何か?
  3. 任せられない部分はどうするか?(自分がやるか別の部下に任せるか?)

 

これは、私自身が仕事を渡す際に常に頭の中で考えていることでもありますが、社内のマネジメントのみならず、社外に仕事を渡す際にもとても有効なフレームワークですので、ぜひ参考にしてみてください。

仕事を渡してみた結果によって3通りの対応がある

では、最後に実際に、仕事を渡してみた結果をどう受け止めるかの話をして、今回のコラムを締めくくりたいと思います。

仕事の戻り状況を鑑みて、その後の取り組み方は必ず変えていかなければなりません。ここをいい加減にやってしまうと部下のマネジメントの軌道が逸れていき、確実に苦労のループに陥ることになるでしょう。

平凡なマネジャーで終わらないためにも、「これができそうだな」と思ったものを少しずつ渡していきながら、渡してみた結果で3通りの方法で次に繋げていただければと思います。

《仕事の結果を鑑みてとるべき3つの方向》

  1. 予想よりダメな結果だったら、再教育をする。
  2. 予想通りだったら、その仕事は安心して任せる。
  3. 予想以上だったら、もう少し負荷をかけてみる。

 

大原則は、煎じ詰めると得てしてシンプルなものです。ぜひ皆さんのマネジメント現場でも試してみてください。

今回の話をもう少し詳しくお知りになりたい方は、拙著「わりきりマネジメント」(扶桑社)をご一読ください。きっとあなたのお役に立てると思います。

 

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

海上保安庁・隊員たちの仕事レポート――第三管区巡視艇・航空機展示総合訓練

5月20、21日、東京湾羽田沖で第三管区巡視艇・航空機展示総合訓練が行われた。第三管区海上保安本部は、茨城県から静岡県にかけての沿岸海域をはじめ、伊豆諸島、小笠原諸島、日本最南端の「沖ノ鳥島」や日本最東端の「南鳥島」を含む広大な太平洋海域を担当している。今回の展示総合訓練では、第三管区海上保安本部を中心に北海道や福岡県など各地から計15の巡視船艇、4機の航空機、特殊救難隊などが参加。海難救助・海上防災、テロ容疑船捕捉・制圧などの各種訓練の模様を披露した。

なかなかお目にかかれない海上保安庁の仕事の様子について、写真を中心にレポートする。

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 ▲視閲船の1つ、第三管区横浜海上保安部の巡視船いずにも大勢の市民が乗り込んだ

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▲やしまに敬礼する茨城海上保安部の巡視船あかぎの乗組員

訓練では、巡視船やしま(第七管区福岡)、巡視船つがる(第一管区函館)、巡視船いず(第三管区横浜)が視閲船となった。巡視船やしまでは本訓練の総合指揮官である第三管区海上保安本部長の陣頭指揮のもと、長官及び次長が視閲官として、また石井国土交通大臣、根本国土交通大臣政務官が来賓として乗船。2日間で公募で選ばれた約4300人の市民に、巡視船の編隊航行訓練、航空機の編隊飛行訓練、海難救助訓練、海上防災訓練、テロ容疑船捕捉、巡視船の高速機動連携訓練など多岐にわたる訓練成果を披露した。

海難救助訓練

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▲航行中のタンカーが爆発炎上

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▲海に投げ出された乗組員が発煙筒で救助を要請

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▲ヘリコプター「はいたか」から隊員が降下して無事救助

海上防災訓練

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▲タンカーで2回目の爆発が発生し巡視船艇による放水消火が行われた

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▲「いぬわし」から隊員がタンカーに降下。取り残された乗組員を吊り上げ救助

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▲いぬわしは巡視船ぶこうに着船。救助者を降ろした後、再び離船

テロ容疑船捕捉と制圧訓練

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▲巡視艇すがなみといそぎくがテロ容疑船を発見、追跡。警告弾を投てき

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▲巡視艇は正当防衛射撃の後、特殊警備隊隊員がテロ容疑船に移乗、制圧、逮捕した

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▲視閲官として乗船した中島海上保安庁長官(左)と石井国土交通大臣(右)

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▲訓練を視閲後、石井国土交通大臣は「この訓練は、練度技術・技量の向上はもともとより、国民の皆様にとって、日頃、直接目にする機会が少ない海上保安業務への理解を深めていただく、よい機会となったものと思います」と述べた

 

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▲両日合わせて4300人の市民が3隻の巡視船に乗船し、訓練の様子を見学した

今回の訓練を目の当たりにして、海上保安庁の隊員たちの常人離れした肉体と精神、技術には感服するほかなかった。日本の海を守るため、日夜奮闘している彼らのような人たちがいるからこそ、私たちは枕を高くして眠れるということを忘れてはならない。改めてそう思った総合訓練だった。

文・写真:山下久猛

なんだかんだ「うまくいく人」が知っている3つの法則

コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第21回目は「最終的にはなんだかんうまくいく人が知っている“ビジネスのコツ”」についてです。

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あなたの周りには、最終的には「なんだかんだうまくいく人」はいませんか?

