“現場感“のある取り組みに着目!「グッド・アクション」とは
働き方の多様化が求められる現代において、一人ひとりがイキイキと働くための、職場の取り組みに光をあてるプロジェクト。「現場の声から生まれた取り組み」「ユニークさやチャレンジ性がある取り組み」「担当者が想いを持って始めた取り組み」など、「自分たちもやってみよう!」とヒントを持ち帰っていただける事例を紹介していきます。

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受賞結果

2017年2月7日、「第3回グッド・アクション」の表彰式を開催しました。2016年7月の募集開始以降、書類審査を通過した取り組みへ事務局が訪問し、「現場感」と「ご担当者の熱意」を中心にお話を伺いました。その後、最終審査を経て選出された合計8つの取り組みを「グッド・アクション」として発表しております。 当日の表彰式の模様を、受賞取り組みの担当者さまや審査員のコメントを交えてご紹介します。

第2回グッド・アクション表彰式

GOOD ACTION

輝く受賞取り組みの皆さまの想いや審査員のコメントを紹介します!

審査員総評

各表彰を終え、審査員より講評をお話させていただきました。受賞取り組みをより理解し、新たなグッド・アクションを創出していくヒントが込められています。

アキレス美知子氏

社員個人のオーナーシップによって変革が生まれ、成果につながる

小さな企業と大きな企業では、当然のことながら大きな違いがあります。小さな企業の場合はリソ…

アキレス 美知子

SAPジャパン株式会社 常務執行役員人事本部長
横浜市政策局男女共同参画推進担当参与
NPO法人GEWEL(Global Enhancement of Women’s Executive Leadership)副代表

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守島基博氏

「個」を大切にする企業から、グッド・アクションが生まれる

今回のグッド・アクションでは、一つひとつの取り組みの裏側にある担当者の思いを聞かせていた…

守島 基博

一橋大学大学院商学研究科教授

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若新雄純氏

取り組みを続けることそのものが「グッド・アクション」

本日の表彰式に参加して、会場でいちばん使われていた言葉は「取り組み」でした。取り組みとは…

若新 雄純

慶応義塾大学特任講師/株式会社New Youth代表取締役

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藤井薫

止めて、解決の道を見出し、また動かす

私が今回のグッド・アクションで強く感じたことは、「“職場”は生き物である」ということでした…

藤井 薫

株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長

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表彰式の様子

受賞取り組みの発表に先立ち、審査員であるアキレス美知子氏が「社員の力を信じる会社」と題して基調講演を行いました。この中でアキレス氏は自身が人事本部長を務めるSAPジャパン株式会社の取り組みとして、ビジョンと戦略を一気通貫にする手法や社員エンゲージメント調査、社員が働き続けたい会社であり続けるための活動、社内SNSサイトの運用方法などを紹介。取り組みを有効に進めるためのポイントとして、
「エンゲージメント調査結果を詳しく共有する」
「活動内容や進め方は社員に自由に考えてもらう」
「経営陣・人事部はメンター/コーチとしてサポートする」
「経営陣との対話の機会を提供する」
「社内SNSでグローバルコミュニケーションを図る」
「活動の数と広がり、継続性を重視する」
「前例にとらわれず、とにかくやってみる」
という成功体験を共有しました。また、「いかなる活動も楽しくなければ続かない」と指摘。「HAVE FUN@WORK 」というメッセージで基調講演を締めくくりました。

表彰式後は、グッド・アクションに選出された取り組みの皆さまが参加して懇親会を実施。お互いの取り組みについて詳しく情報交換し合い、今後のヒントとして生かす姿が随所で見られました。報道陣によるインタビューも行われ、グッド・アクションに対する関心の高さがうかがわれました。

表彰式の様子

Judges

審査員

守島 基博 (もりしま もとひろ)

一橋大学大学院商学研究科教授

80年慶應義塾大学文学部社会学専攻卒業。86年米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部助教授。90年慶應義塾大学総合政策学部助教授、98年同大大学院経営管理研究科助教授・教授を経て、2001年より現職。厚生労働省労働政策審議会労働条件部会委員、財務省独立行政法人評価委員、経済産業省産業構造審議会臨時委員、経営行動科学学会長などを兼任。

著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』(共に日本経済新聞出版社)、『人事と法の対話』(有斐閣)などがある。

アキレス 美知子
(あきれす みちこ)

SAPジャパン株式会社 常務執行役員人事本部長
横浜市政策局男女共同参画推進担当参与
NPO法人GEWEL(Global Enhancement of Women’s Executive Leadership)副代表

上智大学比較文化学部経営学科卒業。米国Fielding大学院組織マネジメント修士課程修了。 富士ゼロックス総合教育研究所で異文化コミュニケーションのコンサルタントを始め、シティバンク銀行、モルガンスタンレー証券、メリルリンチ証券、 住友スリーエムなどで人事・人材開発,の要職を日本及びアジアで歴任。あおぞら銀行常務執行役員人事担当、資生堂執行役員広報・CSR・環境企画・お客さまセンター・風土改革担当を経て、現在に至る。

2010年APEC女性リーダーネットワーク、2011年APEC女性と経済サミット、2012年APEC女性と経済フォーラムに日本代表メンバーとして参加。 日本生産性本部ダイバシティセンター参与、女性パワーアップ会議推進委員、エンパワーメント大賞(日本生産性本部主催)審査員、HRアワード(日本の人事部主催)審査員、NPO法人ISLのコーチ、一般社団法人ジャパンダイバシティネットワーク呼びかけ人なども勤めている。 プライベートでは、米国人の夫をもち、二人の娘の母親でもある。

若新 雄純 (わかしん ゆうじゅん)

慶應義塾大学特任講師/株式会社NewYouth代表取締役

専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。人と組織、地域社会などにおける新しいコミュニケーションのあり方やオープンイノベーション政策を模索する研究者・プロデューサーとして活動中。
全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や週休4日で月収15万円の「ゆるい就職」といった新しい組織のあり方や働き方を模索する実験的プロジェクトや、女子高生がまちづくりを担う福井県鯖江市の公共事業「鯖江市役所JK課」などを企画・実施。

慶應義塾大学大学院修了、修士(政策・メディア)。慶應義塾大学SFC研究所「ゆるいコミュニケーション・ラボ」のプロデューサーも務める。著書に『創造的脱力~かたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論』(光文社新書)がある。

藤井 薫 (ふじい かおる)

株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長

1988年慶応大学理工学部卒業。リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。B-ing、TECH B-ing、Digital B-ing(現リクナビNEXT)、Works、Tech総研の編集、商品企画を担当。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長・ゼネラルマネジヤーを歴任。2007年より、リクルートグループ固有のナレッジの共有・創発を推進するリクルート経営コンピタンス研究所 コンピタンスマネジメント推進部、グループ広報室に携わる。2014年より、リクルートワークス研究所Works編集兼務。2016年4月、リクナビNEXT編集長就任。

Outline

応募要項

開催趣旨
近年、職場の環境や雰囲気が、働く人の「働きやすさ」「モチベーションアップ」の重要な要素とされています。
企業が独自に取り組んでいる研修や社内イベント等の取り組みを募り紹介することで、自分らしい「働き方」や「やりがい」のヒントを発掘するきっかけとなってほしいという想いから、本企画はスタートしました。
募集締切
2016/9/30(金) 23:59まで(※応募は終了しました)
2017年2月頃に行われる表彰式にて表彰、および、特設サイトにて取り組みを紹介させていただきます。
※注意事項※
・応募時にいただいた内容(社名・部署名・氏名(本名)を含みます。)は、本来の意図を損なわない範囲で加筆・修正の上、リクナビNEXT上へ掲載させていただきます。なお、リクナビNEXTに掲載した記事の著作権はすべて株式会社リクルートホールディングスに帰属するものとします。
・主催が必要と判断した場合には、募集要項を変更できるほか、本企画の適正な運用を確保するために必要なあらゆる対応をとることができるものとします。
審査委員
審査委員についてはこちら
応募対象
日本で企業活動を行う企業、団体
応募条件
職場と働く社員を盛り上げる取り組みはすべて(過去の受賞事例はこちら
・女性・シニア・外国人・チャレンジドの活躍促進
・社内コミュニケーションの活性(社内イベント、オフィス環境改善など)
・キャリア入社後の活躍促進
・社員が健康になることでパフォーマンス向上などにつながった取り組み
・その他、「こんな職場ありなの!?」という、自社ならではのマニアックな取り組みを大募集!生産性や合理性にとらわれず、社員が楽しんで夢中になってしまうようなものをぜひご応募ください。
※応募は自薦に限ります ※メディアからの取材、グッド・アクションの活動にご協力いただけることを前提とさせていただきます
審査基準
現場の声の活用や、取り組みの独創性や挑戦度、実施していく際の工夫、担当者の熱意などについて審査
審査方法
①書類審査(エントリー期間:2016/7/27~9/30)
・本サイトのエントリーページよりエントリーいただいた応募シートを元に審査
②訪問審査(10月~11月頃)
・①を通過した取り組みの企業・団体へ事務局が訪問し、取り組み主体者と取り組みに参加している社員の方などへヒアリングをさせていただきます。
③最終審査(12月頃)
・①と②をもとに「GoodAction賞」を選出します
※審査の結果は電子メールまたは電話にてご連絡いたします。
※エントリーの際に頂いた応募シート等の応募書類は、すべての最終審査の終了後に適切な方法を用いて破棄いたします。
主催
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グッド・アクション受賞取り組み

株式会社バスクリン
ベテラン社員が持つ「宝の知見」を、銭湯で受け継ぐ!
入浴剤の老舗企業を変えた若手中途入社メンバーの提案とは

銭湯での裸の付き合いを通じて知識を伝承
銭湯での裸の付き合いを通じて知識を伝承
■取り組みの概要
社内の知見伝承と銭湯文化の活性化を目的に、公認部活動として「銭湯部」を発足。銭湯巡りや社内勉強会「バスクリン大学」によってベテランから若手への知識・技術の伝承や交流を行っている。
■背景にあった課題
約半数の社員が50代と高年齢化が進んでおり、近年入社した若手社員への知見の伝承が急務となっていた。
■取り組みによる成果
入浴剤や銭湯といった自社商品に直結する知見が伝承され、新たなマーケティング活動にもつながっている。
■担当者の想い
中途入社ならではの視点で「社内には宝のような知見がある」ととらえ、それをベテラン社員から積極的に受け継ぎたいと考えて行動を起こした。

