IT業界、生保業界…7人の人事に聞いたウラ事情転職者の給与はこうして決まる
「前給考慮」「経験能力に応じて優遇」などは募集条件でよく見る言葉。でも前給や経験能力を、具体的にどう考慮して給与を決めているかは、ナゾ。そこで、転職者の給与を決定するまでの過程と仕組みを人事担当者に聞いた。
人事は3つの条件の組み合わせで「あなたの値段」を決めている
多くの人事担当者は「会社の事情」「キャリア」「ポテンシャル」、この3要素の重要度と優先順位をそれぞれ考慮し、予算見合いで転職者の給与を決定する。もちろん、即戦力の採用の場合はキャリア(実務経験)が募集条件と合致することが最低条件だが、人事の期待を上回るキャリアがあり、人事がぜひとも採用したいと思えば、それに見合う金額が予定よりも上乗せされて提示されることも少なくない。業界、会社、職種、人事の裁量など、給与の額を決定する要素と組み合わせ方は千差万別だが、「どこに重きを置いて給与を決定するか」を各社の事例から見ていこう。
転職者の給与 決定要素
人事が転職者の給与を決定する際に用いる「判断要素の組み合わせ」を概念化すると下記のとおり。言い換えれば、1人あたり人件費の内訳。「札束」が厚いほど重視する要素で、「札束」が下にあるほど、判断の際に優先順位が高い要素となる。
黄色い札束:会社ごとの事情 黄色い札束:会社ごとの事情
業界内で給与ベースが確定している、給与規定に則るなど、人事担当者では調整できない絶対条件。
青い札束:転職者のキャリア 青い札束:転職者のキャリア
募集条件に見合う経験やスキルがあるかなど、人事の期待以上にキャリアがあれば、給与に差が出る。
緑の札束:転職者のポテンシャル 緑の札束:転職者のポテンシャル
入社してみないと人事も判断できない転職者の潜在能力。人事にとっての「期待と可能性の値段」。
人事に直撃。即戦力採用の給与決定プロセス
人事担当者7人に、どんな条件をどう組み合わせて転職者の給与を最終決定するかを聞いた。また「ものすごく採用したい人材」がいた際、予定した給与よりも最大いくら上乗せして採用したか、その理由も併せて尋ねた。(Case1〜7はあくまでも個別事例で業界全体の事情ではありません。「給与決定要素のバランス」に記載されたパーセンテージは、回答者の「感覚値」です)
Index
Case 1 生命保険A社・営業職の給与決定ウラ事情
実務経験の評価で給与の7割は決まる
給与決定のバランス
会社ごとの事情:1人あたりの人件費・・・5%,転職者のポテンシャル:バイタリティー/計画力/説得力/ダメージ回復力の早さ/柔軟性/対人力など・・・25%,転職者のキャリア:生命保険の営業経験・・・70%
人事M氏に聞いた
生命保険A社
・従業員数1200名
・内資系生命保険会社
当社の営業職の人件費は1人あたり1000万円。それ以上は役員申請が必要ですが、過去に1000万円を超えた例はありません。なので、会社事情である人件費の上限は、あまり考えなくてもいいんです。何よりも生保の営業実績を重視し、前職での実績を既存社員の実績と照らして相当額を提示しています。
こぼれ話
180万円上乗せ 生命保険の営業経験者を、本人希望額に月給15万円ほど上乗せして採用したことがあります。上乗せ分は、既存社員の実績とそろえて算出。営業職は対人力やバイタリティーも、もちろん大事。職務経歴書に詳細に書かれた実績から、その点も十分判断できました。
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CASE2 IT企業B社・SEの給与決定ウラ事情
給与規定が基準。既存社員と足並みの揃う額にする
給与決定のバランス
転職者のキャリア:ソフトウェア設計・開発経験・・・25%,転職者のポテンシャル:コミュニケーション力・・・25%,会社ごとの事情:経験年数を給与規定にあてはめる・・・50%
人事F氏に聞いた
IT企業B社
・従業員数30名
・デジタル機器の設計開発
社員が少ない小さな会社なので、既存社員と差が出ないことを第一に考えます。採用時は経験年数に応じた給与規定に則っていますが、入社後、成果を挙げたらインセンティブを出すという形です。対人力や人柄などが、採用時の給与に反映されることは、ほとんどありません。
こぼれ話
30万円上乗せ 月給約2万5000円アップを条件にSEを採用。本人からの希望があったこと、それが想定予算内でもあったので上乗せしました。当社のような小さな企業は、採用した人の能力が売り上げに直結するので、本来は、採用時も実績をいちばんに考慮すべきかとは思いますが、できていないのが現状です。