・月末ギリギリでなんだかんだ大きな受注が入りきっちり目標を達成し続けている人。

・ずっと順風満帆というわけではないが、出世していく人。

などなど、最終的にうまくいっている人が、あなたの周りにもいるのではないでしょうか。彼らは、いったい何が違うのでしょう?どんなことをしているのでしょう?
このような人たちの共通点をご紹介しましょう。

最終的に「うまくいく人」は失敗を恐れない

なんだかんだうまくいく人は、実は人より多くのチャレンジをしています。

例えば、最終的に結果を残す営業担当者は電話や訪問の回数が他の人と比べて多かったりします。チャレンジが多いということは、それだけ失敗もしますが、成功の可能性も高くなりますよね。

私は仕事柄、このような相談を受けることがあります。
「営業が下手で才能がないみたいです。どうしたらいいですか?」
そんな相談を受けたときには、私は次の質問をします。
「今まであなたは、何人の人に商品説明やプレゼンをしましたか?」

すると、多くの方がこう答えるのです。「今まで商品説明をしたのは、5人です」と。
「300人にプレゼンして1件も売れなかったです」という人にはめったに出逢ったことがありません。

では、実際にどのくらい営業をすれば、コツがわかると思いますか?

私自身、ようやく営業のコツが少しわかったかなと思うのは、200人くらいにプレゼンをしてからです。
高級家電品の訪問販売をしていたときには、10年くらいの間で1万人にプレゼンをして、成約は2000人ほどでした。成約率は約20%ですから、業界ではまあまあ売れていた方です。
つまり、8,000人には断られるという失敗をしてきたということになります。
10人に断られて、才能がないというなら、私は800倍も才能がないことになります。
しかしその8,000回の失敗のおかげで、成約率は間違いなく上がったと思います。現在ではそういった時に得られたノウハウなどを営業講師としてレクチャーしたり、書籍を書いたりすることができています。
売れている営業担当者の多くは失敗を恐れず、果敢にチャレンジしていると私は感じています。
自分が物を売るのが苦手だとか、人に勧めることが下手だと悩んでいる方は、ほんの数人の断り文句にダメージを受けて、動けなくなっているだけなのです。
失敗を恐れず経験をたくさん積むことが、成功を引き寄せるコツの一つです。

 最終的に「うまくいく人」はスランプとの付き合い方を知っている

「最近はスランプだ。何をやってもうまくいかない・・・」

そういう時期は誰にでもあります。

最終的にうまくいく人は、こんなときこそ我慢の時期だと知っています。

人が成長するためには、「何をやってもうまくいかない」というスランプの時期が必要です。

そういう苦しい時期こそ、失敗してもやり続けることで経験値を上げ、気が付いたときになんだかんだ実を結んでいるのです。

周りからは、「あの人はまたラッキーな電話が入ったおかげで契約が取れている!」と言われることもあるでしょう。しかし、それはスランプと上手に付き合いチャレンジし続けてきたからこその結果なのです。

最終的に「うまくいく人」 は周囲への感謝をよく口にする

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「なんだかんだうまくいく人」は、仕事の成功を、「自分の実力」だけで生み出せたとは考えず、周りに感謝しています。

「今回、MVPを獲れたのは、チームのおかげです。みなさんのフォローがあったからです」

「課長になれたのは、チームのみんなと、よく指導してくれた部長のおかげです」

このように、事あるごとに感謝の言葉を口にします。

周りの人は今後も気持ちよく協力してくれます。

良い情報があったらすかさず提供してくれます。

感謝の気持ちを示すことは、相手だけではなく自分にとってのプレゼントなのです。

 

これら3つの法則は、「なんだかんだうまくいっている」ための必須条件といえるでしょう。

思ったようにうまくいかないことは、すべて未来につながる経験です。

大きな成果ほど、たくさんの失敗や大きな失敗が必要です。

失敗を恐れず、スランプと上手に付き合い、周囲への感謝を忘れなければ、気が付いたときには最終的にはうまくいっているものです。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

 

著書

「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

 公式サイト http://nlp-oneness.com

「自分の中に法則を持て!」――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第2回目です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、読むリラックスタイムですら学びの時間に変えることができます。私が強くお勧めする選りすぐりのマンガの名シーンの1コマを解説することで、より多くの方に名作の良さを知っていただけたら幸いです。

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 ©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「自分の上に法則を置け。法則こそが神!」

(『インベスターZ』第2巻credit.8より)

 

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

上がっても下がっても売ることができない

投資部に入部することになった財前は、いきなり同部キャプテンの神代(かみしろ)から「100億円を運用しろ」と言われます。神代に「投資に必要なのはカンと度胸だ」と告げられ、財前は30億円をゲームメーカーのゲーキチに投じることを決定。素人とは思えない大胆な行動が、先輩たちを驚かせます。

財前の読みが当たり、ゲーキチの株価は上昇。キャプテンより「株価が10%以上上がったら売るよう」指示されますが、ゲーキチに個人的な思い入れのあった財前は売るのを渋ります。その時、神代が財前に言った言葉が上記マンガの場面です。