「知見の伝承」「銭湯文化の衰退」という2つの課題に向き合う

1893年創業の「津村順天堂(現 株式会社ツムラ)」をルーツに持つ入浴剤のパイオニア企業、バスクリン。日本人にはなじみ深い有名商品を扱う企業だが、専門性が問われる業務も多く、採用が活発ではなかったこともあり、社内の高年齢化が進んでいた。

世の中では銭湯の廃業も相次ぎ、入浴形態も様変わりしつつある。長年受け継がれてきた知識をいかにして伝承していくか――。老舗企業が直面した課題に立ち向かったのは、外部からやってきた中途採用の若手メンバーたちだった。

「50代社員が約半数」高年齢化が進んでいたバスクリン

2006年、ツムラ内の家庭用品事業部門が分社化される形で独立したバスクリン。同社は、40・50代の社員が多数を占めている。ツムラ時代から続く入浴剤の歴史を知り、深い専門知識を持った人材は、あと20年も経てばほとんどいなくなってしまう。そのため、ベテランから若手への技術・知識の伝承が急務となっていた。

一方、かつて入浴剤を世に広めるために必要不可欠な場所だった銭湯は、時代の流れで廃業が相次ぎ減少の一途をたどっている。同社の事業は、一般家庭用の入浴剤製造販売がその中心であるが、入浴文化を守り、発展させていくことが使命。事業の原点ともいえる、銭湯を活性化することは、入浴文化をリードしてきた同社にとって、見過ごすことはできないともいえる事象であった。

中途入社のアイデアマンが感じたこと
「バスクリン銭湯部」を立ち上げた高橋さん(右から3人目)と齊藤さん(一番右)
「バスクリン銭湯部」を立ち上げた高橋さん(右から3人目)と齊藤さん(一番右)

そんな状況の中で、後に「バスクリン銭湯部」を立ち上げる2人の20代中途社員が入社した。ベンチャー企業での新規事業開発を経験したこともある高橋正和さん(ダイレクトマーケティング部・バスクリン銭湯部部長)と、総務・人事のキャリアを積んできた齊藤翔大さん(総務部総務グループ・バスクリン銭湯部人事)だ。

「看板商品『バスクリン』や『きき湯』の知名度は高く、社内にはどことなく保守的な雰囲気が漂っていました。外の世界から見れば、日本の入浴文化を知り尽くした知見をもっとマーケティングに生かせると思ったんです。入浴剤市場をリードしてきたバスクリンだからこそ、もっともっとできることがあると感じました。」

高橋さんは、入社当時の思いをそう振り返る。社内のベテラン社員には、宝のような知見がたくさんあるのでは――? そう考えて企画したのが、社員交流イベントとして2カ月に1回の銭湯巡りを実施し、裸の付き合いを通じてベテランから若手へ知識・技術の伝承を行う「バスクリン銭湯部」の構想だった。同期入社の齊藤さんはアイデアマンの高橋さんに共感し、「知見の伝承や、社内と銭湯の活性化は当社にとってとても大事なこと。総務部の立場で活動がきっちりと続くように支えていきたい。」と思い参加した。

活動を進めるために高橋さんが協力を求めたのは、人事責任者を兼任して社内のキーパーソンの一人である久保康一さん(総務部部長)。有志の集まりではあるものの、「バスクリン」の名称を対外的に使えるよう、会社公認の活動にしたい。そんな相談をしてアイデアをもらい、社内規則で認められていた文化系部活動としてスタートさせた。若手に声をかけつつ、久保さんからの働きかけもあってベテラン社員がどんどん入部。銭湯巡りを開始してみると、裸の付き合いの中で商品の由来や開発秘話、会社の歴史など、さまざまなことをベテラン社員から教わった。「これは全社共有すべき話だ」と感じ、社内勉強会の「バスクリン大学」を企画。これにより、女性社員も伝承の場に参加できるようになった。

マーケットや顧客へ伝えていくべき「大切な知見」

バスクリン銭湯部は、社外への発信も積極的に行っていった。若手部員が外部メディア『東京銭湯 -TOKYO SENTO-』 で銭湯の魅力を発信するコラムを執筆したり、グループ会社である大塚製薬の社内報にコラムを掲載したり。また、かつては町づくりの起点となっていた銭湯文化を再現するため、「銭湯ふろまちライブラリー」などのコラボ企画も実施している。

メンバーは20代から60代まで幅広い顔ぶれとなり、活動の広がりとともに、当初の目的であった社内伝承も深みを増していく。

伝承は、新たなマーケティング活動にもつながる
グループ会社である大塚製薬の社内報にコラムを掲載
グループ会社である大塚製薬の社内報に
コラムを掲載

入浴文化や入浴剤にまつわる知識は、ベテラン社員にとっては「知っていて当たり前」な情報だった。そのため、以前は特別な機会を設けて若手に語ることもなかったという。しかし新しく入社した若手にとって、それはマーケットや顧客へ伝えていくべき大切な知見だった。

入社36年の大ベテランである川久保崇司さん(信頼性保証室室長、総括製造販売責任者)は、「かつての製品開発秘話や失敗体験、銭湯のまめ知識などを若手社員にたくさん語るようになった」と話す。銭湯へ出かけた際はもちろん、社内でも若手と気軽に会話する場面が増えたという。

積極的な社外発信の結果、大手量販店の商品企画担当者からのアプローチで「銭湯」をテーマにした新たな入浴剤売場を作ることにもつながっている。銭湯巡りやバスクリン大学で得た知識は売場作りにもダイレクトに生かされ、業務にもプラスの影響をもたらしているという。中途入社メンバーである梨本里美さん(ダイレクトマーケティング部・アシスタントマネジャー)は、「例えば “入浴剤の香り開発に詳しい人”は世の中全体で見てもレアな存在。バスクリン大学に参加することで、日本の老舗企業ならではのマニアックな知識を得ることができ、日々のマーケティング活動に生かされている」と手応えを語る。

「もっと教えてほしい」「もっと語り伝えたい」
大手量販店とのコラボ企画
大手量販店とのコラボ企画

高橋さんから思いをぶつけられ、協力するようになった久保さんは、「中途入社のメンバーがこんなにも会社のことを考えてくれていることがうれしかった」と振り返る。ベテラン社員には、守ってきた入浴剤の知識や入浴文化に対する思いを若手に伝えていく責任があると考えるようにもなった。何より自分たちには、もっともっと語り伝えたいことがあるのだと気付いた。

外の世界からやって来たメンバーだからこそ、純粋に自社の事業に根付いた取り組みを「部活動」というフランクな形で始められたのかもしれない。「ベテランの先輩方から、もっと知識や経験を学びたいです。バスクリンや銭湯に関する“宝の知見”を聞けば聞くほど、ますます仕事が面白くなっていくので」。高橋さんはそう結んだ。

受賞者コメント

ダイレクトマーケティング部・バスクリン銭湯部部長 高橋 正和 さん

バスクリン銭湯部の発起人であり、部長をしております。
日本の伝統文化と言える銭湯ですが、20年前の10,000件から現在は2,500件と大幅に減っています。日本のお風呂文化と歩んできた当社の一員として、銭湯という原点を守りながら、自社で受け継がれてきた伝統や知識を学びたいと考え、取り組みを始めました。

総務部総務グループ・バスクリン銭湯部人事 齋藤 翔太 さん

銭湯部では人事を担当しております。本日は誠にありがとうございました。当社の歴史から、製品の誕生秘話、ベテラン社員の武勇伝まで、様々な話を聞くことができる銭湯部の活動は、貴重な学びの場となっております。今後も組織活性化、銭湯活性化に向けて積極的に取り組みを広げてまいります。

審査員コメント

アキレス 美知子 氏

新しい視点を持つ中途入社の社員が年齢層の高い先輩社員の知識に「コア・コンピタンス」を見出し、自社を語る上で欠かせないお風呂の文化を銭湯を通じて活性化させていく発想がすばらしいと感じました。世界でいちばんお風呂好きである日本人にぴったりの、創意工夫にあふれた活動。ぜひこれは続けてほしいですね。こうした活動は社内にフォーカスすることが多く、内向きになりがちだと思います。せっかくの活動なので、より広く外部に向かって発信する機会を増やしていただければと思います。

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グッド・アクション受賞取り組み

レバレジーズ株式会社
社員500人のナレッジをシェア!
「トップ人材による社内勉強会」と「部署間の交換留学」で成長企業の課題を解決!

『事業部間交換留学』では他部署の営業同行も可能
『事業部間交換留学』では他部署の営業同行も可能
■取り組みの概要
各事業部のトップ人材が講義形式でレクチャーする『社内勉強会』と、他事業部の日常業務に参加できる『事業部間交換留学』を実施。
■背景にあった課題
事業の多角化と急激な人員増に伴い、部署の壁を超えた情報共有や交流が難しくなっていた。他事業部で類似した課題に対するプロジェクトが走っている、既に事例があるのにゼロから解決策を考えている等の問題があった。
■取り組みによる成果
勉強会にはのべ900人の社員が参加。交換留学は社員の5人に1人が実施した月もあるほど、社員の自主的なナレッジの共有が加速した。
■担当者の想い
インターン時代から会社の成長を目の当たりにし、同時に組織の壁が築かれていく様子を見てきた。顕在化した課題を、各事業の中核を担うメンバーを中心に解決したいと考えていた。

組織拡大の反面、「事業部を超えた交流」はますます難しくなっていく

 成長期のベンチャー企業。事業が多角化し、優秀な若手がどんどん集まり……。そうなると必然的に難しくなるのが、「部署を超えてナレッジを共有していくこと」ではないだろうか。ITや医療・介護など幅広い領域へ拡大を続けるレバレジーズは、事業部を横断して学びを深めることに課題を感じていた。

そこで同社が始めた取り組みが、多くの社員が抱える共通課題に対する解決事例・方法をレクチャーする「勉強会」と、社員1人ひとりが抱える個別課題を解決する「交換留学」。若手が主体となって動かすユニークな試みは、たくさんの社員に影響を与えている。

