心理学者や転職支援アドバイザーがメカニズムを分析!

人はなぜ「仕事選び」で迷うのか?

人は日々の生活の中で、たくさんの選択をしている。仕事選びもその1つ。しかし、何かを買ったり、食事のメニューを決めたりすることに比べて、仕事選びは決断までに時間がかかるし、悩みも深い。それはなぜだろうか?仕事探しのプロフェッショナルと心理学者の3人に、仕事探しで悩んでしまう理由について話を聞いた。

2012年8月1日

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心理学者 早稲田大学名誉教授<br>
加藤諦三氏

心理学者 早稲田大学名誉教授
加藤諦三氏

東京大学教養学部を経て、同大学院社会学研究科修士課程修了。早稲田大学名誉教授のほか、ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員、日本精神衛生学会顧問などを務める。2009年に東京都功労者表彰受賞。『「行動できない人」の心理学』(PHP研究所)など著書多数。

有限会社アンギルド 代表取締役社長 心理学者<br>
内藤誼人氏

有限会社アンギルド 代表取締役社長 心理学者
内藤誼人氏

慶應義塾大学社会学研究科博士課程卒。執筆活動、講演・セミナーのほか、社会心理学の知見をベースにしたコンサルタント業務など幅広いジャンルで活躍する。欧米流自己演出術である「パワープレイ」の第一人者としても知られている。著書は『心理戦で絶対に負けない本』(アスペクト)、『不安があなたを強くする』(廣済堂出版)、『一瞬で人の心を虜にする暗示心理術』(PHP研究所)など、200冊を超える。

株式会社リクルートエグゼクティブエージェント<br>
エグゼクティブコンサルタント<br>
森本千賀子氏

株式会社リクルートエグゼクティブエージェント
エグゼクティブコンサルタント
森本千賀子氏

リクルート人材センター(現リクルートエージェント)に入社後、大手からベンチャーまで幅広い企業への人材戦略コンサルティング、採用サポート支援を手がける。企業と求職者のニーズをマッチさせる問題解決力、コーディネート力に定評があり、現在までに約1万人の転職希望者と接点を持ち、約2000人の転職に携わる。2010年4月よりリクルートエグゼクティブエージェントに出向。現在は経営幹部・エグゼクティブ層の転職サポートに携わる。

心理学者・加藤諦三氏に聞く

仕事選びは「自分自身の社会的評価」の決定に大きな影響を与えるため

人は社会的評価を気にします。仕事選びで迷ってしまう理由は、どの職業に就いているかでその人の社会的評価が左右される場合が多いからでしょう。そこで「失敗したくない」と強く思います。ただし、失敗を恐れるといっても、失敗そのものは単なる一つの経験でしかありません。本当に恐れているのは、「失敗したことで、周囲が自分のことをどう見るか」です。

失敗というものは、人によって意味づけが違います。小さなことにいつまでもくよくよしている人がいる一方で、すぐに忘れてしまう人もいます。まずは、自分にとっての失敗の意味づけを知っておくこと。そのためには、過去の自分の失敗経験を振り返り、人から何を言われたのかを思い出してください。もしその時に違った人と出会い、違ったことを言われていたら、今のように失敗を感じていないはずです。

そうやって、小さいころから周囲の人があなたの失敗にどう反応してきたかで、あなた自身の失敗の意味づけができています。それを知っておくだけでも、少しは楽になれるはずです。

心理学者・内藤誼人氏に聞く

コストを気にしすぎる心理的要因と、変数の多さで選択に時間がかかる

1点目は、「かけるエネルギーとコストの差」です。この場合のコストとは、お金(費用)や時間、人間関係も含みます。洋服や靴、ランチのメニューなどは、せいぜい数千円程度の費用だけで済むでしょう。仮に選択に失敗したとしても、ダメージはそれほど大きくありません。しかし、仕事の場合は“人生がかかっている”と考えます。仕事に関わるものはすべて、コストが高いのです。「変な選択をしてしまったらどうしよう…」と考え始めてしまえば、選べなくなるのは当然なのです。基本的に、人はメリットを得る喜びよりも、デメリットから生じる後悔のほうを嫌います。心理学には「接近−回避コンフリクト」というものがありますが、「メリットへの接近」と「デメリットからの回避」が同時に存在している場合、人は「デメリットからの回避」を選ぶことが知られています。つまりデメリットを気にしすぎるあまり、自分にぴったりの仕事であっても、決断までに時間がかかるというわけです。