その後、株価はさらに上がり、利益は約4億円に膨れ上がります。ところが「もっと上がるかも」と欲が出た財前が売らないでいるうちに、株価は一転して下落。「もとに戻らないか」という祈りも虚しく、とうとう株価は買った値段を割ってしまいました。

このように、株価が購入時の値段を割ってしまい、売るに売れなくなることを俗に「塩漬け」と言います。ゲーキチ株が塩漬けになったと思い、慰める先輩たちを前に、なんと財前は損失が出る前にゲーキチ株を売り払ったことを報告。株価が下がり続ける中で決断し、約8000万円の時点で利益確定をしていたのでした。

人は感情的になると判断を間違えやすい

この場面は、投資家が陥りがちな心理を巧みに描いています。投資家は、値上がりすればさらに値上がりを期待して売るタイミングを逃し、下がれば損をした気持ちになって、やはり売れなくなります。これが投資でよくある失敗パターンです。

こうならないためには、あらかじめ自分の中で法則を決めておくことが大切です。投資部のキャプテンが言っている「感情を捨てろ」「法則に従え」という言葉がまさにそれです。人は判断する際に、感情が入ってしまうとミスジャッジをしやすくなります。

知っておきたい事業化の基本3条件

実はこれは、投資に限らずビジネスにも当てはまります。たとえば、多くの人は独立起業をする際に、「ラーメンが好きだからラーメン屋をやろう」といった、思いつきで自社の取扱商品を選びがちです。しかし、これは事業が上手くいくかどうかの根拠にはなりません。たいてい、自分の好きなことの中に自分の強みはないことも多く、むしろ好きなものが嫌いになってしまうリスクすらあるのです。

だから、私は自分のクライアントには「自分が好きかどうか?」は二の次三の次にしておくように繰り返し提言しています。

参考までに、私が新規事業を検討する際の法則について書いておきます。

<事業化の基本3条件>
  1. 市場性がある
  2. 強みが生きる
  3. 競合に勝てる

 

非常にシンプルですが、これらを無視して事業展開をすることはできません。この3つのどれかではなく、この3条件すべてに根拠が必要です。

自分の中に法則を持て!

「法則に従え」というのは、前提条件として「あらかじめ法則をつくっておく必要がある」ことを意味します。法則がなければ、そもそも従うことができません。ぶれない人はその場の感情では動かずに、経験則に基づくルールに従っています。そのルールの有効性は常に意識して改善はするにせよ、そのルールを無視することはありません。そのために必要となるのが、勉強や経験です。このようにして、考えるべき範囲が狭まることで、その都度あれこれ考えなくてはいけない人と圧倒的な差をつけることができるのです。

たとえば、ビジネスでの交渉だとしたら、「取引先以外にも代替えがあるなら相見積もりをする」とか、「費用対効果がこの条件を満たすまで契約しない」というようなルールです。相手の人柄を見てしまうと、つい価格交渉などはしづらくなりますが、自社の資金を有効活用しない限り、事業を続けることができないですし、ビジネスは最初の取り決めが後々まで尾を引きます。

あなたもぜひ、「自分の中の法則とは何か?」と考え、それを少しずつ増やしていってください。それでは、今回はこの辺で。

マンガ「インベスターZ」の続きも、ぜひお読みになってみてくださいね!

 

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

ドラッカーが考える「目標設定に必要な三つのバランス」とは?

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、P・F・ドラッカーの名言を解説いただくコーナー。第12回の今回は、「目標設定に必要な三つのバランス」についてです。

【P・F・ドラッカーについて】

ピーター・F・ドラッカー(1909〜2005)は、オーストリア出身の著名な経営学者。激動のヨーロッパで古い価値観・社会が崩壊していくのを目撃。ユダヤ人の血を引いていたドラッカーはナチスの台頭に危険を感じて渡米、ニューヨーク大学の教授などを経て、執筆と教育、コンサルティング活動等に従事する。

ドラッカーが深い関心を寄せていたのは、社会において企業が果たす役割についてであり、生涯にわたって、組織内で人をよりよく活かす方法について研究、思考し続けた。「マネジメントの父」と呼ばれ、GE社のジャック・ウェルチ氏やP&G社のアラン・ラフリー氏など、ドラッカーを師と仰ぐ世界的な経営者は数多い。

 

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こんにちは。俣野成敏です。

著名な経営学者であるP・F・ドラッカー氏の言葉に「私なりの解釈を付けて読み解いていく」というこのコーナー。

世界中に支持者を持つ一方で、難解と言われることも多いドラッカー氏ですが、残された著書を紐解くことによって、長年にわたり世界的企業の第一線で指導を続けた氏の真髄に触れることができます。これを機会にぜひ氏に親しんでいただき、氏の英知をご自身の仕事に取り入れていただくきっかけとなりましたら幸いです。

本日は、下記名言解説の1回目となります。

【本日の名言】

「目標を設定するには三種類のバランスが必要である。目標は利益とバランスさせなければならない。現在と将来とをバランスさせなければならない。異なる目標を互いにバランスさせなければならない。そのためには目標間のトレードオフが必要となる。

…何もかもできる組織はない。金があっても人がいない。優先順位が必要である。あらゆることを少しずつ手がけることは最悪である。いかなる成果もあげられない。間違った優先順位でも、ないよりはましである」

(P・F・ドラッカー『マネジメント』)

 

あなたも、会社で何かしらの目標を持たされ、それに向かって日々、努力を重ねていることと思います。ところで、意外に多いのが、目標を深く考えずに決めていることです。もしかしたら、あなたも機械的に「対前年105%」などと目標を決めてしまったことが、過去にあるのではないでしょうか?