「1年間で120人採用」という急拡大フェーズに
取り組みの推進者 藤本さん
取り組みの推進者 藤本さん

 レバレジーズでは2014年に続々と新プロジェクトを立ち上げ、2年で3事業部体制から7事業部体制になった。さらに全国への拠点展開も進め、規模の拡大とともに社員数が急増。過去1年で約120名を新たに採用している。渋谷ヒカリエの本社ワンフロアのみだった同社も国内外に13拠点を設け、個人レベルでの部署間交流が難しくなっていた。また、製作から運用まですべてのマーケティング活動を自社で行うオールインハウスの組織体制に強みを持つ同社だったが、幅広い分野のプロフェッショナルがそろっているにも関わらず、事業部が異なる同職種のメンバー同士で事例を共有する機会は減っていた。

 「ITや医療・介護など、事業領域はどんどん広がっていき、事業部によって顧客も提供するサービスの内容や形式もまったく違う状況となりました。各事業部で蓄積された成功事例の中には、他部署でも生かせそうなものがあることは分かっていたんです。ただ、なかなか全社規模で共有することはできませんでした」。取り組みの推進者である藤本直也さん(事業部長)はそう話す。

そこで生まれたのが、「Leverages Crossdepartmental Program」(LCP)として月1回の社内勉強会と事業部間の交換留学を実施する制度だ。勉強会では「マーケティング視点で売上を上げる方法」「事業拡大における広報の役割と重要性」など多くの社員が抱える共通課題に対するナレッジを、各部署の管理職クラスを中心とした講師がレクチャー。交換留学では、ミーティング参加や営業同行、違う職種の社員に対する専門分野のヒアリングなど、他部署の通常業務へ1時間から参加でき、社員1人ひとりが抱える個別課題の解決方法を見出す。

肩肘を張らず、リーダー層で会社を動かす取り組みに

 2014年に新卒で入社し、現在3年目の藤本さん。インターン時代から会社の拡大を目の当たりにし、事業部を超えた連携の難しさを肌で感じていた。そんな中、入社2年目で事業部長という重責を担う。

 「かつてはスプレッドシートでノウハウや情報の共有を行っていた時期もありましたが、いつの間にか運用がおろそかになり、形骸化してしまっていました。メンバーは皆、他事業部の成功事例に興味がある。経営側としては部署間の壁ができていることに課題を感じている。『課題に気付いてはいるんだけど……』という状況だったんですよね」

この状況を改善するため、藤本さんは各事業部の中核を担うメンバーを集め、課題について議論した。そこで生まれたのが勉強会と交換留学からなる「LCP」。同時にLCPが文化として根付くよう、参加メンバーを運営委員に任命し、運営委員会として月に2~3度のミーティングを実施している。「あまり固い雰囲気にし過ぎず、メンバーが気軽に会社の将来を語り合えるような楽しい場にしたい」。そんな藤本さんの肩肘張らない姿勢も功を奏し、組織の壁が少しずつ壊れていった。

社員1人ひとりの知識を共有し、組織ぐるみの成長を

LCPには多数の社員が参加している。勉強会は毎回100人近い社員が出席。交換留学は四半期の中月となる2・5・8・11月を「強化月間」と制定し、運営委員会がオリジナルポスターや社内報を通じて参加を呼びかけ、全社員の5人に1人にあたる111名が実施した月もあるという。その広がりの背景には、事業部横断を実現するためのさまざまな仕掛けが施されている。

「事業部のプライドがくすぐられる」
毎回100人近い社員が出席する『社内勉強会』
毎回100人近い社員が出席する『社内勉強会』

 勉強会の講師は各事業部の持ち回りで選出し、部門内でトップレイヤーの人材が担当。スケジュールは半年ほど前から決定している。全社的に意義があり、多くの人が興味を持つテーマを考えてもらう。発表者のプレゼン内容は運営委員会のミーティングでブラッシュアップしていく。勉強会へ参加する社員の人数を目標数値化し、各部署で呼びかけて集客するというマネジメントも重要なポイントだ。これまでに計9回の勉強会が開催され、のべ900人の社員が参加しているという。

 交換留学制度では、個人の希望を叶えることはもちろん、マネジメント側からメンバーへ「こんなことを学んできてほしい」と働きかけることも多い。留学希望者は「他事業部のトップ営業に同行したい」などの希望を社内SNSで申請。受け入れ側の負荷なども考慮しながら、運営委員会が両者の橋渡しとなって日々実行している。

「勉強会では部署を代表してプレゼンをする。交換留学希望者を迎え入れる際には『良いチームだな』と思ってもらえるようにする。そんな風に、事業部としてのプライドがくすぐられるような仕立てになっていることも取り組みが活性化した理由だと思います」

年間投資額100億円の実現に向けて
『交換留学制度』では、事業部が違っても汎用できるノウハウを共有
『交換留学制度』では、事業部が違っても汎用できるノウハウを共有

 田村貴弘さん(メディアシステム部・マーケティンググループ)は、「部長クラスの人へも気軽に話しかけられる風土ではあるものの、日頃は別部署の上司に個別相談することは難しい。勉強会に参加したことでその知見を学ぶことができた」と話す。登壇時に使用する資料はそのまま社内共有され、部署内での共有や顧客への提案に二次活用できる。「資料の作り方や発表の仕方といったプレゼン方法そのものも勉強になる」という声も聞かれるという。

 交換留学制度では、業務改善や商談の進め方など、事業部が違っても汎用できるノウハウが多く共有されている。石川尚弥さん(レバテック事業部・インフラグループ)は、別事業部のリーダーへ新規開拓営業のマネジメント手法を相談した。ミーティングに参加して広告投資の方法やイベント参加による営業、テレアポ部隊の活用などを学び、自部署へ取り入れている。「他部署で成果が出ていることはどんどん取り入れようという機運が盛り上がっている」と話す。

藤本さんは「この取り組みを通じて事業部間の交流機会が圧倒的に増え、課題解決や業務効率化にもつながっている」と話す。レバレジーズの今後の目標は、年間投資金額100億円の実現。社員1人ひとりが持つナレッジをフル活用して全社ぐるみで成長を続けていくために、今後もこの取り組みを拡大していこうとしている。

受賞者コメント

事業部長 藤本 直也 様

この取り組みの発起人として活動しています。後々に文化として残る制度を作るために、運営会議はリーダー層を巻き込み、楽しい会の雰囲気で運営すること、運営メンバーが納得する取り組みのミッション、ビジョンを作ることを先に行ったことが大きかったと思います。また、制度の普及にあたって、社員の上長から合意の元、半ば強制的にでも取り組みに参加してもらい、初めて自分で制度活用するハードルを下げ、制度を使用した社員の「参加してよかった」をたくさん生み出すことに注力しました。今となってはこの制度を元に「勉強会で登壇することがかっこいい」「交換留学で持ち帰ったノウハウを事業部内で共有することが素晴らしい」という文化を作れたと思います。

審査員コメント

アキレス 美知子 氏

すぐに真似したい取り組みです。社員が急増している時は、大変ではあるけれど新しいモノがうまれる面白い時期だったと思います。そんな中でいかにコミュニケーションをつないでいくか。実践しやすく、とても刺激になる試みだと感じました。レバレジーズさんのビジョンは「時代を動かし世界を変える。その中心にいる」というもの。これを実現するために、国内だけでなく世界にも目を向けて、取り組みを広げてほしいと思います。

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グッド・アクション受賞取り組み

アイシン精機株式会社
限られた社内人脈の中で愚痴をこぼしても、前へは進めない!
地域を飛び出し、新たなモチベーションの種を育てる「アイシンナンバーワン計画」

部署横断で有志メンバーが集まる
部署横断で有志メンバーが集まる
■取り組みの概要
部署横断で有志メンバーが集まり、社外のパイオニアを招いた勉強会やランチコミュニケーションを開催。最新トレンドに触れ、会社の将来を語り合い、情報交換を行う場としている。
■背景にあった課題
自動車業界の将来に対する不安や、外部との交流が少なく刺激の少ない環境に対してモチベーションを低下させてしまう社員がいた。
■取り組みによる成果
新たなものづくり企画や外部企業と組んだアイデアソン出展など、コミュニティ活動をきっかけにした活動が生まれている。
■担当者の想い
未来へのポジティブな会話が交わされる環境を作り、自分も仲間も成長し、新しい取り組みにより会社の発展へ繋げていきたいという思い。

「自動車部品村」の中だけで成長できるのか?

地元が誇る大手企業、それも世界に名を轟かせるような超一流の会社に就職する。家族や親戚はきっと大喜びするだろうし、友だちにも自慢できるだろう。不確実性が高まる世の中とはいえ、あと数十年は安泰かもしれない。でも、本当に自分たちはそれで良いのだろうか……。

愛知県刈谷市に本社を置くアイシン精機は、トヨタグループに名を連ねる巨大企業。創業50年以上の歴史を持ち、自動車部品を中心としたトップメーカーとして事業を拡大し続け、連結で10万人近くの従業員を抱えている。地元では誰もがうらやむようなこの環境でも、現状に甘んじず外部と関わり、新たな取り組みを始めた人がいる。

増収増益を続ける大企業に広がった「漠然とした不安」

入社11年目を迎えた橋本淳邦さん(イノベーションセンター統括グループ)は、3年目に一度、退職を考えた。トヨタの生産拡大などが追い風となり、リーマンショック直後の時期を除き、会社はずっと増収増益の右肩上がり。しかし近年は自動運転車や次世代環境対応車などの分野でIT企業が数多く業界に参入しており、業界全体への漠然とした不安が社内に漂っていた。

「経営からは“好きなことをやっていい明日をつくろう”と変革を促すメッセージが出されているものの、それだけですぐに新しい動きが生まれるわけではない。飲み会では同期たちに自分の夢を語れるけど、部署に戻ると気軽に先輩や上司には話せない。そんな日々だったんです」

技術系ではない、珍しいコミュニティの誕生
活動を立ち上げた橋本さん(右)と、転機をもたらした野上さん(左)
活動を立ち上げた橋本さん(右)と、転機をもたらした野上さん(左)

「世界初の音声カーナビ」など、かつてはエポックメイキングな新製品を市場に送り出してきた同社。しかし規模の拡大とともに、未知への挑戦よりも厳格な管理が重視されるようになっていったという。品質第一を追求する職場では現在の課題にフォーカスした話題が語られがちで、未来に向けたポジティブな会話が交わされることは少ない。刈谷市に巨大な本社機能を集約する同社では、地理的な条件や外へ出る必要性の少なさから、外部企業と交流する機会も限られている。