2点目は「仕事選びは変数が多い」ということ。選択すべき変数が多くなれば、人はますます選べなくなります。仕事選びでは、職種、業種、給与額、企業理念、人間関係、場所、通勤時間、社格…というふうに、ざっと挙げただけでも検討する際の変数がものすごく多い。「人間が同時に比較できるのは7つの特性まで」というデータがありますが、住居購入や結婚と同じように、押さえておきたい変数が多い分、必ず迷うものだと理解しておく必要はあるでしょう。よって、もし悩みたくなければ、自分で特性を絞ってしまうことです。「給与はどうでもいいから、“やりがい”だけで選ぶ」といったふうに、変数を減らしてください。

迷うという行為はとても素敵なことですが、実は無駄なことでもあります。「うまくいかなかったら、その時に考える」という気持ちで、まずは行動することが大事だと思います。

転職支援アドバイスのプロフェッショナル・森本千賀子氏に聞く

「人生の充実を左右する」と慎重に。優先順位が不明確なほど悩む

理由は大きく二つあると思います。
1点目は「“仕事の充実=幸せな人生”と考えやすく、安易な決断ができない」ということです。多くの人は、「幸せの指標」を仕事に合わせています。仕事が順調で、仕事を通じて自分がイキイキしていることが、ハッピーであるかどうかを決める大きな基準になっているのです。一日の大半は仕事をしているわけですから、どうせ同じ時間を使うなら、やりがいが持てて、ワクワク楽しめて、結果として成長でき、報酬にもつながる仕事のほうがいいと思うのは当然です。しかし、働いたことのない会社でそれを実現できるかどうかは,見えるわけではないのでわかりません。幸せのために少しでも充実した仕事を選びたいが、仕事を選ぶことは人生において何度もあることではありません。慎重になるのは当然です。

2点目は「自分の本当の優先順位が明確になっていないから」です。
特に20代、30代では、好奇心を持ってチャレンジしようと考えれば、未経験転職を含めて多様な仕事から選択することが可能です。「選択肢が多い分だけ悩ましい」ということもあるかもしれません。しかしこれは、キャリアが浅いゆえに自己分析ができていないということでもあります。自分の軸がわかっていないため、力の発揮しどころがわからず、選ぶ際に基準を持ちにくいのです。であれば、自分の中での優先順位を知っておくこと以外に、悩みを軽くするための解決策はありません。自分の過去や、他人からの意見を参考にして、「今の自分にあるもの・足りないもの」を自覚する。さらに「将来どうありたいのか」を具体化してみる。「現在」と「未来」を比較することで、自ずと優先順位の高いものと低いものがわかるはずです。

私は、悩むことには意味があると思っています。自分を見つめる時間を持つことで、新しい発見があったり、より納得したうえでの決断を導くことができるからです。そうやって苦労した経験は免疫力となり、必ず次につながります。どんなことであっても、迷うのは当然。だからこそ、納得いく決断を出せるように準備をすることが大事なのではないかと思います。

仕事選びは迷って当然。大事なのは「納得感」

三者三様の意見だったが、結論としては「仕事選びは迷うものだ」ということ。人が生きていくうえで、仕事がしめるウェートはとても大きい。だからこそ、「より満足度が高い場所を」と意気込んでしまうのは当然のことかもしれない。大事なのは納得のうえで決断すること。もちろん、迷わずに決断できればスムーズだが、森本氏が言うように、迷うことで学べることがあるのも事実。3人の意見を参考に、あなたにとっての「仕事の意味」「迷いの原因」について考えてみてはどうだろう。その先に、自分らしく働ける転職先が見つかるはずだ。

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EDIT&WRITING
志村 江
PHOTO
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