仕事でミスして失敗してしまった!「落ち込む自分」からの立ち直り方7選

仕事でミスや失敗をすることは誰にでもあることです。責任を感じるあまり、なかなか立ち直れないという方もいるでしょう。今回は、失敗した後の落ち込む気持ちにどう対処するとよいのか。その立ち直り方について、精神科医&メンタル産業医・井上智介先生に聞きました。

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仕事で失敗した時の立ち直り方とは

ミスや失敗のない仕事はありません。どんなに優秀な、素晴らしい実績を上げているビジネスパーソンでも、誰もが大小さまざまなミスや失敗を経験してきているはず。失敗して落ち込むことは、決して悪いことでも、精神的に弱いということでもありません。

大切なのは、落ち込んだ状態からいかに“回復”するか。回復する力が強いことが、次の成功につながる大事な要素です。

では、落ち込んだ状態から立ち直るには、どんな方法があるのでしょう。決まった方法や正解はありませんので、自分に合った方法はどれか、試しながら見つけていきましょう。

やり方が合わずに「自分は立ち直れないからダメな人間なんだ…」とさらに落ち込む必要はありません。紹介するいくつかの方法や考え方を試しながら、ぜひ試行錯誤していってください。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

立ち直り方1:失敗を自分だけのせいにしない

失敗を「自分だけに責任がある」と考えてしまう方は少なくありません。しかし、私が産業医として話を聞いてきた中では、外的な環境要因など、周囲にさまざまな原因があるケースがほとんどです。

例えば、お客様への提案がうまくいかなかった・叱責されてしまったというケースでは、そもそも成果物に求める条件を詳細に教えてもらっておらず、提案後に「求めていたのはそういうことじゃない」と怒られてしまったというケースがありました。

ご本人は、「事前確認をしなかったのも私の責任」とひどく落ち込んでいました。でも、そこまで背負いこんで立ち直れずにいるのなら、「教えてくれなかったお客様も悪い」と、人のせいにして折り合いをつけたっていい。自分の背負う荷物を、他人に持ってもらう。そんなバランスの取り方も大切です。

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立ち直り方2:失敗は挑戦の証。仕方ないと割り切る

失敗は誰でもするものです。とくに、普段よりも少し難しい課題に取り組んだり、新しいプロジェクトに参画したりと、何らかの“挑戦”をしたときに、ミスや失敗が起こる可能性も高くなるでしょう。

失敗は、挑戦したことの裏返し。挑戦をすれば、成功は約束されていませんが、成長は約束されます。「成長の機会を得たのだから、ミスは仕方ない!」と割り切る気持ちも持っておくといいでしょう。

立ち直り方3:視点を将来に向け、ミスした原因を次に活かす

失敗してしまったと落ち込んでいるとき、視点は“今”に集中しています。でも、起きてしまったことは仕方がない。見る視点を“将来”に変えることで、心は軽くなるものです。

失敗の原因はどこにあったのか。きちんと原因分析はしつつ、「では、次に同じようなことが起こったときに、何に気をつければいいのか」と次に活かす視点につなげましょう。

失敗の原因がわかれば、その原因が生じるまではうまくいっていた、ということもわかります。結果的に失敗だったからと、手掛けたすべての仕事やプロセスを否定するのではなく、「ここまではうまくいっていた」と成功体験として受け入れ、自分を認めてあげることも大切です。

仕事でミスして落ち込むビジネスパーソン
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立ち直り方4:「あの人だったら、どう考えるか」と他者視点に置き換える

落ち込んでいるときは、自分の考え方、捉え方から一度離れて、視点を変えることが有効です。視点を変えるやり方の一つが、「同じ場面に他の人が遭遇して、同じ失敗をしたらどう思うだろう」と考えることです。

例えば、自分の憧れの先輩や上司、あるいは尊敬している著名人や経営者などでもいいので、他者の視点を入れてみるのです。自分に起きた事象から、距離をとって見ることで、「あの人なら、自分ほど落ち込まないかもしれないな」「もしかしたら、こんなに悲観するような事態ではないのかも」と思えてきませんか。