「本社の周辺は“自動車部品村”と揶揄されることもあるんですよ。ここですべてがそろうから、わざわざ外に出なくてもいい。危機意識が低いのは、この環境のせいだと思っていました」と橋本さんは振り返る。

新入社員時代から、「自分自身が強い個人としてナンバーワンでありたい」「世の中の新たな変化をつかみながら成長したい」という思いを持っていた。それで立ち上げたのが「アイシンナンバーワン計画」というコミュニティ活動。特定の技術分野をテーマにしないコミュニティは、同社では珍しかったという。その輪はどのようにして広がっていったのか。

若手がモチベーションを取り戻し、退職を思いとどまるきっかけに

活動の転機となったのは、野上琢磨さん(人事部)との出会いだった。入社年次は橋本さんの4つ下。新規事業企画に携わる橋本さんと当時新入社員研修を担当する野上さんは、とある新人育成プロジェクトをともにし、意気投合した。

「会社のことは好きだけど、未来へ向けた前向きで情熱的な会話が少ない現状のままでは個人も会社も成長できないと感じていました。」と野上さんは話す。より成長できる環境を求めて退職してしまう若手も中にはいる。「外部と関わり、新しい視点を取り入れながら、刺激を受け、自分自身が成長し、社内を元気にしていく。そんな活動をともにしたいと思ったんです」

プロジェクト外から300人の社員が集まったセミナー
月1、2回のペースでのランチコミュニケーション
月1、2回のペースでのランチコミュニケーション

2人を中心に部署横断で有志メンバーが集まり、「社員にとって・経営にとってかけがえのないパートナーになる」というビジョンを掲げた。柱となる活動として、社外で活躍するさまざまな分野のパイオニアを招いた勉強会を開催。さらに月1、2回のペースでランチコミュニケーションの場を設け、会社の将来について前向きに語り合ったり、自主勉強を開いたり、部署間の情報交換を行ったりする時間を作っている。

参加メンバーはプロフィールシートを作り、経歴だけでなく、それぞれの強みや志を共有する。「個人が強みを活かしてナンバーワンとなり、それによってアイシン精機をナンバーワンの会社にしよう」というスタンスから生まれた取り組みだ。コミュニケーションの場が単なる雑談にとどまることなく、それぞれの仕事にかける思いをプレゼンする場となった。

新規事業開発を主業務とする橋本さんは、東京へ出張した際などに外部で活躍するイノベーティブな人に積極的に声をかけ、勉強会の講師を依頼している。「アイシン精機とビジネスを始めるチャンスにもなる」と口説いて無償で刈谷へ来てもらうのだという。約300人もの社員が集まった回もあった。この場で得た刺激がきっかけでものづくりのクラウドファンディングに出展したり、外部企業と組んだアイデアソンを新たに企画して全社へ発信したりするメンバーも出てきている。

社外の元気な人にどんどん出会いたい
メンバーそれぞれの強みや志を共有するプロフィールシート
メンバーそれぞれの強みや志を共有する
プロフィールシート

現在アイシンナンバーワン計画には、人事や事業企画、営業、技術開発などのさまざまな部署から、下は23歳、上は60歳までの20人のメンバーが参加。業務時間外の有志活動として進めている。

メンバーの磯田啓介さん(走行安全企画部)は「技術系の勉強サークルは社内に多数あるが、事務系ではこれまでになかった。上司である課長やグループマネージャーからも“どんどんやればいい”と後押ししてもらっている」と話す。

入社4年目の村上信一郎さん(基礎技術開発部)はもともと、ものづくりの公募イベントなど外部活動に積極的に参加していた。社内での仕事にあまり面白みを感じず、2年目で一度退職を考えたが、橋本さんに誘われてこの取り組みに参加したことで踏みとどまったのだという。「違う部署や社外の人たちから幅広い情報を得られるこの環境は大切。取り組みの規模を拡大して、アイシン精機の一員として新しい価値を生みたい」と話す。

発起人である橋本さん自身も、大企業有志の会「One JAPAN」や、子育てを考えるNPO法人の活動に参加するなど、社外へのアクセスを強化し続けている。将来への漠然とした不安は、社内の限られた人脈の中で愚痴をこぼし、抱え込んでいても消えない。社外の元気な人にどんどん出会い、その考え方に触れることで、より多くのメンバーのモチベーションを高めていく。そんな確信を得ながら、少しずつこの活動を拡大している。

受賞者コメント

イノベーションセンター統括グループ 橋本 淳邦 さん

ナンバーワン計画では、ファウンダー/発起人という役割を務めています。もともとは13年前、私が新入社員のときに立ち上げたのですが、結婚や出産などの変化がメンバーに起きる中で一度解体していました。それを立て直し、再始動したのがこの取り組みです。メンバーを見ていると、最初は愚痴のような会話が多かったのが、ポジティブな意見であふれるようになってきました。また、閉塞感を覚えて退職を考えていた若手メンバーが踏みとどまり、新たなポジションに異動するという前向きな変化も生まれています。

審査員コメント

守島 基博 氏

「真面目な愚痴」ということが大切なポイントだと思います。居酒屋では上司の悪口につながり、どんどんネガティブになる。それをこのプロジェクトではポジティブな活動につなげています。参加しやすい取り組みであることに加え、個人個人の得意領域や好きなことを「プロフィール」として共有し、対話のきっかけにしている点で、個を大切にする取り組みだと思いました。

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グッド・アクション受賞取り組み

千代田化工建設株式会社
シンプルな社内SNS投稿が新たなプラットフォームに!
社員の声を集め、経営につなげる「discover!プロジェクト」

ロシアの極寒の地でがんばるメンバーからのVoice
ロシアの極寒の地でがんばるメンバーからのVoice
■取り組みの概要
社員の会社への思いや意見を「Voice」として集め、写真を社内SNSで共有。海外拠点も含めたグループ全体の社員の声を経営につなげていく取り組み。
■背景にあった課題
かつての経営危機により業務効率化と分業化が進み、会社の将来が見えなくなったり、閉塞感を感じたりする社員が増えていたこと。
■取り組みによる成果
部署や地域・国を超えたつながりが生まれた。また、この仕組みを活用して社員のリアルな意見を募るなど、新たな社内プラットフォームとして機能するようになった。
■担当者の想い
一部の社員だけでなく皆が気軽に会社のことを考えられる場を作り、その声を経営層を含む多くの社員と共有したいと考えていた。

「経営理念を詳しく知らない社員が多数」という現実

グローバル化への対応や経営効率の改善に迫られる大企業では、社内体制が高度に分業化され、各部門の専門性をそれぞれに求められることが多い。それは同時に、会社が目指すビジョンと個人の業務の間に壁を作り、仕事にやりがいを感じられなくなってしまう原因ともなる。

新興国の経済発展を支えるプラント建設などを進め、世界規模で事業を展開する千代田化工建設では、その課題をとてもシンプルな方法で解決しようとしている。社員の素直な言葉を「Voice」として集め、社内SNSで共有していく「discover!プロジェクト」だ。

極寒の地で頑張る社員に寄せられた、たくさんの応援コメント

「自社のここが好き!」「今の自社に一言!」

千代田化工建設の社内SNSでは、そんなテーマに沿って社員から集めたメッセージを「Voice」と名付け、社員の写真とともに次々とアップされている。横浜・みなとみらいの本社メンバーを中心に、ときには海外拠点に駐在する社員や現地スタッフからのVoiceも。

「ロシアの極寒の地に駐在する社員が、日々の苦労に負けず頑張っている姿を掲載したんです。たくさんの反響があり、コメント欄には社長も直接、応援のメッセージを書き込んでいました」。プロジェクトを推進する武田真樹さん(コンサルティングユニット 兼 経営企画ユニット未来創造室)はそう話す。Voiceの背景にある社員それぞれのエピソードを、「Story」として特別に紹介することもある。

これらの活動は、組織図に正式に記載された「経営企画ユニット未来創造室」の13名のメンバーによって運営されている。武田さんと同じくプロジェクトの旗振り役を務める大城昌晃さん(水素チェーン事業推進ユニット 兼 経営企画ユニット未来創造室・CSR推進委員)は、「社内公募で集まったメンバーが入れ替わりながら活動を支えています。私と武田は入社12年目の同期で、未来創造室に関わり始めて3年になります」と紹介してくれた。

“意識の高い”社員だけでなく、皆が気軽に発信できる仕掛けを
未来創造室のメンバー
未来創造室のメンバー

同社は、90年代後半から長く続いた「冬の時代」を経験している。一時は経営危機に見舞われ、効率化を優先し、それぞれのプロジェクトは高度に分業化された体制となっていった。目の前のプロジェクトにとらわれて事業の本来の意味や目的が見えなくなる社員も多く、会社の将来に閉塞感を覚えたり、退職してしまったりという悪影響を及ぼしていたという。「経営理念を詳しく知らない社員も多く、社員と共有する機会を持ちたかった」と大城さんは打ち明ける。

こうした状況を打破するため、インターナルブランドを高める取り組みとして未来創造室が生まれた。入社10年目までの若手社員を集め、会社が置かれている状況を共有し、会社の未来のあるべき姿を語るワークショップを「ちよだみらいエンジン」として開催。武田さんと大城さんはここで多くの活動をともにし、意気投合していくようになる。

ここでは、マネジメント層と一般社員をつなげる「千代田ラウンドテーブル」という討論会も行われていた。武田さんは「良い試みでしたが、参加者の顔ぶれが固定化され、“意識が高い社員の集まりだよね”と見られがちでした。もっと身近に、皆の声を気軽に集められる仕掛けが必要だと思ったんです」と振り返る。

社員の思いを集める場所として、さまざまな場面で活躍する仕組みに

集まったVoiceやStory、そして数々の写真によって、世界各地の社員の日常が伝わり、思いを可視化できるようになっていった。「現在の“千代田らしさ”を見つけて、経営理念やビジョンにも反映させたい!」。そんな思いから、プロジェクトメンバーと社長が直接話し合う場も設定された。橋渡しをしたのは、未来創造室という部署の名付け親であり、メンバーと経営陣をつなぐ相談役として動く永橋信隆さん(社長付・秘書室長)だ。

「社内には、部署を超えたコミュニケーションがどんどん生まれるべきだと思っています。難しい仕事を成し遂げるためには、人とのつながりが不可欠ですから」。永橋さんはそう語る。若手メンバーの活動に対して、社長をはじめ経営陣も理解と興味を示し、見守る。プロジェクトは、新たな「スピンオフ企画」にもつながっていった。