ドラッカー氏は、目標について「具体的な目標を持たない領域は、必ずないがしろにされる」(『マネジメント』以下、すべて氏の言葉は同書より引用)と述べています。それだけ目標は大切だということです。

利益は「出し過ぎてもいけない」

それでは名言中にある、目標設定に必要な三種類のバランスについて解説したいと思います。

最初に利益についてですが、ドラッカー氏の有名な格言のひとつに、「利益とは企業存続の条件である」というのがあります。現在でも、企業が営業している目的が「利益を得るため」だと考えている人は大勢います。しかし、氏は「利益とは未来の費用であり、事業を続けるための費用だ」と主張しました。利益が企業の目的であることを明確に否定し、存続の条件だと言い切っています。

また、同時に「利益は条件だけではなく、制約でもある」とも言っています。

一般に、会社はコストを小さく抑えようとするのが普通です。コストを抑えれば、その分、多くの利益を出すことができます。けれどその反面、必要コストをかけなければ、出せる利益も先細りになります。実際、儲かっている会社は、「利益はコストで買うもの」という感覚を持っていることが多いものです。つまり、利益が目的ではないという以上に、コスト削減が目的になることはありません。

経済活動とは「不確実な未来のためにお金を使うこと」

企業は経済活動を通じて資金を調達し、それを再投資することによって成長していきます。会社は基本的に「材料を加工して付加価値を付け、それを商品として供給し、対価を得る」というサイクルを繰り返しています。

ドラッカー氏は、「経済活動の本質とはリスクを冒すことである」と述べています。それは「経済活動とは、現在の資源を未来に、すなわち不確実な期待に賭けること」だからです。

氏の主張は、我々が普段、当たり前に行なっている購買活動などを思い起こせばわかります。本当に「その商品を買って満足できるかどうか」というのは、実際に買って使ってみなければわかりません。わからないものに先にお金を出している以上、それは「不確実性に投資をしている」ということになります。

企業は市場の中で、常にライバルとしのぎを削っています。当然ながら、今日の顧客を満足させなければ、明日はありません。しかし、今日のことだけを考えていたのでは、明日には忘れられた存在になっているかもしれません。ですから、「現在と将来とをバランスさせなければならない」のです。

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大事なのは「間違いを恐れないこと」

続いて三つ目の「異なる目標」とは、たとえば「既存の目標とこれから決める新しい目標」や、「部署やチーム内の目標と自分の目標」などがあるでしょう。ドラッカー氏は、「目標を決める際には、少なくともこれら三つが対立することになる」と述べています。

氏の言う「目標間のトレードオフ」とは、「同時には成立しえない関係」のことを言います。要は「あちらを立てればこちらが立たず」といった状態のことです。そこで、必要となるのが「優先順位づけ」です。(優先順位についての考え方は、過去の記事も参考にしてみてください)


実際に、優先順位づけをしようとする時に、悩むことになるのが「どちらを優先させるか?」ということです。ここで、もっともやってはいけないこととは、「間違うことを恐れて、力を分散させること」だと氏は言います。

名言の中で、氏が言おうとしていることは「間違っても構わないから、まずは優先順位をつけること」です。仮に今、正しい優先順位づけができたとしても、それが将来にわたって有効であり続けるという保証はどこにもありません。なぜなら、市場は常に動いているからです。

もともと、社内で決めたことが、常に決められた通りに動くとは限らず、間違うことを恐れている間にも、時は容赦なく過ぎていきます。実際、優先順位をつけて行動してみなければ、それが正しいのかどうかもわからないのです。

「ギリギリのところで勝負をする」のがビジネス

今回の名言の趣旨を端的に言い切るなら「二律背反をどう両立させるのか?」ということがテーマとなっています。

世の中には、二律背反で成り立っているものが多くあります。一例を挙げると、企業の利益と顧客の利益は、基本的には二律背反関係にあります。他には企業と従業員の関係や、利益とコストの関係などもそうですね。

「バランスを取る」と言うことは、必ず「バランスを取るべき対象がある」ことを意味します。天秤を思い浮かべてみていただきたいのですが、片方を無視していては、バランスを取ること自体ができなくなります。つまり「どちらかを取る」というよりは、「ギリギリのところで、どう両立させるのか?」が大事ということです。

たとえば企業が儲けようと思ったら、一番簡単なのは単価を上げることです。けれどそれは同時に、顧客にとっては不利益に当たります。単純に単価を上げても、顧客は他へ行くだけです。自社の利益と顧客の利益の間で、どうバランスを取るのか?というのが企業努力になります。