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Case3 IT企業C社・Webディレクターの給与決定ウラ事情
実務能力とポテンシャルへの期待で給与は決まる
給与決定のバランス
会社ごとの事情:1人あたりの人件費・・・10%,転職者のキャリア:Webディレクションの実務経験/外部スタッフのコーディネート経験・・・45%,転職者のポテンシャル:デジタルコンテンツおよびコンテンツビジネスに関する興味や知識、創造性/リーダーシップ/対人力など・・・45%
人事H氏に聞いた
IT企業C社
・従業員数2000名
・インターネット広告事業、
情報通信事業
人件費の上限は決まっていますが、厳重ではありません。人件費アップの必要が生じた場合は上長に申請すれば、ほぼ期待通りの金額で通りますから。給与を決定するときは実務経験を基本に考えますが、リーダーシップなどポテンシャルの評価割合もかなり高いと思います。
こぼれ話
120万円上乗せ 5人程度のWebコンテンツ制作会社に勤めていたデザイナーを、Webディレクターとして採用しました。職務経歴書や面接で、ディレクション業務も行っていたことがわかったので、その実務能力とポテンシャルを評価したわけです。年収120万円の上乗せは「この人になら、全部任せて大丈夫」という期待の値段ですね。
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Case4 電機メーカーD社・エンジニアの給与決定ウラ事情
給与規定をもとに、前職との差額調整で給与は決まる
給与決定のバランス
転職者のポテンシャル:対人力/課題発見・分析・解決力・・・20%,転職者のキャリア:設計開発の実務経験・・・20%,会社ごとの事情:初任給は業界水準(給与規定)にそろえる・・・60%
人事S氏に聞いた
電機メーカーD社
・従業員数500名
・情報通信機器の設計・
開発・製造・販売
既存社員と比較して優れた実務能力や経験があっても、採用時点では前給を聞いたうえで、給与規定にあてはめて金額を提示します。春闘などで決まる電機業界の給与水準にそろえるため、入社時の給与は既存社員とあまり差は出ないのが現状なんです。デキる転職者には、入社後、成果貢献給で差がつくということで納得してもらっています。
こぼれ話
40万円上乗せ そもそも転職者の前職での給与が低かったので、当社の給与規定にあてはめたら、結果的に年収40万円のアップとなりました。人事の裁量で調整できるのは、年収で50万円前後です。その金額は、前職給与あるいは当社の給与テーブルとの差額があるなど明確な理由がある場合と、実務経験のレベルが明らかに高い場合のみ。ポテンシャルで給与が上乗せされるケースは、ほとんどありません。
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Case5 外食業界E社・店長・SV候補の給与決定ウラ事情
年齢は給与決定に一切影響しない。資質・経験で決まる
給与決定のバランス
会社ごとの事情:1人あたりの人件費・・・20%,転職者のキャリア:業界経験(アルバイト可)/店長経験/調理長経験/マネジメント経験・・・40%,転職者のポテンシャル:リーダーシップ/オーナーシップ/対人力/市場調査力など・・・40%
人事S氏に聞いた
外食業界E社
・従業員数400名
・外食チェーン
外食業界、調理経験があれば優遇しますが、基本的には店長としての資質があるか否かが給与の決定要素として比重が高くなっています。年齢は一切関係なく、20代でも実務経験や店長としてスタッフから信頼を得られそうな人材であれば、採用時の給与は月額30万円以上で設定しています。
こぼれ話
100万円上乗せ 1店舗あたり40名前後のスタッフをマネジメントする30歳の店長を年収100万円アップで採用しました。外食業界でのアルバイト経験しかなかったものの、その経験が長かったこと、大勢いるスタッフをまとめていけそうな人柄であることを評価しました。
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Case6 IT企業F社・人事の給与決定ウラ事情
実務経験の評価第一で給与は決まる
給与決定のバランス
会社ごとの事情:1人あたりの人件費・・・5%,転職者のポテンシャル:リーダーシップ/対人力/課題発見・分析・解決力/経営者志向など・・・30%,転職者のキャリア:人事の全般的な実務経験/人材開発・教育などのプログラム構築経験・・・65%
人事E氏に聞いた
IT企業F社
・従業員数2000名
・ソフトウェア製品の開発・
販売
