情報収集力とは?高める方法や良質な情報を見極めるコツをプロが紹介

今や私たちの身の回りにはネットニュースに、あらゆる情報にあふれています。そして、多くの情報の中からより効率的に必要な情報にたどり着き、正確な情報をキャッチして活かすことも求められています。こうした情報との向き合い方やコツ、これからの時代に求められる情報収集のビジネススキルなどのポイントについて、『2030未来のビジネススキル19』の著者でテクノロジー・フューチャリストとしてDX推進のコンサルティング活動も手掛ける友村晋さんに聞きました。

情報収集するビジネスパーソン
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情報収集力を身につけるメリットとは?

現在は誰もがパソコンやスマホでいろいろな情報にアクセスできる時代であり、特に意識しなくても情報に触れることが可能です。逆にあまりに情報量が多いからこそ、必要な情報や良質な情報を手に入れ情報収集力が必要です。確かな情報収集力を身につけると、どんなメリットがあるのでしょうか。

未来予測がしやすくなる

情報収集することの大きなメリットの1つが、未来予測がしやすくなることです。現代は社会環境やビジネス環境の変化が目まぐるしく、かつて業界トップクラスだった会社が経営危機に陥ったり、もてはやされたスキルがAIにとって変わられたりしかねません。

そこで常に情報を収集し、精度の高い情報をチェックし続けることで、「A紙で指摘されていた現象がここでも起きている」「有識者のBさんも同じことを言っている」など、共通項や方向性が発見でき、点と点だった情報が線になり面になってきます。

すると、「こういうビジネススキルを磨いておくといい」「このようなジャンルにビジネスチャンスがある」というように動くべき方向が見えてくるため、未来予測がしやすくなるのです。

自身がアウトプットする質が高まる

日常的に信頼性の高い情報を収集していると、自身がアウトプットする質が高まります。例えば、同じ企画の提案でも、「A駅周辺は人口が増えているので」という漠然とした表現では、人によって思い浮かべるボリュームは違ったものになります。

しかし、情報収集して「A駅北口の利用者は3年前に比べて20%増えています」と伝えることで、具体的なイメージを共有できる、質の高いアウトプットになります。

発信力や説得力が高まる

正確な情報に基づいた発信は自分自身が自信を持って語れるため、発言を躊躇する必要がなく発信力が増します。「A社の商品が人気らしい」ではなく、「POSデータによると前年比で12%伸びているそうです」と裏付けデータがあることで、説得力のある発信になります。

見込み客を想定した情報収集で仮説・検証力を高める

例えば、次に友人と会ったときに、この映画の話をしようと思って見ると、自然と映画の内容も印象も強く残るのではないでしょうか。具体的に誰に発信するか、いわば見込み客を想定して情報収集することで、その分野へのアンテナが高くなり思考も深まります。

取引先や上司など、発信したい相手の興味を引きそうな情報の仮説を立てて収集し、情報を発信するようにしましょう。その反応をキャッチし、さらに必要とされている情報を絞り込んでいくことで、より情報も仕事の質も精度を高めることにつながります。

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

情報収集力を高めるステップとは

では、情報取集力を高めるためにはどうしたらいいのか。そこには良質な情報に素早くアクセスし効率よく手に入れること、フェイクニュースや誤った情報を見極める力を持つこと、人がまだ知らない情報を手に入れることなどが重要です。

「なぜ?」と思うクセをつけ、課題発見力につなげる

情報に接したら、「なぜだろう?」と疑問を持つクセをつけます。例えば内閣府のデータが紹介されていた、出典元をたどって自分で見にいきましょう。

他のグラフやデータ解説ではなく、なぜこれを使ったのかと少し考えてみることで、情報の取捨選択を見極めるトレーニングにもなります。また、次に疑問が出たときに知りたい答えにたどり着きやすく、情報収集の効率が高まります。

さらに、「なぜ、増えているのか?」「なぜ、この地域で広がったのか?」といった、新たな課題を発見する力にもつながっていくのです。これからの時代、課題の解決はAIやテクノロジーが担っていくでしょう。

勤怠管理も、売り上げ集計も、プレゼン資料のデザイン処理も、さまざまなものがAIによって自動化されてきますが、課題を発見することはAIにはできません。

課題発見力と情報収集力とは、車の両輪のようなものです。課題があるから、集めるべき情報が見えてきます。そして情報を積み重ねることでさらに課題が見つかるのです。

共通している項目を抜き出して実行してみる

目的が曖昧なまま情報収集しても、いつのまにかネットサーフィンしているだけになってしまうこともあるでしょう。やみくもに情報収集しようとしても何から手をつけていいのか分からないものです。

情報収集のテーマを見つけるのが難しいとしたら、まず、自分の課題は何か、自分にとって面倒くさいことは何かと考えてみましょう。面倒くさいというとネガティブな姿勢に思いがちですが、「仕事のここが面倒くさい」があれば、課題が発見できたようなものです。まずは、「面倒くさい」にどう対処しようか、情報収集してみてください。

例えば、「経費計算が面倒」「残業が多くてつらい」「プレゼンがうまくできない」などの課題に対し、どうしたらいいか情報を集めるときに、業務効率化について「Googleで検索する」「ビジネス書を読む」「ChatGPTなどの生成AIに聞いてみる」など、さまざまな方法があります。

いくつか探したで、共通している項目を抜き出してみます。そのうえで実際に実行してみることが肝心。実行してみてうまくいかなかったとしても、それはそれで成功しなかった事例のストックとして、一次情報になります。

一次情報をストックしてオリジナルの情報を持つ

情報収集で一番大切なのは、実は一次情報を収集することです。一次情報とは、自分で体験して獲得した情報や、信頼できる調査を行って得た情報のことを指します。

ネット上には、既存の画像や誰かの動画、テキストなどが加工されパッチワークされた二次情報、三次情報があふれています。だからこそ、自分が体験した一次情報を持っているビジネスパーソンの価値は高まると考えています。