バランスは、一時的には釣り合うことがあっても、相手がある限り、再び向こうから押され、必ず均衡は破れます。そこには市場の変化やライバルの動向なども影響するでしょう。ビジネスには「終わりはない」というのが、面白さでもあり、難しいところでもあるのです。

 

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

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堀潤さん | ファミコンが多様性を認め合うゆるやかな「コミュニティ」を示してくれた

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さまざまなシーンで活躍しているビジネスパーソンや著名人に、青春時代に親しんだTVゲームの思い出をうかがっていく本連載「思い出のファミコン - The Human Side -」。今回ご登場いただくのは、報道番組のキャスターをはじめ、ジャーナリストとしてメディアを横断して発信を続けている堀 潤 (@8bit_HORIJUN) さん。市民投稿型ニュースサイト『8bitNews』のネーミング由来にもなるなど、現在の活動のルーツはファミコンと深い関わりがあるようだ――

親からのクリスマスプレゼント
ファミコンと思って開けたら…コレジャナイやつが!

――ファミコンとの出会いについてきかせてください。

任天堂の『ゲーム&ウォッチ』っていうのがファミコンの前に流行りましたよね。僕があれを親戚の家で夢中になってやり続けているのを親が見ていたから、「この子にゲームなんて与えたらダメ」というスタンスだったんです。
ところがうちは転勤族で、転校が続いて僕は寂しがり屋だったし、病弱だったこともあって、その境遇を汲んでくれたのか、「友だちづくりのためにもファミコンを買ってあげるか」という空気に変わったんです。
そしてたしか10歳のクリスマスの朝、目が覚めたら枕元に箱が置いてあったんです。「これは……!」と思って箱を開けてみたら、なんと中身が『セガのSC-3000』だったんですよ(笑)。

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――当時のあるあるですね!

本体と一緒にゲームは『ロードランナー』を買ってくれていました。「うわ、ロードランナーじゃん!」と思って、本体にカートリッジを差してスイッチをオンしたら……。ファミコンの『ロードランナー』はカラフルで可愛らしいドットのキャラクターですが、セガの『ロードランナー』は違ったんです。なんか白い影のようなキャラで、業務用みたいでデザイン性がまったくなし。

さすがに「これじゃない!」って文句を言ったんですけど、父親は「いや、セガはみんなが持ってないものだし、これでプログラミングだってできるから、すごいものなんだよ」って言われて。
「そっか……」って思いながら遊んでいたんですけど、周りの友人とはカセットの互換性がないから、友だちを家に呼んで一緒にセガで遊んでも、みんなの反応が鈍い……「何これ?」みたいな(笑)。ただちょっとだけ気持ちの片隅に、「俺は違うものをやってるぞ」っていう優越感はありましたね。たしかその後3年くらいはファミコンを買ってもらえなくて、セガで凌いだんです。

親の目を盗んで深夜の「ファミ活」

――思い出深いエピソードについてきかせてください。

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ようやくファミコンを買ってもらえて、だんだんカセットも増えてきて、親が最初に懸念していたように、僕はどっぷりのめり込み、ファミコン中毒少年になりました。そしてついに親から「ファミコン制限令」が制定されてしまったんです。だから、うちでは学校から帰って、宿題をやった後から晩御飯までの1時間程度だけ遊べる、みたいなルールになったんです。

わずか1時間じゃ満足できない僕は、ファミコンをやるために深夜に起きて……午前3時半くらいかな?親が寝静まった頃、二階から一階へ忍び足で降り、テレビに静か~にファミコンを接続して遊んでましたね(苦笑)。プレイ中もずっと無音で。朝6時には、父親が起きてくるので、その前にはそっとしまって、二階の自室に戻るっていうプレイスタイルでした。

――親バレしなかったんですか?

それがね、やっぱりバレてたんですよ。部屋って人の体温で温まるんです。ファミコン本体も熱を発するし。親もきっとなんか気配を感じてたと思うんですね。ただ、「やってないよね?」って言われると、「やってないよ」ってゴマかしてました(笑)。

――思い出深いゲームはありますか?

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夜中によく遊んでいた『銀河の三人』ですね。深夜にこっそりプレーする後ろめたさが、あのゲームの神秘的な世界観にも合いまって、ハマりました。RPGなので、音声がなくても文字面でゲーム展開がわかるところも都合がよかったんです。

――マニアックなセレクトですね。

そうですね。僕の友だちにも「『銀河の三人』ってかっこいいゲームがあるんだ!」って紹介していたんですけど、僕の熱量と世界観は伝えきれませんでした……。でも、『銀河の三人』は登場するメカがカッコいいし、敵のキャラクターデザインもすごくよかった。今このゲームをVRで再現したらめちゃくちゃ面白いんじゃないかな。