Voiceのやり取りで、上司の意外な一面を発見
スピンオフ企画「ファミリーデー」では家族へVoiceを届けた
スピンオフ企画「ファミリーデー」では家族へVoiceを届けた

佐藤なつきさん(調達ユニット 回転機・パッケージグループ)は、スピンオフ企画の一つである「ファミリーデー」の事務局メンバーを務めた。社員が家族を会社に招待し、普段はなかなか面と向かって伝えられないメッセージをVoiceに託す。子どもからのVoiceを受け取った社員もいた。

「ご家族とのやり取りから、日頃は気難しそうに見える上司の“かわいい一面”も知りました。ファミリーデーには、プロジェクトメンバー以外にも100人ほどの有志が参加したんです」

入社当初にカタールへ半年間赴任していた佐藤さんは、帰国後、海外拠点のオープンな組織風土とやや閉鎖的な本社の風土に落差を感じ、悩んでいた時期もあったという。“今の千代田に一言”というVoiceのテーマに「グローバリゼーション」と投稿し、その思いを上司にぶつけるきっかけを作った。以降はVoiceの普及に力を尽くすようになった。

「育児と仕事の両立」に向けた意見もVoiceで募る
社内の展示ポスター
社内の展示ポスター

これまでに集まったVoiceは約400件。その中には、海外グループ会社や関連会社から寄せられたものも約200件あるという。discover!プロジェクトは現在、社内の新たなプラットフォームとして機能しつつある。ダイバーシティ推進グループと連携し、育児休業や復帰後の時短制度のあり方を考えるためのVoiceを積極的に集めるなど、「社員の思いを集める場所」として新たな価値を発揮し始めているのだ。

武田さんは「取り組み自体がシンプルだからこそ、目的を限定することなく、さまざまな場面で活用できるのだと思います。今後はVoiceをきっかけにして、社員同士、社員と経営などのいろいろな階層で直接コミュニケーションを図れるようにしていければ」と抱負を語る。いずれ、同社が新たな理念やビジョンを発信する際には、Voiceで寄せられる世界中の社員の思いが反映されたメッセージとなるのかもしれない。

受賞者コメント

コンサルティングユニット 兼 経営企画ユニット未来創造室 武田真樹さん

未来創造室・インターナルブランドチームのリーダーをしています。Voiceを共有するという活動を始める前は、経営理念や会社の将来を考えるため、座談会のような場を設け、そこには意識の高い社員が集まっていました。それだけではなかなか活動が広がらないと感じたため、身近な取り組みとしてVoiceとして発信できるようにしました。

水素チェーン事業推進ユニット 兼 経営企画ユニット未来創造室・CSR推進委員 大城昌晃さん

discover!プロジェクトの発起人です。当社は世界各国で石油やLNGなどのエネルギープラントを主に建設しています。この取り組みを始めた経緯は、「経営理念を社員ともっと共有したい」と思ったこと。各国のエネルギー戦略に大きく貢献できる仕事であるにも関わらず、目の前の仕事に埋没してしまう社員が多いことを残念に思っていました。取り組みを通じて、当社で仕事をする社会的な意義や、当社の良さ・強みなどを社員と共有しています。

審査員コメント

守島 基博 氏

SNSを使って参加しやすくすることで、グローバルでの一体感を生み、国境を超えて意思疎通ができる取り組みとなっていることが秀逸だと感じました。また、単にvoiceを集めて共有するだけではなく、担当者が一人ひとりのもとへ行ってその裏側にある思いやストーリーを聞いている。この行動によって、社員が「自分を大切にしてくれている」と感じられるようになったのではないでしょうか。

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グッド・アクション受賞取り組み

株式会社LASSIC
「廃校宿泊体験」で経営理念を形にする!
地方創生に本気で取り組む企業が実現したユニークなイベント

アクティビティとして小学校の掃除や杉の間伐体験を実施し、地域住民と社員が交流
アクティビティとして小学校の掃除や杉の間伐体験を実施し、地域住民と社員が交流
■取り組みの概要
地元の廃校を活用して全社イベントを開催。郷土食によるパーティーやアクティビティ活動、宿泊を通じて、離れた拠点にいる社員同士の交流を図り、地域住民や自治体との関係性を深めた。
■背景にあった課題
地方創生を理念に掲げつつも、全国に拠点を展開する中でその浸透が難しくなっていた。また、拠点間での社員交流にも限界があった。
■取り組みによる成果
廃校という印象的な場所での宿泊で社員の交流が深まり、地域住民との交流を通じて理念を体感できるイベントとなった。同様の試みを全国へ展開しようという動きが社内で起きている。
■担当者の想い
「既存事業で関わりのある自治体へより貢献したい」「長期継続する地方創生に取り組みたい」という思いを持ち、関係者を巻き込んでイベントを進めた。

理念浸透を図る企業と、廃校の利活用を探る自治体の思い

地域活性化に向けた試みが全国各地で進む中、「鳥取発 ITで、地方創生」という独自の理念を掲げる会社がある。地元自治体の婚活イベントに自社開発のアプリを応用したり、豊かな自然を生かした森林セラピー事業を提案したりと、さまざまな活動を通じて鳥取を盛り上げてきたLASSIC。その動きは、日本中へ広がりつつある。

そんな中、同社は鳥取県内のユニークな場所を活用してキックオフイベント(全社会議)を行った。舞台は、廃校となってしまった小学校。その背景には、地方創生を実現するために理念を浸透させたいという強い思いがあった。

活動の幅を広げる中で、「地方」の意識が薄れつつあった

LASSICは、最新の技術を駆使して各地の地域活性化に取り組むIT企業だ。現在では鳥取のみならず、全国へ拠点展開を進めている。しかし、大阪や福岡などの都市部にも拠点を開設していく中で、「地方創生」という理念を日々の業務の中で意識しづらい社員が増えているという課題があった。また顔が見えづらい拠点間のコミュニケーションも徐々に難しくなりつつある。理念の浸透を図るとともに、社員が心を一つにできるような場を作る必要性を感じていた。

全国の社員が集う年2回のキックオフイベント(全社会議)は、従来は本社がある鳥取市内のホテルなどで開催していた。「もっとインパクトのあるイベントにして社員の交流を促せないだろうか」。2015年のキックオフ開催にあたり、経営陣を中心にそうした声が挙がりつつあったという。

一方、鳥取県智頭町の山郷地区では、少子化の影響で2012年に廃校となった旧山郷小学校の利活用が課題となっていた。地元の智頭杉をふんだんに使用した新校舎の落成からわずか15年。まだまだきれいな、杉の香りが漂う建物を生かすため、交流施設「R373 やまさと」として運営を始めていた。

「廃校に100人が泊まる」という初の試みに挑戦
キックオフイベントの舞台となった旧山郷小学校
キックオフイベントの舞台となった旧山郷小学校

もともと、智頭町役場や地元の振興協議会とは、森林セラピー事業を通じて交流があった。管理部門のマネージャーとしてキックオフイベントの企画・運営を手掛ける上村正哉さんは、その縁から旧山郷小学校を視察する。同社の拠点が多い関西や、新幹線停車駅である岡山から特急1本でアクセスできる好立地だ。

「学校という特別な場所でキックオフを開催すれば、童心に帰って楽しく交流できるという効果もあるのではないか……」。下見をしてすぐに気に入った上村さんは、この場所での一泊二日のキックオフ開催を経営陣に提案し、快諾を得た。社内からは安全面や衛生面での不安の声も挙がったが、女性専用の教室スペースの確保や、周辺の浴場施設の活用によって払拭した。

とはいえ、この場所はもともと大人数での宿泊を想定したものではなく、施設は小学校として運営していたときのまま。役場や振興協議会の関係者、地域住民の協力を得て、郷土食でのパーティーができるよう当日の料理を準備してもらったり、100名を超える宿泊場所としての部屋割りを検討してもらったりと、初の試みに向けた準備が進んでいった。

智頭町への思いを深め、社員の心が一つに

1日目は全社会議とパーティーを開催。この中では、智頭町とLASSICの連携協定が取り交わされるという、同社の経営理念を現すシンボリックな場面があった。小学校に宿泊するという非日常的な空間の中、深夜まで社員の交流が続き、初めて顔を合わせるメンバー同士の絆も深まったという。2日目にはアクティビティとして小学校の掃除や杉の間伐体験を実施。地域住民と社員が交流するきっかけを作った。

この特別な試みは、同社の社員にどのような変化をもたらしたのだろうか。

子どもの頃にバカ騒ぎをした記憶が蘇る
童心に戻ってゲームを楽しむ社員
童心に戻ってゲームを楽しむ社員

「以前は、このような泊まりの全社イベントがあっても、“軽く飲んで食べて寝てしまう”というパターンが多かった。この日は小学校というシチュエーションで、子どもの頃にバカ騒ぎした記憶が蘇ったのか、皆で遅くまでボードゲームに興じるなど普段とはまったく違うイベントになった」。福岡から参加した藤吉英則さんはそう振り返る。

 福岡という都会の拠点で仕事をしている藤吉さんにとって、日頃は地方創生という理念を実感する機会があまりなかった。智頭町のイベントではそれを身近に感じ、「ゆくゆくは九州でも、旧炭坑などを活用して開催したい」と思うようになったのだという。キックオフ後はこうした声が高まったことから、もともとは本社メンバーのみで構成していた運営委員を、全国各拠点から代表を出して構成するように変わった。社員それぞれが愛着を持つ地域にこの事例を展開し、全国各地で交流を深めていきたいと考えている。

成功体験を全国に広げていく
智頭町とLASSICとの「パイプ役」となった佐久間さん
智頭町とLASSICとの「パイプ役」となった
佐久間さん

LASSICの事業全般の営業兼シニアコンサルタントを務める佐久間高広さんは、森林セラピーを通じた企業研修やメンタルヘルス対策の提案に構想段階から携わってきた、智頭町とLASSICとの「パイプ役」的な存在。特別な思いで今回のキックオフイベントに参加した

「100人規模のイベントを都会で開催すれば、食事の準備などで多額の費用がかかる。そこを地域のつながりや人間力で助けていただけたことも大きかった」と語る。2日目のアクティビティで清掃や間伐体験を行ったのは、地域の方々への恩返しの意味もあったのだという。

