「だから中小企業は面白い」元・大手企業勤務の社長が目指した“代えがきかない”会社

2001年まで、大手企業の下請け仕事だけをこなしていた大分デバイステクノロジー株式会社。父の後を継いだ2代目社長の安部征吾は、ITバブルの崩壊をきっかけに新たな道を模索し、今やパワー半導体の最新技術を生かした製品づくりに取り組んでいます。不屈の思いを胸に秘め、社員と共に歩んできた安部のストーリーをお届けします。

※本記事は、「PR Table」より転載・改編したものです。

大手企業の下請け会社を、ファクトリーからカンパニーに変える

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大分市にある当社は、1970年に東芝の協力工場として操業開始。主に、半導体製造の後工程とよばれる部分を担い、量産してきました。
代表取締役の安部征吾は、大分市内で生まれ育ちました。創業者である父から「跡を継げ」と言われることは一度もないまま、大学進学を機に上京。卒業後は、東芝に半導体の技術職として入社して、仕事にやりがいを感じていました。

しかし30歳のとき、休暇で帰省した安部は、父の部下にこんな言葉をかけられたのです。

「会社の経営が悪化しています。跡を継いでもらえませんか」

当時、半導体の業界全体が厳しい状況でした。しかし、自分は求められている――。そう強く感じた安部は、自分の生き方を深く考えた末、地元に戻ることを決意しました。

入社後は、品質技術部長として、本社工場の新設を任されることになります。

安部 「いざ入ってみると、当社は工場という感じで、指針がなく組織としての体制も整っていない。ファクトリーをカンパニーにしなければならないと考え、各部門の軸となる人材を採用し、会社の骨格づくりを進めました」

そんなある日、父が体調を崩し、安部が社長業を代行することになりました。

安部 「私は技術者で、経営に関する知識も経験もなかったので、途方にくれました。でも、状況は待ったなし。父やまわりの人たちに教わり支えてもらいながら、必死で会社のかじを取りはじめました」

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ITバブルの崩壊をチャンスと捉え、ニッチな分野の新事業をスタート

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2001年、安部が正式に社長に就任しました。奇しくもその年、ITバブルがはじけて大幅赤字に。波乱の幕開けとなりました。しかし、絶対にリストラはしないと決め、役員報酬のカットなどで乗り切りました。

さらに安部は、ほぼ100%東芝の下請けだった会社の在り方を見直し、それまで培った技術を武器に新しいことに挑戦する方針を打ち出しました。

それと同時に「株式会社KONIC」という社名を「大分デバイステクノロジー株式会社」に改名。社員みんなで出し合った候補の中で、一番人気の名前を採用しました。それは、会社をみんなで作っていくという安部の強い思いの表れでもありました。

新たにはじめたのは、半導体試作と開発サポートの事業です。

安部 「私が東芝にいたとき、試作や開発のサポートは外部にお願いしたらいいのにと思っていました。そこで、積極的にやりますと各方面にアピールして、受注を増やしていきました。大きな売上が出る事業ではないので、競合がいない分野。けれど、大手企業で試作を担うのは最先端にいるスーパーエンジニアで、そういう人たちとお付き合いすることで、当社にどんどん新しい技術や知恵が蓄積されていきました」

試作の仕事を通して、研究機関や他社とのつながりが広がる中、安部はさらに大きな決断を下しました。2014年、パワー半導体の分野に進出することにしたのです。自動車や家電などの電力を制御するパワー半導体は、日本が力を入れる分野。非常に高度な技術を要します。

安部は、ちょうど中途入社してきた杉木を「産業技術総合研究所」が旗を振る「つくばパワーエレクトロニクス・コンステレーション」(TPEC)に派遣。TPECは国内の名だたる大手企業や大学が参画する共同研究体で、地方の中小企業は当社だけでした。これまでの実績が高く評価されて、声をかけられたのです。

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パワー半導体の販路を広げつつ、働きやすい職場づくりを継続