8bit機のファミコンが改めて教えてくれたこと

――堀さんが主宰の『8bitNews』は、ファミコンからインスパイアされたと伺いました。

ファミコンブームが去ってバブル経済が弾けた後、世の中はリストラが始まって、自殺者が増えて、その後はどんどん不況の波で格差が広がっていき、日本は不幸なグレー色……。僕はまさに就職氷河期世代なのですが、社会に対しての不信感がすごく強かったんです。そんななか、分断社会であるとか、個人主義みたいなものが台頭していって、さらに東日本大震災が起きて……。

そんなどん底からようやく最近、コミュニティの再構築とか、個人じゃなくて弱くてもいい結びつきをシェアして、お互いに力を差し出しあって生きていこう、っていう風潮になってきました。僕の周りで、そういうことを声に出して行動している人たちを見てみたら、みんな1970年代から80年代半ばの生まれ、つまりファミコン世代だとふと気づいたんです。

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僕たちの子ども時代の明るい話題といえば、テレビの前にファミコンっていう8bit機があって、みんなが集まってワイワイやり合うっていう団らん。テレビの前で子どもたちが熱狂して、ファミコンを通じたコミュニティを自然と作っていたことを思い出しました。

8bitはコンピュータの基本単位ですから、それぞれが集まって発信するようなメディアが生まれれば面白いな、と。今までのメディアといえば、いわゆるマスコミ、そういうイメージで語られがちだったものが、一人ひとりが発信できるようになればいい。それは主婦の方でもいい、おじいちゃんでもいい、会社員でもいい、誰もが発信していい。「これが私の直面しているニュースなんです」っていうのを結集させるメディアを作りたかった。そういう思いで『8bitNews』っていう名のメディアを立ち上げたんです。

今の世の中を見渡してみると、ようやく社会の中核を担う、自分たちの裁量で社会に発言力・発信力を持つようになった人たちが、みんな実はファミコンに親しんできた世代なんですよね。コミュニティの分断から個人へ、個人が再びコミュニティへ、みたいに戻っていくときに、ひとつのスローガンが、基本単位である8bit。そういうイメージです。

――ファミコンが現在の社会に示唆を与えてくれているようですね。

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ファミコンが実はすごく今っぽいなと思うのが、プラットフォーム的な思想で成り立っているところ。つまり、任天堂が自前主義で独占的にゲームソフトを作るのではなくて、たくさんのメーカーがいろんなジャンルのゲームを作っていたところです。今でいうスマホのアプリと一緒ですよね。

あとファミコンを取り巻く人間関係には、まさにダイバーシティの原点があったと思うんです。どんなゲームが好きか、という多様性をゆるやかに認め合えることができた。「君はスポーツゲームが好きなんだね」って否定はしないし、「ぼくはロールプレイングゲームが好きなんだ、いいよひとりで遊べる」って。それってすごく重要ですよね。ファミコンっていうプラットフォームが共通言語で、みんなが共存していたわけなんですから。

「こうあるべきだ」という価値観を一方的に押し付けると、あっというまに破綻するけど、「あなたはそれでいいです」となると共存できる。ファミコンってやっぱりそうだったなって思います。「シューティングゲームが好きなのか、アクションゲームが好きなのか、それは別にいいと思うよ」っていう。強制もさせられないわけですし、自分の趣味嗜好は尊重される。そして、それがじつは感性を育むものだってことも。違いはすごくわかるけど、それぞれがそこで得意な能力を発揮すれば良い。ファミコンは多様性の象徴でしたね。

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取材・文:深田洋介
1975年生まれ、編集者。2003年に開設した投稿型サイト『思い出のファミコン』は、1600本を超える思い出コラムが寄せられる。2012年には同サイトを元にした書籍『ファミコンの思い出』(ナナロク社)を刊行。
http://famicom.memorial/

撮影・編集:鈴木健介

40歳までに、まず「“投資”すべきもの」とは?―『お金が貯まるのは、どっち?』著者・菅井敏之氏インタビュー

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すがい・としゆき

1960年、山形生まれ。 三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンスを担当する。42歳で不動産投資をはじめ、4年後には家賃収入が7000万円に。48歳で銀行を退職し、セミリタイア。2012年、田園調布にカフェ「SUGER COFFEE」をオープン。著書『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム刊)はシリーズ累計45万部のベストセラー。

 

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銀行員時代の経験から、
お金を増やす25の法則をまとめた
『お金が貯まるのは、どっち!?』が
ベストセラーになった。
「銀行員は天職だった」と語る菅井氏だが、
48歳で退職し、
専業大家としての道を歩み始めた。
その理由とは。

 

「相手の困っていることを見つけて解決する」で成績トップ

銀行には25年いました。ずっと営業です。もともと銀行と旅行代理店と、2つ内定をもらったんですよ。自分のキャラからいえば旅行代理店のほうが向いていた。真面目で堅物な銀行員のイメージは自分にはかけらもありません。でもなんとなく旅行代理店にいったらワンオブゼムになるだろうと思ったんです。逆に銀行のほうが、僕みたいに明るくてフットワークが軽くて、プライドがないからドブ板だってやれる人間の持ち味が生きるんじゃないかと。それだけなんです。