「地域貢献と称して地方にやってきても、利益が見込めなくなってすぐに去っていく企業が多い。1年ぐらいで帰るなら、むしろやらないほうがいいんです。地域の人が稼げて、自社もしっかり利益を出せる、そんな事業を長期的に作っていくことを大切にしています」

廃校に泊まり、大きなイベントを地域の人々とともに作り上げた2日間は、「鳥取発 ITで地方創生」という理念を形にしたものだった。そして、智頭町に対するLASSIC社員の思いは一段と深まることとなった。人口減や過疎化に直面する地方には、まだまだ利活用の余地がある施設がたくさんあるという。さらに同社では2017年、歴史的建造物としての評価も高い旧鳥取高等農業学校跡地へ本社を移転予定。今回の成功体験を糧にして、同社はまさに、全国各地へとその理念のすそ野を広げようとしている。

受賞者コメント

代表取締役社長 若山幸司さん

社員が主体的に取り組んでくれた成果だと思います。当社は経営理念で「鳥取発 ITで、地方創生」を掲げています。現在全国に9拠点あるのですが、社員間のコミュニケーションがしづらいと思っていました。これまでは鳥取市内のホテルなどを使っていたのですが、「地方創生」という理念を感じられるようなキックオフができないかと社員に投げ掛け、廃校を活用したいという意見が上がってきました。廃校の体育館で二次会を行い、社員みなが童心に返って楽しめたようでコミュニケーションが活性化され、密度の高い場とすることができました。

審査員コメント

若新雄純氏

LASSICさまが最初に寄せていただいた応募書類。その一つひとつの言葉がとてもロマンティックだと感じていました。地域貢献といった経営理念を社員全員が常に意識することは簡単なことではないと思いますが、それを言葉にし直すことで、理解の深まりが生まれたのだと思います。理念の深まりを通して、こうした活動を継続していくことがとても大切だと感じています。

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グッド・アクション受賞取り組み

フォルシア株式会社
「全員で全員の賞与を決める」からこそ気付けることがある!
個人主義のエンジニアを変えた評価制度

部の朝礼で自らの成果や頑張りを共有
部の朝礼で自らの成果や頑張りを共有
■取り組みの概要
社員に特別賞与の原資を公開し、「自分以外の全員に分配する」という設定で賞与額を記入してもらう取り組み。その結果を集約し、実際の支給額を決める。
■背景にあった課題
業績指標や工数、残業時間では測りづらいエンジニアの評価を公平に行い、モチベーションを感じてもらえるようにしたかった。
■取り組みによる成果
個人主義のエンジニアが周囲との関わりを重視したり、管理職のマネジメント手法や配置を見直したりという成果につながっている。
■担当者の想い
自身に対する評価をしっかりと受け止め、お金も含めた幸せを感じることでクリエイティブに働いてほしいという社長の思い。

クリエイティブな仕事には、お金も含めた「トータルな幸せ」が必要

昨今、「働き方改革」についてのさまざまな議論が交わされる中で、「評価基準をいかに設けるか」が重要なトピックとなっている。特にITエンジニアの場合は、数値目標の達成や工数、作業時間で単純に評価することが難しく、頭を悩ませている企業も多い。

情報検索プラットフォームの開発を主力事業とするフォルシアでも、かつてはエンジニアへの評価制度のあり方が課題となっていた。そんな中で生まれたのが、「賞与原資を公開し、自分以外の全員に分配する」という大胆な発想の360°評価だ。

全員が全員の賞与を査定し、個別にフィードバック

「総額●●●●万円の賞与を自分を除く対象者に分配する権限があるとしたら、それぞれにいくらずつ分配しますか?」

期末が近付いたフォルシアでは、そんな設問が書かれた重要資料が社員に配布される。2月に支給される特別賞与の額を決めるための「3C評価制度」だ。3Cとは、「Contribution」(会社への収益の貢献度)、「Commitment」(業務に対する責任感、献身度)、「Consistency」(会社への安定的関与)の3つの頭文字を取ったもの。

配られる資料には、対象社員全員の名前が書かれている。特別賞与原資の総額が明示され、この数字を自分以外の全員に振り分けていく。社員は部長やマネージャーに対しても評価をつけるため、場合によっては「上司よりも部下の方が賞与額が高い」といったことも起こり得るのがユニークな点だ。必須記入は数字のみで、時間を過度にかけることなく提出できるようにした。

集計後は、CEO(社長)・COO・取締役の3名で最終支給額を決定。この際、他の社員からの評価が特に高かった人が記入した額を重視する。評価が高い人のほうが正しい目で周囲を見ている可能性が高く、逆に他人を正しく評価できない人は、周囲からの評価も低いはず、という判断だ。部署ごとに行う期末レビューの後は、社長が全社員と面談して賞与額をフィードバックし、最終レビューを進めていく。他部署の社員の成果や頑張りにも目を向けられるよう、週1回の全体ミーティングでは各部署の成果情報やトピックスを共有している。

「3C制度の回答を見ることで、経営陣が日頃認識している社内人間関係のほころびを確認することができるんです。また、上司から見たメンバーの評価と周囲の評価をすり合わせることにもつながる。低評価が集まるメンバーについては、直属の上長と協議してマネジメント手法や配置を見直すこともあります」。

この評価制度を編み出し、運用を続ける屋代浩子さん(代表取締役社長・CEO)は、取り組みの意義をそう語る。

外資系企業の明確な評価基準をエンジニアの世界に導入
3C評価制度を編み出し、運用を続ける代表取締役社長・CEO屋代さん
3C評価制度を編み出し、運用を続ける
代表取締役社長・CEO屋代さん

屋代さんは創業前、大手外資系の証券会社に勤め、「自分がいくら稼ぎ、会社に貢献しているか」を明確に評価される環境の中でキャリアアップを果たした。厳しくもあるが、評価が自信になり、それが高収入という形になって返ってくる世界。その収入をもとに起業の夢を実現することができた。

「常に前向きに、クリエイティブに働くためには、お金も含めたトータルの幸せを感じることが必要だと思っています。そのために、社員全員の頑張りを正しく評価できる体制を作りました」

2001年に創業したフォルシアでは、リーマンショック以降から採用を強化し、毎年10人のペースで社員数を増やしてきた。その中で感じたのが、「お金にモチベーションが湧かない若者」が増えているということ。お金のためだけに働いてほしいわけではないが、成果に対して生まれる評価をしっかり受け入れて、幸せを感じてほしい。そんな思いが根底にある。

エンジニアなど技術職の社員は、実際にどの程度会社業績へ貢献したのか、また所属するチームへどのように貢献したのかを評価しづらいという課題も感じていた。一般的な360°評価では定量的な評価がしづらく、個人の実績が正しく反映されないこともある。それを払拭するのが、「全員で全員の賞与を決める」という3C制度なのだ。

全員で取り組むからこそ実現する制度

この制度を導入した結果、かつては光が当たりづらかったのではないかと思われるエンジニアの成果も正しく評価できるようになった。全員が全員を評価するため、「日頃の振る舞いが評価に直結している」という意識が高まり、「お互いに高め合う」という前向きな好循環にもつながっているという。

正しく評価するためには、互いのことをよく知る必要がある。社員は他部署も含めて周囲のメンバーの業績や行動に注目するようになり、同時に「自分も成果を出したことは積極的にアウトプットしよう」という意識につながっているのだそうだ。

「自分だけ」を考えていたエンジニアが変わった
技術部長の岩本さん(左)とエンジニアの杉森さん(右)
技術部長の岩本さん(左)と
エンジニアの杉森さん(右)

エンジニアをマネジメントする立場にある技術部長の岩本英明さんは、メンバーが結果を出した際には「しっかりアウトプットしなきゃ」と働きかけ、全体ミーティングに共有の場を作るなどのお膳立てをしている。3C評価については「社長や部長の一存では評価が変わらないので、上に対して無駄な“おべっか”を使う人がいない。自分の評価も周囲の評価も受け止めやすく、成長につながっている」と話す。

エンジニアの杉森宙さんはもともと、エンジニア仲間へ積極的に情報共有するタイプではなかったそうだ。しかし、3C評価によって自分に対する評価が他部署より自部署からのほうが低いことを知り、意識が変わった。「他メンバーへの情報共有や後輩育成への取り組み不足を感じました。それ以来、“どれだけ人の役に立てているか”を強く意識するようになりました」と振り返る。

社員数が増えても、正しく人を評価できる会社であるために
全体ミーティングでは各部署の成果情報やトピックスを共有
全体ミーティングでは各部署の成果情報や
トピックスを共有

3C評価は、全員で取り組むからこそ実現する制度だ。エンジニア一人ひとりについて、マネジメント側が見えていない頑張りや成果を発見することができる。また、「無駄に残業することで頑張っているポーズを取る」といったパフォーマンスは通用しない。現場を知るメンバー同士が互いを見ているからだ。そうした意味での厳しさがあるからこそ、誰が見ても納得できる評価につながる。

「CEOは、頑張っている社員を正しく評価し、社内を盛り上げていくことが最も大切なミッションだと思っています」と語る屋代さん。事業拡大を続け、100名規模を伺う体制へと成長しつつあるが、この制度を適切に運用していくことで今後も正しい評価ができる会社であり続けられると確信している。

受賞者コメント

代表取締役社長・CEO 屋代浩子さん

働くということは、楽しくなければいけないと考えています。同時に会社組織なので、楽しみながら利益を生み、社員にも分配される仕組みを作りたいと思ってこの制度を作りました。技術オリエンテッドの会社で、いい技術を開発して満足してしまう側面がありましたが、この取り組みを通して「開発するだけでなく使われるサービスになっているか」「どうやって自分たちの才能やクリエイティビティをお金に変えられるか」を前向きに考えるようになりました。

審査員コメント

若新雄純氏

「人が人を評価する」という、どんな企業にとっても難しいと思われるテーマに対して、社員自身が社内での関わり方を立ち止まって考え、自分の仕事を見つめ直す機会になったところがとても良いポイントだと思います。その妥当性や結果よりも、「全員による評価」という、続けることそのものに意味がある取り組みなのだと感じました。