給与の決定においては、実務経験の評価が最も比重が高くなっています。「実務経験に優れた方は、ポテンシャルも文句なし」と思っているので、ポテンシャルの評価は、「実務経験の付帯事項」みたいなものですね。当社では、どのポジションの採用でもハイキャリアな人材を求めるため、人件費はたいてい予算を上回ってしまいます。
こぼれ話
250万円上乗せ 組織改革に伴い、ハイキャリアな人事スタッフの確保が急務。人材育成計画や組織活性化案の策定を任せることができ、組織改革や経営力向上プロジェクトの中心メンバーに即入れるキャリアを持った人材だったので、特例に近い形で年収250万円分を上乗せして採用しました。
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Case7 医療機器卸G社・営業職の給与決定ウラ事情
ポテンシャルの評価で給与の7割は決まる
給与決定のバランス
会社ごとの事情:1人あたりの人件費・・・10%,転職者のキャリア:営業経験もしくは業界経験・・・20%,転職者のポテンシャル:チャレンジ精神/対人力/チームワーク/市場調査力など・・・70%
人事Y氏に聞いた
医療機器卸G社
・従業員数150名
・医療用具の卸・販売
同業種同職種の即戦力となる営業職は、絶対数が少ないのが現状。なので、未経験を中心に採用しています。医療業界の知識があるか、異業種でも営業経験がある方なら、その点を重視して給与で優遇します。いずれも持たない未経験者の採用では、やはりポテンシャルを重視して給与を決定しますね。
こぼれ話
150万円上乗せ 中小企業を対象に通信回線を販売する会社の営業経験者を採用しました。中小企業の経営者と医師とのリレーション構築は、通じるものがあると判断したからです。面接時の礼儀正しさや受け答えの明朗さは好感度が高く、営業として会社の顔になってもらって安心できる人材。人間性と営業資質への期待、プラス営業経験があったので、年収で150万円増やしました。
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採用のプロフェッショナルがウラ事情解説
確実な成果を期待できる人や希少価値の高いスキルを持つ人には規定外の給与を提示することもある
どんな会社でも、人件費の枠があるので原則として給与の上限を決めていますが、どうしても採用したいという場合、その上限を超えた額を提示することもあります。では、「どうしても採用したい人材」とは具体的にどんな人か。一つは、確実な成果を期待できる人。その人が入社すると、売り上げが伸びるとかプロジェクトが成功するといったことが明確なケースです。もう一つは、希少価値の高いスキルを持つ人。当然、採用が困難なわけですから、特に一刻も早く採用しなければならないといった緊急度の高い場合には、破格の給与を提示することも珍しくありません。

ですから「自分にはこれができる」「自分はこの仕事にこんな熱意を持っている」など、人事担当者にアピールすべき点は、応募書類や面接で漏れなく強調しておくことが大事です。もちろん規定外の給与を払うともなると、担当者の一存では決められないケースもあります。しかし、「是が非でも採用したい」と思わせれば、給与決定の権限を持つ上司や社長に「高給を用意してでも採用すべし」と進言してくれるはずです。
株式会社クライス&カンパニーヘッドハンター 丸山貴宏氏
Profile
1993年に人材紹介・コンサルティング会社クライス&カンパニーを設立。面談者数は1万名を超える。
著書『キャリア・コンサルティング』(翔泳社)。
丸山氏が見た 人事が「上乗せ」した値段と理由
どんな人に?   上乗せ値段   上乗せ理由
ベンチャー企業のシステムコンサルタント 500万円   プロジェクトマネジャー兼システムコンサルタントで通用するハイキャリアな人材。
知名度が下がるベンチャー企業としては「お金」で入社してもらった。
上場を控えた会社の経営企画   100万円   上場準備、上場後の事業対応が急務で、IR・経営企画に明るい人材を採用。希少価値のあるスキルを評価。
プロジェクトマネジャー   150万円   手掛けるプロジェクト数が重なり「断らざるを得ない現状」を打開できる人材と評価。金融業界での経験があり、当人入社後の売り上げ数字が容易に予測できた。
SE   120万円   二次請けのSI企業から一次請けの外資への転職者。英語ができるSEだったので、実務経験と英語力を評価。
EDIT/COPY
佐藤裕子、国府田昌史
DESIGN
WEBMAX

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