入行してからずっと、営業成績はダントツ。営業の仕事って要はサービス業です。コミュニケーション能力を発揮して、相手が困っていることを引き出し、解決してあげること。これがものすごく自分に合っていたんですね。向いていないと思った仕事が、実は天職だった、というわけです。人の可能性というものはわからないものですね。

子どものころから父親に繰り返し聞かされた話があります。父が小学校3年生の時、椅子の上に立って張り紙をしている先生を見つけて、椅子を支えてあげたんですって。紙には「進取の気性」と書いてあった。父が尋ねると先生は「お前がいま先生にしてくれたことが、進取の気性っていうんだ」と教えてくれたそうです。本来の意味とは違いますよね。本来は「新しいことを取り入れる」という意味ですから。でも父は「進取の気性とは、自立的に動いて行動すること」だと理解した。先生に褒められたことが嬉しかったんでしょうね。子どもや孫にこればっかり話すんです。人が困っていることを先に見つけて、言われる前に手を出せ、それが世の中で一番大事なことだぞ、と。それで子どものころから、玄関の掃除をしたり雪かきをしたり。率先してやっていました。

会社に入ってからも同じなんですよ。人が困っているのを見つけて手を出す。僕のお客さんは会社経営者。社長の頭のなかを占めている困りごとの半分は、経営のことですよね。最初は「営業順調そうですね」なんて褒めるんです。すると「そんなことないんだよ」「ええ?そうなんですか」「去年より悪いよ」。本音が出てくる。そこで販路の開拓をしてあげたりすると、大喜びされて。「銀行さんがそんなことしてくれるの?」となるわけです。後継が心配だといえば、息子さんのお嫁さんを紹介する。何度お見合いをセッティングしたことか(笑)

とにかく相手のことを一番に考える。普通の銀行員は真面目だから、自分が困っていることをいきなり口にしちゃうんです。「今月はノルマ2000万円なんです、社長お願いします」。相手の都合お構いなし、むしろ自分の困っていることを相手に解決してもらおうと思っている。それ、違うじゃないですか。

父親を一人にしておけなくて、48歳で銀行を退職

ずっと楽しく仕事して、42歳で支店長に。あらためて富裕層のお客さんを回る機会がありました。貯金も土地もある資産家、でも毎月入ってくるお金は年金しかないという人は表情が暗いんです。お金があってもこわくて取り崩せない。お金があるのに使えない。ちっともうらやましくありませんでした。ところが、預金は大したことなくても、年金のほかに30万円、40万円と新しいお金が入ってくる人は明るい。菅井さん今度歌舞伎行きましょう、ゴルフ行きましょうって、いつも元気。

そこでわかったのは、人の幸せはストックじゃない、新しいお金が毎月入ってくるかどうかで決まるんだ、ということです。それを可能にする資産には大きく3種類あります。1つ、国債や投資信託などの分配金、2つ、アパートや駐車場などの収入つきの不動産、そして3つ目が、自分のビジネス力。この3つが「金の卵を産むニワトリ」です。

僕は、それが欲しいと思いました。銀行は確かに天職でしたけど、50歳までには経済的にも時間的にも自由になりたかった。というのは、長男なのに東京で就職しちゃって、父親を山形に残していたんですね。僕が50になったら父は85になる。これは1人にしておけない。東京と山形を行ったり来たりできる経済基盤を持たないと、親の死に目にもあえないし、僕はずっと後悔すると思ったんです。

幸い、42歳の段階で4000万円のお金が貯まっていました。29歳のときは貯金ゼロだったんですよ。僕の20代はバブルの時代で、貯金している奴なんて誰もいなかった。でもある日、こんな2人を担当しました。40歳で年収1300万円、でも貯金ゼロのAさんと、やはり40歳で年収500万円、だけど金融資産は2000万円のBさん。このままでは僕もAさんのようになると思うと背筋が寒くなって、悔い改めたんです。それからは徹底的にストイックに無駄遣いしないでお金を貯めました。土日にゴルフにいく代わりに、子供のミニバスケのコーチになって。大声が出せてストレス解消、ママさんたちからはヒーロー扱い(笑)。会社の、どうしても参加しなくてはならない飲み会も二次会に行かなくなりました。

この4000万円を種銭にアパート経営に乗り出したわけです。それまでお金を貸すほうでしたから、どうやったらお金が借りられるかもわかる。2年のうちに6棟のアパートを買って、家賃収入が7000万円を超えたところで銀行をやめました。

 

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不動産投資家、作家、
カフェオーナーと数々の顔を持つ。
最近では、自らの経験をもとにした
『京都かけだし信金マンの事件簿』
(アスコム刊)
という小説も上梓。
菅井氏のように経済的に自立し、将来の不安から解放された
「豊かな人生」を歩むには、どうすればいいのか。