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グッド・アクション受賞取り組み

株式会社シグナルトーク
大量介護離職や、社内だけでは実現できない個人の成長…
これからの課題解決を先取りした「FreeWorking制度」の効果

ライフスタイルに合わせた働き方を実現している小林さん(左)、浅川さん(中央)、花岡さん(右)
ライフスタイルに合わせた働き方を実現している
小林さん(左)、浅川さん(中央)、花岡さん(右)
■取り組みの概要
社員がライフスタイルに合わせて働き方を選択できる「FreeWorking制度」を実施。少日数勤務や在宅勤務が可能。さらに、時間報酬型or成果報酬型の2つから基本的な働き方を選べる。
■背景にあった課題
以前は長時間労働が常態化し、社員個々人が望む働き方を実践できていなかった。また、介護により会社を離れざるを得ないメンバーもいた。
■取り組みによる成果
介護や副業と両立して働き続ける社員が活躍している。また、全社の平均残業時間も限りなくゼロに近づいている。
■担当者の想い
「クリエイターの理想郷」というビジョンを目指し、一人ひとりの理想的な働き方を実現したいという社長の思いがあった。

「在宅勤務」や「少日数勤務」はなぜ必要なのか

リモートワークや短時間勤務、週休3日制の導入など、「時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」が日本にも広まりつつある。採用力強化や離職防止の観点で語られることも多いが、そもそもなぜ柔軟な働き方が必要なのか、根底から考えることも必要ではないだろうか。

オンラインゲームの開発・運営を手掛けるシグナルトークの取り組みは、そのための示唆に富んでいる。少日数勤務や在宅勤務が可能な「FreeWorking制度」に加えて、「時間報酬型」または「成果報酬型」の2つから基本的な働き方を選べるという仕組みだ。その背景には、これからの日本で避けては通れない社会的課題もあった。

制度が明文化されていたから、介護に向き合うことができた

浅川博文さん(プログラマー)は、以前に一度、父親の介護のためにシグナルトークを退職した「出戻り社員」だ。その頃にも特例として在宅ワークが認められている社員はいたが、社内で一般的な働き方として認識されているものではなかった。「会社に迷惑をかけたくない」という思いでやむなく離れ、介護と向き合う日々の中で、同社がFreeWorking制度を導入したことを知った。就業規則に明文化された制度であれば、堂々と利用できる。在宅でも、自分ならきっと成果を出せる。そんな思いで、復帰を願い出たのだという。

同社にはもう一人、親の介護と向き合った社員がいる。小林文野さん(編集/ディレクター)だ。24時間家族だけで見守る必要がある介護は、通常の勤務形態では対応しきれないと考えていた。「介護離職をするか、フリーランスになるか」というギリギリの状況の中で、この制度があったために会社に正社員として残ることができた。在宅勤務時には時間の縛りがないため、家族の状況に合わせて自由に勤務時間を決め、介護と仕事を両立してきた。

いつでも独立できる人材が会社に残る理由
花岡さんは週に1、2回程度出社
花岡さんは週に1、2回程度出社

長時間労働が常態化する傾向のあるゲーム業界で、「クリエイターの理想郷」というビジョンを目指す同社でも、かつては残業や寝泊まりが当たり前という時代があった。そんな中で「収入よりも自分の時間を優先したい」と考える社員の希望により、在宅勤務を容認。これが前例となり、就業規則に明文化したものがFreeWorking制度となった。

その先鞭を付けたのが、花岡大樹さん(ソフトウェアアーキテクト)だ。6年前に「在宅勤務へ移行したい」と最初に社長へ提言した。現在は会社の業務のほかに、個人でもゲームを開発することでライセンス収入を得ており、講演などに呼ばれるケースも多いという。

「エンジニアの世界は、日進月歩どころではないスピード感で進化しています。1社・1プロジェクトに向き合うだけではなく、社外などでより多くのものを吸収することもエンジニアとしての成長に必要です。弊社のようにやりたいことに自由に挑戦でき、それを一切阻害しない会社は、他にはないと思っています」

花岡さんの出社頻度は週に1、2回程度。リモートでプログラム開発や環境構築などを行うキーマンだ。いつでも会社を辞め、独立できるような人材だが、シグナルトークの環境は「わざわざ辞める理由がない」と感じられるもの。そうして積極的に外部と接触し、成長した人材が、同社に新たなインプットをもたらしているのだ。

「寝泊まりが当たり前」という常識を変え、残業ゼロに近い組織へ

同社では、全社員が「成果報酬型」か「時間報酬型」の2つから働き方を選べる。前者は13時から18時までのコアタイムを設け、それ以外の時間帯は1日8時間を目安に自由に出勤・退勤でき、仕事の成果に対して給与が支払われる。対して後者は、1日8時間決まった時間に働き、実働時間に対して給与が支払われ、残業が発生した場合は別途時間外手当が支給される、いわゆる一般的な働き方だ。

入社当初は時間報酬型で働く社員がほとんどだが、1カ月程度でほとんどが成果報酬型に移行するという。「クリエイターの理想郷」というビジョンを実現するため、社長が全社員に労働時間についての意見を聞き、社員の意見を反映した現制度が設立された。

柔軟な働き方を可能にしたマネジメント体制

こうした素地がある上で、子育てや介護、副業などの個々人の希望に応えられるよう、週休3~4日などの少日数勤務ができる「FreeDays」と、基本的に在宅で勤務できる「Remote」を制度化している。「Remote」の場合は、週に一度の全社会議に出社することと、リモート勤務時にオンライン電話・チャットにログインし、会社からの連絡に対応できる状態にしておくことが条件。現在は36名中、3人の社員がこの制度を利用している。

柔軟な働き方を可能にしている秘訣は、フラットな組織作りにもある。「社長・ゼネラルマネジャー(1名)・セクションチーフ・一般社員」というシンプルな組織図で、「麻雀ゲーム」や「健康アプリ」などそれぞれの担当案件を社長と直接すり合わせて進めているのだ。一人ひとりに与えられる裁量が大きな職場でもある。在宅勤務時はメールで始業と終業を報告、社内チェックを経た上で自由にデバイスを使えるなど、マネジメントや個人の裁量に委ねる形で運用している。

成果報酬型を選択している他の多くの社員も、実質的な残業はほとんどない。逆に、月の全社平均労働時間は151時間で、残業以前にそもそも所定労働時間を満たしていない社員も多いという。所定労働時間を割っていても減給はなし。自由な働き方を選ぶ社員の存在が、寝泊まりさえ当たり前だったかつての同社の常識を変えた。

シグナルトークが実践する「近未来の働き方」
自ら働き方をデザインし、イキイキと働く
自ら働き方をデザインし、イキイキと働く

介護のために在宅勤務を選択した浅川さんと小林さんはともに、「介護が連鎖する」という体験談を語ってくれた。介護疲れによって配偶者などの家族も倒れ、同じく介護が必要な状態になってしまう。そうした状況では、通常の勤務形態で仕事を続けることは極めて困難だ。あと数年で日本は団塊の世代が70代に入る。そのとき、30代から40代の子ども世代は、「毎日オフィスに出勤して8時間働く」という現在の常識を維持できるのだろうか。大量介護離職の危険が間近に迫る中で、シグナルトークの試みは大きなヒントになる。

また、花岡さんは「1社・1プロジェクトだけではなく、社外などでもっと成長する機会が必要」と語った。あらゆる業界がめまぐるしく変わる時代にあって、これはエンジニアだけの課題ではなくなるのかもしれない。個人が安心して会社に籍を置き続け、貢献しながら、自己成長のために新しい挑戦を始める。そんな近未来の働き方を、同社は実践している。

受賞者コメント

代表取締役 栢孝文さん

もともと労働時間が長く、土日出勤も当たり前という会社でしたが、「クリエイターの理想郷を作る」という理念を掲げて社員と議論しながら改革を進めてきました。労働時間が減ると生産性が下がるのでは? という議論がありますが、当社では昨年、過去最高の売上に。自由な制度を作り、社員にとってハッピーな世界を作りながら業績向上を図ることは可能です。全社員が協力してくれていることに感謝したいと思います。

ソフトウェアアーキテクト 花岡大樹さん

普段は家やカフェで自由に働いています。「FreeWorking制度」をフル活用することで、シグナルトークの業務だけではなく他社とのコラボレーションなどにも積極的に取り組めるようになりました。さまざまな技術を学び、成長の機会としています。

審査員コメント

藤井薫氏

花岡さんの思いがきっかけとなって社長が動き出したということで、現場のオーナーシップがすべての入り口だったのだと感じました。また、職場の制度を選べるということも大切なポイントだと思います。「明日から全員在宅」と言ってしまうと逆統制になってしまう。介護に向き合っている方も、この制度によって退職することなく仕事に向き合えています。多様で安心感を持てる取り組みであることが、イキイキする職場につながっているのだと思います。

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グッド・アクション受賞取り組み

株式会社セプテーニ・ホールディングス
新人のパフォーマンスは、能力だけの問題じゃない!
「相性」をデータ化してマネジメントに生かす「人材育成エンジン」の実力

人材育成エンジンの運用を専門としながらグループ全体の組織作りを進める進藤さん
人材育成エンジンの運用を専門としながらグループ全体の組織作りを進める進藤さん
■取り組みの概要
社員一人ひとりのデータをもとに人材タイプを分析し、「相性」による配置の適正化や離職防止につなげる「人材育成エンジン」を開発、運用。
■背景にあった課題
労働市場で競争に勝つため、独自の人材育成戦略を打ち出す必要があった。
■取り組みによる成果
マネジャー陣が相性をもとにしたチーム編成を行い、メンバーの成長に向けて効果的なマネジメントを行えるようになった。
■担当者の想い
せっかく入社した社員がパフォーマンスに悩むことなく、最適な環境で活躍できるよう支援したいという思いで人材育成エンジンを開発。

競争に勝つための「独自の人材育成」を追い求めて

人材育成は、数値による成果が見えにくいと言われる。優秀なスキルを持つ人事パーソンやマネジャーがいれば、メンバーの成長を促したり離職を防止したりという手立てを打つことができるが、そうでない場合はどうなのか。永遠の課題のようにも思えるが、ここに一つのユニークな事例がある。

ネット広告市場で事業を拡大し続けるセプテーニ・ホールディングスでは、「人事の成果を定量化する」という目的のもとで社員のデータを蓄積し、「人材育成エンジン」として独自の仕組みを作り上げた。

「データ」が社員の成長や離職防止に貢献

経歴データや入社選考中の行動データ、各種のアセスメントデータや研修データなど、社員一人ひとりの数百項目におよぶ情報を蓄積しているセプテーニ・ホールディングス。これをもとに自社に必要な人材タイプを分析し、「攻め(未来創造型)か守り(課題解決型)か」、「理論派か直感派か」などのタイプに分類して、採用から社内適応、育成、戦力化までを図っていく独自の取り組みを行っている。

