退職の壁の乗り越え方
 第1回  職場・仕事への責任の壁  第2回  現状への未練の壁
 第3回  自分自身への不安の壁  第4回  家族からの反対の壁
第1回 職場・会社への責任の壁
自分が退職することで会社や同僚に迷惑がかかってしまう……。転職を思い立っても、そんな責任感が壁になっていることも多いはず。そこで、どうやってその壁を乗り越えたのかを、実際に転職に成功した先輩たちからヒアリング。会社も自分も、お互いに納得して退職するためのポイントを探ってみた。
建築会社の積算業務 S・Yさん(30歳)
業績不振のため、後任の採用が期待できない…。
PROFILE 大学卒業後、住宅メーカーの事務スタッフとして全ての事務業務を経験。3年2カ月勤務した後、建設会社に転職。主に積算を担当するほか、最近では商品企画にも一部携わるように。
S・Yさんの退職曲線
転職を考えたきっかけは?
 前の会社は考え方の古い組織で、女性はどうしたって前面に出れないんです。私自身は宅建などの資格取得を目指していたくらいでバリバリ働きたかったんですけど、資格を取ったところで仕事は事務のままでしょうし、その割に資格の勉強をする時間もないほど仕事量が多かったですからね。
 ただ、転職するにしても気になったのが引き継ぎのこと。会社の業績が悪化していたので後任を採用するとは思えず、同僚に迷惑をかけるのではないかと。それに自分がよその会社で通用する自信もありませんでしたし、結局3カ月ほど迷っていました。
壁を乗り越えるために何をした?
 結局、迷っている期間中、すでに転職していた先輩から「ウチにこない?」と誘いがあり入社を即決。スムーズな引き継ぎ方をあれやこれやと考えました。そうして思いついたのが、同僚に迷惑をかけるにしても、誰か特定の人にしわ寄せが行くのではなく、広く浅く負担してもらうやり方。経理はこの人、営業サポートはあの人と、自分の仕事を5つほどの要素に分割し、複数の人に引き継いでもらおうと思いつきました。具体的な分割案をまとめた後は、退職の意向を伝えると同時に上司に提案。「そういう引き継ぎ方なら」とスンナリ了承を得ました。
 上司の了解を得たら、後は同僚に納得してもらえるような伝え方。ここでも一工夫して、上司から営業所長に話を通してもらい、引き継ぎの指示が営業所長から下りるという形にしたんです。さすがにトップからの指令ということで、みんなにも納得してもらえたようでした。
“後任不在”の壁の乗り越え方
会社の事情をふまえ、担当していた仕事を複数の要素・相手に分割して引き継ぐというアイデアを提案。
上司に根回しし、引き継ぎの指示を営業所長からのトップダウンにした。
化粧品の製造管理 T・Oさん(30歳)
現場責任者という立場上、会社からの引き止めは必至…。
PROFILE 高校卒業後、容器メーカーに12年勤務。ゴム製造工場に転職し、半年間、現場責任者を務める。その後、現在の職場である化粧品会社に転職。製造部門の管理業務に携わる。
T・Oさんの退職曲線
転職を考えたきっかけは?
 会社の将来に不安を感じたんです。入社早々、取引先から発注を打ち切られ給与もダウン。これは早く次の会社を探すべきだと思いましたね。とはいえ、すぐに行動したわけではありません。入社まもない時期でしたし、現場の責任者という立場だけに、引き止められるのは目に見えていましたから。
 でも入社3カ月目に、決定的なことが起きたんです。取引先から品質の面で複数のクレームを受けたんですが、それに対応して業務を改善していく体力が会社になく、そのまま生産を続けることになったんです。こんな会社が伸びるはずありませんし、そこで働いていても自分自身を伸ばせるわけはないと、転職を決意しました。
壁を乗り越えるために何をした?
 会社への配慮を忘れず、誠意を見せるという当たり前のことをやれば理解してもらえると信じ、おもいきって上司に退職の意向を伝えました。その思いが通じたのか、案外スンナリと会社にも認めてもらえました。また、念を押す意味でも誠意を形にする必要があると考え、私の業務に関するマニュアルを作ったんです。A4で10ページ強。作るのに1カ月近くかかりました。
 マニュアルの中身も、後任のことを極力配慮した内容です。例えば分厚い管理システムの説明書を、必要なところだけ使う人の立場になってまとめました。さらに気をつけたのが、基本しか書かないということ。応用は後任にまかせることで、私の型にはめることなく、その人なりのやり方を追求できるようにしたんです。
 結局、「そこまでフォローするのなら」と、退職時には部下たちからも快く送り出してもらえました。短い在籍でしたが、今でも当時の同僚とつながりがあるくらいなんですよ。
”引き止め”の壁の乗り越え方
会社や後任に迷惑をかけないという誠意を示し、それを業務マニュアルという「形」に残した。
「壁」乗り越え前事例
広告プロダクションの制作スタッフ N・Oさん(24歳)
同僚は退職時、泥沼に。自分もはまるかと思うと…。
PROFILE 大学卒業後、広告の企画・制作を手がける現社に、制作スタッフとして入社。間もなく入社満2年を迎える。
N・Oさんの退職曲線
転職を考えたのはなぜ?
 本音をいうと出版社で働きたかったんです。とりあえず同じマスコミ業界ということで入社してみたものの、ちょうど1年前、こちらの制作意図を全く理解してくれないクライアントや、言いなりの代理店の担当者との不毛なやり取りに、「これは違う」とはっきり嫌気が差したんです。
壁を乗り越えられないのはなぜ?
 半年ほど前、同僚が辞めたんですが、その時はスンナリとは認められず、上司から「育てた恩を仇で返すのか!」なんて言われる始末。会社としてもこれ以上人を手放したくない時期でしょうし、自分もあんな泥沼にはまるのかと思うと、決断できないでいます。いいと思う求人もありましたが、前述の不安に加えて自分に自信がなく、何もできませんでした。
 まあ今の会社も10年、20年と勤めている人はいませんし、上から順番に辞めていく感じです。自分の順番がくるまで待てばいいという気持ちと一日でも早く転職したいという気持ち、両方の間で揺れ動く毎日です。
「職場・会社への責任の壁」を乗り越えるには
今回の取材で壁を乗り越えた人に共通していたのが、「自分が退職することで、会社や同僚に迷惑をかけない」という姿勢。その際、次のような行動がポイントとなる。

(1)会社の実情を踏まえ、具体的な引き継ぎ策を考え、実行すること
(2)退職を申し出るときも、会社や同僚に十分配慮し、誠意を伝えること

また、“職場が忙しすぎて後任がいない”、“引き止められるかもしれない”といった壁は、会社の問題以外にも、“自分自身の責任感”が生じさせているケースも多い。じっと思い悩んでいる、その状態が“壁”そのものとも言える。最初の2人のように、前に進むために行動してみたら、意外とスムーズに壁をクリアできたということもあるようだ。


 第1回  職場・仕事への責任の壁  第2回  現状への未練の壁
 第3回  自分自身への不安の壁  第4回  家族からの反対の壁




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