あるいは、自分の大切な友人や家族が同じ失敗をしたときに、どんな言葉をかけるかを考えてみましょう。「君のせいだけじゃない」「頑張ったから、起きた失敗だよ」「大丈夫、大丈夫」などと、相手を肯定したり、努力を認めたり、励ます言葉が自然と出てくるのでは?その言葉を自分に対してかけてあげるといいでしょう。

立ち直り方5:一人で悩みすぎず、人に話し、書き出して楽になる

失敗をすると、自分に自信がなくなり、周りの目が気になり始めます。「周りに迷惑をかけてしまった」「同僚から仕事ができない人と思われているんじゃないか」「もうプロジェクトを任せてもらえないんじゃないか」など、罪悪感や無力感、将来への不安感から一人でふさぎ込み、ますます落ち込んでいってしまいます。

そんなときは、まず落ち込んでいる気持ちを自分の中から外に吐き出します。同僚や友人、家族など、どんな話も受け止めてくれる信頼できる人がいるのなら、その人に気持ちを吐露してみるのもよいと思います。

そうした人が身近にいなかったり、人に話すのには抵抗があったりするのなら、素直な気持ちを書き出してみてはどうでしょう。おすすめしたいのは、誰かに手紙を書くような気持ちで綴ること。人に伝えようとすると、気持ちを整理しようと頭を使うことになり、結果として、書き終えたときにはすっきりするはずです。

ブログやSNSに書くのもいいのですが、一般公開すると共感を得られないリスクがあります。もしかしたら、「そんな失敗はする方が悪い」「そんなことで落ち込みすぎ」などと心ない反応に触れてしまうかもしれません。

余計に傷つき落ち込むリスクにつながるので、そうした声を避けたい場合は、個人的な日記などにとどめておくといいでしょう。

立ち直り方6:自分なりのリフレッシュ方法から、好きな趣味を選んですっきりする

好きな趣味やスポーツに没頭することは、気持ちをすっきりさせる大事な方法です。ただ、落ち込んでいるときに、「よし!あの趣味で気分転換しよう」と思いつくところまで頭は回りません。

そこで、普段から「自分にとって心地よい、ポジティブな気持ちになれること」をリスト化して集めておくことがとても大切です。

自分なりのリフレッシュ方法なので、どんな些細なことでも大丈夫です。「映画を見る」「友人の〇〇さんとおしゃべりする」「サウナに行く」など、自分がどんなときに悦に入れるかを理解しておくことが大事なのです。

落ち込んだ状態で、一人で何もせずに過ごしていると、ネガティブなことばかりが頭に浮かんでくるものです。没頭できることをリストの中から選び、失敗について考えなくてもいい時間を作ることで、精神的にラクになっていきます。

立ち直り方7:ゆっくり寝て体力を回復させる

睡眠は、頭も体も同時に休ませることができる唯一のリフレッシュ方法です。失敗してしまったということは、それだけ緊張感のある仕事を任され、慣れないことに挑戦していたのでは?心も体も疲れている可能性が高いので、睡眠をしっかり取りましょう。普段とっている睡眠時間より、1時間多くとるだけでも、疲れの残り方が違います。

もし、普段と同じように布団に入っても1時間以上寝付けなかったり、夜中に3~4回目が覚めてしまったりと、睡眠障害の症状が2週間以上続くのであれば、メンタルヘルスに支障をきたしている可能性があります。そんな場合は、早めに病院を受診しましょう。

失敗したからこそ気付けるプラスの面に、目を向けてほしい

失敗してしまったときは、人と比べて足りないところばかりに目が向きがちです。でも、落ち込んでいるときこそ、身の回りの些細な喜びや感動に触れたり、人のあたたかさに気付いたりすることも多いはず。今回ご紹介したさまざまな方法から、どんなアクションが自分に合うのか、ぜひ実践していってください。

メンタル産業医・精神科医 井上 智介さん

メンタル産業医・精神科医 井上 智介さん_プロフィール画像兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。さらに、すべての人に「大ざっぱ(rough)」に、「笑って(laugh)」人生を楽しんでもらいたいという思いから、SNSや講演会などで心をラクにするコツや働く人へのメッセージを積極的に発信中。『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)、『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)など著書多数。

取材・文:田中瑠子 編集:馬場美由紀
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