推進する進藤竜也さん(人的資産研究所)は、「それまで定性的にしか見ることができなかった『個人のタイプと配属先の上長やメンバー、仕事との相性』を組織の最適化を支援している株式会社ヒューマンロジック研究所の協力を得て定量化し、個人と環境の適応度を客観的に測れるようにしました」と語る。

ポイントは、新入社員が活躍できているかどうかを個人の能力やスタンスだけで評価するのではなく、所属チームや上司、仕事との「相性」を客観的に見られるようにしたことだ。大量のデータをもとにした人材育成エンジンがこれを可能にした。この相性データを役員・部長クラスが組織作りの判断材料とすることで、社員それぞれの活躍の芽を伸ばしたり、離職の危機を防いだりといったマネジメント強化に役立てているという。

3年がかりで、「個人と環境の相性」を分析するツールを開発
社内で収集した人事データをもとに、3年がかりで開発した「個人と環境の相性」を定量化するツール
社内で収集した人事データをもとに、3年がかりで開発した「個人と環境の相性」を定量化するツール

2000年代、ネット広告市場が伸び続ける中で、大手企業と競合しながら成長してきた同社。その過程では、採用シーンで有名企業に勝てず、育成でも新人のパフォーマンスが安定しないという課題を長く抱えていた。「セプテーニ独自の人材育成を行い、他社と競争しない人事戦略を打ち出したい」。そんな思いを背景に編み出されたのが、人材育成の方程式を作り、構造化した人材育成エンジンだった。

「上場や企業規模の拡大に伴い、自社が採用するべき人材を見極め、職場に適応させていくための新たな取り組みが必要となっていたんです。“相性”を見極めるというコンセプトにしているのも、それが背景にあります」

社内で収集した人事データをもとに、株式会社ヒューマンロジック研究所協力の上で「個人と環境の相性」を定量化するツールを3年がかりで開発。新入社員一人ひとりのタイプをサーベイ化し、相性が良いと考えられる環境へ配属し、半年ごと(入社1年目社員は3カ月ごと)の360°評価を通して適応度合いを測定していく。「最初の1年間のパフォーマンスは個人の能力ではなく、環境との相性に起因する」という考えのもと、職場との相性が合わない人は異動によって改善を図るという打ち手が同社の常識となっていった。

「セプテーニという環境をいかに楽しんでもらうか」を追求

人材育成エンジンは、高確率で社員の退職予測を行うことも可能にし、それをもとにしたリテンション策の開始につながっている。新卒採用ではデータ上で推奨された学生のうち95パーセントが最終面接を通過し、将来的な面接の廃止を検討できる段階に。選考フローの大幅な工数削減につながる可能性もある。

Great Place to Work(R) Institute Japanが発表する「働きがいのある会社ランキング」では、人材育成エンジンの運用を開始した2013年以降、同社の関連スコアが上昇。2012年は30位だったが、2016年には5位にランクインしている(従業員100-999人内)。1人あたりの売上高も2012年以降は伸び続けており、生産性の向上にも少なからずつながっていると考えている。

実際のマネジメントの現場では、どのようにこの仕組みを運用しているのだろうか。

メンバーの成長を考え、相性によるチーム編成を実施
人材育成エンジンを活用している本間さん(左)と神埜さん(右)
人材育成エンジンを活用している
本間さん(左)と神埜さん(右)

リスティング広告やSEMを扱う約80名の部門を束ねる本間崇司さん(株式会社セプテーニ メディア本部・第一コンサルティング部部長)は、人事から提供されるメンバーのサーベイとチームリーダーのサーベイを見て組織編成を決めている。人材育成エンジンの運用を開始してからは、メンバーの成長を考え、「相性の良い人と組む」「あえて違うタイプの上司のもとで働く」などの打ち手をデータドリブンで考えるようになった。

神埜雄一さん(株式会社セプテーニ執行役員)は、部長やマネジャーに対して、サーベイを活用して相性に基づいたマネジメントを行うよう推奨している。新規事業を立ち上げる際の人材配置では、「○○にチャンスを与えたい」といった属人的な判断を排して、システムが導いた最適人材を選ぶようになった。こうした人事方針を伝える際に、人材育成エンジンのデータを根拠としてメンバーに提示できるようになり、「マネジメントが非常にやりやすくなった」という実感があるという。

データによる予測を的中させ、経営陣を巻き込む
社内のメンバーのやりがいを最大化するための方法の1つとして、今後も進化を続ける
社内のメンバーのやりがいを最大化するための
方法の1つとして、今後も進化を続ける

取り組みを推進する進藤さんは、もともと人事部門で新卒採用を担当していた。「自分が採用に関わった新人が活躍できないまま悩んでいる状況は無視できなかった」と当時を振り返る。

そんな状況を変えたいという思いが原動力となり、人材育成エンジンによって全社員の退職予測や特定社員の活躍予測を行ったが、当初は経営陣も半信半疑だったそうだ。しかし、その後の半年から1年間にそれらのデータが的中していくこととなり、マネジメントに活用しようと考える管理職が増えていった。

2016年4月からは新しく立ち上がった部署「人的資産研究所」に所属し、人材育成エンジンの運用を専門としながら同社グループ全体の組織作りに奔走。「副業容認やパラレルキャリアを勧める声が多い世の中で、“セプテーニという環境をいかに楽しんでもらうか”を追求することも大切だと思っています。社内のメンバーのやりがいを最大化するための方法の1つとして、今後も人材育成エンジンを進化させていきます」と抱負を語ってくれた。

受賞者コメント

人的資産研究所 進藤竜也さん

人材育成エンジンの開発・推進を担当しています。かつては新卒採用も担当していたのですが、その仕事を通じて「一人ひとりが成長する環境を本気で作りたい」という思いを持ち、この取り組みを進めてきました。今後は、一人ひとりが成長するための最適解を、データを使って導いていきたいと思っています。

審査員コメント

藤井薫氏

人の能力というのは、個人の問題だけでなく「場の相性」にもあるのだと教えてくださりました。このプロジェクトは若い人の直感から蹴り出して、職場との相性を考える取り組みを始めたことに価値があると思います。今盛り上がっている「HR tech」の動きですが、これを作り上げるためには、長年データを集め続け、現場やマネジメントラインに丁寧に導入していくという、「人に対する熱いまなざし」が必須です。この取り組みには、それらのすべてが息づいています。

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審査員総評

社員個人のオーナーシップによって変革が生まれ、
成果につながる アキレス 美知子 氏

アキレス美知子氏

小さな企業と大きな企業では、当然のことながら違いがあります。小さな企業の場合はリソースが限られるため、なかなか人が集まらない、事業が進まないなどの課題がありますが、意思決定のスピードが早く経営と従業員とのコミュニケーションもスムーズです。大きな企業では、リソースは豊富ですが、意思決定や部門の壁は厚いものがあり、部門を越えたイノベーションが生まれづらいというケースがあります。それでも、この現状を変えたいとの思いを持った中核社員が動き、周りを巻き込んで行きます。

共通しているのは、新入社員の発信などで新たな視点がもたらされ、変革につなげていくということ。また、活動を定着させるために人事制度を含めた仕組みを社員自身が考えるなど、個人のオーナーシップが発揮されていることです。そして、「1年やって終わり」ではなく継続することで、業績向上や定着率向上、採用が活況になるなど、さまざまな成果につながっています。

最終審査では審査員同士の意見が別れ、大変盛り上がりました。「この角度から見るとどうだろう?」と、さまざまな観点から意見が出ます。楽しい反面、学びもたくさんある場となりました。

「個」を大切にする企業から、グッド・アクションが生まれる 守島 基博 氏

守島基博氏

今回のグッド・アクションでは、一つひとつの取り組みの裏側にある担当者の思いを聞かせていただき、非常に勉強になりました。今、人事の世界で必要なのは「社員の個と価値観を大切にする」ということだと思います。本日受賞された8つの取り組みに共通しているのは、社員を「個」として大切にしていることだと思いました。

アイシン精機さまの取り組みでは、参加メンバーそれぞれの得意領域や好きなことをオープンに共有し、個人の価値を大切にされています。また千代田化工建設さまは、Voiceを発信した社員のもとへ担当者が行き、それぞれの思いやストーリーを聞いて共有していました。

他にも介護に直面する人材とどう向き合うか、若手社員の能力や価値観をどう重要視するかなど、さまざまなテーマがありました。やり方は企業それぞれですが、「個」を大切にするという点は変わらない基盤なのだと感じています。

取り組みを続けることそのものが「グッド・アクション」 若新 雄純 氏

若新雄純氏

本日の表彰式に参加して、会場でいちばん使われていた言葉は「取り組み」でした。取り組みとはプロセスそのもの。結果でもアイデアでもなく、プロセスを評価することがグッド・アクションの意義だと感じています。途中段階にある非常に曖昧なものを審査員の皆さんとともに議論するのは大変でしたが、取り組みそのものに目を向けることで、「変化する余地」の可能性も重視することができるのだと思いました。

LASSICさまは「地域への貢献」というやり方。またフォルシアさまは「全員による評価」というやり方。これらは、取り組みの結果がうまくいったかどうかを問うことにあまり意味はないのかもしれません。取り組みを続けることそのものに価値があり、そのプロセスから変化や発展の余地を感じることができる。だからこそ「グッド・アクション」と呼ぶにふさわしいのだと思います。

止めて、解決の道を見出し、また動かす 藤井 薫 氏

藤井薫氏

私が今回のグッド・アクションで強く感じたことは、「“職場”は生き物である」ということでした。生き物なので、職場の活動は一度止めてしまうとイキイキしなくなります。しかし一方で、思い切って一度活動を止めて、振り返るからこそ分かる課題もあります。

シグナルトークさまは、社員の花岡さんが社長に在宅勤務を直訴したことで大きな制度改革が始まりました。セプテーニ・ホールディングスさまの場合は、長年にわたりデータを蓄積し、勇気ある仮説をぶつけてマネジメントラインや現場を変えています。勇気を出して、今までの常識や習慣を立ち止まって見つめ、課題解決のための道筋を確かめてまた動かす。そんな取り組みがグッド・アクションにつながっているように思いました。

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