投資するなら、株やFXよりも「まず自分」

宣言通り、僕は50歳で経済的・時間的な自由を手に入れました。だけどそれまではとにかく本業を徹底的にやった。相手の困りごとを見つけて答えを出す。そのたびに自分の引き出しが増えていきました。スキル、人脈、問題解決能力、ぜんぶ本業で磨いたものです。誰もがアパートを買えるわけじゃないし、種銭があるわけでもない。あるのは自分そのもの。つまり若いうちは、3種類の「金の卵を産むニワトリ」のうち、ビジネス力を膨らませておくべきです。そのためにはやっぱり「仕事を一生懸命やる」こと。120%のリソースを突っ込んで、周りから抜きん出るぐらいのビジネス力を身につけるんです。

 

70歳になっても毎月30万稼げるビジネス力のほうが、株やFXよりよほど価値がある。それは若いうちじゃないと身につけられないものです。だから力を出し惜しみしている場合じゃない。120%突っ込む。結果を出せば大きな仕事を任される。また120%突っ込む。その繰り返しでどんどん引き出しが増えていきますよ。給料をもらいながらビジネス力を高められるなら、こんなにいいことはない。

結果、お金も貯まっていきます。給料のうちの2割は強制的に貯蓄してください。使ったあとに余ったお金を貯めようとしても、貯まるわけがない。まず貯蓄して、残ったお金で暮らすんです。ざっくりでいいから家計簿もつける。皆さん、自分のお金に責任を持っているという意味で、社長と同じなんです。社長だったら会計を知っているのは当然のことですよね。収支を把握していない会社はつぶれてしまいます。これは個人でも同じなんですよ。

銀行員時代と変わらない「世話焼きおじさん」として生きる

セミリタイアした次の年に、父が亡くなりました。最後は集中治療室に一週間付き添って、親の死に目にあうという願いを叶えることができました。ところが、いざ願いが叶って見ると、もぬけの殻になっちゃって。専業大家も、最初の半年は楽しかったけど、だんだん飽きてきました。誰からも相談されない、電話もかかってこない。これは辛いですよ。セミリタイアなんて、憧れを持つものじゃありません。

それで自分はどういう時が幸せなんだろうって、思い返してみたんですね。そしたら、相談ごとだった。人の困りごとを聞いて解決してあげて喜んでもらったときが何より嬉しい。よく考えれば、父も世話好きオヤジでした。村の人がやってくると、茶の間で相談に乗るわけですよ。「なんにもお返しするものがなくって、気持ちだけ」なんて、大根をもらったりしてね。幸せってこういうことだと思いました。少なくとも僕は、そういう相談の時間を持つことが幸せなんだと。

最初は、みんなが集まれる大人向けのネットカフェにしようかと思ったんですが、人の勧めで自家焙煎の喫茶店にしました。コーヒーなんて全然知らなかったんですけど、茶の間の父の姿が思い浮かんで、ピンときた。困ったのは、客が来ないこと。乗降客3万人以上の駅の近くで、かつ同業のないところを探したんですが、オープン半年でカフェができて、目の前真っ暗(笑)。お客も全然来なくて。作家として一作目の『お金が貯まるのは、どっち?』を書いたのも、お店をPRする意味がありました。でも内容は、世のニーズに合っていた。資産家になりたいと思ったら銀行からお金を借りる技術、リテラシーを身につける必要がある、そんなこと親も学校も教えてくれないじゃないですか。でも僕は元銀行員、お金を貸す側の理屈を知っている。それをたくさんの人に教えたいと思って本にしたのが『お金が貯まるのは、どっち!?』。40万部売れました。

場所が少し変わっただけで、銀行員のころからやっていることは全く変わりません。困っている人を助ける。特に、自分では気づかないポテンシャルを見つけてあげて、その人の顔が一瞬輝くのを見るのが生きがいなんです。理髪店の人が人の頭の形を見て「俺ならこう切るのに」と思うのと一緒で、その人の強みとか、お金を貸せるポイントを探すのが癖になってるんです。つまり「いいとこ探し」。銀行でも審査の人間は「こんなリスクがあるから貸せない」ってダメ出しばかりするんだけど、営業はそうじゃなくて、その人の強みを見るんです。この人は自営業者だけど3期連続黒字で優良顧客から安定的に売り上げがあるから、そのへんのサラリーマンよりよっぽど安心ですよ、とかね。

人のいいところを発見するのって楽しいですよ。それで今も、毎日4人ぐらい相談に乗って、のべ3万人にはなったでしょうか。究極の世話焼きおじさんですね。

 

『読むだけでお金の増やし方が身につく 京都かけだし信金マンの事件簿』 菅井 敏之著

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京都の駆け出し信金マン、和久井健太が、中小企業の側に立って奮闘するも、その裏にはメガバンクの謀略が。

「メガバンクと信用金庫、口座を開くならどっち?」 「お金を貸す側の銀行は、何を考えている?」 「どうやって銀行を利用したらお金持ちになれる?」等、お金の増やし方のエッセンスが凝縮したエンタメビジネス小説。菅井氏が銀行員時代に経験したエピソードが元になっているため、なかなか表に出ない金融業界の裏側も覗ける。(アスコム刊)

 

※リクナビNEXT 2017年6月14日「プロ論」記事より転載

EDIT 高嶋ちほ子 WRITING 東雄介 DESIGN マグスター PHOTO 栗原克己