退職の壁の乗り越え方
 第1回  職場・仕事への責任の壁  第2回  現状への未練の壁
 第3回  自分自身への不安の壁  第4回  家族からの反対の壁
第4回 家族からの反対の壁
転職は本人だけの問題ではなく、家族からの同意も重要。今回は予想される家族からの反対の壁を乗り越えた転職者に、そのポイントを聞いてみた。
アウトソーシング会社の営業事務 U・Tさん(26歳)
転職したばかりで切り出しづらい…。
PROFILE 大学卒業後、商社で営業アシスタントを1年強経験。契約社員として、同じく商社の営業アシスタントとして転職するも、半年で転職。現在はアウトソーシング会社で営業事務を務める。
U・Tさんの退職曲線
転職を考えたきっかけは?
 前の会社は契約社員だったんですが、あまりに正社員との間に差があったんです。お給料もそうですし、仕事の中身もあくまで正社員のサポートという感じで、責任のある仕事をまかせてはもらえません。商社に勤務する以上、海外出張なども期待していたのに、そんなことありえない。入社してすぐに不満を感じるようになりましたが、すぐに転職といかなかったのには訳がありまして……。私、ほんの3カ月まえに転職したばかりだったんです。しかもその時、両親には事後報告。世代的に転職には偏見があるのか、キツく叱られました。そんなところにまた転職したいとは言い出せませんでしたし、ましてやもう一度事後報告で、ともいきません。そこから3カ月くらいはモヤモヤした気分を引きずっていました。
壁を乗り越えるために何をした?
 特にきっかけがあったわけではないのですが、結局、入社半年で我慢ができなくなって、キレるように退職を決意。前回の転職で反対された経験から、今回は急がば回れで両親への切り出し方を工夫しました。いきなり「転職したい」ではなく、まずは仕事や待遇に不満があることを食事の際などに話しました。しばらくして、「転職を考えたほうがいいのかも……」、また時間を置いて「やっぱり転職する!」。期間にして1カ月足らずですが、段階を追って転職を切り出すことで両親に心の準備をしてもらったんです。目論み通り、最初は「転職したばかりで何グチってるの!」と聞く耳を持たなかった両親も、次第に「仕方がない」という態度になり、転職の決意を伝えたときには「そんなに合わない会社なら」と納得してくれました。
”両親の反対”の壁の乗り越え方
いきなり“転職したい”と言わず、事前に会社の不満を伝えた。
“転職”という言葉を小出しに使いながら意志を示し、心の準備をしてもらった。
商社の営業 R・Hさん(31歳)
妻の同意が得られるか心配…。
PROFILE 大学卒業後、信用金庫に入庫し営業職に。7年強勤務した後、商社に転職する。
R・Hさんの退職曲線
転職を考えたきっかけは?
 真面目に頑張っている人は評価されず、ゴマスリだけが出世していく……。そんな社風に嫌気がさしたんです。人事が発表されるたびに「なんでアイツが?」という思いをさせられてましたから。それに仕事自体にも不満がありました。長引く不況から、無理を超えて無茶な営業をさせられるようになっていったんですよ。一方では貸し渋り、取れるところからは可能なだけとる。次第に、そんな仕事に魅力を感じなくなりました。
 それからすぐに転職を思い立ったかというと、そうではありません。退職したところで次の仕事が見つかるとは限りませんし、見つかったところで今と同じだけの収入が得られるとは限りません。自分でも不安を感じていましたし、何より妻の同意を得られる自信がなかったんです。結局、決断したのは一年半後。同僚の退職に背中を押されるように決意しました。
壁を乗り越えるために何をした?
 正攻法ですが、妻と話し合いの場をもち、説得しました。説得の切り口は、まずもうこれ以上、今の状態には耐えられないということ。転職を思い立ってからというもの、思い悩んだせいか7キロも体重が落ちていましたから。肉体的にももう限界だったんですね。それに加えて、「確かに今このタイミングで会社を辞めるのは不安だけど、かといって10年後も今の会社が続いているとは限らない」と説得しました。
 結局、妻も体を壊すくらいならと納得してくれました。「仕事がなくても2カ月ぐらいやっていけるだけの蓄えはあるわよ」と聞いた時には、本当に心強かったですね。今思えば、妻もこういう決断に至ることは想像してたんじゃないかと思うんです。職場結婚だったのでどういう体質かは理解してましたし、辞めるとは言わないまでも、「出世するのはゴマスリだけ」「無茶な営業をさせられる」と食事の時に会社へのグチを話していましたから。これが唐突に「会社を辞める」と告げたのでは、こうすんなりといかなかったでしょうね。
“妻からの反対”の壁の乗り越え方
きちんと話し合いの場を設け、退職の理由とともに、将来の不安についての考えを伝えた。
退職の決意をしないまでも、会社に不満があることを伝えていた。
「壁」乗り越え前事例
製薬会社の開発職 T・Eさん(35歳)
妻からの反対を押し切れず…。
PROFILE 大学卒業後、製薬会社に入社。以来8年間、研究職として勤務するも9年目に開発職に異動する。
T・Eさんの退職曲線
転職を考えたのはなぜ?
 4年ほど前に会社に新規事業の提案をしたんです。それが評価されるどころかマイナスになったようで、その後も昇進できないまま。そもそも古い体質の会社ですから、大事なのは肩書や年次。下が上に意見するなんてもってのほかです。この後も仕事のあらゆる場面でこの体質を目の当たりにするのかと思うとゾッとしました。これは会社を変えるしかないと思ったのですが……。
壁を乗り越えられないのはなぜ?
 家族に同意が得られないことが大きいですね。転職を思い立ってすぐに妻に相談したんですが、「安定した生活を失いたくない」と、きっぱり反対されました。それ以降は、反対を押し切ってまで転職しようという気になれず、説得はあきらめました。
 そもそも僕自身、1年ほど前に望んでもいない異動を味わったことで割り切った部分があるんです。仕事にやりがいや充実感を求めるのは、もうよそうかと…。もちろん完全にあきらめたわけではありませんよ。会社の業績は悪化の一途で、リストラも始まるようです。今以上に給料が下がったら、改めて考えるつもりです。
「家族からの反対の壁」を乗り越えるには
 家族からの反対が予想されるとき、どのように納得してもらえばいいのか。
転職に踏み切ることができた人たちに共通していたのは、下記のプロセスだった。

(1) 自分の不満、悩みを家族と共有し、
一緒に考える姿勢、雰囲気を持つこと  
いきなり転職の意思を伝えるのではなく、事前に愚痴レベルでも仕事の不満を伝える。少しずつ現状を理解してもらい、転職の可能性も暗に示しておく。

(2) 転職することが、最終的には精神的(または体力的、労働時間的)に
いい結果に繋がると共感を得ること

話し合いの場では、(1)の裏返しになるが、なぜ転職したいのか、転職によって解決できる(したい)ことは何かを伝える。

 特に、転職によって、勤務地、収入などが変わり家族の生活に影響が生じるような場合、反対に合いやすいのは想像に難くない。相手の不安、不満にも耳を傾け、現実レベルの対応策を自分なりに提示して解消していくこと。多少時間がかかっても、家族との生活の上に仕事をする自分があるはず。きちんと話し合い、納得を得るようにしたい。

 また、思い切って話してみたところ、“実際に反対された”ケースよりも、収入や安定が多少揺らいでも、“本人が前向きに仕事に取り組めることの方が重要と理解してもらえた”ケースの方が多かったことも加えておきたい。


 第1回  職場・仕事への責任の壁  第2回  現状への未練の壁
 第3回  自分自身への不安の壁  第4回  家族からの反対の壁




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