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杉木が学んできた最先端の技術をもとに、当社は次世代パワー半導体の実用化に向けて製造ラインを設置。2018年現在、製造をスタートしており、これからさらに販路を開拓していく予定です。

安部 「通常、大手企業は自社の開発をオープンにしないので、TPECのようなオープンイノベーションの場は非常にまれです。大手と同じフィールドで研究できたというのは、誇らしいですね。パワー半導体の設計開発から試作、製造まで一貫してできる中小企業は、日本で当社だけだと思います

当社は経営理念として「顧客第一主義の下、品質最優先に行動し 社員と共に豊かな価値を創造し 地域社会に貢献できる 強くて愛される企業集団を目指す」を掲げています。

安部品質には徹底的にこだわり、2010年から一度も不良品を出していません。製造業ではめったにないことです。その背景には、社員自ら積極的に改善や気付きを提案して、会社が受け入れるという姿勢があると思います。
たとえば、手元が見えやすいようにもっと近くに蛍光灯をつけるとか、台車にもうひとつ仕切りをつけるとか、光が反射するので遮光板をつけようとか……。そんなささいな改善の積み上げによってミスがなくなり、“自分たちの現場”になっているのではないでしょうか」

また安部は、自分たちが作っている半導体が何に使われているのかを従業員に伝えるようにしています。たとえば、あの高級車や電化製品に自分たちが関わっていると知れば、ものづくりに対する意識が変わり、家族にも話したりするようになるからです。

安部 「毎年、働く環境や自分のキャリアなどに関するアンケートを取り、職場の改善に反映しています。あくまでも社員が主役の会社で、社員の声をもとに発展していきたいと考えているんです」

TPECから技術賞を受賞――中小企業の受賞は初という快挙を達成

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皆さんは「下町ロケット」をご存知ですか? 池井戸潤さんの小説で、研究者だった主人公が中小企業の社長となり、社員と共に奮闘する姿を描いた直木賞受賞作です。ドラマ化もされて、大ヒットしました。安部は「大分の下町ロケットを目指したい」と考えています。

安部 「私は中小企業ってすごく面白いと思っています。でも、一般的に中小企業は言われたことしかできないとか、大変とか、給料が低いとか、ダメだと思われている。その現状を何とか覆したいんです。
私が大分に戻って来たとき、『いまごろ帰ってきて何ができると思っているのか』と厳しいことを言われたり、『何がしたい、できる会社なのかわからない』とか、そんなことを散々言われて非常に悔しかった。私が聞いて耐えている分にはいいけれど、社員には絶対こんな思いをさせたくなかったんです。だから、下請けでも、代わりのない下請けを目指そうと誓いました。この会社、この製品じゃなきゃ困る、だから作ってくださいと言われるような。

大企業の人は歯車になりがちだけど、中小企業の社員はひとりで何役もできる。中小企業は、一人ひとりの力が重要で、一人ひとりが宝なんです。社員たちがいつも堂々と胸を張って、大手やどことでもやりあっていける会社にしたいと思っています。
超一級品の技術を持って、たとえバカにされてもはいつくばっても頑張って、みんなでこぶしをあげて『おー!!』といえるような会社になりたい。そんな私たちの思いを知って、仲間が加わってくれて、まわりで応援してくれる人も増えてきました。2017年にはTPECから技術賞を受賞しました。中小企業の受賞は初めてという快挙で、大変うれしく思っています」

当社では2005年から毎年、経営計画書を作り、社員に発表しています。

安部 「下請けで自社の売り上げ計画を立てることもできなかった時代から、今や技術を生かして自社開発をできる会社になりました。これもひとえに、社員のみんなのおかげです。
会社はそこに属する人が生活する基盤として集う存在であり、社員全員のものです。一人ひとりが自分の役割のもとでのびのびと能力を発揮し、楽しく助け合い、ここで働いてよかったと思えるような会社に育てていきます」

この地域や社会にとってなくてはならない存在になるために、社員一丸となって挑んでいく当社の今後に、どうぞご期待ください。

会社説明会では語られない“ストーリー“が集まる場所「PR Table

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