例えば、エストニアはDXの世界的先進国としてネット上でも数多く取り上げられています。私は「本当にそうだろうか?なぜだろう?」という疑問を持ちながら、現地に行って街の人にインタビューしたり、市役所のシステムを見学したり、実際のDXの現状を視察したりしてきました。

その結果は、「2030年の未来予測チャンネル」という自分のYouTubeチャンネルでレポートしています。すると、他のどこにもない情報になるわけです。人を説得したり納得させたりする、発信力のある情報の三要素は、「数字、固有名詞、一次情報」の3つです。

取引先に「春はキャンペーンの反響がいいので、何かやりませんか」ではなく、「昨年5月に、応募はがき付きのサンプルキャンペーンをしたら、応募率が10%上がりました」など、具体的にアドバイスできる方が顧客の反応は高いと思います。マイナスの事例も有益な一次情報として活かせるのです。

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「良質な情報」を見極め、情報収集するコツを紹介

一次情報として、自分自身の体験をストックすることと並行して大切なのは、世の中にあふれている情報の中から良質な情報を見極めて収集すること。それにはいくつかのコツがあります。

書籍や新聞、雑誌などの紙媒体をチェック

まず、信頼できる発信元からの情報をチェックする習慣を身につけましょう。その道の専門家が一般の人向けに書いている新書をはじめ、書籍であれば執筆者が自らの名前と責任を明らかにし、プロが編集して事実関係を確認して出版しているので信頼性があります。

新聞や新聞社のサイトであれば、政治・経済をはじめオールジャンルを網羅的に記事にしています。それぞれの分野を取材している記者が記事にしたもの。日ごろアンテナを張っていない分野の情報にも接することができる良さがあります。

また、書店を訪れてみるのもいいでしょう。雑誌の表紙や平積みになっている本のタイトルなどから、自然と注目のテーマや人物、話題のアイテムなどをキャッチでき、まったく関心のなかったジャンルに出合うこともできます。

ネット情報はフィルターバブルを意識して

通勤途中や待ち合わせまでのちょっとした空き時間なども、スマホでチェックできます。ネット情報は便利なことは間違いありません。しかし、気をつけなければいけないのは、ネット情報にはレコメンド機能があることです。本を買ったりサービスを利用したりすると、「よく一緒に購入されている商品」や「あなたのオススメの番組」などがレコメンドされます。

さらにニュースや検索結果も、これまでの閲覧履歴や検索履歴から、関連広告(ターゲティング広告)が表示され、利用者が関心をもちそうな情報が優先的に配信されます。

すると、似たような情報、自分と同じ好み、考え方の情報に偏ってしまいかねません。気づかないうちに、興味のある情報にしか触れなくなっている、情報の膜につつまれた「フィルターバブル」状態になってしまいます。

私は、スマホであってもCookie(クッキー)はすべて消していますし、自分に都合のいい情報ばかりが集まってしまわないようにしています。レコメンド機能やフィルターバブルによって、情報が偏らないように意識しておきたいものです。

SNS情報はエコーチェンバーに注意

SNSではハッシュタグなどで、自分と似た興味・関心を持った人の情報が検索しやすくなっています。また、フォローしていなくても、興味のありそうな情報が自動的に挙がってきます。

自分が発信した意見に似た意見が返ってくることで、特定上が見や思想が増幅していく「エコーチェンバー」状態になります。「何度も同じような意見を聞くことで、それが正しく、間違いのないものであると、より強く信じ込んでしまう傾向にある」(総務省「情報通信白書令和5年版(※)」より)のです。

客観情報なのか、主観情報なのか、主観情報だとしたらそれはエコーチェンバー状態に陥っていないかを意識しましょう。

(※)…出典:総務省ホームページ
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/nd123120.html

SNSは情報源をチェックする習慣を

SNSでの情報は、そのまま鵜呑みにするのではなく、客観的なデータを使ったものであれば引用元に当たりましょう。

経済動向に関する情報なら経産省が公開している統計データなど、官公庁のデータで裏付けを取る、新聞社や公共性の高い機関の調査資料で確認する、企業のプレスリリースなどでチェックするなど情報ソースを見つけたうえで、納得できる情報かを見極めましょう。

新しい情報源との付き合い方

私は最新テクノロジーについての情報を発信しているので、情報源としてよく利用するのが、海外のメディアです。イギリスのBBCやアメリカのCBS、中東のアルジャジーラなどをブックマークして定期的にチェックしています。

海外ニュースもヘッドラインを見て関心があれば、Google翻訳などを使えば、おおよその内容はつかめるもの。アンテナの張り方の1つとして加えてみてはどうでしょう。

なお、ChatGPTなどの生成AIについては、すでに使いこなしている人も、一度使ったけれど使えないと感じた人もいるでしょう。情報収集として使うことは、決しておすすめしません。一次情報源ではなく、「アイデアだし、相談、たたき台」の相手として、適切な質問を投げかければ、これほど優秀なバーチャル秘書はいないのです。

株式会社ミジンコ 代表取締役 友村 晋氏

友村晋氏YouTube「2030年の未来予測チャンネル」主宰。テクノロジー・フューチャリスト。DX推進コンサルタント。米アマゾン本社の無人コンビニAmazon Goをはじめ、シリコンバレー、世界で一番 DX が進んでいる国エストニア、中国の深圳など、現地に行き最前線のテクノロジーを自ら体験することを信条とし、独自の未来予測で講演活動も展開。著書に『2030未来のビジネススキル19』(日経BP)

取材・文:中城邦子 編集:馬場美由紀
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